長期レビュー

パナソニック「3つ星 ビストロ」 最終回

~自家製冷凍食品を一週間分作り置き! そのお味は?
by 阿部 夏子

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



パナソニック「3つ星 ビストロ NE-R3300」

 前回は、ビストロの「凍ったままグリル」レシピを一週間分まとめて作り置きしたところで終わってしまった。今回は、前回下準備した材料を実際に調理していきたい。

 製品の基本性能を紹介した1回目はこちらから。

 フライパンよりオーブンよりもおいしく焼けた「鶏の照り焼き」を紹介している2回目はこちらから。

肉系メニュー編―鶏肉との相性は抜群

一週間分のメニューを作り置きして冷凍で保存しておいた

 実際のメニュー紹介の前に、まず凍ったままグリル機能を簡単におさらいしておこう。凍ったままグリル機能とは、自宅で下味、下処理をした食材を冷凍、それをビストロで一気に食べられる状態まで調理するというものだ。時間のあるときに、食材を下ごしらえして冷凍しておけば、あとはスイッチ1つで食べられる状態になるので、毎日の料理の時間を少しでも短縮したいという人に便利な機能だ。

 今回のレビューでは、休みの日に約1週間分の冷凍メニューをまとめて作った。作ったレシピは「手羽元の香味焼き」「焼き野菜」「肉巻き野菜」「塩サバ」「塩じゃけ」「ハンバーグ」「牛肉の春巻き」「ピーマンの肉詰め」「和風野菜焼き(レンコン)」の9つ。この章ではまず肉を使ったレシピからご紹介していこう。

・手羽元の香味焼き(4人分)―下ごしらえ約20分、調理時間約23分

 まずは下ごしらえから紹介しよう。味がしみ込みやすいように手羽元の一部にハサミで切れ込みを入れる。次にネギやみりん、しょうゆなどが入った特製のタレに付けて、そのまま冷凍すれば準備は完了だ。なお、冷凍保存のやり方にもコツがある。それは前回、詳しく紹介しているのでそちらをご参照いただきたい。

鶏の手羽元包丁で切れ目を入れる皮目の方にフォークで穴を開ける
しょうゆ、にんにく、しょうが、ネギ、豆板醤などが入ったタレ袋に入れてよくもむ

 つぎに調理方法。といっても、グリル皿に凍ったままの手羽元を並べて、庫内に入れたら後はスイッチを押すだけだ。調理時間は約23分。できあがりは写真の通り。前回、「鶏の照り焼き」でもご紹介したが、ビストロの加熱方法は鶏との相性がいいようだ。余計な脂が落ちて脂っぽくないのに、ジューシーで柔らかい。ごはんとの相性はもちろん、ビールのおつまみにも合いそうな一品だ。

凍った状態でグリル皿に並べるメニューを選択焼きあがり
焦げ目がしっかりついて食欲をそそる仕上がりだ表面側裏側

・ピーマンの肉詰め(4人分)―下ごしらえ約15分(玉ねぎを冷ます時間は別で約10分)、調理時間22分

 ピーマンの肉詰めといえば家庭料理の代名詞ともいえそうなメニュー。基本的にはハンバーグの種をピーマンに詰めるだけ。ポイントとしては、玉ねぎのみじん切りを事前に炒めてから挽肉とあえること、もう1つピーマンに肉を詰めるときに小麦粉と片栗粉を混ぜた粉をまぶしてから肉を詰めることだ。

 ピーマンに肉を詰め終わったら、そのまま冷凍する。

玉ねぎは事前にみじん切りして、炒めて冷ましておくピーマンを半分に切って、中の種を取り除くひき肉を詰める

 調理時間は約22分。ピーマンには焦げ目がうっすらと付いていて、中の挽肉にもしっかり火が通っている。フライパンでピーマンの肉詰めを作ろうとすると、ピーマンの焦げ目が気になって、中の挽肉が生焼けなんてことがよくあるが、ビストロで作った肉詰めは中までしっかり火が通っていた。

 ピーマンの肉詰めは、作り方は単純だが、工程に意外と手間がかかるレシピ。それゆえに、平日に登場することはなかった。ビストロならば、おみそ汁やサラダを作っている間に、あっという間にメインの一品が作れてしまう。

冷凍用の保存袋で冷凍グリル皿に並べたところ焼きあがり

・ハンバーグ(2人分)―下ごしらえ約5分、調理時間約21分

 このハンバーグ、実はピーマンの肉詰めの種が余ったので急きょハンバーグとして冷凍したもの。そのため、下ごしらえの時間が約5分となっている。

 しっかり焦げ目の付いたハンバーグは、見た目だけでいうと、火が通りすぎて中がパサパサになってるんじゃないか――と心配になったが、実際にはそんなことはなく、しっとりとジュシーな仕上がりだった。

ピーマンの肉詰めの種で作ったハンバーグ凍っている状態焼きあがり。焦げ目がしっかりついている

・牛肉の春巻き(4人分)―下ごしらえ約15分、調理時間約16分

 普通の春巻きとはちょっと違う、揚げずに作る春巻きだ。一般的な春巻きの作り方は、中にいれる「あん」作りから始める。肉とタケノコやもやし、シイタケ、ニラなどの具材を一気に炒めて味付け、片栗粉でとろみをつけて春巻きの皮で巻いて、揚げる。ビストロの春巻きは中の具材に火を通すことはないし、皮の巻き方も独特だ。

 まずは、牛肉を包丁で細切りにして、そこに薄切りの玉ねぎとニンジンを入れて、味付けをする。これが中に入れる「あん」となる。次に市販の春巻きの皮に対角線上の包丁を入れて、1枚を2枚に分ける。三角になった皮にあんを入れて折りたたむようにして、最後に表面に油を塗る。

牛肉を細切りにする具材と調味料を混ぜる市販の春巻きの皮を半分に切る
三角になった皮にあんを置く巻いた状態仕上げに表面に油を塗る

 調理時間は16分。表面にはしっかり焼き色が付いて、食感はパリっとしてスナック感覚で食べられる春巻きができた。普通の春巻きに比べると大きさは約半分ほどだ。皮を半分にすることで、皮のボリュームが少なくなって、パリっと仕上げられるのだろう。ただ、中のあんに水分が含まれていないため、春巻きならではのジューシーさには欠ける。春巻きとしてではなく、別の料理として考えた方がおいしくいただけるだろう。

調理前焼きあがり中までしっかり火が通っている

・野菜の肉巻き(4人分)―下ごしらえ約15分、調理時間約20分

 豚バラにニンジン、アスパラガスを巻いて作る。工程自体はとても単純だが、巻き方にちょっと工夫がある。まずは豚バラ1枚を三等分に切って、3枚を横に並べる。その上にニンジンとアスパラガスを載せて巻いていくというものだ。最初は、なんでこの手間が必要なの? と疑問に感じたが実際に野菜を巻いていく段になってこの理由がわかった。豚バラそのままの長さで、野菜を巻こうとすると長さが短くて、野菜がかなりはみ出してしまう、あるいは野菜の長さを短くしないといけないのだ。

 肉巻きのおいしさは、肉の歯ごたえと野菜の歯ごたえを一緒に楽しめるところにある。多少面倒でも、ここは指示通りにやるのがおすすめ。

1枚の豚バラ肉を三等分して、横に並べるアスパラガスとニンジンをおく冷凍した状態

 調理時間は約20分。豚バラの脂が落ちて、カリっとした食感の仕上がり。生のまま冷凍したニンジンやアスパラも、しっかり火が通っていて柔らかく食べられた。ただ、個人的には豚肉の脂が落ち切ってしまっているのが気になった。特に豚バラは脂身の部分もおいしさの1つなので、少々物足りない気も。鶏肉の方がやはり相性がいいかもしれない。

焼きあがりグリル皿には大量の脂が溜まっていたカリっとした仕上がり

魚系メニュー編―手間をかけずに冷凍できるから活用度大

 続いて紹介するのは焼き魚のメニュー。今回は下ごしらえがほとんどいらない塩サバと塩さけを取り上げよう。どちらのメニューにも共通して言えるのは、こんがり、パリっとした仕上がりであるということ。

・塩さば(4人分)―下ごしらえ約3分、調理時間約17分

 塩サバの下ごしらえは、半身を半分に切って、表面に十字の切れ目を入れること。あとは、冷凍保存袋に入れて、冷凍するだけだ。

 調理時間は約17分。見た目にもおいしそうな仕上がりになる。

サバは冷凍前に表面に切れ目を入れる調理前調理後
調理後のさけ

・塩さけ(2人分)―下ごしらえ約1分、調理時間約約15分
 今回紹介「凍ったままグリル」のレシピの中で、もっとも手間がかからないのが塩さけだ。切り身を買ってきたら、そのまま冷凍できる。

 調理時間は約15分。さけの切り身が特価の時にまとめ買いして、そのまま冷凍すれば、朝ごはんはもちろん、お弁当まで広く活用できそうな一品だ。

野菜系メニュー編―下ごしらえ約5分、調理時間約19分

 凍ったままグリル機能の野菜メニューは、焼き野菜が中心になる。下ごしらえは、まず野菜をカット。さつまいもは水に浸す、レンコンは酢水に浸す。冷凍前にしっかり水分を拭き取ることが大事だ。

 調理時間は約19分。中まで火は通るが、水分を拭き取ったところに塩、胡椒などで味をつけるため、味に片寄りが出てしまう。正直なところ、調理時間や冷凍する前の手間を考えると、普通にフライパンで焼いた方がいいかなと思ってしまう。また、野菜は肉や魚とは細胞の種類が違うため、冷凍にはあまり適さないという性質もある。冷凍することで食感が変わってしまうので、凍ったままグリルには向かないかもしれない。

レンコンの焼き野菜を作る場合、まずレンコンの皮をむく輪切りにして酢水に浸す冷凍するときにくっつかないように、水分をしっかり取る
レンコンを冷凍したところ。レンコン同士がくっつかないように注意して冷凍したい加熱後。火力が強めなのか、少々焦げてしまった

作り置きって気が楽!

 実際に一週間使い続けてみて、正直な感想はやっぱり作り置きって気が楽! ということ。調理時間はある程度かかるものの、当日に準備するのはごはんとおみそ汁くらいのもので済むので、気持ち的に全然違う。

 また、節約の意味合いも大きいだろう。安さに惹かれてまとめ買いしても、冷凍をうまく使えば食材の無駄も防げるし、外食の頻度を減らすこともできる。

 たとえば、いつもなら会社帰りに「疲れたー。お腹すいたー」となると、ついつい「今日はもう地元のラーメン屋さんで食べちゃおう」とか、「ファミレスでいいよね」とかなってしまいがちだが、自宅にちゃんとしたメニューが待っていると思うと、「ちょっと我慢しておうちで食べよう」と切り替えられる。

気負わずに使い続けたい

 少々駆け足であったが、こうやって一週間分のレシピを紹介していくと、レシピ通りに作って、冷凍するのはめんどくさいなと感じた人もいるかもしれない。私自身、今回のレビューのためにレシピに忠実に作ってみて、すぐ食べるものではなく「冷凍するため」のものに毎回ここまで労力をかけられるかなと疑問にも感じた。

 冷凍からそのまま調理という方法はこれまでのオーブンレンジにはなかった機能なので、最初はレシピに忠実に、とそればかりを念頭に置いていたが、複数の冷凍レシピを作るうちに、もっと日常の料理の流れの中で冷凍することをクセにしてしまえばいいんだと思うようになった。

 実際、レシピの中には多少材料を替えても大丈夫そうなものもある。たとえば、ハンバーグを作るときにタネを多めに作って、残りをそのまま冷凍。あるいは、ピーマンがあったら肉詰めにして冷凍など、冷凍レシピを作るために料理するのでなく、日常の料理の中で冷凍レシピも一緒に作るという風に考え方をシフトすればいいのだ。

 ただ、残念なのはこういう風に考えられたのは、一通りのレシピに目を通して、実際に作った後だった。パナソニックには、日常的な流れの中で冷凍レシピを作るというような提案をもっとして欲しいというのが正直なところだ。

電気代は1,500円アップ

8月分の電気代(下)に比べ、9月分は約1,500円ほど高くなっている

 この1~2週間、毎日平均して20分ほどビストロを使い続けてきた。帰宅後の夕食の準備や、サラダの野菜の下ごしらえなど、食事の準備はこれまでのスタイルと大きく変わったわけだが、その変化は思わぬところにも出た。それが電気代だ。

 電気料金の請求を見て驚いた。前月より1,500円も料金がアップしていたのだ。今年の夏は、とにかく暑くてエアコンが手放せなかったので、電気代は例年よりも高めではあったが、8,000円を超えたのは初めてだったので驚いた。

 実際、使っているときも消費電力の多さは実感できる。たとえば、ビストロと食器洗い乾燥機を一緒に使っていると確実にブレーカーがあがってしまう。そのほか、暖房器具との併用やドライヤーなど、複数の電化製品を同時に使っていると、すぐにブレーカーがあがってしまった。

 ただし、前述したようにビストロを使い始めたことによる、節約効果もあったので一概にそれが悪いとはいえない。

多機能オーブンレンジはまずは作ってみることが重要

 今回のビストロに限らず、最近のオーブンレンジは自動メニューを搭載したものが多く、本体には様々なメニューの名前がそのまま登録されていたりする。そのレシピの数は100以上で、とてもじゃないが、全てを作ることはできない。私のおすすめは、買ったらまず目ぼしいレシピをいくつか見つけて、作ってみること。

 ビストロであれば、スチームあたため機能や、凍ったままグリル機能、さらに焼き魚など、一般的な電子レンジには搭載されていない機能を試すのがお勧めだ。たとえば、レンジで蒸し野菜や、レンジで茶碗蒸しなどこれまでオーブンレンジでできなかった調理やメニューは、一度でも作らなかったらそのままになってしまう可能性が大きい。

 毎日料理をしている主婦にとって、料理はその時の気分やアイディアによるところが大きい。一度レシピに従って、そのオーブンレンジを使ってみることで、そのアイディアの中にオーブンレンジを使ったものが含まれることになる。せっかく良いオーブンレンジを買ったのなら、日常的に使いこなしていきたいものだ。



 以上、パナソニックのオーブンレンジ「3つ星 ビストロ NE-R3300」を3回に渡ってご紹介してきたが、私自身の正直な感想は「これを使えば料理がうまくなる」ということ。特に、肉料理の場合火加減ができあがりを左右することが多いが、ビストロでは自動で火加減や調理時間を設定してくれるので、誰が作っても同じようにおいしくできる。おいしくできるということは、料理上達の一番の近道でもある。

 この手の高機能オーブンレンジというと、ふだん料理しないから使いこなせないんじゃないか、とか、主婦の達人みたいな人が使うものというイメージがあるかもしれないが、実際は全く逆。料理に苦手意識がある人にこそおすすめしたい製品だ。



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2010年10月20日 00:00