長期レビュー
ダイキン「うるるとさらら Rシリーズ AN40LRS-W」 その1
■「乾燥する 電気代が高い 非効率」は過去のもの
ダイキン「うるるとさらら Rシリーズ AN40LRS-W」 |
エアコンによる暖房――みなさんはどんなイメージをお持ちだろうか。私個人でいうと、10年近く前の機種を長く使っていたこともあり、あまり良いイメージは無かった。室内が乾燥してしまうことや、電気代が高いことなど理由はたくさんあるが、一番はあまり暖かくなかったというところが大きい。
そもそも、足下の寒さが気になる季節において、頭上から室内を暖房するなんてナンセンスなんじゃないかと、ひねくれた気持ちになるくらい、立ち上がりが遅く、暖かくなるまでに時間がかかっていた。家に居る時間が短い共働きの我が家では、立ち上がりの遅い暖房器具は実用的ではなかったのだ。
それに加えて、使い始めてすぐに肌の乾燥を感じるほど部屋が乾燥し、電気代もかさむ。というマイナスなイメージばかりで、これまで冬はセラミックファンヒーターや、電気ストーブを愛用してきた。
ところが、最近のエアコンの新製品を見ていると、これまでのエアコン暖房に対するマイナス要素を払拭するような機能が多く搭載されている。
まず、数年前からのトレンドでもある気流制御技術。風が人に直接当たらないため、不快さが少なく、省エネにもつながるという機能だ。これに関して今シーズンは、各メーカーがなんらかの形で導入している。また、一昨年あたりからは、本体にセンサーを搭載し、室内の人の位置や、機種によっては人の活動量までセンシングして、運転を制御するという機能が搭載されている。
つまり、エアコンの温風が身体に当たって、不快さを感じるということは少なくなっているのだ。また、室温や外気温までセンシングして、温度を設定するものもあり、エアコンの暖房イコール不経済という図式は今や完全に過去のものとなっている。
加えて、今シーズンのエアコンの大きなトレンドとして挙げられるのは、保湿運転機能と、イオン放出による除菌効果だ。
ダイキン、三菱電機では空気中の水分に高電圧をかけて、生成する水の微粒子を室内に放出する保湿機能を搭載しているほか、パナソニックでは、ナノイーイオンを放出することで肌の潤いを保つとしている。イオン放出機能では、パナソニックのナノイー以外にもシャープがプラズマクラスターイオン、東芝がキレイオン、と各社独自のイオンを搭載し、空気中のウイルス抑制効果を謳っている。
メーカー | 期間消費電力量 | 保湿機能 | 除菌機能 | 気流制御 |
パナソニック | 1,196kWh | ナノイーによるうるおい効果 | ナノイー | エコナビ機能 |
シャープ | 1,670kWh(16畳用) | なし | プラズマクラスター | つつみ込む気流 |
三菱 | 1,314kWh | ピュアミスト | ピュアミストによるウイルス制御 | ムーブアイ |
東芝 | 1,382kWh | なし | スゴイオン | ピタっと気流 |
ダイキン | 1,336kWh | E-moist | なし | 4方向気流 |
(いずれも最上位機種の機能を参照、期間消費電力の数値は14畳相当のものを参考にしている)
エアコンは室内をただ暖めるだけのものから、室内環境を整えるための空調機器へと変わっているのだ。
最新のエアコンには長らく触っていなかったため、エアコンによる暖房にはあまり良いイメージを持っていなかったが、色々調べてみるとイメージがずいぶん変わった。昨年引っ越しをした際に、暖房器具は全て処分してしまったということもあって、今回“暖房器具として”エアコンを購入することにした。エアコンというと、冷房機能ばかりが注目されがちな製品だが、夏とは違うエアコンの使い方をご紹介できればと思う。
■1時間あたり600mlの加湿量
数あるエアコンのラインナップから、今回選んだのはダイキンの「うるるとさらら Rシリーズ AN40LRS-W」だ。なぜダイキンの製品を選んだかというと、暖房プラスαの機能に注目したからだ。
メーカー | ダイキン |
製品名 | うるるとさらら Rシリーズ AN40LRS-W |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | ビックカメラ.com |
購入価格 | 258,000円 |
前述したように、各社暖房・冷房のエアコンの基本機能に加え、イオン放出機能や加湿機能など、様々な機能を搭載している。購入したAN40LRS-Wはイオン機能が付いていないタイプの製品だが、実はすでにイオン放出機能が付いた空気清浄機を持っているため、今回、イオン機能は重要視しなかった。
それよりも私が注目したのは、保湿機能だ。冬は夏に比べて段違いに乾燥が気になる季節ということもあるが、これまでエアコンで暖房するなら加湿器は必須というイメージがあった。それがエアコン1台で済むのだったら、場所も取らず面倒な加湿器の手入れも省ける。
ダイキン以外にも、保湿機能を搭載しているメーカーはあるが、その力の入れ具合はホームページをみれば明らか。具体的な加湿量や、肌への影響をことこまかに説明しているのはダイキンだけだった。
ダイキンは空調メーカーとして家庭用だけでなく業務用の製品も数多く扱っているが、中でも湿度のコントロールには力を入れているという。今回購入したAN40LRS-Wの1時間あたりの加湿量は約600mlで、ちょっとした加湿器なみの加湿量が期待できる。
ダイキンの製品で興味深いのは、加湿による美肌効果に着目している点だ。加湿運転による、肌のキメの違いや、唇の乾燥具合などが実際にホームページで紹介されている。「美肌運転」という項目があるのも乾燥が気になるイチ女子としては気になる点だ。
製品のホームページで紹介されている「E-moist」機能による美肌効果 |
加えてポイントとなったのが、今シーズンから搭載された4方向気流機能だ。湿気を含んだ温風を放出するといってもそれが、室内の一部だけだったら、意味がない。AN40LRS-Wでは、本体前面だけでなく左右にもフラップを設け、壁に沿わせるようにして温風を放出するという。
リビングのエアコンの設置場所は部屋の隅に用意されている。AN40LRS-Wなら、この場所でも大丈夫だ |
実はこの機能、我が家のエアコンの設置場所を考えても魅力的だったのだ。エアコンの発表会やCMでは、エアコンが壁の中央辺りに設置されていることが多い。が、それを実際の住宅で考えてみるとどうだろう。設置場所が最初から決められている賃貸住宅では、置く場所を選べない。我が家の場合も、エアコンの設置場所は窓際で、テレビのすぐ横だ。およそ最適とはいえない設置場所になる。4方向からの気流で、壁を沿うようにするという機能は、現実的な設置場所と照らし合わせてみても、機能的であるように感じた。
■14畳でも100Vに対応する
さて、機種を決めたらあとは購入といきたいところだが、ここから選ぶべきは室内の広さに応じた機種選びだ。一般的に~畳用と表記されている面積はほとんどが冷房を想定したものとなっている。そのため、今回のように暖房の主力としてエアコンを購入する場合、対応面積が少し大きいものを選ぶのがオススメだ。我が家の場合、12畳のリビングに続きで、3畳のキッチンが付いている間取りのため、14畳用のエアコンを選択した。
14畳の機種を購入するにあたり、1つ覚悟していたことがある。それは電源を200Vにしなければならないだろうということだ。一般的な家庭用電源は100V、それにあわせてエアコンも12畳程度まで100Vで動作するようになっている。ところが、これより大きい出力を望む場合、電源を200Vに変更しなければならないのだ。夏に長期レビューとして取り上げた三菱の「霧ヶ峰」の記事でもここは1つのポイントとなっており、夏の場合14畳用で200Vに電源を変更している。ところが、今回のAN40LRS-Wは14畳用であっても100Vに対応した製品なのだ。
実はダイキンでは、今シーズンから14畳用の100V対応製品を出している。設置工事に訪れた業者の人もこれを知らず、途中まで工事を行なっていたほどだ。ちなみに、100Vから200Vに電源を変更するのには、4,000円ほど掛かるため、家計にも助かる機能変更だ。
購入機種を決めたら後は、設置工事だ。今回、我が家の築年数が古いということもあって、工事にかかった時間は2時間半程度。電話説明では1時間程度と聞いていたのだが、思ったよりも長い時間が掛かった。
まずは設置場所に問題があった。エアコン設置場所として用意されていた壁のボルトが実際の製品幅よりもかなり小さめで、新たに穴を開ける必要があった。また、室外機も大きく、エアコン用の穴よりも少し離れた場所に設置しなければならなかっため、接続ホースなどの設置に時間がかかったのだ。
当初室外機を置こうとしていた場所。エアコンの配管口からすぐの場所だ | ベランダに大きく場所を取る避難はしごの入り口が邪魔で、予定したいた場所に置けなかった |
とはいえ、これらの問題はその場ですぐに解決できたので、事前に自分で設置場所や室外機を置く場所の寸法をはかるというようなことは必要ないだろう。
具体的な手順は以下、写真でご紹介する。
設置前に養生用の毛布が敷かれる | 製品の開封などは全て業者がやってくれる。段ボールなども持ち帰ってくれる | まずは、床に製品を置いて中の配線などをチェックする |
壁に用意されたエアコン設置用のボルト。旧式で、新製品のエアコンにはサイズが足りなかった | エアコンを取り付けるアルミ板を設置するため、壁にボルトで穴を開ける。賃貸の場合事前に大家さんに相談しておいた方が良いだろう | 板を取り付けたところ |
その後、エアコン本体の取付を行なう。高い場所に設置するため、室内に脚立が持ち込まれる | 取り付けた様子 | 内部から様々な配線を取り出しておく |
配線をまとめてテープでぐるぐる巻にする。ここまで終わると、今度は外の室外機との接続に移る | 外に配線を出す。ここは2人がかりで行なっていた |
予定した場所に室外機が設置できなかったため、通常より配線が長めとなり、時間もかかった。今回は追加料金はかからなかったが配線の長さによっては追加料金がかかることもあるという | 配管口から離れた場所に設置した室外機 |
室外機と接続したら、フィルターを設置する | その後試運転を行なう | 設置後の本体。予定では1時間くらいといっていたが実際には2時間強の工事時間となった |
今回は、機種選び、実機の設置をレポートしたが、次回は、この製品を購入する決め手となったダイキン独自の加湿機能「E-moist」についてじっくりお伝えしたいと思う。
2009年12月9日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)