長期レビュー

ダイキン「うるるとさらら Rシリーズ AN40LRS-W」 その2

~もはや加湿器は不要、エアコンで唯一の加湿機能に迫る
by 阿部 夏子

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



ダイキン「うるるとさらら Rシリーズ AN40LRS-W」

 前回は今シーズンのエアコンのトレンドから、製品選び、取り付けまでをレポートしたが、今回はこの製品のキモともいえる「加湿機能」についてじっくりみていきたい。

保湿と加湿の違い

 前回、今シーズンのエアコンについて、イオン放出機能と保湿機能をトレンドとして取り上げた。AN40LRS-Wでは、イオン放出機能は搭載していないが、業界唯一の“加湿機能”を搭載した製品となっている。

 ここで一度整理したいのは保湿と加湿の違いについてだ。

 前回はあえて、保湿機能と加湿機能を同等に捉えて、表一覧の中でもダイキン以外にパナソニックや三菱が保湿機能を搭載していると書いた。ただ、加湿機能を搭載している機種となると話は別。加湿機能を搭載しているエアコンはダイキンだけなのだ。

 ここで、改めて保湿と加湿の違いについて見てみよう。

加湿 室内の湿度を高めること
保湿 湿度を一定の基準内に保つこと
     (出典:大辞林)


 となっている。つまり保湿機能というのは湿度を高める機能ではないのだ。

 パナソニックや三菱電機が搭載している保湿機能は、電気を帯びた水の粒子を空気中に放出する方式を採用している。それによる肌や髪の保湿効果を謳っている。なお、ここでは両社の方式の違いについては省略させていただく。

室内ではなく室外の空気を取り込んで、水分子を抽出する。そのため、加湿ユニットは室外機に搭載されている

 ダイキンのAN40LRS-Wでは、屋外の空気に含まれる水分子を抽出して室内に放出する加湿運転を行なっている。同社ではこの加湿方法を「E-moist(イーモイスト)」と呼んでいる。E-moist機能では、室外機で外の空気を加湿ユニットに取り込んで、水分子を抽出し、通常の水蒸気に比べ約1/20,000の0.3nmの水分子を生成し、室内に放出している。

AN40LRS-Wの加湿方法。通常の水蒸気より微細な水分を放出している

 加湿量は1時間当たり600ml(14畳用、100Vクラスの場合)。実はこの加湿量は同社が発売している加湿機能付き空気清浄機「うるおい光クリエール」と同等。加湿方法は異なるものの、加湿器レベルの加湿運転をエアコンで行なえるというのは正直、想像以上だった。

製品のホームページでは、加湿量がわかりやすく表記されている。1時間当たり600mlの加湿量は同社のうるおい光クリエールと同等レベルだ

 この季節、暖房器具と加湿器を併用しているという人は多いと思うが、エアコンに加湿機能が搭載されているというのは、思ったよりも便利だ。

 まず当然ながら加湿器を別に用意する必要がない。単に場所を取らないという利点はもちろん、お子さんがいる家庭では特に便利に感じるだろう。加湿器は給水タンクを搭載しているため、転倒の危険もあり、加湿方法によっては、熱が発生するものもあるため設置場所を選ぶ。それが、エアコンだったら壁に取り付けて使用するため、不安がない。

 またE-moistでは給水する必要がない。通常加湿器は少なくとも1日に1回は給水する必要がある。今回エアコンを設置した12畳程度用の加湿器の場合、タンクのサイズも大きく意外と手間がかかるのだ。AN40LRS-Wでは、普通の暖房運転と全く同じように加湿運転に切替えて使うことができるため、なんの準備もない。

 加湿器の手入れの手間が省けるというのも大きな魅力だ。メンテナンスについては次週詳しく述べるが、AN40LRS-Wでは基本的にお手入れ不要となっている。

体感温度が違う!

 と、ここまでAN40LRS-Wの加湿機能について述べてきたが、実際に使ってみるとその差は歴然だった。

 まず使いやすさについて。エアコンの暖房運転を入れるのと全く同じように加湿運転ができる。それはリモコンのボタン配置を見れば明らかだ。一般的なエアコンのリモコンはまず電源ボタン、その下に「温度」や「タイマー」などのボタンが配置されていることが多いが、AN40LRS-Wのリモコンの場合、温度と湿度が同等のボタンとして配置されている。

付属のリモコン。温度設定ボタンの横には同じ大きさで湿度設定ボタンが用意されている運転モードやタイマーなどの細かい設定は内側に用意されたボタンで行なう

 温度は18~32℃まで設定可能で、湿度は切、40%、45%、50%、連続加湿運転の5段階から選ぶことができる。ちなみに、AN40LRS-Wでは冷房時に使用する除湿運転も搭載している。除湿運転に関しても、この湿度ボタンで設定できる。

 実際の数値は以下の表で御確認いただきたい。温度設定はいずれも30℃、加湿設定は50%で運転している。

温度を30℃に設定した暖房運転温度30℃、湿度30℃に設定した暖房加湿運転観測場所はエアコンと対角線上に置かれたテーブルの上。エアコンまでの距離は4mほど。部屋の広さは12畳で、観測中もドアの開閉や人の出入りがある状態だ

運転モード暖房運転暖房+加湿
スタート時18℃・56%19℃・48%
15分後21℃・48%20.3℃・48%
30分後22.1℃・46%22.3℃・48%
1時間後22.7℃・47%23.7℃・52%


観測前の室内の温度は18℃湿度は56%あった
加湿運転なしで30℃の暖房運転を1時間行なったところ室温は22.7℃まであがったただし、湿度は47%まで下がった
温度30℃、湿度50%に設定した場合、1時間後の温度は23.7℃湿度は52%。温度、湿度ともに高くなっていた

 今年の関東圏はそれほど寒さが厳しくないため、温度も湿度もやや高めなのが残念なところだが、そこはご容赦いただきたい。エアコンを一度も稼働していない状態で計測するため、計測日は違う日とした。そのため、スタート時の数値も異なっている。

 ただ、実際使ってみると、数値以上にその差は歴然だった。

 まず、びっくりしたのが、暖房運転のみの時の湿度の下がり方だ。56%あった湿度が15分後には48%になっている。その後の湿度の傾斜はゆるやかではあったが、改めて、暖房器具を使うと室内が乾燥するんだなということを認識した。実際、1時間後には、肌表面がピリピリして、喉がイガイガしてきた。確かに室内は暖かいが、快適とは言えない。

 加湿運転の場合、湿度は下がるどころか徐々に上がってきた。加湿運転にして1時間ほど経っても、室内の乾燥を感じることもなく、数値は最初より3%上がっていた。また、湿度だけでなく、温度が上がっている点にも注目していただきたい。数値上でもしっかり表われているが、体感温度でも湿度運転したときの方が明らかに暖かい。

 室内の空気環境だけでなく暖かさも向上するのだから、湿度運転を使わない手はないだろう。

 もはや加湿器は不要。

 それほど満足している。暖かくて、肌や喉の感想も感じない。必要性を感じないから、我が家の加湿器はまだ押し入れにしまい込まれたままだ。エアコン一台で充分、室内が心地良いのだ。

 最近はインフルエンザの流行などにより加湿器そのものはもちろん、加湿機能付きの空気清浄機などが人気を集めているが、エアコンを買うときに加湿器機能をチェックするという感覚はこれまでなかった。私自身、当初はここまでしっかりした加湿機能が搭載されているとは思っていなかった。

 加湿機能が搭載された空気清浄機など、最近は複合タイプの家電製品がもてはやされているが、エアコンにもその波は確実に来るのではないかと思う。

 というわけで、今回は加湿機能を中心にご紹介してきたが、次週は気流制御を中心に、AN40LRS-Wに搭載されている多彩な運転コース、メンテナンス方法などをレポートする予定だ。



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2009年12月16日 00:00