【特別企画】

エアコン夏商戦のポイントを聞く[ダイキン編]

~加湿/除湿の制御技術では、他社には決して負けない
by 大河原 克行


 7月も半ばを過ぎ、エアコンの本格的なシーズンがスタートした。そこで、この夏商戦を迎えるに当たり、今シーズンのトレンドと2009年度のポイントについて、エアコンメーカーに聞いた。


“うるるとさらら”で湿度をコントロール。1年を通じて心地よい空質環境に


ダイキン工業のエアコンの最上位モデル「うるるとさらら Rシリーズ」
 エアコン専業のダイキン工業が、家庭用ルームエアコン市場において、2009年夏商戦のキーワードに打ち出すのが、「エコ」である。

 「環境に対する関心が高まるなか、エアコンの省エネ化に対する意識も高まっている。カラーバリエーションや販売店向け専用モデル、天井埋め込み型などを含めて、当社ラインアップの3分の2にあたる200機種以上がエコポイント対象モデルであることからもわかるように、ダイキンがエコにおいて積極的に取り組んでおり、他社にはない、エコとしてのお得感があることを訴求したい」と、ダイキン工業空調営業本部営業企画部販促・ソリューション提案担当・酒井茂孝課長は語る。

ダイキン工業空調営業本部営業企画部販促 ソリューション提案担当 酒井茂孝課長
 このエコの訴求において見逃せないのが、空気の「湿度」コントロールという、ダイキンならではの強みである。

 「うるるとさらら」という、最上位シリーズにおけるブランド展開からも明らかなように、給水不要で加湿ができる「うるる加湿」と、冷房時に寒くならない再熱除湿などが可能な「さらら除湿」の機能を実現することで、1年を通じて、心地よい空質環境を実現するのが、ダイキンのエアコンの特徴となる。

 酒井氏は「当社は、過去10年に渡って、湿度コントロールにおいては数多くの実績とノウハウを蓄積してきた。暖房においては、加湿の良さが浸透してきたが、冷房商戦においても、徐々に湿度コントロールのメリットに対する理解が浸透しはじめている」と語る。

ダイキンのエアコンは、給水タンクなしで加湿/除湿ができる「うるる加湿」「さらら除湿」機能が特徴。写真はうるる加湿の解説パネル
 暖房商戦では、うるる加湿によって肌の乾燥を防ぐことができるメリットを訴求。ダイキン独自の「E-moist」によって、外の空気から水分だけを抽出し、これを蒸気の6万分の1となる0.1nmの大きさの水分子として部屋全体に広げることで、肌のみすみずしさを維持できることを訴えた。同社の調査でも、人の肌水分量は、加湿ありの場合には、加湿なしに比べて、約2倍にもなっていることがわかっている。

 室内の温度はそのままに湿度だけを下げる「さらら除湿」など、3つの除湿技術


 一方で、冷房商戦では、3つの除湿によって、それぞれの状況に応じて、湿度コントロールによる快適空間が実現できることを訴求する考えだ。

 梅雨や夏の夜間など湿度が高いときには、室温はそのままで湿度だけを下げる「さらら除湿(再熱除湿)」、真夏の暑い時には温度も湿度も下げることができる「冷房除湿」、また、部屋内の湿度が気になるときには乾いた外気を取り入れて湿度を下げる「給気除湿」をそれぞれ活用できるといった提案である。

 特に「さらら除湿」は、同社の除湿コントロールのなかでも最大の特徴といえるものだ。

 「単に、冷やすだけの除湿では肌寒く感じてしまう。とくに女性にとっては冷えすぎと感じてしまう場合が多い。さらら除湿では、湿気を下げた冷たい空気に、暖めた空気を混ぜ合わせ、これを室内を送り出すことで、心地よい温度の、心地よい空気を室内に送り出すことができる」

 これを、冷房時には大きなメインフラップが気流を上向きに制御。直接風が当たりにくいようにするとともに、最大12mというロング気流や、最大160度のワイド気流の実現、上下左右のオートスイングによる立体気流によって、部屋全体に広げることができるようにしている。

暖房時には足元に、冷房時には部屋の上部に送風する「トリプルファインフラップ」を搭載トリプルファインフラップにより、人に風が直接当たらない、やさしい気流が送り出せるという

 「最適な湿度と気流をコントロールできれば、高めの温度でも肌は涼しく感じる。また、同じ温度でも、湿度をあげると肌は暖かく感じる。ダイキンのエアコンならば、夏は28度設定でも涼しく、冬は20度の設定でも暖かく快適に過ごすことができる」

 ダイキンは、部屋全体の空調を、湿度、温度、気流で制御する、というのが基本的な考え方。人を対象に風を送ることに利用されるセンサー機能を搭載していないのも、部屋という空間全体の空調を考えた冷房・暖房を行なっているためだ。

 なお、湿度コントロールを活用した急速除湿機能などによって、「部屋干しランドリー乾燥運転」や、カビ対策を行なえる「カビショック運転」といった使い方もできるようになっている点も見逃せない。

湿度と気流をコントロールし、体感温度で涼しく感じる「快適エコ冷房」を搭載


 夏場において、室内温度が高めでも、湿度が低いために体感温度では涼しく感じることができる……という運転方法は、そのまま省エネ運転に結びつくことになる。

 「除湿を活用することで、もっと快適で、もっと省エネ性が高い運転が可能になる」と酒井氏が言うように、ダイキンでは、湿度コントロールの強みを、2009年夏商戦の最大のポイントとなる「省エネ」に結びつけているわけだ。

 さらにダイキンでは、湿度、温度、気流のコントロールにより、快適なエコ冷房、エコ暖房が可能な「快適エコ」機能を搭載。リモコンの「快適エコ」ボタンを押すだけで、省エネしながら、快適な空間を実現できるようになっている。

 快適エコ冷房は、温度は高めに、湿度を下げ、これに涼風ゆらぎ気流に組み合わせて、部屋全体を涼しくするというものだ。

 快適エコ運転を利用することで、年間で約25%の省エネを実現。さらに、「もっとエコ」運転では、省エネをより優先した運転とし、冷房時には温度を28度に設定した状態で、快適空間を実現できるようにした。

快適エコ運転では、夏場は温度は高めだが、湿度と気流を組み合わせることで室内を涼しくする。暖房時も利用でき、年間で約25%の省エネになるという快適エコ運転では、部屋の湿度を見るセンサーと、外気の湿度を見張るセンサーの2つにより、加湿/除湿量を調整している


電気代や温度などを表示。“エコの見える化”を実現する「おしエコパネル」


ダイキンのエアコン「うるるとさらら」の最新モデル「Rシリーズ」。暖房時の体感温度を上げて、エアコンの消費電力を抑える「快適エコ」運転を省エネ化した
 もう1つ、エコという観点から同社が取り組んでいるのが、省エネの“見える化”である。

 本体パネル前面に、運転状況や、室内・屋外の温度、電気代などの情報を表示する「おしエコパネル」を搭載。「快適エコ」モードなどの省エネ性を実現している状態になると、パネルに「Eco」の文字が表示され、設定温度を上げる/下げるといったさらなる省エネ化をすると、「Eco」の文字が「ECO」と大文字で表示される。

 また、使用時間と電気料金、使用日数と電気料金の累計表示によって、家族全員が省エネを意識することができるようになる、といった使い方のほか、室温、屋外温度の表示も、室内と屋外温度の差がなくなった場合には、エアコンの運転停止を促すといった、エコにつながる使い方に結びつけている。

 さらに、帰宅直後に一気に部屋を冷やした場合にも、一定時間後に「快適エコ」運転へと戻る「エコ自動復帰」機能を採用。これもエコに直結する機能となっている。

「おしエコパネル」の表示例。省エネ運転時には、「ECO」という文字が表示される。また、室内/室外の気温も表示できる「おしエコパネル」の表示一覧。外の気温が室内よりも涼しくなると、メッセージが表示される機能も備わっている

 実は、おしエコパネルの表示文字をオレンジとしたのは、社内50人を対象に行なったアンケート結果によるものだ。この調査では、30代の女性を対象とした点が特徴といえる。おしエコパネルを搭載している最上位モデルのRシリーズの購買動向を見ると、30代以上の夫婦が多く、さらに女性の決定権が強く作用していることがわかっていたため、あえてアンケートの対象を絞り込んだのだ。アンケートでは、いくつかの表示カラーを比較してもらい、その結果、最も人気が高かったのがオレンジだったという。

 「エコといえばグリーンという印象があるため、オレンジの表示については、いろいろと意見もあったが、落ち着いたイメージを演出でき、リビングでも違和感がないと、店頭での評価は高いものとなっている」という。

 一方で、加湿および除湿機能を活用した脱臭機能や、2つのフィルターによって、細菌・ウイルスまで除去する「ダブルブロック空気清浄」、10年間のフィルター掃除不要とする「おとなしフィルター掃除ユニット」なども、同社の特徴といえる。

 とくに、「セルフウォッシュ熱交換器」は、熱交換フィンを親水性の高い塗料でコーティングすることで、冷房や除湿で発生した水が、フィンにこびりついた汚れを浮かして、洗い流すため、常に清潔にしておけるというメリットがある。

Rシリーズに搭載される熱交換器(写真上)。親水性の高い塗料でコーティングされているため、冷房や除湿時に発生した水がフィンの汚れを取り除く仕組みになっている室内機・室外機ともに、高性能の技術を搭載している

“加湿、除湿の制御技術では、他社には決して負けない”

家電量販店の店頭には、同社のキャラクター「ぴちょんくん」を配し、湿度コントロール機能を訴求していくという
 量販店店頭では、エコや湿度コントロールの訴求が中心となるが、こうした清潔な環境を維持できること、そしてコンプレッサーを自社生産している強みなども見逃してはならないだろう。

 「5月9日から8月16日までの3カ月間に渡り、量販店店頭において、全国規模での販売キャンペーンを展開している。店頭に、当社エアコンのキャラクターである『ぴちょんくん』を配し、実際に除湿コンロトールによる快適さや、それがエコにつながることを訴求していく。湿度コントロールという考え方が、徐々に市場に浸透してきたとは考えているが、まだ認知を高めていく必要がある。加湿、除湿の制御技術では、他社には決して負けない。その点を訴求したい」とする。

「加湿、除湿の制御技術では、他社には決して負けない」という酒井氏
 もろちん、普及価格帯の製品についても、力を注ぐ考えだ。

 中国の珠海格力電器との提携によってラインアップした小型モデルを中心に、これまで遅れていた普及価格帯でのシェア拡大も、同社にとっては、今後の大きな課題だからだ。

 普及価格帯における製品戦略は、上位モデルやエコポイント対象機種の戦略とは一線を画すものとなる。

 だが、湿度コントロールがエコに直結するという訴求が、2009年夏商戦のダイキンの基本メッセージとなるのは間違いない。



2009年7月23日 00:00