長期レビュー
パナソニック「スチームオーブンレンジ 3つ星ビストロ NE-R3200」 その3
パナソニックのスチームオーブンレンジ「3つ星ビストロ NE-R3200」 |
前回はレンジ機能を中心に見たが、3回目となる今回は、焼き物や揚げない揚げ物を中心にレポートさせていただく。定番化しつつあるメニューもあるのだが、ビストロ調理に最適化されたレシピに驚くことになるのである!
■「鶏のから揚げ」を作る
ヘルシオで真っ先に作りたかった揚げない「鶏のから揚げ」。もちろんビストロのメニューにも用意されていた!
作り方はほとんど通常の唐揚げの作り方と変わらない手順だ。鶏もも肉500g(4人分)を一口大にカットし、塩、胡椒、醤油、酒、ニンニク、卵1/2個で下味を付けたら片栗粉をまぶしてグリル皿に並べる。
鶏のから揚げの材料 | 下味をつけて20分おいたら、片栗粉をまぶす | 鶏肉をグリル皿に並べる |
あとは自動メニューで「鶏のから揚げ」を選択して、スタートボタンを押すだけだ。所要時間は約16分である。普通は揚げるのにつきっきりだし、1回分で5~7分はかかるので、4人分が16分で一気に完成するならかなり手間いらずでスピーディだ。
ダイヤルをまわして「揚げ物」の「鶏のから揚げ」を選択。グリル皿の位置なども案内される | 仕上がりは強弱それぞれ2段階で変更できる | 加熱中は常にカウントダウンされるので、残り時間をみながら他の作業がしやすい |
16分後、その仕上がりにビックリ! 調理中はスチームも使われていたが、卵が入っているせいか皮がカリカリ。フォークを刺すと「パリッ」と音がする。しかし中はジューシーでおいしいのである。その歯ごたえと味が気に入ってしまい、思わず1人で500g分すべて食べてしまいそうになったほどだ。
できあがったから揚げ。湿っぽさがない | 皮の部分がこんがりと焼けているのがわかる | 中は非常にジューシーだ |
グリル皿には鶏肉から流れ出た脂が溜まっている |
ヘルシオのから揚げは、下味と市販のから揚げ粉の合わせ技でちょうど良い味加減だったが、ビストロは通常の味付けでも問題なさそうだ。しかも皮の仕上がりが違う。一概に比較できない部分もあるが、皮の歯ごたえに限って言えばビストロに軍配があがるだろう。
調理後のグリル皿には鶏肉から流れ出た脂が溜まっていた。ヘルシー効果を大々的にアピールしているわけではないが、揚げ油を一切使っていないので、通常の唐揚げに比べたらカロリーダウンは期待できるのではないだろうか。しかも包丁やまな板などを除けば、洗い物はグリル皿だけ。油の処理も不要で、片付けも楽である。
焦げ目の付き方にムラはあるものの、味、仕上がりともに満足できた |
■ビストロ流の「とんかつ」を試す
ビストロの揚げない「とんかつ」は、ヘルシオとは少々作り方が違っていた。ヘルシオの場合、あらかじめ加熱してきつね色に焦がした「こんがりパン粉」を用意し、仕上がりの見た目にリアリティをプラスしていた。ビストロの場合はパン粉にサラダオイルを混ぜて白いまま使用し、一度パン粉をつけてからさらに卵とパン粉と重ねづけするのが特徴なのだ。「パン粉をそんなにつけるの!?」とビックリ。
今回は冷凍庫にこんがりパン粉を保存していたため、ビストロ用の白いパン粉と、ヘルシオ用のこんがりパン粉の両方でとんかつを作ってみることにした。とんかつ用のロース肉を2枚用意し、1枚はビストロのレシピ通りに、もう1枚はヘルシオで作ったこんがりパン粉をつけてグリル皿に並べ、自動メニューの「とんかつ」で焼いてみたのだ。
とんかつの材料 | ビストロで使うパン粉。サラダオイルを入れてよく混ぜておくだけ | 冷凍庫に保存していたヘルシオ用のこんがりパン粉 |
それぞれのパン粉をまぶして、グリル皿へ | ビストロ流は二度づけなので、厚みも増し、一回り大きく見える | 調理前の衣比較 |
グリル皿は上段にセット | 自動メニューの「とんかつ」を選択。2枚なので、仕上がりは「弱」にセット |
当初、ヘルシオのこんがりパン粉のほうがとんかつらしく、バリッとした仕上がりになるのでは……と予測していた。
しかし結果は違った。実際に焼いてみると、確かにこんがりパン粉の一度づけのほうが見た目はそれっぽいが、全体的にしんなりしており、ビストロの二度づけパン粉のほうがザクザクと歯ごたえのある仕上がりになったのだ。さすがに油で揚げたような食感とは違うが、とんかつとしての仕上がりは上々である。衣が厚い分食べ応えもかなり増している。辛子ととんかつソースでおいしくいただくことができた。
ビストロ流とんかつはボリューム感にあふれ、衣にも固さがある |
できあがったとんかつ(表) | それぞれを裏返した様子 | ビストロ流のとんかつは焦げ目がややまだら気味に |
調理後のグリル皿の様子。ほとんど脂はでていない | とんかつをカットして比較。やはりビストロ流は衣がパワフル |
盛りつけてみた | 食べてみると、ザクザクした食感がおいしい! |
実はこの後、こんがりパン粉の二度づけにもチャレンジしたが、ビストロ流のザクザク感には及ばなかった。冷凍庫で保存していたパン粉だったからなのだろうか?(衣の研究に時間を費やすわけにはいかなかったため、謎のままになってしまった)
いずれにせよ、ヘルシオの場合「こんがりパン粉+ヘルシオ」でちょうど良い仕上がりだったことを考えると、ビストロは「二度づけ+ビストロ」がベストなのだ。メーカーはレシピの中で最適な方法を提案してくれているのだと分かって、密かな感動に心がうち震えた筆者である。
ただ、ビストロのフライ関連は見た目でやや損をしているような気もした。衣が白っぽいと、中途半端な味の印象を持つからだ。調べてみたところ、今ではオーブン調理用のパン粉も市販されているようなので、機会があったら試してみたい。
■ひっくり返さなくても裏までこんがりの「ハンバーグ」作り
ビストロのレシピ紹介のサイトを見ていて、一番気になっていたのが「ハンバーグ」だ。
材料は通常のハンバーグ作りと変わらず。合い挽き肉に炒めた玉ねぎ、卵、牛乳、パン粉などを加えてよく捏ね、手のひらサイズの大きなハンバーグを4枚グリル皿に並べた。自動メニューの「ハンバーグ」を選択して調理開始。所要時間は16分だ。
ハンバーグの材料はごくベーシック | グリル皿の上に4枚並べる。一度に4個焼けるのもオーブンの魅力だ | 1枚が手のひらサイズの大きさ |
グリル皿は上段にセット | 自動メニューの「ハンバーグ」を選択 | 16分後に完成したハンバーグ |
ドアを開けると非常に魅力的な音がして、いい色に焼けたハンバーグが登場! 写真を撮るのに夢中で中央を凹ますのを忘れたため、ややいびつな形になってしまったが、裏までしっかりワイルドな焦げ目がついていた。4つとも切ってみると、ふっくらしていて全体に満遍なく火が通っている。過去に何度か中央が生焼けのハンバーグを作った経験の持ち主としては、こんなに心強いことはない。
なかなかいい色に焼けている | 裏返すと、ワイルドな焦げ目が登場 | ナイフをいれると全体に火が通っていた |
いずれのハンバーグもバランスよくきれいに焼けていた | 使用後のグリル皿。流れ出た肉汁が溜まっている |
ただ残念ながらフライパンで焼いたような肉汁は出てこない。多くは外に流れ出てしまったようだ。肉汁を残すように調理するのは難しいのだろうか? ここまでキレイに焼けると、こちらの要求条件も否応なしに上がってしまうのである(苦笑)普通のハンバーグはまず両面に焦げ目をつけて肉汁を閉じ込めると思うが、観察したところ、ビストロは残り6分程度から焦げ目をつけ始めていた。「ここまで来たら肉汁を!」とぜひお願いしたい。
光りで焼く様子から、裏面の焼け具合、火の通り具合まで |
■高火力オーブンで「焼き野菜」を作る
食事で野菜不足を自覚すると、焼き野菜や蒸し野菜などシンプルな料理でカバーするのが好きな筆者。ビストロではカボチャ、にんじん、たまねぎ、ピーマン、おやつ芋、アスパラガスで焼き野菜に挑戦した。
レシピに従い、オリーブオイルと水、塩胡椒を揉み込んでしばらく置いたのち、グリル皿に並べ、自動の「高火力オーブン」の「焼き野菜」で30分加熱。アスパラガスは焼き野菜に向かないとあったのだが、どうなるか確認したくてあえて追加してみた。
レシピに従い、オリーブオイル、水、塩胡椒を揉み込む。オーブン料理をするようになってから、ビニール袋が欠かせなくなっていると気づいた! | 野菜をグリル皿に並べる | 自動メニューの「焼き野菜」を選択 |
30分後、おやつ芋は外がカリっとしているのに、中がしっとりホクホクしてなかなかの出来に! 根菜類は1cmほどの厚みを持たせたほうがホクホク感が際立っていいようだ。ピーマンはかなりしんなりしていた。皮が薄めのピーマンと根菜類を同時に焼くのだから仕方ないだろう。アスパラガスも大分しんなりしていたが、個人的には嫌いではない。
完成した焼き野菜。カボチャの焦げ目がいい感じである | お皿に盛りつけて、好きなドレッシングやソースを付けていただく | 玉ねぎはしっとり |
アスパラガスも食べやすい柔らかさに | おやつ芋は外がカリカリ、中がホクホク | カボチャは全体的にホクホクになった |
さりげなく両面がこんがりしているのがすばらしい |
ちなみにビストロの自動メニューは「焼き野菜」はあるのに「蒸し野菜」がない。その代わりではないだろうが、「ゆで野菜」がある。実際には茹でられるわけはないので、結果的にそれが蒸し野菜に近いものになるのだと思うが、解凍と同じグループなので、どちらかというと下ごしらえに近い位置づけらしい。自動調理に慣れてくるとネーミングに翻弄されることがあるなと感じた。
■メニューにはない「フライドポテト」に挑戦
「焼き野菜」で調理したおやつ芋の仕上がりを見て思い出したのが「フライドポテト」である。しかし残念なことに、ビストロには専用メニューが用意されていない。そこで同じ「焼き野菜」で試すことにした。
中サイズのジャガイモ2個を1cm厚にカットし、ビニール袋の中で大さじ1杯程度のサラダオイルをまぶしてグリル皿へ。作り方はヘルシオの時の経験を参考にしている。
最初「焼きいも」ではどうかと思ってセットしたところ、所要時間が51分と表示され、驚いて中止。慌てて「焼き野菜」を選択し、焦げ目が欲しいということで仕上がりは「強」で加熱してみた。所要時間は31分強であった。
カットしたジャガイモを少量のサラダオイルでまぶす | ジャガイモをグリル皿に並べる | 自動メニューの「焼き野菜」を選択。仕上がりは強めにしてみた |
できあがったのは、まさに全体がこんがりときつね色になったポテトである。中はホクホクだったが、表面はカリカリというより、むしろ固いくらいになってしまった。仕上がりはもう少し弱くてもよかったようだ。しかし全体がいい色に焼けたのには感動した。
完成したポテト | こんがりといい色だが、焼きすぎて表面が固くなってしまった | 中はホクホクである |
■なんとなく洋風な仕上がりの「焼き鮭」
こんがりといえば、こんがり焼けた魚の皮もおいしいものだ。というわけで、定番化しつつある鮭を焼いてみることに。購入した鮭が甘塩だったため、減塩ではなく普通の「切身・塩焼き」で調理してみた。
すると皮はパリパリ、中はしっとりと柔らかい仕上がり。塩加減も上々だ。途中で火加減などを気にする必要がないので、相変わらず入れたらお任せできるというのはありがたい。焼き上がった鮭の表面のツヤからか、それとも鮭のもともとの質だったのか、食感がなんとなく洋風な印象を受けたのは不思議である。
ビストロには単独で「焼き魚」というメニューがある。内容は「切身・塩焼き」「切身・漬け焼き」「さんまの塩焼き」「切身・減塩」「干物」「干物・減塩」と6種類も用意されているのには驚かされた。まさに日本人のライフスタイルにフォーカスしたスチームオーブンレンジなのだ。焼き魚が大好きな方にはありがたい仕様ではないだろうか。
調理前の鮭の切り身 | ビストロの「焼き魚」はメニューが豊富だ。今回は「切身・塩焼き」で調理 | 焼き上がった鮭 |
鮭の質なのか、これまでとは違ったツヤがあるような? | 中はホクホクで身は柔らかく、ほぐれやすい | 使用後のグリル皿 |
調理の序盤はたっぷりとしたスチームで庫内が満たされており、後半に焼き色が付けられているようだ |
■「トースト」もできる
専用の自動メニューはないものの、クッキングレシピを見ていたらしっかり紹介されていたのが「トースト」。この手の大きなスチームオーブンレンジは、全体的にトーストが苦手だ。ヘルシオでは予熱なしでもトーストはできたが、時間がかかるうえ、やや凝縮感のある仕上がりであった。果たしてビストロはどうだろうか?
そこでいつものようにパナソニックのホームベーカリー「SD-BM102」で焼いたパンを1枚使ってトーストしてみた。比較用には同社のトースター「NB-G102」を用いた(ナショナル時代の製品)。
ビストロも予熱は不要だったが、途中で裏返すという作業がプラスされることとなった。レシピの通り、手動の「グリル・片面」で3分30秒加熱。その後裏返し、1分30秒加熱した。比較用のトースターの所用時間が約2分30秒であるのに対し、ビストロは合計計5分程度。トースターの倍かかっているとはいえ、ヘルシオの半分以下という結果だ。
いつもの通り、自家製パンで焼き比べ。左がビストロ用、右がトースター用 | ここでもグリル皿を用いる | 手動で、グリルの片面を選択 |
できあがったパンは凝縮感もほとんどなく、まずまずの仕上がり。ただ、裏面の焦げ目はちょっと足りなかったように思う。裏返したら2分~2分30秒程度焼いてもよさそうだ。
まず3分30秒焼いたら、裏返して1分30秒グリルする | 焼き上がったトースト。左がビストロ、右がトースターで焼いたもの | 食感的には大きな差は感じられない。上がトースター、下がビストロ |
トースト機能を重視される方にお勧めできるかといえばかなり微妙だが、トースターが壊れたときの代替機としては十分役割を果たせそうである。同時に4枚焼きたいときは活躍するだろう。そのうちこのサイズのオーブンでも、手軽にトーストが作れるようになる日が来るのではないか、という気にもさせられた。
指でつついたときの音も大差ないと感じた |
■「焼きおにぎり」がこんがり焼けた
ビストロで作った焼きおにぎり。香ばしくてついつい食べ過ぎてしまいそう |
ビストロは同時調理が可能なのだが(第4回で紹介予定)、そのレシピの中でハートを掴んで離さなかったのが「焼きおにぎり」であった。たかが焼きおにぎり、されど焼きおにぎり。過去に魚焼きグリルで挑戦したことはあったのだが、なんだか焼き加減は分からないし、おかげで片時もそばを離れられずに苦労した。もっと簡単・確実にできたら、余ったご飯を焼きおにぎりにして冷凍保存し、小腹が空いたときにちょっとつまむというのが夢だったのである。
レシピ中には、焼きおにぎりと豚汁を同時に作るコースが紹介されているが、まずは焼きおにぎりだけ作ってみることにした。ご飯2合分で7個のおにぎりを作成。4つには醤油3、みりん1の割合で混ぜたタレをはけで塗りつけ、3つだけみりんを混ぜた味噌をつけてみた。
グリル皿に並べ、手動で「両面グリル上段」を選択。レシピでは14~17分とあったが、とりあえず時間を15分にセットした。15分後に見たところ、醤油版の焦げ目が少し足りない気がしたので、1分30秒追加。するとちょうど良い感じに焼き上がった。最初から17分でもよかったかもしれない。
裏面までよく焼けるビストロ性能は焼きおにぎりにおいても発揮され、表面はカリカリなのに、中がしっとりした焼きおにぎりが完成し大満足! これなら一度にたくさん作れる上に失敗がないので非常に助かる。過去にうまくできなかったという方でもバッチリではないだろうか。たくさん作っておけば、温め直した後にお茶漬けにしてうち飲みのシメに……なんてことも可能だ。
奥1列と手前左が醤油、手前右から3つ目までが味噌 | 手動の両面グリルで15分+1分30秒加熱 | できあがった焼きおにぎり |
裏面の様子。味噌のほうが焦げやすいようだ | 加熱前の醤油(左)と味噌(右) | 加熱後の醤油(左)と味噌(右) |
最終回となる次回は、蒸し物や合わせ技調理などについてお届けする予定だ。
2010年2月26日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)