長期レビュー
ネスプレッソ「ラティシマ」
前回までにネスプレッソという商品の性格やシステム、そして淹れ方やフォームドミルクを用いたコーヒードリンクの作り方、ミルクの扱いなどについて紹介してきた。これだけの情報があれば、ネスプレッソ、そしてその中の最上位モデルとなるラティシマの主な機能や魅力は伝わったと思う。第1回はこちら、第2回はこちら。
今回はさらに細かな使い勝手に触れるとともに、ラティシマを用いたコーヒードリンクの作り方、応用編へと進むことにしたい。
■給水タンクの使い勝手と定期メンテナンスについて
エスプレッソを淹れ、フォームドミルクを注ぐというラティシマの基本機能を中心に紹介してきたこともあり、これまで給水や細かいメンテナンスについては触れてこなかった。まずは、そうした細かな点についての使い勝手を、まとめて報告しておきたい。
まず給水から。
筆者が所有しているC290は、背面に大きなタンクを背負うデザインとなっており、これを外して水を入れればいいことが一目瞭然。浄水器の蛇口から直接タンクに水を注水できる。
これに対してラティシマは、パッと見には水を入れる給水タンクの場所がわからない。実は本体下、カップを置くトレイの奥の部分が給水タンクになっている。この給水タンクは簡単に取り外すことができるが、C290のタンクとは異なり、平べったい背の低い形状で水を入れるとバランスが悪く感じるため、蛇口から直接注ぐとラティシマ本体にセットする際、水が溢れないようかなり気を遣う。
基本的には注水口が露出するまで給水タンクを本体から引き出し、ケトルやペットボトルなどから注水するというのが、一般的な使い方になるだろう。
給水タンクは表からは様子が全く見えないが、給水の目安を示すメーターが取り付けられているので、それを参考に給水を行なえばいい。このメーターは水が半分以下ぐらいまで減らないと動き始めないので、メーターの赤い部分がハッキリと見えてきたら給水を行なうようにしておこう。
給水タンクは台座部分の奥にある。平べったいので蛇口まで持って行って水を入れようと思うと使いにくい。ケトルなどで注ぐのがいい | 給水タンクの残水量は台座右奥のメーターで確認できる |
一方、使用済みコーヒーカプセルを受けるカップは、いっぱいになったら取り出して捨てるだけ。筆者のC290の場合、抽出時に流れ出した余分な水分やスチーム機能を使った際などに出る水を溜めておく受けの部分とカプセル受けが一体になっていたが、ラティシマの場合は別々。カプセルとは別に取り出せるカップ台の部分を引っ張れば、余分な水を捨てられる。
コーヒーカプセルの回収ボックスには、ほとんど水が溜まらない構造になった |
もっとも、ラティシマをはじめとするコンパクトシリーズ以降のネスプレッソコーヒーメーカーは、そもそも余分に流れ出す水が少ないようで、この部分のメンテナンスはあまり気を遣わなくていい。
これは水垢(コーヒー垢)を取り除くディスケーリング作業に関しても言える。C290世代の製品は水垢だけでなく、抽出したコーヒーが注がれるまでの経路にコーヒー液が溜まりやすく、あっと言う間にコーヒーエキスの粉が固着していくのがわかる。
マニュアル通り、半年に1度、あるいは500杯に1度ぐらいの頻度でディスケーリング(専用アルカリ洗剤を使った洗浄キットが販売されている。作業そのものはとても簡単で、洗浄液をセットしてボタンを順に押していくだけだ)をしておけば故障することはないのだが、筆者の場合は目で見て判る範囲や固着していそうな場所に綿棒を差し込んで、固着したコーヒー粉を落とすようにしている。
しかしコンパクトシリーズ以降の製品では、抽出時のコーヒーカプセルの向きが変わり、あまりコーヒーが滞留しなくなっているようだ。同様の頻度でメンテナンスは行なった方がいいが、以前のモデルほどシビアではないと思う。
ちなみに筆者は、ネスプレッソを導入した当初、ディスケーリング作業の必要性を認識しておらず、購入して10カ月ほどでポンプが唸るばかりで抽出量が極端に減り、そのうち抽出そのものができなくなってしまった(安全装置のようなものが働いて電源がオフになる)。
その際、修理に出したのだが、サポートからは代替機が送られてきたので、修理期間中もネスプレッソを継続して楽しめた(修理機回収時に代替機と交換する)。故障しないことに越したことはないが、もし不具合が出たとしても、ユーザー側にはあまり不利益はないようになっている。
■ラティシマで自由にコーヒードリンクを作る方法
……と、大げさな見出しを付けたものの、やり方はひじょうに簡単だ。
ラティシマはミルクを用いたコーヒードリンクを作る際、自動で淹れるとワンパターンのドリンクしかできない。ちょっと気の利いたカフェで出されるような、おしゃれな(?)ドリンクは“自動的には”作れない。しかし手動で各機能を動かせば、一般的なエスプレッソマシンと同様に多様なドリンクを作ることができる。
フォームドミルク作成量の多いラテマキアートボタンを押してミルクを温め、エスプレッソ抽出前にもう一度ボタンを押せば、スチームドミルクだけを簡単に作れる |
これまでのコラムでも述べてきたように、ラティシマは4種類のボタンを押すことで、メモリされた量のコーヒー、あるいはフォームドミルクがカップに注がれる。が、もう一度同じボタンを押すと、そのプロセスをキャンセルすることもできる。
たとえば本来の抽出量よりも、少なめの量しかコーヒーが抽出されない事がたまにある(特にルンゴの場合に多い)のだが、そんな時にはもう一度コーヒー抽出ボタンを押して、適当なところでもう一度押せば同じカプセルで少しだけ注ぎ足すことができる。
またラテマキアートボタンを押すと、まずコーヒーを抽出する前にフォームドミルクの作成が始まる。スチームドミルクとミルクフォームを合わせると300ccほどのフォームドミルクができるので、250~300ccぐらいの小さめのミルクジャグで受けておき、もう一度ボタンを押してキャンセルすればジャグにフォームドミルクを溜めることができる。
と、このようにボタンを使いこなしていけば、各種のドリンク作成も楽々できる。
まずは基本的なところからはじめよう。
■アメリカーノ
エスプレッソにお湯を注いだコーヒーのこと。ルンゴ用ではないカプセルでルンゴを作ると、どうも雑味の多い、おいしくないコーヒーができてしまうように(個人的には)感じている。やはり、通常のエスプレッソ用カプセルの良さを引き出せるのは40ccまでではないだろうか。
ラティシマの場合、エスプレッソボタンを押してルンゴカップにエスプレッソを抽出したあと、ミルクタンクを取り付ける部分に取り付ける給湯ノズルで好みの量のお湯を足せばいい。
インドリヤやリストレットなど、味わいの濃厚なカプセルを使えば、60~90ccほどのお湯を足しても充分な味わいが残る。カプセルの特徴や好みによって、注ぎ足すお湯の量を調整すると好みのコーヒーが見えてくるはずだ。個人的にはリヴァントぐらいの軽めのエスプレッソカプセルを使い、60ccのお湯を注ぎ足して飲むのが好きだが、インドリヤに多め(90ccぐらい)のお湯を足すのもいい感じだ。
味の濃さはドリップコーヒーと似ているが、味わいはドリップコーヒーともルンゴとも異なる。エスプレッソは通常、砂糖を加えて楽しむものだが、アメリカーノはブラックの方が楽しめると思う。簡単なので、是非お試しを。
■フレーバード・ラテ
こちらも基本中の基本。フレーバー付きのラテだ。オートモードで作るのであれば、あらかじめ好みのフレーバーのシロップを大さじ1杯ほどグラスに注ぎ、ラテマキアートボタンかカプチーノボタンを押すだけ。ミルクカートリッジのフォーム量調整レバーは、フォームが少なめの方にした方がいいかもしれない。よく混ぜてから飲もう。
シロップはイタリアや米国からの輸入ものなどもあるが、一番手軽なのは近くのスターバックスで買ってくること。スターバックスにはバニラ、キャラメル、ヘイゼルナッツのシロップが置かれている。スターバックスのシロップは、濃厚さに欠けるところはあるので、慣れてきたら他のブランドに挑戦するといい。
それぞれの味を個別に楽しんだ後は、シロップ同士を組み合わせてみるのも面白い。筆者はバニラ大さじ1杯、ヘイゼルナッツ大さじ半分を混ぜて、200cc程度のフォームドミルクを注いで作る事が多い。この組み合わせはフレンチバニラ風味といわれる定番の組み合わせだ。
■キャラメル・モカ
レビュー期間中、手持ちのキャラメルソースがなくなっていて作る事は無かったが、普段は我が家の定番メニューとなっているのがキャラメル・モカ。大さじ1杯ぐらいのキャラメルソースに大さじ2杯ぐらいのキャラメルソースをカップで混ぜ合わせ、そこにエスプレッソを1/2抽出して、さらに混ぜ合わせる。好みによっては通常の抽出量でもいいかもしれない。
あとはその上にフォームドミルクを注ぎ、さらに好みによってキャラメルソースでフォームの上に模様を描けば出来上がりだが、ラティシマではミルクがかなり静かに注がれるため、底に“タネ”が溜まりやすい。
できればミルクジャグにフォームドミルク(スチームドミルク120cc、ミルクフォーム80ccぐらいの分量)を注いでから、カップにミルクを入れていくといいだろう。スプーンなどでフォームを抑えながら、まずはスチームドミルクを勢いよく注いで混ぜ合わせ、最後にミルクフォームをふんわりと盛りつけるとキレイにできる。
このレシピは何にでも応用が利く。たとえば、チョコレートソースとヘイゼルナッツシロップで作ればカフェモカとなるし、ホワイトチョコレートソースとホワイトチョコレートシロップで作れば、同じモカでもホワイトチョコ風味のモカが出来上がる。
今回は手元のキャラメルソースが切れていたため、近くのスーパーでチョコレートソースを入手。普段はあまり作らないカフェモカを作ってみた。筆者はカフェモカを作る時、エスプレッソとチョコレートソースを混ぜたあと、ココアを振りかけておき、そこにフォームドミルクを注ぐ。その方がコクのある味になると思うからだ。カプチーノを作る場合も、あとからミルクフォームの上にココアをあしらうのではなく、エスプレッソにココアを振りかけてからミルクを注ぐ方がコクは出ると思う(ただしラティシマの場合は注ぐ順番が異なるので、手動でやらなければならないが)。
このあたりのカフェモカ系のレシピは、インターネットで探すとたくさんの例が出てくるので色々なタイプの味に挑戦するのも楽しい。調べてみると、フレーバーシロップやデザート用ソースの種類が、たくさんある事に気付くだろう。メイプルシロップはもちろん、ストロベリー風味やマロン風味、バナナ風味のシロップなど実に様々。さらにカカオリキュールやフルーツリキュール、ハチミツなどを組み合わせても面白い。
■抹茶バニラ・ラテ・マキアート
こういう名前の飲み物があるかどうかはわからないが、まだネスプレッソマシンを買ったばかりの頃、抹茶バニラ・ラテに1/2抽出の濃厚なエスプレッソを注いでみたところ、これがなかなか美味だった。後からワールドバリスタチャンピオンシップ準優勝の門脇洋之氏の著作を読んでみたところ、抹茶とエスプレッソは存外に合うそうで、よく似たドリンクが紹介されていたが、筆者がやった方法とは少しやり方が違う。
門脇氏のレシピは著作の「基本技術とアレンジドリンク・エスプレッソブック」を読んでいただくとして、筆者の作ったやり方を紹介しておく。実を言うと、“抹茶ラテ”という飲み物が、抹茶風味のカフェラテのことなのだろうと勝手に思ってマキアート風にした(よくある抹茶ラテにエスプレッソは入っていないようだ)だけだったのだが、ケガの功名というべきか。
ともかく、適当にやってもフォームドミルクとエスプレッソとフレーバーシロップ・ソースの組み合わせならば、そう大きくは外さない。みなさんも“適当に”おいしそうな組み合わせを探してみるといい。
前置きが長くなったが、まずバニラシロップを大さじ1杯半ほどカップに入れ、抹茶を小さじ3/4杯ぐらい投入。あらかじめ混ぜてダマを潰しておく。
ラティシマのミルクカートリッジを使ったフォームドミルクをミルクジャグに注ぐ(あるいは自分でスチームしてフォームドミルクを作る)。スチームドミルク120cc、ミルクフォーム80ccぐらいの分量で作っておくといいだろう。次にスプーンでミルクフォームを押さえながらスチームドミルクをカップに注いでいく。
カップに半分ほど注いだら、ジャグをいったん置いておき、スプーンでよく混ぜて抹茶をミルクに馴染ませておこう。よく馴染んできたら、残りのフォームドミルクを注ぎ、スプーンでミルクフォームをたっぷりと乗せる。
抹茶とバニラシロップを合わせてダマを潰したところ | フォームドミルクのスチームドミルク部分だけをカップの半分ほど注いで、よく混ぜて抹茶とシロップ、ミルクを馴染ませる |
あとはネスプレッソコーヒーメーカーにカップを乗せ、エスプレッソを1/2抽出程度注げばいいだけだが、筆者はマキアートを作る時は、より染みっぽい感じの方が風情があって好きなので、まずはデミスタカップにエスプレッソを抽出しておき、それをゆっくりと真ん中から注ぐようにして作る。
ガラスコップで作れば、白いミルクフォームと緑の抹茶ラテ、そしてその間にエスプレッソ交じりの層が入って見た目にも楽しめる。
■おいしいホットミルク提供源として
ラティシマは直接フォームドミルクを作れるから、ミルクジャグは必須ではない。しかし、様々なタイプのドリンクを作ろうと思うなら、1個は欲しいところ。写真のようにミルクジャグに注いでから使うと洗い物は増えるが、楽しみもまた増える |
自分でスチームしたミルクも、そしてラティシマで作ったフォームドミルクも、そのミルクそのものに甘みが出て、とてもおいしいものだ。電子レンジで温めたミルクとはひと味もふた味も違う。フォームドミルクにフレーバーシロップを混ぜるだけでも、充分においしく飲めてしまうほどだ。
ならば、これを活用しない手はない。ココアとグラニュー糖を混ぜて少量のお湯で溶かしておき、そこにラティシマでフォームドミルクを注げば、とてもおいしいミルクココアの出来上がりだ。せっかくラティシマを持っているのであれば、簡単かつシンプルなメンテナンスでフォームドミルクを作れるという特徴を、コーヒードリンクだけのために使うというのはもったいない。
また、紅茶シロップ(市販のものもあるが、自作することもできる)をフォームドミルクで割って、紅茶ラテというのはどうだろう。とても濃厚で、他にあまり味わったことのないフンワリとしたミルクティが出来上がる。
アイディア次第で、様々な活用の幅が見つかるはずだ。もし、ラティシマを入手したならば、そのフォームドミルク量産機としての特徴を活かしたオリジナルのドリンクを、ぜひとも色々考えてみてほしい。
2009年4月24日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)