カデーニャ

1km離れても使えるスポーツヘッドセット「NYSNO-10」を家族スキーで体験

こんにちは、ライターの日沼です。ただいまスキー場に来ています。

今回はスノースポーツ専用のコミュニケーションツール「NYSNO-10」(ニスノ・テン)を実際に雪山で試してみるべく、草津国際スキー場に足を伸ばしてみたのです。……が、まさかそのすぐ後に近くの本白根山が噴火するなんて、このときは全く思いもしませんでした。亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。

さて、1km離れていても最大3人と同時に会話できる、というのがウリのNYSNO-10。しかし、あいにく筆者には一緒にスキーをしてくれる友達がいません。ですので、家族全員でやってきたのですが、2人の子供はまだ小さく、スキーよりもソリ、あるいは雪だるまづくりに興味のあるお年頃です。スキー場内にあるキッズパークで遊べればご満悦のようです。

でも、こういう状況でも、いやだからこそ、NYSNO-10が活躍する場面があるのではないか、と思いました。つまり、お父さん・お母さんのどちらかが子供の面倒を見て、どちらかがスキーを滑る、という役割(遊び)分担をするとき、連絡を取り合うのにNYSNO-10が便利なんじゃないかと。頃合いを見て役割を交代すれば、お父さんもお母さんも子供たちも幸せになれるのではと、そう考えたわけです。

ということで、スキー場の麓地点で雪遊びをしている妻(と子供たち)、そしてリフトに乗って山を登り、スキーで滑り降りる筆者。2人の間で実際にNYSNO-10がどれくらい使えるのか試してみました。

スキー場での1kmというのは、現地にいると意外に短く感じるものです。今回の草津国際スキー場で言えば、一番手前にある「天狗山ゲレンデ」用のリフトで登ったスタート地点から麓までが、高度を考慮しない直線距離で750メートルくらい。ゲレンデの平均斜度は14度らしいので、もうちょっと正確な距離でいうと770メートルほどでしょうか。さらに上の「御成山ゲレンデ」に入ってしまうと1kmをゆうに超えてしまいます。ですので、天狗山ゲレンデ内が麓にいる妻と実用的に連絡を取り合える範囲内になりそうです。

草津国際スキー場の地図

まずはNYSNO-10と付属マイクの2セットをスキー用ヘルメットに、付属の粘着テープ付きマウントで取り付け、2つの電源をオン。筆者と妻ともにヘルメットをかぶり、一方のリモコンにある小さなペアリングボタンを押すと、あっさり2つのNYSNO-10がリンクして互いの声が聞こえるようになりました。

声の聞こえ方は、これまで味わったことのないものです。NYSNO-10の振動子が帽体を振動させて音を出すという仕組みなので、頭の上から声が降ってくるような、もしくは頭の周囲に声が広がっていくような、とにかく不思議な感じ。ボリュームは少し上げ気味にした方が良さそうですが、なんとなく事前に想像していたようなぼんやりした音ではなく、きちんと角のある整った音質で、つぶやき声なんかもしっかり聞き取れます。ただ、あまり大きい音にすると、静かなゲレンデでは周囲の人にもそこそこ届く音量になるので、その点は配慮した方がいいかもしれません。

筆者のヘルメットにNYSNO-10を取り付け
妻のヘルメットにも同じように取り付け

そのまま話をしながらリフトへ向かうと、互いの姿が視界から消えてしまっても普通に会話できるのがまた不思議な感覚。妻とやり取りしている子供たちの声もうっすら聞こえてきます。今リフト向かってる、今乗ろうとしてる、今乗った、いい景色だよ、みたいな逐次報告が完璧! リフトからの景色がすばらしくても、その感動を映像として共有できないのは残念ですが、とりあえず風景を克明に説明してうらやましがらせることはできます。夫婦げんかにならないよう注意。

リフトに乗ってしばらくして、麓との間に林が立ち塞がるようになると、声にノイズが混じることが増えてきます。到着間際には金属質のノイズだらけになって会話が困難になりましたが、天狗山ゲレンデの上の視界が開けた場所に来ると再び問題なく通話可能に。「お父さんはここにいるぞーっ」とストックを掲げながら妻&子供たちにアピールしますが、結局見つけてもらえずに終わりました。770メートルとは、そういう距離なんですね。

これくらいの距離ならまだまだクリアな音質で通話可能
少し昇って林に遮られるとノイズが混じり始めるけれど、通話は可能

ウォームアップなしにいきなり最大斜度28度の天狗山ゲレンデを滑るのは怖いので、そこから山に向かって右側にそれる「初心者コース」へと迂回することに。そうすると、麓とは完全に林で遮られる形になり、ノイズ混じりになったあと、ついにリンクが切れてしまいました。結局麓まで滑り降り、妻の近くで改めてペアリングするまで会話ができなかったので、麓と連絡を取りながら自由自在に滑る、というのはちょっと難しいようです。

さらに奥、本白根山登山口方向のリフトに乗ったときも、当然だが完全に途切れてしまった

ただ、互いに麓にいる間、妻と別の場所で用事をこなす機会は何度もあり、その時のやり取りにNYSNO-10はものすごく役に立ちました。例えばトイレに行くとき、お腹がすいたと言う子供1人だけを連れてレストハウスに行ったときなど、距離としてはせいぜい300メートルほどですが、一方が屋外でもう一方が屋内にいても、ノイズが混じることなくしっかり会話が可能。「ついでにアレ買ってきて」とか、「さっきのところから離れた場所に移動したから」みたいなお願いや報告をリアルタイムに得られるのも、なにげに便利で新鮮です。

ちなみに、スマートフォンとペアリングして音楽再生しながらスキーを滑る、というのも試してみました。この場合も周囲に配慮して音量を上げすぎないよう注意しないといけませんが、音質としてはスキー場のスピーカーから流れるサウンドを聞いているような感覚にそっくり。耳に直接音を届けるイヤフォンとは違って圧迫感は一切ありませんし、音楽を聞きつつも、風を切る音やスキーが雪面を削る音を感じながら滑れるのは、爽快、快適です。

子供たちの遊びに付き合う妻。雪合戦でもやろうとしているのかしら

NYSNO-10は、やはり仲間たちと一緒に滑りながら会話したり、音楽を聞いたりするのに最適なアイテムであることは間違いありません。でも、家族でスキー場へ遊びに来たときに、常に、密に連絡を取るのにも(行動範囲は限られますが)活躍することがわかりました。タイミングよく役割を交代することで、「あなた、子供の面倒も見ずに自分だけスキーで遊んでばっかりじゃない!」なんて後々の火種をくすぶらせないようにするメリットもある……かもしれませんよ。

最後はキッズパークで長女と一緒に雪だるまを制作。常時テンション高めでなにより
この記事は、2018年2月19日に「カデーニャ」で公開され、家電Watchへ移管されたものです。

日沼 諭史

モバイル、ガジェット、エンタープライズ系サービス、旅行、クルマ、バイク、オーディオ&ビジュアルなどなど、なんでも書くライターみたいなことをやっている人。