【PV EXPO 2011】
欧米や中国など世界各国の太陽電池メーカー900社が出展

by 藤本 健

 太陽光発電に関する国内最大の展示会、「PV EXPO 2011」が3月2日より4日までの3日間、東京ビックサイトで開催されている。今回で4回目となるPV EXPOだが出展ブースは年々増えており、今回は900社も出展するというかなり大規模なものとなった。太陽光発電/太陽電池関連の企業って、そんなにいっぱいあるのか、と驚くばかりだが、PV EXPOは日本企業だけでなく、海外メーカーなども多数参画している国際的な展示会だけに、様々な国の企業が出展していた。

明日まで東京ビックサイトにて開催されている「PV EXPO 2011」会場内の様子。900社が出展しているだけあって人も多かったビックサイトでは、PV EXPOのほかに「太陽光発電システム施工展(PVシステムEXPO)」、「国際スマートグリッドEXPO」、「水素・燃料電池展(FC EXPO)」など計7つの展示会が併催されている

 PV EXPOと同時開催される形で「太陽光発電システム施工展(PVシステムEXPO)」、「国際スマートグリッドEXPO」、「水素・燃料電池展(FC EXPO)」など計7つの展示会が併催され、まさに新エネルギーの一大イベントとなった。

 今回はその中のメインイベントであるPV EXPOに絞って、気になったブースや製品などについてレポートしてみよう。

台頭する中国、台湾メーカー

シャープ、京セラ、三菱電機など国内大手メーカーのブース

 日本で太陽光発電といえば、シャープ、京セラ、三菱電機などの大手メーカーがけん引役を果たしているし、PV EXPO内でもブースを出していたが、必ずしもこれらが目立った存在だったわけではない。すでに日本でも住宅用太陽光発電システムの販売を大々的に展開している中国メーカーのサンテックパワージャパン、カナダのカナディアン・ソーラー・ジャパンなどの海外メーカーが大きなブースを展開していたのはもちろん、あまり名前も聞いたことがない中国メーカー、台湾メーカーがとにかく数多く出展していたのが印象的だった。

中国のサンテックパワージャパンのブースカナダのカナディアン・ソーラー・ジャパンのブースこちらは筆者も知らなかった「YINGLI SOLAR」というメーカーのブース

 いくつか目立ったところをピックアップしてみよう。

 大きなブースで「JA SOLAR」とあったので、「農協が太陽電池を始めたの?」と思って近寄ったら、ここは上海に本社を置く太陽電池セル、そしてモジュールの両方を手がけるメーカー。単結晶、多結晶のセルを手がけており、ヨーロッパやアメリカへの展開をしている。今回の出展は日本へ進出も目論んだマーケティングとのことで、ブース内ではさまざまな商談が行なわれていた。

 中国東部の江蘇省のモジュールメーカー「Hareon Solar Technology」も、やはり日本マーケットを狙っている企業。単結晶、他結晶のモジュールを手がけており、すでに商社を通しての展開にメドがついてきているようだ。

 また東シナ海に面する浙江省(せっこうしょう)にある、太陽電池セル・モジュールを一貫生産するメーカー「SOPRAY」はすでに2年前に日本法人ソプレイソーラーを設立し、現在、住宅用ではなく主に産業用に展開している。まだ国内での実績は2MW程度と少ないが、今後大きく拡大させたい考えのようだ。

上海に本社を置く太陽電池セル、モジュールの両方を手がける「JA SOLAR」のブース中国東部の江蘇省のモジュールメーカー「Hareon Solar Technology」。単結晶、他結晶のモジュールを手がけている「SOPRAY」は2年前に日本法人を設立している

 ちょっとユニークな住宅用の太陽電池モジュールを参考出品していたのは、台湾のAU OPTRONICSというメーカー。すでに商社経由で、国内の住宅用に単結晶および多結晶のモジュールを出荷をしているとのことだが、今回展示していたのは現行の単結晶250Wのモジュールにパワコンを内蔵してしまった、その名も「AC太陽光発電」。

 モジュールの裏側に小さなパワコンを搭載しており、モジュール1つ1つからAC出力が得られるので、屋内や外に大きなパワコンを設置する必要がない、というのだ。また、各モジュールごとに出力を最適化するから、全体的な効率もよくなるということだが、これはなかなか興味をひくところだ。

 ほかにも台湾の小さいメーカーが数多く並ぶ台湾パビリオンが構成されるなど、中国、台湾の太陽光発電関連の企業は勢いがあった。

現行の単結晶250Wのモジュールにパワコンを内蔵してしまた「AC太陽光発電」モジュールの裏側に小さなパワコンを搭載しているため、別に設置する必要がないという台湾のメーカーが数多く出展していた台湾パビリオン

各所で目立ったフレキシブル太陽電池

 すでに秋葉原の店頭にも並んでいるから、それほど珍しいわけではないが、やはり目立っていたのが折り曲げ自在なフレキシブルタイプの太陽電池だ。湾曲した屋根などにも簡単に取り付けられるということで、注目を集めているフレキシブルタイプの中心は、アモルファス太陽電池だ。

 三菱化学のジオアシートPVシリーズは、アモルファスシリコンを用いた赤紫の太陽電池モジュールで、軽量であることから施工が容易で設置コストを抑えられる。また、結晶系の太陽電池と比較すると発電効率は落ちるものの、熱の影響を受けにくいため、年間の発電量を10%程度多くできるという。

 同様にアモルファス太陽電池のフレキシブルタイプ「UNI-SOLAR」を扱うのは兼松。同社はアメリカのUnited Solar社からこの製品を輸入しており、今後国内の企業ユースなどを中心に展開していく考えだ。すでに海外では工場の屋根や、飛行場の屋根などでも実績がある。とくに表面がガラス素材でないため、鏡のような反射をしないことが、飛行場などで採用されている大きな理由とのことだ。

三菱化学のジオアシートPVシリーズ。軽くて施工が容易にできるほか、熱の影響を受けにくいという特徴がある兼松の「UNI-SOLAR」。アメリカからの輸入品で、海外ではすでに実績がある

 フレキシブルタイプには、アモルファス太陽電池以外も登場していた。アメリカのGLOBAL SOLAR ENERGYというメーカーの「PowerFLEX」は、CIGS薄膜太陽電池を使っている。

 CIGSとは銅(Copper)、インジウム(Indium)、ガリウム(Gallium)、セレン(Selenium)を原料とし、シリコンを使わないのが特徴。国内ではホンダソルテックが住宅用などで手がけているが、それをフレキシブルタイプに仕上げているわけだ。

 一般的な結晶シリコンの太陽電池と比較すると、1/9という軽さが売りだ。PV EXPO会場では大阪のオー・ジーという会社と東京のCBCという2社が、このPowerFLEXを展示していたが、両社とも、これを直接一般に販売するというわけではないという。建材メーカーなどと組む形で、防水シートのようにしたり、カーポートの屋根材にしたり、高速道路などの防音壁用の素材にするなど、さまざまな展開をしていくという。

フレキシブルCIGS型太陽電池モジュール「PowerFLEX」

身近に利用できる日本の独自技術、球状シリコン太陽電池

 シリコン系の太陽電池ではあるが、一般のものとは大きく仕組みが違う日本独自のものがあるのをご存知だろうか?

 「球状シリコン太陽電池」と呼ばれるそれは、1mm程度の小さな粒状のシリコンと、そこに光を集める目的で包むように取り付けられた2~3mm程度の金属製の鏡で構成される小さな粒状の太陽電池セルだ。

ワイングラスにいっぱい入った京セミの球状シリコン太陽電池セル球状シリコン太陽電池の構造(クリーンベンチャー21の資料より)

 特許を持つ京都の京セミという会社が以前から取り組んでいるほか、同じ京都のクリーンベンチャー21(CV21)という企業も、別の特許によって製品の開発、生産を行なっている。今回は、この両社ともに出展していたので、ブースを覗いてみた。

 京セミは、もともと、ユビキタス用の小さなセンサーなどに電源を供給するといった、小さな太陽電池を作っていたメーカーだ。今回展示していたのは、3月3日にグランドオープンとなる高島屋大阪店に設置したという、球状シリコン太陽電池を利用して作った照明「yuragi」だ。

 先端部にLEDが埋め込まれており、地中に二次電池を設置するという構成になっているのだが、季節によって色が変化するなど、デザイン事務所とコラボして開発したというだけに、なかなかカッコイイ。すぐに一般に販売されるわけではないというが、ニーズもありそうなので、検討していくとのこと。また、これとは別に室内に置くタイプの照明も参考出品していた。

球状シリコン太陽電池を利用して作った照明器具「yuragi」今日オープンの高島屋大阪店に設置される室内タイプの照明も参考出品されていた

 一方のCV21は、球状シリコン太陽電池を並べたメッシュ形状のようにも見えるモジュール、CVFMシリーズをすでに生産しており、楽天でのネット直販も行なわれている。285×220×4mm(幅×奥行き×高さ)で出力3Wというものから、1,081×730×4mm(同)で64Wという大きめなものまで7製品を販売しており、主力の27Wタイプが29,800円というからなかなか手ごろ。ユニークなのは厚さが4mmでフィルムによってラミネートされており、曲げられるということだ。

 またブースでは、小さなモジュールを搭載して走るソーラーカーキットが販売されていたほか、近日中にはUSBで出力するスマートフォン用充電器も発売する予定とのことだ。いずれも、近寄ってみてみれば球状シリコン太陽電池セルが並んでいることを確認できる。

球状シリコン太陽電池を並べたモジュール「CVFMシリーズ」フィルムによってラミネートされているため、写真中央のように曲げて置くこともできるというブースでは、小さなモジュールを搭載して走るソーラーカーキットも販売されていた

産学連携プロジェクトも進む太陽電池の世界

岩手大学、アルバック、日本電気硝子、産業技術総合研究所の4者で共同で開発した「薄膜リチウムイオン二次電池-薄膜シリコン太陽電池・一体型超薄板ガラス基板複合電池パネル」

 900社以上が出展していると、どうしても大きいブースに目が行きがちだが、小さなブースにもいろいろと面白いものがある。そんな中で、がんばっているなと感じたのが産学連携のプロジェクトだ。

 岩手大学、アルバック、日本電気硝子、産業技術総合研究所の4者で共同で開発していたのは「薄膜リチウムイオン二次電池-薄膜シリコン太陽電池・一体型超薄板ガラス基板複合電池パネル」という長いタイトルのもの。

 日本電気硝子のブースの一角で参考出品していたのだが、薄いガラスの太陽電池でありながら、リチウムイオン充電池機能も備えているというのだ。もちろん薄いだけに、それほどの充電容量があるわけではないが、これは本当の意味での太陽電池(一般にいう太陽電池は電気を貯める機能は持っていない)といえるのかもしれない。

ペクセル・テクノロジーズの「色素増感太陽電池(DSC)モジュール」。開発に成功したのは、つい先週だという

 一方、桐蔭横浜大学内に本社を構えるペクセル・テクノロジーズは、正に大学から生まれたベンチャー企業。2004年に設立した同社が、先週ようやく開発に成功したという色素増感太陽電池(DSC)モジュールを展示していた。

 これは世界ではじめてプラス極・マイナス極の両面ともポリマー基板を使用したというもので、発電量は微弱ながらも、室内の明かりでも効率よく発電できるというのが特徴。EH=エネルギー・ハーベスティングの分野でのニーズを掘り起こして生きたいという。

 そのほかにもフジクラのブースでは、東京理科大との共同研究により、同じく色素増感太陽電池での発電効率向上といった研究発表がされていた。

スイスでは太陽電池飛行機も飛んでいる!

 このように、PV EXPOでは太陽電池セルや太陽電池モジュールの展示や発表が中心ではあったが、中にはそれを利用した製品、機材などの展示もあった。そうした中でも異彩を放っていたいたのが、スイス・ソーラー・パビリオンだ。

 スイス大使館が後援する形でスイスの企業や団体、研究所などが合同で出していたブースなのだが、ここには羽の長さが、4mという大きな飛行機の模型が展示されていた。実はこれ、スイスですでに試験飛行をしているという太陽電池自動車ならぬ太陽電池飛行機の1/16サイズの模型。スイスでは有名な冒険家ベルトラン・ピカール(Bertrand Piccard)さんらによるプロジェクトで、飛行機の大きさはエアバスA340にほぼ匹敵するものだとか。重さ1500kgで機体内にはバッテリーも搭載されているから夜間での飛行も可能であり、時速70kmで飛ぶ。すごいのは離陸速度でたった時速35kmで飛んでしまうというところ。ぜひ実物を見てみたいものだ。

 ちなみに、この飛行機は1人乗り。多くの人が乗って飛べる飛行機というのは、まだまだ先のことになりそうだ。

スイス大使館が後援する形でスイスの企業や団体、研究所などが合同で出展していた「スイス・ソーラー・パビリオン」太陽電池飛行機の模型。スイスではすでに試験飛行もしているという



(藤本 健)

2011年3月3日 13:58