京セラ久芳社長、太陽電池戦略を語る

~海外拠点を強化。世界基準の安全認証を取得
京セラ株式会社 代表取締役社長の久芳徹夫氏

 1月21日、「ソーラーエネルギー事業に関する説明会」を行なった。同社代表取締役社長の久芳徹夫氏が太陽電池市場の動向を解説するとともに、中国およびヨーロッパでの新工場建設計画、また製品の安全と品質に関する認証機関「テュフ ラインランド」の長期連続試験の認証を取得したことなどを発表した。

アメリカ市場の活性化による市場拡大を予想

太陽電池市場の現状と今後の予測

 市場動向の説明によると、太陽電池市場は世界的に急成長を続けており、2009年度から2010年度では約2倍となったという。現状においてはヨーロッパの市場が一番おおきく今後も拡大していくが、ドイツの電力買取制度であるFIT(フィードインタリフ)」の買取価格が引き下げられるため、伸びは鈍化していくと予想。

 一方、アメリカはグリーンニューディール政策やRPS法などの補助政策によって市場が活性化してきており、現状、世界市場で10%程度であるのが、数年後には20%になると予測する。また日本も再生可能エネルギーの全量買取制度がスタートするため、産業用の需要が拡大するとしている。そして今後大きく伸びるのは中国やインド。国家政策による太陽電池の積極導入計画が進んでいることを理由に挙げた。

 その結果、京セラでは平均年率18%で市場が拡大し、2015年には総発電量32.4GWという大きな市場になると予測する。

セルは機密保持のため国内生産、モジュールは海外拠点を強化

 そうした予測に対し、京セラでは市場の伸びを上回る増産を計画。具体的には滋賀八日市と滋賀野洲の2つの工場に集約しており、今期で600MWの生産を予定。今後もこの2カ所で生産を続け、2012年度には1GWに増産するという。太陽光発電は、半導体で作られる太陽電池(セル)をパネル上にまとめたモジュールを屋根などに設置して行なうが、そのセルの生産は機密保持の観点からすべて国内で生産を行なっているという。

 一方、モジュール生産については海外拠点の強化を進める。同社では現在、三重県の伊勢、海外では中国、メキシコ、アメリカ、チェコの5カ所を拠点としている。このうち、中国では生産体制拡充のための新工場棟が完成したことを発表した。天津にできたこの新工場棟は既存工場棟の3.5倍となる年間生産能力360MWというもので、今春からの稼動を予定している。

 またヨーロッパでの生産体制拡充に向け、チェコでも現在の工場のある敷地内に2棟目となる新工場棟の建設を開始したことも発表した。こちらは2011年秋に竣工の予定で、年間生産能力360MWを目指す。その結果、既存工場棟と合わせると、京セラの太陽電池モジュールの生産拠点としては世界最大の560MWの年間生産能力を保有することになる。

太陽電池セルの増産計画京セラ(天津)太陽エネルギー有限公司 新工場棟京セラソーラーヨーロッパ 第2工場完成予想図

世界基準の安全・品質面を実証

テュフの長期連続試験をクリアし、世界で初めて認証を取得した

 安全・品質面においては、京セラの太陽電池モジュールが世界で初めてテュフ ラインランド(TUV Rheinland)が定める長期連続試験の認証を取得したことを発表。テュフ ラインランドとは、コンピュータや大型産業機械などの安全・品質に関する評価・試験・認証を行うドイツの第三者機関。

 認証を得るには、IEC(国際電気標準会議)の基準に基づいた従来試験よりも厳しい条件のもと、1枚のモジュールで連続して4つの試験をすべてクリアする必要がある。同社の太陽電池モジュールは、高温高湿試験、温度サイクル試験、結露凍結試験、バイパスダイオード試験の4つを1年間連続で実施し、基準をクリア。これにより、京セラの太陽電池モジュールの品質、信頼性を実証したとしている。

見積もりからアフターケアまでトータルサービスが重要

久芳氏

 久芳氏は新型太陽電池への取り組みについて「多結晶以外の方式の太陽電池に関する研究も行なっているが、当面は現状と同じ多結晶型に集中する。多結晶においても毎年発電効率は向上しており、今後も引き続き効率向上に努めていく。また単結晶については取り組むつもりはない」とした。

 また、主に海外メーカーが家電量販店での販売展開を行なっていることに対し、「太陽電池はコンシューマ製品のように量販店で売る性格のものではない」と批判。「太陽光発電システムの設置は、各家の屋根の方角や角度、生活スタイルなどさまざまな要素によって変わるため、しっかりとした設計を行う必要がある。その上、スキルのある技術者による施工、そしてアフターサービスを行うことで、トータルのコストを安く抑えることが初めて可能になる」と京セラとしての国内での販売展開についても説明を行なった。




(藤本 健)

2011年1月24日 13:37