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家庭向け太陽光発電システムって実際どう?
“ソーラーマニア”藤本健が体験した5年間 【第1回】

〜太陽電池のために一軒家を買いました
by 藤本 健
補助金の復活や、余剰電力の買い取り制度などで、家庭用の太陽光発電システムが注目されている(写真はパナソニック・三洋電機の発表会より)

 近年、注目を集めている家庭用の太陽光発電。読者の中には、“ちょっと高そうだけど興味はある”、という人も多いのではないだろうか?

 しかし、「補助金が復活した」とか、「余剰電力の買取金額が倍になった」といった報道は見かけるものの、じゃあ実際いくらかかるのか、工事がどのくらい大変なのか、そして何より重要な「元が取れるのか」……といった情報になると、ほとんどないのが実情だろう。

 筆者は、僚誌AV WatchでDTMやデジタルオーディオ関連の記事を連載しているライターだが、実は30年来の“ソーラーマニア”。6年前に念願かなって、自宅に太陽光発電システムを導入し、毎日太陽で作られた電力で生活している。

 ここで、8月に筆者宅に届いた東京電力からの伝票を見て欲しい。普通の家庭と異なり、太陽光発電を導入している家にはこのように2枚の伝票が届く。勘の良い方ならお分かりだろうが、1枚は買った電気代を示す伝票で、もう1枚は売った電気代を示す伝票だ。これを見てわかるとおり、8月は基本料金を入れた買った料金と売った料金を相殺したうえに、1万円以上の黒字となっているのだ。今年の8月、猛暑で晴れの日が続いたため、過去6年の最高記録という嬉しい結果となっている。

太陽光発電システムを導入している家には、「買った電力」「売った電力」を知らせる2つの伝票が届く。写真は、我が家の「買った電力」の伝票で、8月は3,714円だった こちらが「売った電力」の伝票。14,400円の収入だった。合計約1万円の儲けということになる

 このような太陽光発電システムを導入するには、どうすればいいのか? また、実際に太陽光発電とともに生活するというのは、どんなものなのか。これから数回に渡って、体験談を披露していこう。間違った選び方、間違った購入をしないためにも、ぜひ今後の参考にしていただければと思う。


“脱石油”から生まれた太陽電池への愛

 筆者の太陽光発電との出会いは、今からちょうど30年前。中学3年のときのことだ。理科の授業がきっかけで太陽電池の存在を知り、書物をいろいろ調べたところ、シリコンに光を当てると発電する機材であることが分かった。石油ショックのころに幼児期を送ったこと、父親が石油会社勤務だったことなどが関係し、子どものころから“脱石油”ということに興味を持っていたが、「これだ!」と衝撃を受けたのを覚えている。

 翌年、高校に入学後、秋葉原で手軽に使える太陽電池を発見し、即購入。実はこれ、今でも手元にあるがPC用周辺機器で有名なLogitec(当時の関東電子)の製品で、折りたたみ式の小さなもの。これを広げて太陽の光に当てると、単三のニッカド電池に充電できるとともに、コネクタから3Vの直流が出力できるので、ラジオなどに接続すれば電源なしで鳴らすことができるというものだった。当時は窓際にラジオを繋いで置いておいたが、朝になるとラジオが鳴り出す目覚ましとして使っていたのだ。

 ちなみにこの機材、30年も前に作られたものではあるが、試してみたら今でもしっかりと動く。まあ、常に太陽に当ててきたわけではないが、この辺からも太陽電池の耐久性というのが見えてきそうだ。

 その後も趣味として、小さなパネルを買ってベランダに取り付けるなどいろいろ遊んだし、一時は太陽電池メーカーへの就職も真剣に考えたこともあった。結果的には、本命の楽器メーカーへの就職もやめて、なぜかリクルートに入社してしまったのだが……。

幼い頃から太陽電池に興味を持っていた筆者が、高校に入学後、秋葉原で買ったLogitec製の小型太陽電池。およそ30年前の製品だ 広げて窓際に置いておくことで、ニッカド電池の充電やラジオの電源に使っていた。今でもちゃんと動く


太陽電池を屋根に乗せたいがために一軒家を購入

 それからずいぶんの時が経ったが、やはり太陽電池=太陽光発電の家に住むというのがずっと夢ではあった。またリクルート在職中は主に求人雑誌の編集をしていたのだが、無理やり転職と関係のない「エネルギーの作り方」なんていう連載を組んでは、太陽電池を中心とした自然エネルギーに関する取材をしては情報収集をしていた。

 ただ、太陽光発電の家にするには、一軒家でなくてはならないという大きなネックがあった。やはりこれが大きなハードルであったが、幸い早期定年退職という制度を利用して多少の退職金を入手することができた。また、家庭の都合でどうしても一軒家へ移る必要が生じてしまったため、家を建てる決意をしたのだ。もちろん、気持ち的には家庭のことより、何より最優先だったのは、太陽電池を屋根に乗せることだったのは言うまでもない。

 スタートは土地探しからだった。当時は地価が下落していたとはいえ、やはり高い。が、なんとしても屋根に太陽が当たるということだけは確保したかった。いろいろ探した結果、家にはあまり陽があたらないけれど、2階の屋根だけなら冬でもよく陽が当たる土地が、比較的安値で出ているのを発見。地域的にも納得いく場所だったので、探し始めてから約2週間で決定してしまった。南向きで30度の傾きの屋根があることだけを想像して購入したのだ。

 もちろん本番はここから。どこのメーカーのどんな太陽発電システムを導入するかの検討をはじめたのだ。現在、主な太陽光発電システムメーカーだけで10社あるが、まだ太陽光発電ブーム以前であった2004年当時はシャープ、京セラ、三洋電機、三菱電機の4社が中心。ただ、実物を店で買ってくるわけではないし、ネットで調べてみても、実際の価格すら良く分からない。そして、機能的、性能的な違いもWebの情報だけではよく見えてこない。

 とりあえずメーカーに頼んでカタログだけは取り寄せたが、これを見てもWebの情報と大差ない。一方、太陽光発電に関する書籍は、学問的な技術書ばかりで、家庭で導入するための書籍などは皆無。ネット上でも似た状況だ。それなりに知識を持っていたつもりではあったが、いざ購入するとなると、分からないことばかりである。


太陽光発電に必須の装置は「モジュール」「パワコン」「モニター」

 ここで、家庭用の太陽光発電システムの構成要素を大まかに紹介しておくと、以下の3つから成り立っている。

(1)太陽電池モジュール (2)パワーコンディショナー (3)モニター

 ほかにも架台、接続箱、分電盤、売電メーターなどいろいろあるが、まず3つを頭に入れておけばいいだろう。それぞれ単体売りはしているはずだが、基本的には全部セットで注文し、工事まで含めて一括でオーダーする形となる。

太陽光発電に必須な装置は、「太陽電池モジュール」と「パワーコンディショナー」、「モニター」の3点。写真は太陽電池モジュール。いわゆる太陽光パネルで、システムの中心的な存在だ

 これら3つについて簡単に説明しておくと、まず「太陽電池モジュール」というのは、「太陽光パネル」などともいわれる太陽光発電システムの中心的存在。まさに太陽からの光を電気に変換するためのもので、屋根に設置するもの。メーカーや機種によって大きさが異なるが、通常このパネルを12枚とか18枚といった数を並べて使うことになる。各太陽電池モジュールの出力×枚数によって、発電できる容量が決まってくるのだ。

 ただし、この太陽電池モジュールが出力できるのは、あくまでも直流の電力。そのため、このままでは家庭で普通に使うことができないため、これを100Vの交流に変換する必要がある。そのための装置が「パワーコンディショナー」または「インバーター」と呼ばれるものだ。メーカーによって外に設置するタイプと屋内に設置するタイプのものがある。

 そして、現在発電している電力や、これまでに発電した電力量などを表示するのが「モニター」。筆者が導入した時点では、単純に数字が表示されるだけの味気ないものだったが、最近は液晶ディスプレイを使ってグラフィカルに表示できたり、パソコンと接続して管理ができるなど、どんどん高機能化されている。

 このようにして発電された電気を自宅で使うことができるが、曇りや雨の日、また夜間は電力会社から電気を購入して使うことができる。そのために、いちいちスイッチで切り替えるというような必要はなく、自動的に切り替わるからユーザーはとくに何をする必要もない。一方で、日中にいっぱい発電し、家で使いきれない場合には、「売電メーター」を経て電力会社に流れていく仕組みになっている。実際、筆者の家にも買電メーターと売電メーターが並んで設置されている。冒頭で電力会社の伝票をお見せしたが、これはそれぞれのメーターを元にはじき出された電力量と電気代なのだ。

パワーコンディショナー」は、太陽電池モジュールで出力した直流の電力を、家庭用の100Vの交流に変換する設備。インバーターとも呼ばれる。地味だが必須の装置だ 現在発電している電力や、これまでに発電した電力量などを表示するモニター。筆者が購入した時点では、単純に数字が表示されるだけのものが多かった
最近はモニターの性能は飛躍的にアップ。液晶ディスプレイでグラフを表示したり、パソコンに繋げて管理ができるなど多機能化している 太陽光発電システムを導入すると、買電メーターと売電メーターという2つの電気メーターが家に設置される


屋根の上に乗せる「パネル型」か、瓦の形をした「建材一体型」か

 ここで話を元に戻そう。こうしたシステムをユーザーは設置業者を選ぶとともに一式導入するわけだが、メーカーによっては、複数のシステム製品を販売しているため、どう選択するかはなかなか難しい。

 そんななかでまず考えたのは、屋根の上に乗せるパネル型にするか、瓦の形をした建材一体型にするか、ということ。瓦のようになっているなら見た目がキレイに仕上がるし、屋根の上に架台を設置してパネルを乗せるという工事も不要になるので、有利にも思える。ただ、この建材一体型の製品は現在でも選択肢は少なく価格的にも高めのようだ。また、当時数少ない情報をかき集めつつ、愛知県の設置業者が開設していたBBSを見つけて、そこで相談をしてみた結果、パネル型のほうがよさそうという確信を得た。

 その理由としては、以下のような点だ。

  ・価格的に安く設置できる
  ・パネル型は屋根との間に隙間があり、冷却効果がある
  ・瓦タイプだと接続数が非常に多くなるので故障率が上がる

 価格はもちろんだが、実は2番目の冷却効果というのが大きなポイントだった。というのは広く普及している多結晶シリコンタイプ(ほかにも単結晶シリコン、アモルファスシリコン、CIG、CIGSなど複数の方式が存在する)の太陽電池は温度が上がると発電効率が落ちるという特性がある。そのため、熱の逃げ場がない建材一体型だと、夏場の昼の発電量が少なくなってしまうのだ。まあ、屋根の見た目など、あまり気にならないので、それならばとパネル型に決めたのだ。

 また、このパネル型にはもう1つ大きなメリットがある。それは屋根自体がパネルの影になるため、家が夏場に涼しくなるのだ。もっとも、新築時に取り付けているので、使用前・使用後の違いが実感できているわけではないが、すでに完成している家に取り付けると、その違いが結構よく分かるらしい。

 そう、太陽光発電システムの設置は、新築時に行なうものと考えている人も多いと思うが、既築物件に取り付けることも可能であり、工事の手間、金額的にもほとんど変わらないようだ。もし、新築のタイミングでないからと躊躇している方がいれば、その心配はいらないので、さっそく検討してみてはいかがだろうか?

 さらに筆者の場合、太陽光発電に加えて、太陽温水器の設置も同時に行なおうと企んだ。太陽温水器(または太陽熱温水器)は、太陽光に含まれる赤外線を利用した給湯装置。古くから普及しているものだが、最近は真空型といって非常に熱効率の高いものが登場しており、これを利用すれば1年中、風呂の給湯はほとんどこれで賄えてしまうという。

 しかも、ガス給湯器との連携が可能になっているので、使い勝手は普通のガス給湯器と同様で、デジタルで温度設定をすればいいだけ。本論からズレてしまうので、ここでは詳細については割愛するが、南側の屋根の15%程度の面積を太陽温水器用に割いて、約50万円ほどかけて設置をした。結果的には、冬場でも晴れていればまったくガスを使わず風呂を沸かすことが可能となり、ガス代も極めて安く抑えられている。


 というわけで、導入する太陽光発電システムはパネル形、ついでに太陽温水器も導入することを決定した。しかし、どのメーカーの、どの規模のシステムをを導入するのかというのはまた別の話だ。次回は、実際にどのように太陽光発電システムを選んだのか、そして実際にいくらかかかったのかなどを、当時の見積書も見せながら、紹介していきたい。




2010年11月5日 00:00