やじうまミニレビュー

サーモス「シャトルシェフ KBB-1600」

~じっくり火を通す保温調理で電気もガスも節約
by すずまり


やじうまミニレビューは、生活雑貨やちょっとした便利なグッズなど幅広いジャンルの製品を紹介するコーナーです


真空保温調理器「シャトルシェフ」

 夏も終わり、またしてもさらにご飯がおいしく感じる季節の到来である。とある居酒屋で牛スジ煮込みを食べたところ、トロトロでおいしいのなんの! その瞬間「今年の秋冬はおいしい牛スジ煮込みが作れるようになる」を密かなテーマに設定した。居酒屋の定番メニューといっても過言ではない牛スジ煮込みが、自宅でホロホロのトロトロにできたら最高ではないか。

 食材をじっくり煮込む調理器具として、これまで圧力鍋やスロークッカーを使った経験はあったが、もう1つ試したことがないものがあった。それが保温調理器。そこで今回は世界最大の魔法びんブランドとして人気の高いサーモスの「シャトルシェフ」を使ってみることにした。


メーカーサーモス
製品名シャトルシェフ KBB-1600
希望小売価格15,750円
購入場所Amazon.co.jp
購入価格12,600円

高真空断熱により、保温の熱で具材をじっくり調理できる保温調理器

 「シャトルシェフ」は、ポリプロピレン製のフタとステンレス鋼の容器をもつ「保温容器」と、ステンレス鋼でできた調理鍋(フタ付き)の2つで構成される保温調理器だ。今回使用したのは最大内径16cm、調理鍋の容量が1.6Lの KBB-1600。保温容器はステンレス魔法びんと同じ高真空断熱構造になっているという。

調理鍋の容量が1.6Lの「KBB-1600」。色はクリアブラウン保温容器を横から見たところ保温容器を背面から見たところ
保温容器を上から見たところサイズは非常にコンパクト保温容器のフタを開けてみると、中に調理鍋が入っている
調理鍋のフタをとったところシャトルシェフの構造は、保温容器と調理鍋の2つだけガス、電気、ハロゲンヒーター、シーズヒーター、200VのIH調理器に対応した調理鍋

 使い方は非常に単純で、調理鍋に材料を入れて火にかけ、一旦沸騰させて味付けをしたら、付属の保温容器に鍋ごと入れてフタをし、任意の時間そのままにしておくだけというもの。保温料理時間が過ぎたら調理は完了だ。調理鍋はガス、電気、ハロゲンヒーター、シーズヒーター、200VのIH調理器に対応しているので、一般家庭の調理環境ならほぼどこでも使えると考えてよい。保温効力は60℃以上が6時間ということになっているが、長時間保温をする際は、4時間を目安に再加熱することが推奨されている。


シャトルシェフの基本動作
調理鍋の底移動するときは保温容器の取っ手をもつこと保温容器のフタは取り外せる。ただしフタを丸洗いしてはいけない
保温容器のフタには不思議な出っ張りがついているフタの出っ張りは調理鍋のフタを置くためのものだった
調理鍋のフタを手軽における付属品は取扱説明書と専用のレシピ集「COOKING BOOK」。バリエーションの豊富なレシピ集は必見だ!

 「シャトルシェフ」では沸騰させることを「沸騰調理」、保温容器に入れることを「保温調理」と呼んでおり、必ず「沸騰調理」→ 「保温調理」とすることで、長時間高い温度を維持させることで食材をじっくり加熱するようだ。何より保温で調理できてしまうということに驚く。説明書によれば、食材を煮るのに沸騰させつづける必要はないのだとか。牛肉は80℃が15分、じゃがいもは85℃が20分、小豆は80℃が90分続けば中まで熱が通るのだという。

 このため、煮崩れせずに、しっかり味が染みこませることができるという。しかも保温容器に入れている数時間は電気もガスも使わない。つまり光熱費が節約になるというわけだ。ただし保温ゆえに調理時間に限界がある。スロークッカーのように電気を使って一定温度で長時間保温し続けられるわけではない。また保温中水分は蒸発しないので、煮詰めるなら改めてガスにかける必要がある。

 もっと大げさな機構を想像していたが、見れば見るほどシンプルだ。特に保温容器を見ていると「本当に長時間煮込めるほどの保温力があるのだろうか?」という疑問すらわいてきてしまい、半信半疑で試してみることとなった。すると「シャトルシェフ」の保温力は全く侮れないということが判明したのである!

白米を2合炊いてみる

 付属のレシピ集「COOKING BOOK」を見ていたところご飯が炊けると分かった。ひたすら煮込み料理ばかりというイメージが先行していたため、これは意外だった。そこで今回は意外性という点でまずご飯を炊いてみることにした。

 レシピ通り、お米2合、水400ccを鍋で合わせ、まず30分浸しておく。30分後、調理鍋を直接ガスにかけ、沸騰したら弱火にして8分間加熱する。8分後火から下ろし、保温容器へ移して15分以上保温する。その後一旦さっくりと混ぜ、さらに15分フタをして蒸らしてできあがり。所要時間としては炊飯器と同等か、若干短い程度だろうか。

 混ぜあわせる段階でフタを開けてびっくり! お米の粒がピンとしており、想像以上にうまく炊けているのだ。しかもお焦げらしきものまでできていた。実際に加熱したのはわずか8分で、残りの15~30分はシャトルシェフにお任せ。同じく炊飯器を使わずに鍋とガスで炊く場合と比較しても、手間としてはほとんど変わらないうえに、鍋よりも保温時間が長いというメリットが生まれた。とはいっても、なんども開け閉めを繰り返せば冷めやすく、乾燥しやすくなるので、食べきれない場合は速やかに冷凍保存しておくといいだろう。

お米2合、水400ccを鍋に入れて30分置く。お米はミルキークイーンを使用した強火にかけて沸騰したら火を弱め、8分間加熱
すかさず保温容器の中へ移し、15分保温15分後の鍋の中にはふっくらご飯が! ここで一旦混ぜてさらに15分保温する完成したご飯。うっすらお焦げもできていた
炊飯器で炊くのとはまた違ったもっちり感が生まれた炊飯専用の容器ではないので、ご飯がくっついてしまうのは仕方ない慣れないうちはうっかり保温容器にお米を入れるなどの失敗があった。特に液体の場合は間違えないようにしよう

憧れの牛スジ煮込みを作る

 憧れの牛スジ煮込みに挑戦である。今回は牛スジ肉のほかは大根、ごぼう、人参を加えた。本当は豆腐、こんにゃく、ゆで卵も加えたかったが、さすがに調理鍋の容量を考えて諦め、最初に牛スジ多めで作り、少し食べたところで途中で具を足して煮込み直すという作戦を立てた。

 別の鍋で牛スジ肉をゆでこぼし、食べやすいサイズにカットしたら、他の野菜と一緒にシャトルシェフの調理鍋の中へ。調味料も加え、ガスで10分ほど煮込んだら。保温容器に移し替えて1時間保温した。1時間後様子をみたところ、スジ肉は柔らかいものの、まだホロホロというわけにはいかない状態だった。そこで味を調整してからガスで再加熱し、さらに1時間半ほど保温してみた。すると、大根は飴色に染まり、牛スジ肉も良い具合の柔らかさになっていた。試しに入れてみた大きな白い腱の部分もかみ砕けるほどである。

牛スジ肉はゆでこぼしておく他の材料と一緒にシャトルシェフの鍋に移し、10分ほど煮込む鍋を保温容器に移し、1時間待つ
1時間後の鍋の様子火は通っているが、十分煮込まれたとは言い難い歯ごたえであった

 中を見たことで温度が下がってしまったので、再度加熱して再び保温容器へ。思い切ってそのまま朝までおいてみた。するとどれもこれもジューシーで柔らかい! 煮詰めていない分だけ味は少々薄めだったが、初めてにしてはかなりおいしい煮込みが完成した。ふきこぼれも焦げ付きとも無縁な上に、途中保温した2時間半に加えて朝までの数時間分の光熱費はゼロである。これは感激だ。

さらに加熱してから1時間半保温したところ、柔らかさが明らかに違うのが分かったこのままでもかなりおいしくなっていた牛スジ肉朝まで保温した状態
牛スジ煮込みが完成。どれもこれもがみな柔らかい大根にも十分に味が染みこんでいる

 ある程度食べて余裕ができたところへ豆腐を追加し、改めて味を整えてみた。ついでに沸騰させた状態で保温容器に移してから朝まで放置し、温度がどの程度下がるのかもチェック。すると前夜21時45分に96℃だった鍋は、翌朝8時40分頃に49℃になっていた。熱々とはいかないが十分温かい。この保温力に加えて煮込みが進んでいるというのはすばらしいといえよう。この状態で放置することは衛生上好ましくないので再加熱が必要になるが、冷え切っていないため、再沸騰までの時間が短いのもメリットと言えるだろう。

豆腐を加えて温度をチェック。煮込んだ直後は96℃だった翌朝の鍋の中は49℃に下がっていたが、煮込みはすすみ、まだまだ温かい状態が保たれていた

1.6Lの鍋で、チキンカレーはどれだけできる?

 定番のカレーを作ってみた。何を今更という感じがあるのは承知の上。試したかったのは分量だ。本品は1.6Lとかなりコンパクト。二人暮らしでちょうど良いサイズである。しかし若干物足りないのではと不安に思う方も多いはずだ。上のクラスとなると2.6Lか 3.0Lになる。どれを選ぶかは使用頻度や何をどれだけ作るかによるのだが、カレーやシチューが3~4人前できたら、一人暮らしなら作り置きができて嬉しく、二人暮らしなら少しおいてさらにおいしくなったところをいただける量だ。3人なら無駄のない食べきりサイズということになる。そこで強引に具だくさんのカレーをめいっぱい作って見ようというわけである。

 野菜はスーパーでおなじみのカレーセット1袋で、小ぶりのじゃがいも2個、ニンジン1本、玉ねぎ1個を調達。鶏肉は1枚約300g。正直鶏肉が多すぎるが、中途半端に残したくないので使い切ってしまおう。

 フライパンで材料を炒めたら、あらかじめ適量の湯を沸かしておいた調理鍋に移す。鍋自体が小さいので炒め物は難しい。鍋底を焦げ付かせても悲しいので、「シャトルシェフ」の調理鍋はあくまでも煮込みと保温に徹するほうがベターだ。具と水の加減を調整したところ、ギリギリ入ってしまった(取扱説明書によれば8分目までが望ましいようだ)。調理鍋で長時間グツグツ沸騰させるわけではないので、なんとかギリギリ大丈夫そうだ。想像したとおりかなり具が多いが、具だくさんカレー派としては満足である。

今回使用した材料は、カレールー4人前、じゃがいも2個、ニンジン1本、玉ねぎ1個、鶏もも肉1枚具はフライパンで炒める。多いときは入る分だけで調理しようと決めていた結果的に炒めた具が全部入ってしまった

 アクをとりながら5分ほど煮込み、保温容器に移して20分保温。ガス代の節約だ。20分後、ルーを溶かし入れようとフタをあけると、玉ねぎが透き通って柔らかくなっていた。ルーを入れて再度5分ほど煮込む。その後さらに30分~1時間保温して味を染みこませたら完成だ。保温している時間が節約されていると思うとうれしい。

ガスで5分煮込んだ鍋を保温容器に移し、20分保温20分後の鍋の様子。玉ねぎがいい具合に透き通っているルーを溶かし入れ、5分ほど煮込んだら再び保温容器へ移し、30分保温した

 結果的に1.6Lの鍋でも3~4人皿分が完成した。1食分食べてからそのまま残りを保温していたところ、6時間後にはスープの旨みが増し、鶏肉が口の中でホロホロと崩れるようになっていた。しかも相変わらず温かい。冷えた状態で一晩おいたのとはまた違う味わいだ。カレー作りと相性抜群だ。これは良いと確信した。

完成したカレー。ガスで煮込んだ時間はわずか10分程度。ちなみにシャトルシェフで炊いてから冷凍保存していたご飯を使用したので、すべてシャトルシェフ製のメニューということになるさらに数時間後のカレーの様子。この時点で鶏肉はホロホロ。このままどんどん食べたいくらいに!

 こんなシンプルな構造でここまで温度を維持できるとは驚きである。途中で再沸騰させて保温することで、一度作ったおかずが日持ちしやすいのはありがたい。特に調理鍋を直接火にかけられるので再加熱がとても楽だ。また、保温中は沸騰させない分、風味が損なわれにくい気がした。食べる際に温かいのもうれしい。寒くなる季節には特に重宝しそうだ。公式サイトではシャトルシェフ用のレシピも充実している。牛スジ煮込みのバージョンアップもさることながら、保温力を活かして「温泉卵」もつくれるようなので、いろいろと挑戦してみたい。

 覚えておきたいのは、保温調理のため「煮詰める」ことができない点。煮詰めて味を調整するタイプの料理はガスにかけて直接煮込むか、最初からやや味を濃いめにするなどの工夫が必要かもしれない。また、保温調理する際には必ず二人分以上を作ること。少量では温度が下がりやすくなるためらしい。

圧力鍋やスロークッカーとの使い分けは?

 柔らかく煮込めるという点で、圧力鍋やスロークッカーとの使い分けについて悩む方もいらっしゃるかもしれない。

 圧力鍋は短時間で食材を柔らかく調理できる優れもの。時間がかからない分、やはりガス代や電気代の節約につながる便利な調理器具だ。魚の骨などは箸で切れるほど柔らかくできるが、保温力はない。

 スロークッカーは電気を使って長時間コトコト煮込める調理器具。じっくり時間をかけて調理できるという点ではシャトルシェフに似ている。電気代はかかるが温度設定が選べたり、高い温度を長時間維持できるのが特徴で、当然保温時間も長い。ただし、加熱調理中の本体はかなり熱いので、うっかり触らないように注意する必要がある。また、鍋を直接加熱して調理することはできない。

 シャトルシェフの場合、魚の骨まで柔らかくすることはできないが、高温で保温しつづけることで時間をかけてじっくり調理する。時間はかかるが保温力があるため、一定時間内なら熱々状態がキープできる。ただし温度は徐々に下がっていくので、いずれはぬるくなってしまう。保温中に本体を触ってもほんのり温かい程度なので安心だ。鍋ごとガスやIHH調理器で加熱調理できるので、普通の鍋として利用してもよい。

 以上が圧力鍋、スロークッカー、シャトルシェフの大まかなメリット、デメリットである。ライフスタイルと料理にあわせて好きな器具を選んでいただきたい。あまり頻繁に長時間煮込みはしないけど、家族の都合で 1~3時間はアツアツ状態を維持したいなんて方にはシャトルシェフはぴったりではないだろうか。家族がバラバラにおきてきても、お味噌汁を何度も温め直す必要がないとしたら、こんなに嬉しいことはないのだから!





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2009年 9月 25日   00:00