ミニレビュー

遂に理想のヘルメットと出会えた!? キャノンデールのMips対応「Terrus」が超快適

ミニレビューは、生活雑貨やちょっとした便利なグッズなど幅広いジャンルの製品を紹介するコーナーです
Cannondaleのヘルメット「Terrus(テラス) Adult Helmet」。価格は29,000円

自転車用ヘルメットを購入する際、どんな基準で選んでいますか? デザインやフィット感、安全性、それに価格が主な選択の基準となるかと思います。あとは軽さや通気性などが気になる人もいるかもしれません。

筆者の場合は、MTBに乗る機会が多いので、後頭部までカバーするトレイル向けのモデルを選ぶことが多く、頭の形がちょっと特殊(縦長)のため、実際に被ってみてフィット感を確認しています。この2つの基準をパスするモデルはある程度限られるため、デザインと価格を考慮して選ぶ感じです。

そんな中、e-bikeWatchの清水氏から「このヘルメット良いので被ってみて」とおすすめされたのがキャノンデール「Terrus(テラス)」というMTBヘルメットです。早速試してみたところ、かなりフィーリングが良かったのでレビューをお届けします。

フィット感の高さに感動

ヘルメットはShoreline Blue(ショーアラインブルー)というカラー。自分で選ぶと、ついブラックやグレーといった地味な色をセレクトしがちなのですが、このカラーは派手すぎず、それでいてトレイルや街中では目立ちそうなのでいいですね。周囲からの視認性を上げるのも、大事な安全性能ですから。

本体の上部と下部がツートンカラーになっていて、バイザーの部分は色が異なるという手の込んだカラー。ほかにもスタリ―ナイトブラック、フォレストグリーンが用意されています。価格は29,000円で、SM・MD・LGの3サイズ展開
MTB向けのヘルメットなので、後頭部までしっかりカバーしてくれます。舗装路しか乗らない人でも、後頭部を守ることは大事なのでおすすめしたいところ
バイザーの角度は3段階に調整が可能
視界や日差しなどの状況に合わせて動かすことができる

冒頭で書いたように、少し特殊な形状の頭なので、フィットするヘルメットが限られるのが悩みのタネでしたが、アメリカンブランドのヘルメットは合うことが多いので、被る前から期待はしていました。ただ、実際に被ってみると、ただ形状が合うというだけでないフィット感の高さを感じます。

調べてみると、この「テラス」にはBioMap Fitというあらゆる頭の形状に適切にフィットするように開発されたドーム形状と、エルゴフィット・アジャストメントシステムという360度方向から精細に内部のハーネスを調整するシステムが採用されているとのこと。確かに、今まで被ったヘルメットでは段違いで頭に吸い付くようにフィットします。かなりキツめにハーネスを締め付けても頭が痛くならないので、万が一頭を打ったとしてもヘルメットがズレてしまう心配もなさそう。フィット感は安全性にも直結するのだとあらためて感じました。

ハーネスは一般的な後頭部のダイヤルで調整する方式だが、調整幅が大きく幅広い頭の形状に対応してくれそう

ポリカーボネイトの外層と内層のフォームを接着して一体化するインモールド構造を採用しており、安全性が高いのはもちろん、スマートで軽量な仕上がりにもつながっているとか。確かに「テラス」の重量は370g(MDサイズ)と軽量。実際に装着して1日トレイルを走り回ったりしましたが、この軽さとフィット感のおかげで被っているのを忘れるくらい快適でした。フィットしていないヘルメットだと、長時間被っていると頭が痛くなったり、そこまでいかなくても休憩時はすぐに脱ぎたくなるのですが、このヘルメットは途中で脱ぎたいと思うことはありませんでした。

実際に被って走り回り、その快適性を実感。トレイルでも派手すぎないが目立つカラーリングもいい感じ
プロテクション性能は確保しつつも、空気を抜くための穴も設けられているので通気性もなかなか
頭頂に近い部分には小さな蓋があり、これを開けるとネジ穴があり、アクションカムなどを取り付けられるオプションを接続できる。ネジで固定できるので、ガタ付きもなくライディング映像の撮影が可能

脳の損傷を防ぐMipsに対応

安全性について、特筆しておきたいのはMips(ミップス)と呼ばれる機構を搭載していること。Multidirectional Impact Protection System(多方向衝撃保護システムの意)の略で、近年は自転車用だけでなく、モトクロス用やスノーボード用ヘルメットなどで急速に普及しています。

一般的にヘルメットは硬い外層に、衝撃を吸収する内層素材を組み合わせて頭にかかる衝撃を吸収する構造。ただ、転倒時に頭を打つ際にはハンマーで叩くような直線的な衝撃だけでなく、多くの場合は頭部が回転するような方向の衝撃も加わります。この回転運動は脳を揺らすような衝撃となるため、脳震盪や重度の損傷につながるおそれもあるのです。そのため、回転運動を逃がすように働くのがMipsです。

Mips対応のヘルメットには、写真のようなイエローの「Mips」ステッカーが貼られています

具体的には、ヘルメットの内層部分と頭を包むハーネスの間に10~15mm程度全方向に可動するMipsレイヤーが設けられていて、頭にかかる回転運動の衝撃を逃がすように動きます。このわずかな動きが、脳への回転エネルギーを低減し、脳震盪や損傷を防ぐのだとか。

実際の効果のほどは、転倒して実験しなければ体験できないものではありますが、転倒の多いモトクロスなどのレースでは、以前なら脳震盪で再スタートすることができなかったような転倒を喫しても走り続けることができるためMips対応ヘルメットが一気に普及したという話もあります。

近年の研究では、脳震盪は一時的に頭がボーッとしたり記憶が混濁するだけでなく、長期的な脳への悪影響も指摘されているため、自転車乗りとしてもできるだけ避けたいところです。

帽体の内側にMipsレイヤーが設けられていて、脳への回転エネルギーを吸収するしくみ
内側のハーネスとクッションの部分を指で前後左右に押してみると、わずかに動くのが感じられます。この動きが脳への回転エネルギーを逃がすしくみ

自転車用ヘルメットの着用が努力義務化されてから、そろそろ2年になろうとしています。その時期に何となく選んだヘルメットを被っている人は、そのヘルメットに不満を感じたりして買い替えを考えているいるかもしれません。自分の頭の形や使い方などに合わせたヘルメットがほしいなら、キャノンデール製品も候補に加えても良さそうです。MTB用はトップグレードの「テラス」だけでなく、セカンドグレードの「Tract(トラクト)」にも、またロード用でも幅広いモデルでMipsに対応し、安全性の高いヘルメットが選べます。

増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。