【特別企画】
LED電球、どれを買う? 2010

日立「一般電球形 6.5W LDA7L」

~“色重視”なら、白熱電球の代役にふさわしい
by 藤原 大蔵


遅れて登場、白熱電球60Wとの置き換えを図った日立のLED電球


日立ライティング「一般電球形 6.5W LDA7L」。白熱電球60W相当の直下照度を備えているという
 東芝、シャープ、パナソニックなど、国内大手家電メーカーのほとんどがLED電球市場に参入している。

 そんな中、やや遅れを取ったのが日立だ。グループ会社の「日立ライティング」より、昨年よりLED電球を発売しているが、白熱電球60Wとの置き換えを謳った商品は、今年に2月にやっと登場した。各メーカーとも、60Wタイプは昨年から発売していることを考えると、後発グループに入ってしまうのは否めないが、裏を返せばそれだけの準備期間があったとも取れる。

こちらは白熱電球40W相当の「一般電球形 4.1W LDA4L」
 はたして出来栄えはいかほどのものか。実際に購入し、試してみた。価格は60W交換用の「LDA7L」(以下、日立LED:60W)が2,940円、40W交換用の「LDA4L」(以下、日立LED40W)が3,000円と、明るいLDA7Lの方が安いという逆転現象が起きていた(価格は6月4日)。

 なお、日立では調光器対応のLED電球もラインナップされているが、明るさは白熱電球40W相当。他社の調光器対応のLED電球は、60W相当の明るさのものが2009年から登場していることを考えれば、明るさは物足りない。今回は割愛させていただく。

品番LDA7LLDA4L
定格消費電力6.5W4.1W
白熱電球と比較した
明るさ(直下照度)
 60W相当  40W相当 
購入価格
(Amazon.co.jp 6/4時点)
2,940円3,000円
光色電球色相当
口金E26
全光束350lm215lm
調光器対応-
密閉器具対応-
サイズ60×112mm
(直径×高さ)
重量164g130g
寿命40,000時間

※白熱電球は三菱電機オスラムの 「LW100V57W2PZ」(2個パック143円で購入)を使用
※※電球形蛍光灯は、2008 年の特集で 総合的に性能の高かったパナソニックの「パルックボール プレミアQ(クイック)」(1,390円で購入)を使用



【基本スペック編】


サイズ比較

 サイズは60Wタイプ、40Wタイプとも112×60mm(高さ×直径)。白熱電球、日立LED電球、電球形蛍光灯と横並びに並べてみると、背は電球形蛍光灯よりも少し低く、直径は白熱電球よりも大きめになる。

 全体的にフォルムに極端なクセがなく、とても「電球っぽい」自然な形状。光源部が大きく、口金に近づくほど電球らしい曲線的なくびれがある。ゴツゴツとしがちな放熱部も白色に塗装され、やわらかな印象を受ける。重量は、40Wタイプは130gと平均的だが、60Wタイプは164gといくぶん重めだ。

【日立LED:60/40W】
高さは112mm(中央)で、60Wタイプ白熱電球(左)と比べると18mm高い。しかし、大きめの光源部、白い放熱部、そして全体的に電球らしい無理のないフォルムは、いかにも電球っぽい
【日立LED:60/40W】
直径は60mm(中央)。60Wタイプの白熱電球(左)と電球形蛍光灯(右)の直径は55mmなので、やや太めだ。光源部分はガラス製でLEDは全く見えない

器具に取り付けたようす

 白熱電球よりも18mmも背が高いのだが、光源部分が大きめなので、放熱部はかなり覗きこまない限り見えない。ガラス製の電球の先端にはロゴもなく、スッキリと収まっている。他の製品では樹脂製のものが多い中で、高級感も感じられた。全体的にはやや大きめの白熱電球といった印象だ。

【白熱電球:60W】
電球の端が少し覗いている程度の角度から撮影した
【電球形蛍光灯】
電球の直径は白熱電球と同じだが、高さがあるため、内側のらせん状の蛍光管が透けてみえる
【日立LED:60/40W】
LED電球は光源部が樹脂製のものが多い中、ガラス製の電球は高級感がある。覗き込まない限りヒートシンク部は見えない

光の広がりかた

 光源部を中心にほぼ球形に拡散している。白熱電球や蛍光灯と比べれば弱いが、ソケット方向や側面に、他社のLED電球よりもかなり光がまわっており、電球形蛍光灯の光よりも遠くまで届いている。

【白熱電球:60W】
ソケットぎりぎりまで明るい。電球を中心に床面に近いところから光が広がっている
【電球形蛍光灯】
白熱電球と同じようにソケット付近も光が届く。しかし遠くまでは光が届かない印象
【日立LED:60W】
ほぼ球形に光が拡散している。ソケット付近と側面への光の回り込みはLED電球の中では優れており、遠くまで光が届く

【白熱電球:40W】
光の広がり方は60Wのものと同じ
【日立LED:40W】
60Wタイプのものとほとんど同じ

明るさ(55cm直下の照度)

 60Wタイプは385Lxと、他製品と比べると“中の上”ほどの数値となった。電球形蛍光灯と比べても90Lxも暗いことになるが、暖かみのある光色のため、数値の差ほど暗い印象にならなかった。

 一方40Wタイプは215Lxと、数値で言えば白熱電球の半分。光色は良いのだが、40Wの白熱電球のつもりで交換すると、かなり暗いと感じてしまうだろう。

【白熱電球:60W 800Lx】
光源を55mm上方にセットし、直下照度を計測
【電球形蛍光灯 475Lx】【日立LED:60W 385Lx】
LED電球の中で、明るさは中の上ぐらい

【白熱電球:40W 437Lx】【日立LED:40W 215Lx】
LED電球の40Wクラスの中でも暗い部類に入る。白熱電球から取り替えた場合、かなり暗くなってしまうだろう



 後発のLED電球ということで期待したが、明るさは60Wタイプの明るさはLED電球の中では中くらい、40Wタイプでは暗い部類に入った。数値的には取り立ててすぐれているわけではない。

 ただし、暖かみのある光色がいかにも“電球”らしく、好印象。実使用では、落ち着いた雰囲気が期待できそうな印象だ。



【実使用編】

 いよいよ実際の生活シーンに取り付けて、よりリアルな使用感を撮影する。なお密閉器具には対応していないので、浴室や密閉型のインテリアライトの写真は割愛している。

玄関

 白熱電球と並べると暗くなってしまうが、LED電球の中でも影の出方が穏やか。電球らしい暖かみのある光色もあって、人を迎え入れる玄関には似合っている。蛍光灯よりも明るさは落ちるが、やはり点灯した瞬間から明るくなるのは気持ち良く、実用的だ。

【白熱電球:60W】
床面まで光が届き、十分な明るさがある
【電球形蛍光灯】
比較すると色味が不自然に感じる。また、点灯して明るさが安定するまで時間がかかる
【日立LED:60W】
白熱電球に比べればどうしても暗くなってしまうが、やさしい雰囲気で実用的な明るさは得られる


【白熱電球:40W】
玄関としては、もうすこし明るさが欲しいか
【日立LED:40W】
40Wの白熱電球で満足していたとしても、これはさすがに暗い。1灯では物足りない

浴室

 40Wタイプは密閉型器具に対応しているため、浴室にも設置。しかし、正直に言って不向きだ。浴室用の器具にLED電球を閉じ込めてしまうと、さらに明るさが落ちてしまう。清々しい雰囲気も感じられず、実用的とは言えない。

【白熱電球:40W】
浴室全体に光は行き渡るものの、少し物足りない明るさだ
【日立LED:40W】
白熱電球よりもさらに暗くなるため、快適な明るさは得られず、実用的とは言いがたい

トイレ

 トイレのような狭い空間ならば、多少暗くてもあまり問題はなさそうだ。撮影時、60Wタイプの白熱電球に合わせているので、写真の印象はどうしても暗くなってしまうが、肉眼では清潔感もあり、快適に過ごせる明るさが得られる。

 トイレは短時間しか使用しない場所なので、点滅回数が寿命に影響する電球形蛍光灯を使用した写真は割愛する。

【白熱電球:60W】
明るく気持ちよく過ごせる
【日立LED:60W】
白熱電球よりも暗くなるが、肉眼では十分な明るさが感じられた

【白熱電球:40W】
少し暗いが狭い空間なので、十分に明るく感じる
【日立LED:40W】
明るさは物足りなく、実用的とは言いがたい

リビングルーム

 透過タイプの場合、光の広がり感がLED電球の中では最も良く感じられた。器具のシェード全体がくまなく光っており、器具の持つ印象はほとんど変わらない。天井からの反射光もある程度期待できる。

 もちろん白熱電球や電球形蛍光灯と比較すると暗いには違いないが、そのぶん落ち着いた雰囲気が得られる。リラックスするリビングルームにふさわしい光色だ。

 非透過タイプも同様に好印象。テーブル面は十分な明るさが得られ、天井からの反射光がある程度壁面へも届く。コントラストのある落ち着いた雰囲気が得られる。

 

【白熱電球:60W×2 透過タイプのシェード】
光が部屋全体に行き渡り十分な明るさが得られている
【電球形蛍光灯×2 透過タイプのシェード】
白熱電球のように上部、側面へも光が広がる。しかし、照らされた面はLED電球よりも暗い印象で、また色被りによりテーブルなどがくすんで見える
【日立LED:60W×2 透過タイプのシェード】
天井や周りからの反射光は、LED電球の中では健闘している。白熱電球と比べると当然暗くなってしまうが、くつろぎの空間の明るさとしては十分な明るさが得られるだろう

【白熱電球:60W×2 非透過タイプのシェード】
十分な明るさが得られ、コントラストのある空間になっている
【電球形蛍光灯×2 非透過タイプのシェード】
白熱電球のように上部へも光が広がるが、透過タイプと同様、色味はいまひとつ
【日立LED:60W×2 非透過タイプのシェード】
LED電球の中では光の拡散性が良く、天井からの反射光も期待できる。暖かみのある光色で、くつろぎの空間には好印象

リビングルーム (インテリア照明)

 40Wタイプは密閉型器具の取り付けが可能なので、リビングの密閉型インテリア照明などにも取り付けられる。光の拡散性が良いため、光が器具の上部にあまり偏らない。光色がとても良く、自然で落ち着いた印象が演出できる。ここまでさんざん「暗い」と言ってきたが、アクセント照明ではちょうど良い明るさだ。間接照明など他の照明とも合わせやすいだろう。

【白熱電球:40W】
アクセント照明として使用するには明るすぎるか
【日立LED:40W】
自然な暖かみのある光色が空間をやさしく照らし出す。器具の光のムラはほとんどなく、アクセント照明としてちょうど良い明るさが得られる。他の照明とのバランスもとりやすいだろう

食事の風景

 結論から言えば、食卓にふさわしいLED電球と言える。明るさは抑え気味になるため、白熱電球と並べると華やかさは落ちる。しかし、色の再現性が良く、食べ物全てがおいしそうに見える。2枚の皿における白色の違いもわかるうえ、くすんだグリーンのランチョンマットの色の再現性もとても自然。落ち着いた色調の食卓が演出できる。

【白熱電球:60W】
全体的においしそうに見える
【電球形蛍光灯】
左右の写真と比較すると、色味のバランスが崩れ、食卓全体がくすんだ印象に見える
【日立LED:60W】
演色性が良く、食べ物が全ておいしそうに見える。色を気にするシーンでも十分に活用できるだろう。細かいことを言うと、皿の白い部分に赤っぽさは多少感じられるが、それ以外はまったく問題ない



従来電球との交換で、元が取れるのは【10カ月後】

 白熱電球と交換した場合、10カ月で元が取れる試算結果となった(1日8時間使用と仮定)。LED電球の中では2千円代の後半と、低価格化が進む市場ではやや高めではあるが、しっかりと1年以内で元が取れてしまうのは驚きだ。なお、40Wタイプは1年3カ月で元がとれる。

 一方、電球形蛍光灯との取替えの場合、元が取れるのは51カ月(4年3カ月)と、電球形蛍光灯の寿命が迫る頃にやっと元が取れる。これは他のLED電球と比べてもダントツに長い。いくらLEDが繰り返しの点滅に強いなどのメリットがあるとはいえ、現在使用している蛍光灯で満足しているのなら、無理して交換する必要はないだろう。

【日立LED:60W】
従来の光源と比較した“いつになったら元が取れるか”試算
使用期間消費電力
(実測)
1カ月3カ月半年
(6カ月)
9カ月10カ月1年2年4年4年3カ月
日立LED:60W5W2,964円3,013円3,086円3,159円3,183円3,232円3,524円4,108円4,181円
白熱電球56W370円966円1,932円2,897円3,195円3,792円7,583円15,166円16,132円
電球形蛍光灯10W1,445円1,554円1,719円1,883円1,938円2,047円2,704円4,018円4,182円
※表中の金額は、電球代と電気代をプラスした「維持費」  ※1日の使用時間は8時間と仮定
※白熱電球には、4カ月ごとに電球代を加算する (切れた電球代の購入費として) ※電気代は1kWh=22円で計算


【日立LED:40W】
従来の光源と比較した“いつになったら元が取れるか”試算
使用期間消費電力
(実測)
1カ月3カ月半年
(6カ月)
9カ月1年1年3カ月2年4年
日立LED:40W3W3,015円3,046円3,091円3,137円3,183円3,228円3,365円3,730円
白熱電球37W269円665円1,329円1,994円2,587円3,252円5,174円10,348円


【白熱電球:60W 56W】【電球形蛍光灯 10W(安定時)】【日立LED:LDA7L 5W】

【白熱電球:40W 37W】【日立LED:LDA4L 3W】



色を重視する場面では、白熱電球の代役にふさわしい

 60Wタイプは、何と言っても白熱電球のような自然な暖かみのある光色が特徴。色被りも、ほとんど感じられなかった。明るさに若干の不満は残るが、色に限れば白熱電球に近いLED電球ということがいえそうだ。

 また、他製品よりも光の広がりがあり、影が比較的柔らかい点も特徴。トイレや玄関でも十分に使えるだろう。個人的には、いかにも電球らしい柔らかなデザインも好印象だった。電球が露出するような器具との相性も良さそうだ。

 一方40Wタイプは、光色は60W同様とても良いのだが、白熱電球と置き換えるとかなり暗いため、玄関や風呂場など一定の空間を照らす用途には向きそうにない。アクセント照明や間接光など、さほど明るさが求められない補助照明の用途として使うのをお勧めしたい。

 電球形蛍光灯との置き換えには、コスト面を重視するならお勧めしない。元を取るまでの時間が、他社製品よりもかかってしまうからだ。現状の電球形蛍光灯で十分満足しているのなら、寿命がきてからでも遅くはない。

 やはりメイン用途となるのは、リビングや食卓など、色味や雰囲気を大事にするような場所だろう。そういった場では、白熱電球の後継にふさわしいLED電球と言えそうだ。



日立「一般電球タイプ 6.5W/4.1W」はこんなLED電球

・白熱電球のような高い演色性。食卓やリビングなど色味や雰囲気が大事な場所に
・拡散性があり影も柔らか。トイレや人を迎え入れる玄関にも使える
・60Wタイプでは、白熱電球と交換で元が取れるのは【10カ月】(1日8時間使用)
・40Wタイプはインテリアなど、全体照明よりも補助照明としてお勧め




2010年6月8日 00:00