家電製品ミニレビュー

ティファール「コンパクトIH」

~置き姿が美しい卓上IHクッキングヒーター
by 阿部 夏子
ティファール「コンパクトIH」

 鍋料理が大好きで、この季節になると週に1回は鍋を食べている。食卓に鍋を出して、みんなで囲んで食べるのは、いつもとは違う楽しさがあるし、準備も後片付けも楽なのでいうことない。ここ数年は後片付けの手間の少なさが気に入って、卓上タイプのIHクッキングヒーターを愛用している。

 これまで複数台を使ってきたが、いずれも色は白で、家庭的なデザインのものが多かった。それに特に不満を抱いていたわけではないが、ティファールの発表会で“黒い”IHクッキングヒーターを見て、目が釘づけになってしまった。艶のある表面のガラスプレートには、細かい模様まで付いていて、調理家電というよりもオブジェか何かのようなのだ。

 とにかく、デザインが凝っている。考えてみると、卓上IHクッキングヒーターは食卓に出して使うもの。テーブルのデザインや、クロスにこだわっている人なら、IHクッキングヒーターのデザインにもこだわりたいというのは、当然の流れなのかもしれない。

 というわけで、今回はティファールの卓上IHクッキングヒーター「コンパクトIH」を紹介しよう。


メーカーティファール
製品名コンパクトIH
希望小売価格21,000円
購入場所Amazon.co.jp
購入価格14,829円


 プロダクトデザイナーの安積伸(あづみしん)氏によるデザインのこの製品。印象を一言で表現すると「高級感」だ。本体は、艶のある黒で、表面はガラスプレートが採用されている。このガラスプレートは、耐久性やデザイン性で定評のあるドイツのショット社のもの。プレート部分から、操作部分に向けて絞ったような面白い形状を採用している。

 本体機能は、ごく一般的なもの。6段階の火力調整のほかに保温モード、そのほかに3つのコースが搭載されている。

 コースは140~200℃まで10℃単位で温度を設定できる「揚げ物」コース、弱火でじっくりと調理するとき用の「煮込み」コース、高火力で一気に加熱する「湯沸かし」コースの3つだ。火力調整モードのときもコース選択時も、運転状況が液晶画面に表示されるため分かりやすい。

 そのほか、9時間55分まで設定できるタイマー機能も付いている。

製品パッケージトッププレートはショット社のもので、艶がある仕上がり横から見たところ。杯のような独特の形状をしている
操作パネル部分電源コードは専用の袋に入っている

IH用の鍋はホーロー製がおすすめ

 IHクッキングヒーターを初めて使う人にとって、一番ネックとなるのが鍋の問題だ。IH対応の土鍋などはかなり値段も張るし、いつも使うものではないのに、そこまでお金をかけるのはちょっと――という人も多いだろう。

 そんな人にお勧めしたいのが、ホーロー製の鍋。2,000円以下で購入できるし、直火にももちろん使える。何より、ポイントなるのが、ホーロー製の鍋の場合、デザインがちょっとかわいらしいのが多いのだ。白や赤など、鉄製の鍋に比べて柔らかい色を使っていることが多く、卓上に出すのも恥ずかしくない。今回は近所のスーパーで、1,900円だった和平フレイズの「Do! なべ」を購入した。

スーパーで2,000円以下で購入した和平フレイズの「Do! なべ」真っ赤なホーロー製の鍋だコンパクトIHにセットしたところ

まずは大好きなすき焼きから

コンパクトIHを食卓に置いたところ

 まず、作ったのは鍋料理の定番「すき焼き」だ。食卓にコンパクトIHをセッティング置くと、高級感があって、いつもの家庭的な鍋料理のイメージとは違う感じ。本体デザインが優れているので、テーブルセッティングにも凝りたくなってしまう。

 使い勝手の方も申し分ない、材料をあらかじめ下ごしらえして、加熱ボタンを押すと、すぐに牛脂(牛の脂で、すき焼きなどを作る時に油代わりに用いる)が溶けてきた。まずは火力を一番強くしてお肉から炒め始め、その後に野菜を加えていく。

 火力が緑色のインジゲーターで表示されるので、その時の状況が分かりやすく火加減が楽に行なえる。また安全性にもしっかり配慮した構造で、加熱中のサインや、鍋なしサインなどが分かりやすく画面に表示される。ここらへんの造りはさすが、ティファールといった感じだ。

火力がインジゲーターで示されるため分かりやすい。加熱中は「高温注意」の表示が常にある加熱中に鍋をどかすと、「鍋なし」サインが表示される。その時の状況が画面にわかりやすく表示されるので安心

 卓上IHクッキングヒーターが良いのは、後片付けが楽というところ。コンパクトIHでもそれは同様で、トッププレートの上をさっと拭くだけであっという間にきれいになってしまう。

すき焼きを作る火力も強く、あっという間に火が通るトッププレートがフラットなので、使用後の掃除も楽に行なえる

いつもとは違うちょっとおしゃれな洋風鍋も

 せっかくおしゃれなクッキングヒーターを使っているので、いつもとは違う鍋料理を作ってみよう――というわけで、本体付属のクッキングブックに載っていた「ブイヤベース」を作ってみることにした。ブイヤベースを自宅で作るのはこれが初めて。レストランなどで食べるものというイメージが強く、作るもの難しいと思っていた。それが、実際に作ってみて感動! 本格的な味が簡単に再現できてしまった。

 材料は玉ねぎ、ニンニク、ジャガイモ、有頭エビ、ムール貝、タラなど白身の魚、オリーブオイル、白ワイン、塩コショウ、トマト缶、サフラン、塩コショウ。

本体付属のレシピブックブイヤベースに初挑戦ブイヤベースの材料

 今回、近所のスーパーにムール貝とサフランは売ってなかったので、ムール貝は渡りカニに変更、サフランはナシで作った。レシピにもサフランがない場合はなくてもいい、ムール貝の代わりにアサリなどの貝類でも可とあったので、そこまで神経質になる必要はないだろう。ただ、魚から出るダシのことを考えると、甲殻類(エビやカニ)あるいは貝類を使うことをお勧めする。

 作り方は、まずニンニクをオリーブオイルで炒めて、そこに野菜を加えて、しんなりしたら魚類と、ワインを加える。強火で炒めたら、トマト缶と水を入れて10分ほど煮込む。あとは塩コショウで味をととのえたらできあがりだ。

まずは野菜をカットオリーブオイルで炒める魚介を入れたらワインなどの調味料を順番に加えていく
レシピでは火力調節の指示が明確に出ているので、IH調理器初めての人でも分かりやすい

 レシピには火力調整の指示までしっかり書かれているので、迷うことなく作ることができた。IHクッキングヒーターを初めて使う人にとって、一番迷うのは火力調整。炎が目で見えないので、どれくらいの火力になっているか分かりづらいという問題がある。そういう時は、このような付属のレシピに沿って一品作ってみるのがお勧めだ。指示通りに作れば失敗がないし、火力の強さをだいたい掴むこともできる。

 ブイヤベースを初めて作った感想は「もっと早く作るべきだった!」ということ。調理時間は15分ほどなのに、魚のダシがこれでもかというくらい出ていて、本格的な味だ。渡りガニなど、食べるところが少ないため、これまであまり買ったことはなかったが、こうやって使うものなのかと思い知ったような気分だ。

 一通り、魚をいただいたら、パスタやごはんを入れて“シメ”るのがお勧め。ブイヤベースのスープは魚のダシが存分に出ているので、それだけでスープとして楽しめるくらいだ。今回は、じゃがいもでできたショートパスタ「ニョッキ」を入れた。

できあがり! 野菜も摂りたいので自宅にあったほうれん草も入れた甲殻類のダシが濃厚で、自宅で作ったとは思えない味シメにはじゃがいもでできたショートパスタ「ニョッキ」を入れた

温度が設定できるから揚げものも失敗知らず

 次は「揚げ物」コースを使ったトンカツを作った。実はIHクッキングヒーターは、揚げ物を作るのにぴったりの調理機器だ。ガスコンロと違って、センサーで温度管理をしているため、適温で揚げ物を作れるし、油が高温になりすぎるということもない。

 今回は180℃に温度設定して、じっくりとトンカツを揚げた。ガスコンロで作ると、ついつい強火にしてしまい、外側は焦げて、中身は半生ということが良くあるが、コンパクトIHなら温度で火力を設定できるので、安心。目標温度に達するまでは「予熱」という表示が画面に点滅するので、早く入れすぎるということもない。

 完成したトンカツは、いつも自分で作るトンカツに比べてパン粉の色は薄めなのに、中までしっかり火が通っていて、ジューシーな仕上がり。温度がしっかり管理できているので、油っぽくなく、サクッと仕上げることができた。

揚げ物コースで温度を180℃に設定センサーがしっかり油の温度を管理してくれるので失敗が少ないできあがり。パン粉の色は薄めだが、中までしっかり火が通っている

煮込みコースを使ってテーブルで熱々おでん

 冬の寒い時期になると登場回数が増えるのがおでんだ。我が家では、週末に大きな鍋で一気に作って、その後3日間に渡って食べ続けるなんてこともしばしば。お皿に盛って出すよりも食卓に鍋を出してきて、加熱しながらアツアツを食べるのがおいしい。そんな時に便利なのが「煮込みコース」だ。弱火で、あつあつおでんをキープできる。

 鍋を一度直火で温めてからコンパクトIHに移動して、煮込みコースを選択。弱火で加熱しているので、沸騰することなく、温かいままをキープしてくれるので、おでんのような料理にはぴったりのコースだ。

寒い季節に嬉しいおでん食卓にIHクッキングヒーターを出せば熱々のおでんが楽しめる

和食だけに限らず幅広いシーンで

 これまでにないデザイン性の高さで、食卓に置くと独特の存在感を放つ製品。IHヒーターを中心にテーブルコーディネートしたい――こんな風に思えるのもコンパクトIHならではだろう。これまで卓上料理というと「鍋」という風に思いこんでいたが、こんな風にデザイン性の優れた機器があるのなら、和食の鍋料理に限らず、色々なシーンで活躍しそう。

 本体に搭載されている揚げ物コースや、煮物コースは普段の料理でも活用できそうだし、ブイヤベースなど普段とは違うちょと豪華な料理を作るのにもぴったり。温度制御や、タイマー設定など、ガスコンロにはないIHならではの機能も魅力だ。まだまだ寒さが続きそうな今年の冬、今後も使用頻度が高くなりそうな1台だ。



・家電製品ミニレビュー
パナソニック「土鍋風鍋付きIH調理器 KZ-PG30」
(2008年12月15日)
家電製品ミニレビュー
第349回:ドウシシャ「MA-IH0701」
(2008年03月24日)
・家電製品ミニレビュー
第248回:エレクトロラックス「EIH1628」
(2007年10月17日)



2011年1月18日 00:00