家電製品ミニレビュー

タニタ「カロリズムスマート」

~小さくなった活動量計で、普段から運動不足を克服
by 正藤 慶一
タニタ「カロリズムスマート」のパッケージ

 秋といえば、食べ物がおいしい季節。魚やお米など……たくさんおいしいものがあるが、ついつい食べ過ぎてしまい、おなかまわりが気になってしまうというのもよくある話だ。

 そんな思いをしてしまった人、あるいはしそうな人にお勧めしたいのが、タニタの活動量計「カロリズムスマート」。ダイエットするほどではないけれど、ちょっと体重が気になってきたというケースにピッタリの製品だ。

 カロリズムスマートは、歩行だけでなく、「洗濯物を干す」や、「パソコンを使う」など、日常生活すべてにおける消費エネルギー(消費カロリー)が計測できるという機器。“世界初の一般用途向け活動量計”を謳い文句に、2009年4月に初代「カロリズム」が発売されたがが、2010年5月、第2弾となるこのカロリズムスマートが発売された。

 初代カロリズムについては、以前長期レビューにて取り上げたが、このカロリズムスマートの実力はいかほどのものだろうか。試してみよう。


メーカータニタ
製品名カロリズムスマート
品番AM-121-BL
価格オープンプライス
購入店舗Amazon.co.jp
購入価格5,980円

“活動量計”って何? 歩数計とは違うの?

見た目は歩数計のようだが、上半身の動きを含めた消費エネルギーが計測できるなど、歩数以外の運動量が計測できる。それが活動量計だ。基本的に上半身に装着するものになる

 新製品の特徴を説明する前に、まずは“活動量計”という、聞き慣れない製品の概要を簡単に紹介しておこう。既にカロリズムをご存じという方にはクドい説明になるので、この項は読み飛ばしていただきたい。

 カロリズムは、本体内に搭載した3Dセンサーと、タニタ独自の解析アルゴリズムにより、上半身の体の動きを元に、消費エネルギーを算出するというもの。つまり、歩数はもちろん、「洗濯物を干す」や、「パソコンを打つ」など、日常生活の消費エネルギーが計測できるのだ。

 一見すると歩数計のようだが、性能はカロリズムの方が高い。前述の通り、さまざまな体の動きによる消費エネルギーが取得データできるため、一般的な歩数計にはない「総消費エネルギー量」「安静時代謝量」といったデータも取得できる。もちろん、一般的な歩数計で計測できる「歩数」「活動エネルギー量」「脂肪燃焼量」「歩行距離」「歩行時間」「エクササイズ(身体活動量)」「メッツ(活動強度)」といったデータもカウントできる。

ここからは、カロリズムスマートで測定・表示できるデータを写真で紹介しよう。まず、初期画面が「24時間カロリズムグラフ」。目盛りが上がるほど、活動量が多いことを示す。中央のラインは、安静時の代謝量の2倍のラインで、このラインを多く超えるほど、効果的に運動できたことになる本体右側の丸いボタンを押すと、画面が切り替わる。写真は「総消費エネルギー」。午前10時からの累計消費カロリーを表示する。基礎代謝も含まれるので、何もしなくても増えていく活動エネルギー量」は、身体活動を行なったことによって消費したカロリーのこと。要は、運動したことで使ったエネルギーのことだ。こちらには基礎代謝が含まれていない
次は「脂肪燃焼量」が表示される。身体活動によって燃焼した脂肪量のことで、つまり、この数値が高ければ高いほど、ダイエット効果があるということになる歩数」もカウントできる歩行距離」は、歩数と歩幅を元に算出した距離。歩数計でもお馴染みの機能だ
歩いた時間を表示する「歩行時間エクササイズ」は、身体活動量を示す単位のこと。活動強度を表わす単位「メッツ」が3以上の運動に、活動時間を掛け合わせたものになるエクササイズ達成度」は“1週間で23エクササイズ”を100%とし、現時点で何%達成できているかを表示するもの。厚生労働省では、これを毎週クリアすることが、健康的な生活を送る上で重要としている
週間エクササイズグラフ」は、1週間のエクササイズ量が一覧できるグラフ。日曜日から表示されているが、月曜日や土曜日から表示することも可能メッツ」は、身体活動の強さを示す単位で、カロリズムでは過去1分間のメッツが表示できる。安静時は1メッツとなる。運動した後にこのメッツの画面を見れば、かなり高い数値が表示されているはずだ

 その一方で、使い方は普通の歩数計と同様に、体に身につけているだけと簡単。上半身の動きをしっかりと計るため、上半身に装着するのが良い、という使用上の注意はあるが、装着しているだけでカウントしてくれる、というのは基本的には歩数計と同じだ。

 さて、自分がどれだけ運動したかを確認するには、本体モニターにデフォルトで表示される「24時間カロリズムグラフ」を見れば良い。これは、1日の身体活動量を1時間ごとに棒グラフで表示するというもので、グラフが最大の7目盛りに近づくほど、運動をしているということを表わす。目盛りが1のままだと「安静にしていた状態」――つまり、何も運動していない状態のことで、人間が自然に消費するエネルギー「基礎代謝」しか活動していないことになる。要は、カロリズムを持って体を動かし、このグラフをどんどん積み重ねることが、ダイエットへの近道、ということになるわけだ。

「24時間カロリズムグラフ」をどんどん積み重ねていくことが、ダイエットへの近道になる。写真は私のとある1日のグラフ。運動していないっすね!ちなみに装着し忘れると、グラフはずっと1のまま(写真上)。消費カロリーも基礎代謝のままだ(下)
定期的にチェックをしたいのが「エクササイズ達成度」。これが毎週100%を超えていれば、厚生労働省の健康基準に適っていることになる。ちなみに木曜日のデータがないのは、装着するのを忘れていたから

 モニターにはこのほか、消費エネルギー量や脂肪燃焼量といった数値を画面上に表示できるが、その中で注目したいのが「エクササイズ達成度」。極端にいえば、このエクササイズ達成度が毎週100%を越えていれば、それなりの運動ができていると見なせるからだ。

 エクササイズについては、前回のレビューで詳しく紹介したので、詳しい説明は端折らせていただくが、簡単に言えば身体活動量を数値化したもの。この数値が高ければ高いほど、ダイエット効果も高いことになるが、厚生労働省では「1週間に23エクササイズ」が、健康的な生活を送る上で基準的な数値としている。このエクササイズ達成は、1週間の身体活動量が、23エクササイズという基準をどれだけクリアしているかをパーセンテージで表示してくれるものなのだ。

 何も知らずに手にすると、高機能すぎて取っつきにくい印象を受けるかもしれないが、基本的には「24時間カロリズムグラフを参考に、運動量を増やす」、「エクササイズ達成度を見て継続して運動できているかを確認する」という2点を押さえておけば、日々の生活の中で運動量を増やし、ひっそりとダイエットに勤しむことができる。これが、カロリズムの良いところだ。


サイズは従来の約半分とコンパクト。マグネットで簡単に装着可能

 冒頭でも記した通り、このカロリズムスマートは、カロリズムシリーズとしては第2弾となる製品。初代と比べてどこがグレードアップしているのだろうか。ここからは変更点を見ていこう。

 一番の違いは、本体そのもののデザインだ。初代カロリズムは、サイズが30×13×88mm(幅×奥行き×高さ)だが、カロリズムスマートの本体サイズは55×11.8×29mm(同)と、ほぼ半分のコンパクトサイズになっている。その分、ディスプレイのサイズも小さくなっており、デフォルトでは「24時間カロリズムグラフ」と時刻のみが表示されるのみ。初代ではカロリズムグラフとともに基礎代謝と消費エネルギー数も表示されていたが、スマートではカロリズムグラフに数値を表示することで、小型化しているようだ。なお、初代はプラスチックだった素材も、アルミに変更されている。

初代カロリズム(上)との比較。幅はほとんど半分になっているフリスクの箱よりも小さい!
ストラップ穴は本体左側にあるボタン類は右側に配置されている

 このコンパクトなデザインに変わったことで、軽くて邪魔にならず、使い勝手は非常によくなった。実は昨年モデルの場合、浅いポケットに入れると本体がポケットから顔を出す、なんてこともあったが、カロリズムスマートならそんなことはまったくない。フリスクの箱よりも小さく、消しゴムとほぼ同サイズなので、スッとポケットに入る。存在がまったく気にならないのだ。

 コンパクト性に加えて、装着性も高くなった。実は製品パッケージには、衣服に付けるための補助器具が付いているのだが、初代はクリップだけだったのが、スマートからはマグネットが加わった。これが便利! Tシャツなどポケットのない服にも、マグネットで服を挟めば、ちゃーんと付けられる。マグネットを肌がこすれてしまうのがちょっと気になるが、初代はポケットのない服にはほとんどお手上げ状態だったことを考えると、ものすごく便利になったのが実感できた。

電池カバーにマグネット付き(上)が加わったのがうれしい。これで、ポケットのない服にも装着しやすくなったストラップを付ければ、マグネットだけを紛失してしまうことはないだろう

 ただし、小さくなりすぎて、個人的に困ったことが何度かあった。小さくてその存在を忘れてしまい、Yシャツの中に入れていたのを忘れてそのまま洗濯したり、どこに置いているのかを忘れて大あわてで探してしまったことが度々発生した。これは私がだらしない人間というのが大きく影響しているだろうが、初代カロリズムではそんなことは一度もなかった。私と同じことをしでかしてしまいそうな人は、置き場所をあらかじめ決めたりなどの努力をしておきたい。なお、洗濯機で洗っても、データが消えたり故障したりということはなかったが、取扱説明書では「防水ではない」と書かれている点はご承知いただきたい。


スプリットモードで、洗濯物干しが意外と運動になることが判明

丸ボタンを長押しすることで、任意の区間の消費エネルギーを計測する「SPLITモード」が起動

 カロリズムスマートに搭載されたもう1つの新機能は、区間ごとの計測ができる「SPLIT(スプリット)」モードが追加されたこと。初代カロリズムではこの機能がなかったが、これを使えば、任意のシチュエーションのみの身体活動量が計れるというわけだ。基本的にはこの2つが改良ポイントとなる。

 前から使ってみたかったこの機能だが、いざ使ってみるとやっぱりおもしろい。「コレしてるときって、どんだけ運動しているんだろう」というのがすぐに分かるのだ。しかも、総消費エネルギー/活動エネルギー/脂肪燃焼量/歩数/歩行距離/歩行時間/エクササイズ/メッツと、通常とほとんど同じデータが取得できるという徹底っぷりだ。

 以下に、日常生活におけるSPLITデータを取得したので、参照していただきたい。個人的には、洗濯物干しが意外とエネルギーを消費していることに驚きを覚えた。また、自らの足で歩かないと、脂肪を燃焼するのは難しいようだ。


【日常生活での消費エネルギー】
生活
行動
所要
時間
総消費
エネルギー
活動
エネルギー
脂肪
燃焼量
歩数移動
距離
歩行
時間
エクササイズ
(活動量)
メッツ
(活動強度)
歩く7分39kcal29.9kcal1.0g877歩0.58km7分0.5EX3.9
バスに乗る7分12kcal4kcal0.0g15歩0.00km0分0.0EX1.3
電車に乗る11分14kcal1.3kcal0.0g0歩0.00km0分0.0EX1
新幹線に乗る2時間25分187kcal10.3kcal0.0g55歩0.03km1分0.0EX2.5
洗濯物を干す10分32kcal19kcal0.1g9歩0.00km0分0.3EX2.7
ゲームをする1時間2分91kcal16.4kcal0.0g9歩0.00km0分0.0EX1

【地下鉄六本木駅での、改札~乗車口までの消費エネルギー(地下1~5階)】
生活行動所要
時間
総消費
エネルギー
活動
エネルギー
脂肪
燃焼量
歩数移動
距離
歩行
時間
エクサ
サイズ
メッツ
階段(のぼり)2分15kcal11.4kcal0.5g306歩0.22km2分0.2EX4.5
階段(くだり)2分10kcal8.4kcal0.3g281歩0.13km2分0.1EX4
エスカレーター(のぼり)2分8kcal5.0kcal0.1g98歩0.06km1分0.0EX1.5
エスカレーター(くだり)2分6kcal3.2kcal0.0g108歩0.06km1分0.0EX2
エレベーター(のぼり)2分6kcal3.2kcal0.0g131歩0.04km1分0.0EX1
エレベーター(くだり)2分7kcal4.3kcal0.1g139歩0.05km1分0.0EX1

 このモードは「へー、こんだけエネルギーを消費しているのか」という、単純ではあるが意外と気付かなかった面白さがある。「エスカレーターではなく階段を歩く」というのが運動になるというのは分かっているが、それが「何kcalの差」と、数値で明らかに示されるのだ。日常生活には、意外とエクササイズできるポイントがあるというのが、このスプリットモードを使えば分かるのである。

 なかなかおもしろい機能だが、データの保存は1つのみで、複数に対応していないのは残念。複数の取得データを画面上では比較できないのだ。実はこれ以外にも、カラオケに行った時のデータも取っていたのだが、データをメモする前に誤操作で上書きしてしまい、それ以前のデータが消えてしまった。できれば複数のデータ計測に対応してほしいところだ。

SPLITモードの起動中は、画面の「SPLIT」という文字が点滅する駅ではエスカレーターを選びがちだが、SPLITモードのおかげで、階段の方がエクササイズになることがよくわかった

競合他社も活動量計に参入。“元祖”カロリズムのメリットとは

パナソニックからも活動量計「デイカロリ」が登場している。こちらは、任意で設定したダイエット目標の達成率がパーセンテージで表示される点が特徴

 今年で2年目となった“活動量計”カロリズムだが、実は競合他社からも同様の製品が登場してきている。特に、パナソニックが3月に発売した活動量計「デイカロリ」は、ラインナップも3機種あり、カラーリングも豊富と、カロリズムのライバル的な存在だ。

 このデイカロリとカロリズムの大きな違いは、デイカロリはダイエットの目標を設定し、それに対してどれだけ運動をすればよいかをパーセンテージで表わす「達成率」表示機能が備わっている。要は、「痩せる!」ということに重点を置いた商品なのである。

 デイカロリについては、過去に取り上げたレビューを見て欲しいが、去年からカロリズムを愛用している自分としては、贔屓も含めてカロリズムの方が性に合っているように感じる。私は現時点でダイエット目標もないし、目標値を設定されると「やんなきゃいけない」という意識になってしまい、逆に運動しなくなる気がする。

本来の目的とは離れるが、カロリズムグラフを見て、「この日はああだったなぁ」と思い出せるのが面白いところ。写真は、家のベランダを掃除した時のもの(12~16時くらい)

 もう1つ、個人的に感じたカロリズムのメリットとしては、これは活動量計という本来の使い方からちょっと外れるが、過去の24時間カロリズムグラフを見て思い出に浸れること。やたらグラフが高い日を見ては「あ、あの時は発表会で忙しかったなぁ」と思い返せるのだ。14日だけしか残せないのは残念だが、日々の“足跡”のようなものを振り返るのは、意外と面白い。

 カロリズムスマートは、日常生活のすべての活動量を計測して、日々のちょっとした運動に役立てられる基本性能はそのままに、小型で使いやすく区間計測もできるなど、より便利に進化した製品だ。小型化を望んでいた初代カロリズムユーザーはもちろんお勧めだが、これは活動量計というものの存在をまだ体験していない人にこそ使ってほしい。最初に付けた時は、日常生活であまりに運動をしていないことに気付き、ショックを受けるはずだが、その後は生活のちょっとしたところから運動したくなるはずである。

 「最近、運動していないなー」と思っても、運動をしようとする第一歩を自ら踏み出すのは難しい。しかし、カロリズムスマートがあれば、その第一歩が簡単に踏み出せるはずだ。





2010年9月30日 00:00