家電製品ミニレビュー

東京ユニコム「からりんこ」

~自宅で簡単にドライフードが作れる食品乾燥器
by 石井 和美
東京ユニコム「からりんこ」

 最近、干し野菜や干し果物といった食品に注目が集まっているようだ。食品を乾燥させることで食品の旨みがアップし、保存食にもなるということで、専門のレシピ本などが多く出版されており、テレビでも調理法が紹介されている。

 市販の乾燥野菜や果物では、糖類や油などが添加されているものもあるが、自宅で作れば、自然のままの味わいを楽しむことができる。

 ただし、自宅で作る際には、気温や湿度に左右されたり、野菜や果物を干している時に、虫やホコリが付く心配があった。

 そこで、果物や野菜を乾燥する食品乾燥器の出番である。食品乾燥器は、天候に左右されず、自宅で気軽に食物を乾燥できる調理家電なのだ。

 食品乾燥器はアメリカではデイハイドレーターと呼ばれるポピュラーな家電で、さまざまなタイプのものが売っている。日本でも最近になって注目されてきた製品だ。我が家も、数ヶ月前に海外製の食品乾燥器を購入して愛用しており、とても満足している。家電Watch読者の皆様には、ぜひ食品乾燥器の良さを知っていただきたい! というわけで、今回は国内で購入できる果物・野菜乾燥機「からりんこ」を紹介する。


メーカー東京ユニコム
製品名からりんこ
希望小売価格10,000円
購入場所Amazon.co.jp
購入価格10,000円

作り方は簡単。お皿に載せてスイッチを入れて乾燥させるだけ

 本体には、食品を置くトレイは5枚付属している。本体サイズは直径330mm。トレイ1段の高さは140mmで、5段全て重ねると200mmとなる。

 トレイは1枚から5枚まで必要に応じてセット可能。乾燥させる野菜の量によって、トレイの枚数を調節できる。

トレイは5枚重ねることがきる本体には温風吹き出し口がある中心から外に向かって風が勢いよく出てくる

 厚めの食材を乾燥させるときは、トレイの側面内部にある突起部を組み合わせると、高さが一段高くなり、厚さ25mmまでの食材にも対応できる。トレイが浮いて隙間ができると熱風が逃げてしまうので、必ずトレイ同士をしっかりはめ込むようにする。

トレイは1枚~5枚まで、乾燥させる食品の量によって枚数を変えるフタには4カ所、穴があいている
トレイの側面内部の突起のようす突起部分を組み合わせると厚さ25mmまでの食材まで対応。ぶどうなどもそのまま乾燥できる

余った野菜も乾燥して保存食にできる

 乾燥にかかる時間は、使用する食材の切り方、大きさ、熟成度等によって異なる。トレイを重ねるときに食材が厚いと、それだけ時間がかかるので、なるべく均一に薄めにスライスするといい。

 乾燥の目安は、トマト6~24時間、人参4~12時間、りんご4~10時間、バナナ6~12時間、イチゴ6~12時間、パイナップル6~36時間。なお、ほうれん草やキャベツなどの葉物野菜は一度茹でてから乾燥すると乾燥途中の傷みが少ない。

 はじめに野菜で試してみた。ゴーヤとじゃがいもは、どのように下処理するか悩んだのだが、そのまま3~5mmの厚さにスライスして乾燥させることにした。

 他にも大根1/3本、ピーマン2個、ナス2本、プチトマト1パックを乾燥させた。食材は乾燥してどんどん縮んでいくので、隙間なく並べても大丈夫。ビッシリ並べると、トレイは5枚全てが埋まった。

大根、ゴーヤ、ジャガイモ大3個、プチトマト、ピーマン、ナスを乾燥させる大根は短冊切りにしておく。切り干し大根のようにするなら細めに切るプチトマトは半分に切って種が見えるように置く。ピーマンは細切り
ジャガイモは5mmほどの厚さに切って水にさらし、水分をふきとってから並べたナスも5mmほどの厚さに切って水にさらし、水分をふきとってから並べる。ゴーヤも空いた部分に置く
ゴーヤも種とワタをとって5mmほどに切って並べるトレイを重ね、フタをしてスイッチを入れるだけ

 使い方は簡単だ。トレイに薄く切った野菜や果物などを並べてスイッチを入れるだけ。操作ボタンは電源スイッチのみで、温度調整や予約などはできない。

 スイッチを入れると、本体内にある温風吹き出し口から、中心から外に向かって熱風が勢いよく出てくる。フタの隙間からも風が吹き出している。しばらくすると野菜の香りが漂ってきた。

 ファンは乾燥中はずっと回っているが、電熱線のON/OFFを制御する「サーモスタット機能」によって適度な温度を維持している。狭い部屋で乾燥させていると、周辺の気温は若干上がる。ファンの音はうるさいというほどではないのだが、少々気になる。


ゴーッというファンの音が聞こえる

 

  なお、消費電力を測ったところ、最大で240W前後、最低で11Wだった。温度は52℃から56℃となっていた。

乾燥野菜は香りと歯ごたえが格別

 6時間後にフタを開けてみると、ゴーヤは乾燥してカチカチになっていたので、取り出して保存袋にうつし、他の野菜はまだ半生の状態だったので、乾燥を続けることにした。8時間乾燥させた状態での消費電力量は0.98kWh、電気代は約21.6円となった。

 実際に使ってみると、トレイの中心部より外側が先に早く乾燥することがわかった。本体中心部に温風の吹き出し口があって、外側に向かっているためだ。今回のように5枚のトレイにびっしり並べて入れると、下のトレイよりも上のトレイが乾きにくいようにも感じられた。時々様子を見て、トレイの上下も入れ替えるとよいだろう。

外側のゴーヤは乾燥しており、中心部が生っぽいままだった外側と中心部のゴーヤを入れ替えて置いたナスと一緒に置いたゴーヤはからからになっていたので、そのままとっておくことにした
水分が蒸発して固くなっている保存袋にしまって密閉しておく

 ゴーヤ以外の野菜は、15時間半ほど乾燥しておいた。分厚く、なかなか乾燥しなかったジャガイモも、15時間半ほど経てば、しっかり乾燥している。15時間半使用した段階での消費電力量は2.64kWhで、電気代は約58円となった。これは1時間あたり約3.7円となる計算だ。

大根は大きめの短冊切りにしておいたが、かなり小さくなっていたカリカリに乾いた大根ドライトマトもしっかり乾燥している
ピーマンは少し変色してしまったトマトは真っ赤で色鮮やかジャガイモは分厚く切ったせいか、かなり固い
表面にでんぷんが付着している。黒くなってしまった部分もあった。色が気になるなら、一度煮てから乾燥させたほうがよい水分が抜けてしまったナス。思ったより縮んでいなかった皮の色が鮮やかになっている

 このほか、即席の具材として味噌汁などに活用できそうなほうれん草とネギ、ゴボウも乾燥させた。ほうれん草は一度茹でてから水を切り、茎と葉の部分に分ける。ネギは小口切りにしてクッキングシートに敷く。ゴボウは2mm程度の厚さに切って水にさらし、水分を拭き取ってから並べておく。これらは6時間程度でカリカリとなった。

ほうれん草はいったん茹でてからよく広げておくネギは隙間から落ちてしまうので、クッキングシートを敷いておくゴボウは2mmほどの厚さに切ってから水にさらし、水分をキッチンペーパーでふきとってから並べる
乾燥したほうれん草は驚くほど縮んでしまっていたしっかり乾燥させると、持つとパラパラ持つと簡単に割れてしまうネギもかなり縮んでいた
クッキングシートを敷いていなければ、下に落ちてしまっただろうゴボウも小さくなっているそのままでも食べられる。何枚か食べてみたが、甘くておいしい

 料理で余った野菜も、しっかり乾燥する事で長期間の保存ができて経済的だ。さっそく乾燥した野菜を使って調理した。

【乾燥ゴーヤ】ゴーヤチャンプル、ゴーヤの佃煮

 ここからは、乾燥した食材で作ったレシピをご紹介しよう。まず、ゴーヤチャンプルを作ってみた。乾燥ゴーヤは10分ほど水につけて戻すと、ゴーヤの食感がプリプリになる。炒めても切れてしまうことがなく、しっかりとした噛み応えだ。

 ゴーヤの香りはそのままだが、苦みはかなり抑えられていた。ゴーヤの苦みが苦手な人には嬉しい。乾燥ゴーヤなら少しずつ使用できるのも便利だ。

 ゴーヤの佃煮も作ってみたが、食感が楽しい。お茶漬けや、お酒のおつまみにもなりそうだ。ゴーヤの苦みが好き、という方は少々物足りないかもしれないが、お弁当にいれても大変おいしかった。

ゴーヤは水にいれて戻す10分ほどでやわらかくなった
ゴーヤチャンプルー。苦みが少なくなり、食べやすくなった。食感がプリプリで楽しい!ゴーヤの佃煮はお弁当にもぴったり

【乾燥大根】ハリハリ漬け、大根のお味噌汁

 乾燥大根を使う料理といえば、歯ごたえたっぷりの大根の漬物「ハリハリ漬け」。材料は酢、めんつゆ、醤油、赤唐辛子。保存袋に入れて冷蔵庫で2日ほど冷やしてから食べたところ、しっかりあの味が再現できていた。

 また、お味噌汁の具としてそのまま入れてもおいしい。切り干し大根を大きくしたような香りと食感だ。忙しいときだと、味噌汁用の具材を洗って切るのは面倒だが、この乾燥大根なら汁に入れるだけでいい。色々な野菜を乾燥しておけば料理時間の短縮につながる。

保存袋に調味料を入れて、乾燥した大根をそのまま入れておく。あとは冷蔵庫で2日以上漬けておけば完成ハリハリ漬けは子供にも大好評!ひと味違う乾燥大根のお味噌汁。作っておけば入れるだけなので、忙しいときも便利

【乾燥ナス、乾燥ピーマン、乾燥ジャガイモ】南蛮風甘辛煮

 乾燥ジャガイモはしっかり水で戻してから使用したほうがよい。夕食の調理に使う際には、朝のうちに水につけておいた。乾燥させた状態だと、表面に粉状になったでんぷんが付いているが、水で戻せば落ちてなめらかになる。乾燥ナス、乾燥ピーマンはそのまま使用できる

いつも作っている定番料理だが、乾燥野菜で作ったのは初めて。旨みが凝縮されていてやみつきになりそう

 酢を入れて甘辛く煮たのだが、どれも野菜の旨みが凝縮されていてとてもおいしい。ナスは甘くなり、ジャガイモも驚くほど香りが豊かになっている。ジャガイモは噛み応えはあるのにねっとりした食感もあって驚いた。ピーマンは少々苦みが増してしまったが、こちらも香りは抜群。乾燥させてカサが減ってしまったので、野菜を一度にたっぷり食べられるのも嬉しい。


【乾燥トマト】ドライトマトのパスタ

 イタリアンレストランではお馴染みのドライトマトだが、なかなか買うことができないので作ることにした。水にもどして、戻した水ごと入れてパスタにしたところ、とてもおいしい。トマトは甘さが際立ち、濃厚だ。娘は「レーズンみたい」と言っていたが、確かにかなり甘みが増している。一緒に乾燥ナスも入れてみたが、こちらもよく合っていた。

乾燥トマトも水に戻す甘くなった乾燥トマトの煮汁も使ってパスタを作った。乾燥ナスも入れてみたが、こちらもおいしい

【乾燥ほうれん草、乾燥ゴボウ、乾燥ネギ】

 即席具として便利なネギや乾燥ほうれん草。ゴボウも一緒にカップうどんに入れてみたところ、コクがアップした。夫はカップラーメンに乾燥ナスを入れたそうだが、それもよく合っていたそうだ。

 即席具を常備しておけば、スープなどにさっと加えることができるので便利。簡単に栄養価も満腹感も上がるので嬉しい。今回、5分待つタイプのカップ麺だったが、もっと時間の短いカップ麺で使用するなら、ほうれん草やゴボウは小さめに切ってから入れた方が戻しやすい。

カップ麺に即席具として入れてみたカップ麺も野菜が加わることによって栄養価がアップ! 

 なお、取扱説明書には簡単な説明しかないが、食材の乾燥方法についてホームページでは細かく記載されている。そちらのほうが参考になるので、ぜひチェックしていただきたい。

 色々と作ってみたが、全体的に野菜の旨みがギュッと凝縮され、とてもおいしい。乾燥野菜の独特な食感と旨みを利用すれば、幅広い料理を作れる。

砂糖などの添加物を加えなくても、甘酸っぱくておいしいドライフルーツが作れる

 バナナ、キウイ、パイナップルなどの果物も乾燥させてみよう。

 果物は水分と糖度が多く、容器に果汁が滴ったり、こびりつく恐れがある。あらかじめ適当な大きさに切ったクッキングシートを敷いておくと、後のお手入れが楽になる。

 スイッチを入れると、フタから甘い香りが部屋全体に漂う。とてもいい香りだが、来客時などニオイが気になる方は、乾燥する場所や時間帯に注意したほうが良いかもしれない。

パイナップル、キウイ、バナナ、を乾燥させてみる糖度が高いものはトレイに付着すると洗うのが大変なので、クッキングシートを敷いておく

 5時間程度の乾燥時間だと、まだ半生状態。上のトレイと下のトレイを入れ替えて、まんべんなく乾燥させる。10時間ほど経つと、すっかり水分は抜けた。

 乾燥した果物は、それぞれの特徴的な味が際立っていて面白い。バナナやパイナップルはかなり甘くなり、キウイは酸味が強調されている。子供に人気が高かったのはパイナップルで、甘みと酸味のバランスが絶妙だ。砂糖や油を使用していないので、子供のおやつにはもちろん、ダイエット中の方にもよさそうだ。果物は糖度が高いせいか、表面は乾燥しているものの中は弾力があり、歯にくっつくような食感だ。

キウイはかなり酸っぱいので、子供には不評だった。パイナップルは取り合いするほど大人気表面はパリパリだが、噛み応えのあるバナナ水分は抜けているので長期保存が可能

 この自家製ドライフルーツをたっぷり使って、簡単なクッキーを作ってみた。材料はバター、砂糖、小麦粉、玉子とたっぷりのドライフルーツ。市販のドライフルーツは高価だが、手作りなら安くすむのが嬉しい。

 ドライフルーツは固く、包丁で細かくするのは時間がかかる。フードプロセッサーをお持ちの方はそちらを利用したほうが簡単にできるだろう。

 出来上がったクッキーは、果物の甘酸っぱい香りと、固めのジャムのような食感がとてもおいしい。市販のクッキーのように甘すぎない素朴な味なので、大人にもピッタリだ。

 ドライフルーツは高価なので、これだけたっぷり入っている贅沢なクッキーを簡単に作れるのは幸せだ。ケーキやクッキーのほか、ヨーグルトに加えてもおいしい。

フードプロセッサーを使った方が早くみじん切りにできるそのまま生地に混ぜるだけクッキーができた! 甘酸っぱくてとてもおいしい

 市販のドライフルーツは砂糖や保存料などが添加されているものがほとんどだが、自家製のドライフルーツなら添加物もなく、安心して子供に食べさせることができる。

「干す」ことで今までにないおいしさ、楽しさを体験できる 

このように密閉して保存しておくと便利。瓶に入れて置いてもキレイ! 

 機能面では、温度調節機能やタイマー設定はないものの、乾燥に関しては時間や温度は多少アバウトでも大丈夫なので、それほど不便を感じていない。

 手入れの面では、トレイとフタは水洗いができる。野菜ではトレイはほとんど汚れないので、サッと洗うだけで済む。

 「干した食品」が加わると、料理のレパートリーが広がって料理が楽しくなる。また、干すことで野菜や果物の旨みが凝縮し、かさも減ってたくさん野菜を食べられる。さらに、長期保存ができるので、野菜が安いときに買いだめをして作り置きをしておくことも可能で、経済的だ。インスタント食品や味噌汁などの具として使うこともできるので、忙しいときにも重宝する。

 食品乾燥器は日本ではまだあまり知られていない製品だが、とても幅広く使える製品なので、ぜひ試して欲しい。今後このような食品乾燥器が各メーカーから販売され、選択肢が増えることを期待している。






2011年8月25日 00:00