家電ミニレビュー

低温調理できるテスコムの1台6役オーブン、肉や魚がしっとり食感に!

1台6役の低温コンベクションオーブン

低温調理は真空調理とも言い、主に湯せんを使い、一定の温度でじっくり調理する調理法だ。火は通っているけれどパサパサに硬化していない、しっとりと柔らかな仕上がりを実現してくれる。パサパサしがちな鶏胸肉などもしっとり仕上がるため私はかなり好きで、特にダイエット中に多用している。

テスコムの「低温コンベクションオーブン TSF61A」は、コンベクションオーブンながら、低温調理も可能だという製品だ(オープンプライス、直販価格16,500円)。トースター、オーブン、ノンフライヤー、発酵食品メーカー、フードドライヤー、そして低温調理器の1台6役の本製品、専用の低温調理器が無くても低温調理が十分に楽しめるか試してみた。

湯せんする一般的な低温調理とは異なり、熱風で調理

本当に低温調理ができるのか、最初はちょっと半信半疑。なぜならば空気は水よりも熱伝導率がかなり低い。熱伝導率は文字通り熱の移動のしやすさを示すもの。温度は高いものから低いものへと移っていくけれど、その移動のしやすさが空気よりも水のほうが高いのだ。90℃のサウナには入れるけれど、90℃のお風呂には入れないことで、熱の移動しやすさは分かると思う。この低温コンベクションオーブンでは湯せんせずに低温調理ができるというけれど、空気による熱伝導なので「本当に使えるのか?!」と心配だった。

熱伝導率が低い空気をどう使うのか半信半疑

ところが、基本のレシピを見て、「なるほど!」とちょっと分かった気がする。一般的な低温調理器を用いる場合は、袋に入れて真空状態でドボンとお湯に入れて調理する。一方で、コンベクションオーブンで低温調理する場合は、アルミホイルで食材を包んで調理するのだ。熱伝導率が高いアルミを空気と食材の間に挟むことで、空気の熱の伝わりづらさをアルミが助ける仕組みなわけだ。さらに、湯せんで調理するよりも高温で加熱する。なるほどなるほど。

ささみはパサパサせずしっとりとした食感に

さっそく低温調理を開始。まずは手始めに小さなささみ肉を低温調理してみる。どんな感じで火が通るのか知りたいため、5分ごとにささみを取り出して切り取り、火の通り具合を確認した。低温コンベクションオーブンは細かい温度設定はできないため、通常の低温調理器の設定よりも高めに設定する。この場合は70℃設定くらいでも良さそうだけれど、安心の80℃設定で。

※今回は実験のために短時間しか調理していない肉を取り出したが、本来は食中毒防止のため、鶏肉は「中心部分」が63℃の状態で30分の加熱が必要。それ以下の温度設定は鮮度に関わらず大変危険だ。

外部リンク:内閣府食品安全委員会「肉を低温で安全においしく調理するコツをお教えします!」

天板の上にアルミホイルを敷いて、さらにアルミホイルで包んだささみを置く

ささみ肉くらい小さくても、中心温度が規定温度に達するのに大体30分くらいかかった。冷蔵庫から出して常温近くまで戻していたので、もう少し早く熱が通ると思っていたけれど、しっかり中まで熱が通るには結構な時間がかかるのだ。ささみ肉の場合、1時間半ほど調理するとしっかり安心して食べられそうだ。

しっとりと柔らかく、全然パサつきもなく美味しい! これはフライパンやレンジではなかなか作れない美味しさだ。ごま油に塩、梅肉、わさび醤油などなどを添えれば、日本酒の美味しいお店で出てきそうな料理が簡単に完成してしまう。美味しい! これは使える!

ささみの中まで熱が通るのに30分以上かかった
ささみの火の通り具合。30分過ぎるとぱっと見て火が通ったような色になっているがここから30分は加熱したい
しっとり柔らかく美味しい低温調理のささみ肉はご馳走
余談だが、実験のために生焼けの状態で取り出したささみは、撮影後すぐに熱湯に通してスープにして完食(笑)

一般的な低温調理器で作った鶏ハムと比べてみた!

続いてささみよりも大きな鶏ハムを調理した。鶏胸肉を使って作る、低温調理定番のメニューだ。鶏胸肉をたこ糸で縛り、1つはアルミホイルで巻いて低温コンベクションオーブンで、もう1つは真空パックにして通常の湯せんタイプの低温調理器を使いドボンと調理してみた。

調理にかかる時間は、低温コンベクションオーブンが付属のレシピ通り90℃で2時間、通常の低温調理器が湯温が設定温度の65℃に達してから2時間だ。鶏ハムの直径を考えると、やはり低温コンベクションオーブンでは設定温度が結構高め。仕上がりの食感と味はどうだろうか。

完成したものを比べてみると、見た目はほぼ同じ! 低温コンベクションオーブンでは少し高めの温度で調理しているからか、湯せんの鶏ハムの方がやはりしっとり度合いが強く、同時に食べ比べると何となくどちらを食べているのかわかるけれど、それぞれ単品で出されたら分からないかもしれない。低温コンベクションオーブンで作ったものも、十分にしっとり美味しい鶏ハムに仕上がっている。焼けムラも全くない。ちゃんとしっかり低温調理した仕上がりである。

鶏ハムを作り比べてみる
見た目では違いが全く分からない

ローストビーフは美しい仕上がりでおいしい

ささみや鶏ハムがうまくできたところで、ローストビーフも食べたい! 塩胡椒やニンニクで下味をつけた牛肉にフライパンで焼き色を付け、肉汁が流れ出さないように閉じ込めてからホイルで巻く。熱いうちに低温コンベクションオーブンに入れてから75℃で2時間半。結構時間はかかるけれど、ずっと張り付いておく必要もないので非常に楽ちん。

私の場合、「お昼はローストビーフ丼にするぞ!」と、朝イチに仕込んでおいて、何も気にせず午前の仕事をしておいたら、牛肉がローストビーフになっていた! という感じだった。今日のお昼はローストビーフ! なんてウキウキして仕事のパフォーマンスも上がった気がする(笑)。

低温調理する前に表面を焼く
アルミホイルで中が見えないので、ワクワク感が高まる
最高の仕上がり! めちゃくちゃ美味しそう

多少のドリップは出ていたけれど、先に焼いているため、そこまで流れ出してはいない。いざ切ってみると、美しいピンク色! 美味しそうー! 低温調理器として十分すぎるパフォーマンスだとかなり感動してしまった。

炊きたてのご飯にローストビーフを乗せて頬張る贅沢ランチ。安いお肉が大化けしている。夫も、「こりゃランチで外で食べたら2,000円とかするよ!」と大絶賛。クリスマスのご馳走に是非とも参加させたいローストビーフ。最高だと思う。ここまで来たら、本当にコンベクションオーブンで低温調理できるの!? という疑問は完全に払拭された。

ローストビーフを贅沢に乗せて丼で食べる

ツナやコンフィはジップロックに入れて作る

また、この低温コンベクションオーブンはチャックつき袋の「ジップロック」が使えると明記してあるのが嬉しい。コンテナもバッグもどちらも使える。「低温だから大丈夫よね?」と思っても、一応オーブンなので、「プラスチックが溶けないよね?」と一瞬不安になってしまうものだ。

付属のレシピ集の低温調理のレシピを見ていると、鶏ハムやローストビーフなど素材だけを調理する場合はアルミホイルに巻いて調理し、コンフィなど油や調味料とともに調理する場合はジップロックに入れて調理するようだ。

例えば、ジップロックコンテナに材料を入れて90℃で9時間低温調理すると、黒豆なども煮崩れせずに煮ることができる。9時間は長いけれど、放ったらかしで作れるのは嬉しい。低温調理をするときはほぼ無音なので、寝る前にスタートしてもよさそうだ。寝ている間に勝手におせち料理が1品仕上がっているなんて、ずぼらな私にもピッタリだ!

ジップロック(R)が使えるとレシピに明記されている
調味料と共に低温調理する場合はジップロックに入れてそのまま天板に乗せて調理する

マグロの柵を使って、我が家の定番というか大好きなツナを作る。「ジップロック フリーザーバッグ Mサイズ」の中に、塩を振って少し休ませたマグロの柵、スライスしたニンニク、好みでハーブなどを入れ、オリーブオイルを材料がしっかり浸る程度に注ぎ、空気が入らないようにジップロックバッグの口を閉める。天板の上に袋のまま置いて、70℃で1時間調理してみた。

やはり、低温調理で作った手作りツナは、市販の缶詰のツナより格段に美味しい! 柵をほぐしておくと、普通のツナと同じように万能に使えるけれど、しっとり感をより楽しむには、食べる前にサッと和える使い方が良い。ほぐさずブロックにカットしてそのまま食べてももちろん美味しい。

手作りツナはめちゃくちゃ美味しい!
簡単なサラダもご馳走になる美味しさ!

手軽に低温調理を試してみたい人におすすめ!

湯せんを使った低温調理とは違って細かい温度調整が難しいけれど、火はしっかり通りながらもパサつかずしっとりジューシーに仕上がる低温調理は可能だ。低温調理器を持っていなくても気軽に調理ができるため、低温調理はやりたいけれど、そこまでの頻度でしない人は、1台6役のこのコンベクションオーブンを選ぶのも良いのでは!

ただ、やはり専用の低温調理器と調理方法が異なるので、ネットなどで調べた低温調理のレシピをそのまま使うのは食中毒のリスクなどから考えて大変危険だ。付属のレシピ集の充実したレシピを参考にして、安全で楽しい低温調理ライフを楽しんでほしい。

徳王 美智子

1978年生まれ。アナログ過ぎる環境で育った幼少期の反動で、家電含めデジタル機器にロマンスと憧れを感じて止まないアラフォー世代。知見は無いが好きで仕方が無い。家電量販店はテーマパーク。ハードに携わる全ての方に尊敬を抱きつつ、本人はソフト寄りの業務をこなす日々。