家電製品ロングレビュー

自然風のような“風の流れ”の心地よさにぞっこん! ノクリアX~レビュー前篇

長時間過ごす「家電アトリエ」に設置

 6年以上利用していた銀座の事務所を移転し、今年の2月、表参道に心機一転「家電アトリエ」を開設した。これまではシェアオフィス的なところだったので、家電製品は置くことができなかったのだが、「家電アトリエ」にはドラム式洗濯機や冷蔵庫、キッチン家電や照明器具などを置き、実際に使って試すこともできる展示&体験空間としている。

 いずれ一般の方向けのサロン的なイベントも開催したいと考えているが、現在は原稿執筆や打ち合わせのほか、さまざまな媒体の取材を受ける場としており、ここで過ごす時間は家よりも長いくらいだ。一人で過ごす時間、そして5~6人の来客がある場合などさまざまなシチュエーションに対応できるエアコンを考えると、部屋全体の快適さを追求した製品が良い。

ノクリアX AS-X40E2W
手前のキッチン等のスペースも合わせると13畳程度の家電アトリエ。入って左奥にノクリアXを設置

 熟考したうえで選んだのが、富士通ゼネラルの「ノクリアX」シリーズ。2月のアトリエ開設時~5月中旬までは2014年モデルを使用していたが、2015年の新モデルが登場したため、梅雨を迎える直前にそちらにチェンジした。寝起きする場所ではないので、就寝時の使い勝手についてはレビューできないが、それ以外のさまざまなシーンでの、特徴的な機能をご紹介したい。

メーカー名富士通ゼネラル
製品名ノクリアX AS-X40E2W
希望小売価格オープンプライス
店頭価格245,160円(yodobashi.com)

もう「ガンダムエアコン」だなんて言わせない! 美しく品のある佇まい

5月まで使用していた旧モデルのノクリアX。横幅が大きく、サイドファンやフラップもダイナミック

 「ノクリアX」シリーズの最大の特徴といえば、両サイドについたサイドファン「デュアルブラスター」による気流。2013年に登場した初代モデルは本体のサイズも大きく、かなり目立ったデザインのサイドファンだったため、稼働する様子を見た人から「ガンダムエアコン」と呼ばれていたりもした。

 実際、5月までの3カ月間使っていた前モデルは、アトリエに訪れた人のほとんどが「なんだかすごいエアコンですね」「ガンダムみたいですね」と言っていたくらいだ。ただ、後述するように、このノクリアXの魅力は「ガンダム」という言葉から想起されるようなパワフルでダイナミックな冷暖房ではなく、気流によって実現される“心地よさ”にある。そういう意味では、「ガンダムエアコン」という呼び名に忸怩たる思いがあったのも事実だ。

 ところが、新モデルではその印象が大きく変わった。室内機の大きさが786×378×293mm(幅×奥行き×高さ)とコンパクトになっている。また、サイドファンのデザインが本体と一体化するようになっていて、停止時にはサイドファンの吹き出し口が隠れるようになったため、一見するとその存在に気づかないくらいだ。

 アトリエでは梁の関係から、設置位置が通常よりも低めなため、どうしてもエアコンに目が行き、存在感があり過ぎるのだが、このモデルでは部屋にしっくりと馴染んでいて美しい。特に電源をオフにしている際の佇まいには惚れ惚れする。もうガンダムエアコンだなんて言わせない! 実際、新モデル設置後にそのように言った人は皆無だ。

今年の新モデルは「ガンダムエアコン」の印象は全くない。停止した状態で正面から見ると、サイドが馴染み、すっきりと美しい
サイドから見ると、サイドファンのパンチングされた奥に吸気口があるのがわかるが、D字のフォルムでやわらかな印象
リモコンは赤外線方式に変更されている。細かな操作はメニューボタンから選ぶ方式で設定などがしやすい
運転状況などは本体前面左下のパネルにカラーランプで表示される

 ちなみに室外機は想像以上に大きくなっている。これは室内機をコンパクトにしたことで熱交換器も少し小さくせざるを得なかったため、その分室外機を大きくして冷暖房能力と省エネ性を確保しているからとのこと。そう聞くと、立派な(高さのある)室外機が頼もしく思えてくる。

室外機の寸法は820×315×704mm(幅×奥行き×高さ)と、やや大きめ
冷媒R32を使用していることが表示されている

来客の誰もが感動する「送風」機能を愛用

送風運転中のリモコン

 さて、いよいよ「ノクリアX」の機能だが、本格的な夏になっていないこともあり、今、絶賛愛用中なのは送風機能だ。現在では、エアコンの「送風」機能というと、冷房使用時に内部を乾燥させてカビなどを防ぐために推奨されている程度で、ほとんど着目されていない。しかし、ノクリアXの「送風」は、冷暖房や除湿などをするほどでないときでも、ぜひとも試してほしい。

 ここで活躍するのが、先ほどから述べている「サイドファン」。中央からの気流に加え、速さの異なるサイドファンからの気流があることで、部屋全体に大きくゆるやかな空気の流れが起きる。部屋のどこにいても、時折、そよっとした風の流れを感じて、まるで木陰で過ごすときのような自然の風の心地よさを体感できるのだ。

 私がアトリエに来て、まずすることと言ったら、換気のために窓を開けてリモコンで「送風」にすること。10分~15分くらいすると窓から風は入ってきていないのに、デスクに座っている私のところに清かな風がふっと当たる。ずっと風感があるのではなく、時折感じられる風の流れ。極上の快適さとはたぶんこれを言うのだと思う。

 この心地よさは、アトリエを訪れる来客にも感動をさせる力を持っている。部屋の中心部に置いたテーブルが打ち合わせスペースになっているのだが、ちょっと一息ついたときに「窓からの風はほとんどないのに、たまにいい風が来ませんか?」と尋ねると、「冷房していないはずなのに、さっきからなんとなく風を感じる時があるのはどうしてだろうと不思議に思っていました」との返事。「エアコンの送風なんて考えたことも使ったこともなかった」とただただ驚くばかり。

リモコンのメインボタンには残念ながら「送風」のボタンはないため、メニューボタンを押して設定する必要がある
メニューボタンの中の「運転モード」を選択する
運転モードの下から2番目に「送風」がある
一度、「送風」を使うとリモコンの画面の「よく使うモード」に表示されるようになる
次回からは「決定」ボタンだけで送風運転が使える

 送風というと、風に直接当たって涼む扇風機のようなイメージがある人も多く、「自然な風の流れを作る」という説明に、びっくりするようだ。また、エアコンとサーキュレーターを併用すればいいというわけでもない。サーキュレーターでは、一定の風の流れを作れず“乱気流”を起こしてしまうため、ここまでの心地よさは体感できない。

 アトリエではエアコンの対面に執筆などの仕事用のデスクがあることや、エアコンの設置位置が部屋の左奥ということをふまえ、送風時の中央ファン、サイドファンともに風向を上方向に向け、一番左に向くように調整している。これによって、左方向の壁に沿って気流が作られ、部屋をぐるりと風が一周する仕組みになっている。

アトリエでの送風運転時の風向きの設定
サイドファンを下に向けていないため、運転時も停止時に近い佇まいになっている。足下に風が来ることがなく快適なのもお気に入りの理由の1つ
左右の風向きや上下のスイングについてリモコンで設定できる
サイドファンの設定画面
左のサイドファンが左方向を向き、壁面に風を送っている様子がわかる
右のサイドファンも左方向に風を送るように設定している

 ここまで厳密に調整しなくとも、「送風」を選んで運転するだけでも「快適おまかせ気流」が働いて、中央ファンとサイドファンによる大きな風の流れが作り出される。これについては、取扱説明書と一緒に同梱されている「デュアルブラスター使い方ガイド」に詳しく説明されている。

取扱説明書と同梱されている「デュアルブラスター使い方ガイド」
使い方ガイドの最終面に「送風運転」を使うことの提案や、使い方が書かれている
部屋の構造や設置場所などに応じて風向きの細かな設定をすればより快適に使えるが、一般的には「快適おまかせ気流」で使えばOKだ

 長時間過ごすときほど、そのやさしい風の流れがうれしい「送風」機能。ノクリアXは運転を停止すると「今日の電気代は○円です」と音声で知らせてくれるのだが、4時間送風運転しても、「今日の電気代は4円です」という。1時間1円の快適機能。冷房するほどでないというときには、本当に便利だと思う。

梅雨時には再熱除湿でしっかり除湿

 「送風ラブ」な私だが、梅雨入り後の湿度の高い日には除湿機能も愛用している。ノクリアXの除湿は「再熱除湿」と「ソフトクール除湿(弱冷房)」の2種類。中でも、除湿をしっかりしてくれる「再熱除湿」は快適性という点ではとても素晴らしい。

除湿のモード設定はメニュー→機能ボタンで行なう
機能の中に「除湿モード」がある
好みに応じて「再熱除湿」か「弱冷房(ソフトクール除湿)」を選択する

 というのも弱冷房運転を行なうソフトクール除湿では、部屋の温度を若干下げながら除
湿するため、設定温度を室温よりも低く設定しないと除湿をしてくれないからだ。再熱除湿運転では、外気温が比較的低め(室温との差が少ない)ときでも、部屋の空気をいったんエアコンの内部で強く冷やして除湿し、冷えた空気を温め直してから送風してくれるので、寒くならずに湿気はしっかり取ってくれる。

 室温27℃であっても、湿度が61%あると何となく湿ってジメッと感じるが、26.5℃設定で再熱除湿を開始すると1時間程度で室温26℃、湿度55%に。湿度が6%下がるだけでも、快適さはかなり違う。

27℃とそんなに室温が高くない日でも61%の湿度だと何となく湿ってジメッと感じる
26.5℃設定で再熱除湿を開始
除湿時は中央のファンから出る気流は上向きに、サイドファンでつくる気流は下向きになり、快適な温度を作り出す
やがて室温26℃、湿度55%となった。外気温が下がってきたこともあり、室温が設定の26.5℃よりもやや低めになった

 ソフトクール除湿は、気温も湿度も高くて不快感が強いけれど、冷房は冷気が気になって使いたくないという場合に向くようだ。

 アトリエでは、湿度の高い日には除湿運転して湿度を下げた後、送風運転に切り替えることも多い。快適機能が盛りだくさんのノクリアX。おまかせでなく、こうして自分で切り替えながら、より省エネで快適な使い方を探るのも楽しい。

 次回、後篇では夏本番に向けてノクリアXならではの「冷房」のことや、みまもり機能、フィルター自動おそうじなどのお手入れについてレポートします! そちらもお楽しみに~。

神原サリー