家電製品レビュー
エコ&快適がさらに進化したガンダムエアコンのニューモデル! 前編
by 藤山 哲人(2014/6/30 07:00)
“イカツイ”デザインだが、涼風は優しい。
富士通ゼネラルのnocria Xシリーズを使った時の第一印象だ。家電量販店でもひときわ目立つそのデザインから「ガンダムエアコン」と称されることもある。
メーカー名 | 富士通ゼネラル |
---|---|
製品名 | nocria Xシリーズ AS-X45D2W 14畳・200V対応モデル |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | ヨドバシ.com |
購入金額 | 257,420円 |
従来機から受け継いでいる左右のDUAL BLASTERで、夏場は広い部屋や複雑な間取りの部屋でも室温を均一に涼しくし、冬場は足元を集中的に暖めるという。2014年モデルでは、省エネ性能をさらに進化させたほか、音声ガイダンス機能やON/OFFのみを操作できるシンプルなスイッチが付属するなど使いやすさがさらに進化。また内部で利用しているガスも環境に優しい最新のR32という冷媒に切り替え、地球にも優しいエアコンに進化した。
いわばガンダムMkII(旧ガンダムをベースに改良したモビルスーツ)と言いたいところだが、筆者的にはZ(ゼータ;飛行形態に変形するまったく新しいガンダム、作品としても最高傑作!)まで進化した感覚だ。
これから本格的に暑くなるシーズン。nocria Xを自宅のリビングに取り付けて、その性能をレポートする。部屋が均一に涼しくなる実験結果は、なかなか見ものだ!
山道のトンネルから流れ出てくるような自然の涼しさ
nocriaの涼風は、そのデザイン同様、これまでになかった快適さだ。風呂上りに吹き出し口の前に立った風とは違うし、扇風機の風とも違う。例えるのが難しいが「山道を歩いていて、目の前のトンネルから感じる涼しい風」に近いかもしれない。「冷気のシャワーを天井から浴びている」そんな優しい涼しさなのだ。
そんなnocriaの涼風は、エアコンに弱い奥さんと子供に好評。肌とノドが弱いので、よほど蒸し暑くならないとエアコン運転しないのだが、nocriaなら肌も乾燥しないしノドの調子もいいという。奥さんの言葉を借りると「涼しさに不自然さがない」のだという。言い換えると、nocriaは自然な涼しさを作ると言えるだろう。
そんな優しい涼しさを作り出しているのが、“富士通ゼネラル”オンリーワンの「DUAL BLASTER」機能だ。中央にある冷気吹き出し口は、一般のエアコンと同様に風量と上下左右の風向を変えられる。富士通ゼネラルのDUAL BLASTERは、左右独立して上下左右と風量を変えられる送風機。つまりこれまでのエアコンでは絶対にできなかった、複雑な送風が可能で、これが自然の風を演出しているのだ。
また風呂上りにDUAL BLASTERの風とセンターの冷気を浴びるように手動で調整する(通常の自動運転では冷気が体に当たらないようになっている)と、普通のエアコンより涼しく感じる。夏場に屋外の作業場や駐車場などで見かけるスポットエアコンのように、大量の冷気を思う存分浴びられるのだ。とくに設定温度を変えなくても、DUAL BLASTERの送風を強くしただけ、より涼しくできるということは、省エネにもつながるということだ。また外から帰ってエアコンをつけると、冷気が出るまで時間がかかる。しかしDUAL BLASTERなら、わずかに冷えた風が出始めれば、DUAL BLASTERの風でかなり涼しく感じられるのだ。
読者によっては「普通のエアコンでもサーキュレータや扇風機をまわせば同じこと」と思うかもしれない。しかしこれらは部屋全体の空気を撹拌するので、スポットエアコンのような涼しさは得られない。DUAL BLASTERはサーキュレータとしても機能するが、手動で使うとスポットエアコンのようにピンポイントを狙うことも可能だ。
富士通ゼネラル・オンリーの「DUAL BLASTER」にしかできない複雑な気流
特徴的なデザインだけに「DUAL BLASTER」に目を奪われてしまうが、まずセンターにある大きな冷気吹き出し口に注目してほしい。
ここ数年のエアコンは年々吹き出し口が大型化し、空気の上下の流れを変えるフラップも大型化している。nocriaは左右のDUAL BLASTERに目を奪われがちだが、中央の吹き出し口も大きくフラップも巨大だ。家電量販店に出かける機会があれば、他社製と見比べるといい。その大きさに驚かされるはずだ。
大型の吹き出し口とフラップは、nocriaが大きな部屋や複雑な間取りに対応するためにある。つまり風量が多く、冷気や暖気をより遠くに送るために大型化されているというわけだ。
両サイドのDUAL BLASTERは、エアコン脇から空気を吸い込みエアコン前面から送風する。左右のDUAL BLASTERはそれぞれ独立して風向を上下左右に変えられるほか、風量も左右で変えられるので、複雑な気流を生み出せるのが特徴だ。通常は自動運転にしておけばよいが、リモコンを使って手動で自由に風量と向きを変えられる。
冷気や暖気は出さない単なる送風機ではあるが、扇風機やサーキュレータのように、プロペラ型のファンではないため、エアコン前面から出る風はうねりのない自然な風が送り出される。しかもサーキュレータなどにはマネできない複雑な気流を作れる上に、コンピュータ制御で、より自然の風に近づける「ゆらぎ」(ロウソクの炎が揺らぐような自然さ)制御も行なっている。
こうしてセンターから吹き出す冷気・暖気と、両サイドから吹き出す送風を自動制御して、自然に近い風と心地よい空気をnocriaは生み出す。たとえば夏場なら、冷気を天井づたいに上に吹き出し、DUAL BLASTERを左右の壁の床方向に向けることで、冷気は人に直接当たらないが、涼しい風を送る。と同時に部屋の左右の壁伝いに部屋全体の空気を撹拌するので、横長の部屋やL字の間取りといった空間でも、部屋を均一な温度にできるのだ。
DUAL BLASTERの効果を実験! L字のLDKも室温が均一に!
DUAL BLASTERの作る空気の流れで、どれだけ部屋が均一に涼しくなるかを目で見ることはできない。そこで部屋に7つの温度センサーを設置して、DUAL BLASTERありとなしで温度変化がどのように違うかを調べてみた。
実験したLDKの間取りは次のようになっている。なおセンサーは、天井から1m離れた場所(床からだと1.4mの高さ)に吊るして設置している。
下の間取りを見てもらえばわかるとおり、エアコンの設置場所は南を向いて一番右側、対して熱の発生源となるキッチンのガスコンロが一番左にある。なのでこれまで使っていたエアコンはキッチンまで冷気が届かず、夏場の食事の支度は汗だくだった。しかしnocriaに変えたところ、キッチンまで涼しくなっているように感じた。しかし単なる思い込みかもしれないので、データで見てみよう。
まずDUAL BLASTERなしで実験したところ、エアコンの前に設置した温度センサー(L-R1,2;青い線2本)とキッチンに設置したもの(K-L1,2)では2℃の差が出た。
またセンサーL-R1,2(青い2本)は、吹き出し口の前に設置したものだが、2m離れた隣の温度センサーL-C1,2(緑の線2本)とほとんど温度差がない。つまり冷風が直接温度センサーに当たっていないということが読み取れる。床から1.4mの高さでも冷気が当たらないということは、それ以上に高い天井伝いに冷気を送っているということだ。これなら冷風が体に当たることはない。
つぎにDUAL BLASTERありで実験したところ、温度差は1℃まで縮まった。今回は1時間運転したときのデータを取ったが、夏本番で何時間もエアコンを運転した場合は、DUAL BLASTERのサーキュレーション効果でより部屋の温度差がなくなり均一になるだろう。
実験結果から少し考察してみると、DUAL BLASTERにはセンターから出る冷気や暖気を左右に大きく振るルーバー(舵)としても機能するようだ。左右のDUAL BLASTERは、目には見えない空気の壁を作りセンターから出る冷気を挟み込む。この空気の壁は、エアコンの効いた店舗の入り口や、スーパーの生鮮食料品の棚で使われている冷蔵ケースで使われているエアーカーテンと同じ効果をもたらしているようだ。
つまり空気の流れで疑似的なカーテンを作り、冷気を逃さない。DUAL BLASTERはエアカーテンと同じような効果で、疑似的な大きなルーバーを作り、それで(天井伝いに広がる)冷気の流れを作ることで、左右の振り幅を大きくしているようだ。一般的なエアコンだと、風を左右に振るためのルーバーは大きくても5cm程度。疑似的だがそれよりはるかに大きいルーバーを作れるDUAL BLASTERなら、部屋の隅々まで冷気を行き渡らせられるのにも納得だ。
その効果を確かめるために温度センサーの真下で、お湯を入れた鍋を加熱したのが、次の結果だ。
濃い緑色のL-C1が鍋の直上にある温度センサーだ。キッチンを除くリビング(頭にLつくセンサー)では一番高い気温を示していたが、30分もすると0.5℃以内に室温が集約されている。さらに1時間半を過ぎると、キッチンの室温も下がり室温差は0.5℃以内に集約された。室内を均一に、快適に冷やしてくれているのがよくわかる。
扇風機のようにうねらない自然に近い風
さてDUAL BLASTERは、部屋の空気を攪拌するサーキュレーションだけに終わらない。一番実感できるのは、省エネ効果だろう。
人の体感温度は、風が少しでも吹けば涼しくなる。つまりDUAL BLASTERがそよ風のような気流を部屋に作り出すため、エアコンの設定温度より涼しく感じられるのだ。「省エネのため夏場のエアコンの設定温度は28℃」と言われているが、DUAL BLASTERなら気流により体感温度が1~2℃下がる。
28℃では暑いとついつい設定温度を25℃近くまで下げてしまう人でも、nocriaのDUAL BLASTERなら設定温度が28℃でも涼しさは25℃並になるのだ。設定温度は変えていないので、体感温度は25℃並でも電気代は28℃と同じ。つまり電気代の節約にもなる。
また一般的なエアコンを長時間運転していると、時折感じる蒸し暑さがないだろうか? これは室温が設定温度近くになると、エアコンが送風を止めて(または極弱くして)しまうからだ。つまりそれまであった風が急になくなってしまうので、部屋は涼しくなっているのに体感温度が上がってしまうということがある。
冷房を切って送風だけしたとしても、冷え切ったエアコン内部の熱交換器(スリット状に金属板が取り付けられた冷却・暖房ユニット)を通った空気は冷たくなってしまうので設定温度を下回ってしまう。しかも室温が再び上がったら熱交換器が冷えるまでしばらく時間がかかるので、今度は設定温度を越えてしまう。このように一般的なエアコンは、設定温度を中心に室温が上下してしまうだけでなく、体感温度がそれ以上に変わってしまう宿命にある。
しかしDUAL BLASTERを持つnocria違う。熱交換器を通らないDUAL BLASTERがあるため、熱交換器を通らない空気を循環できるほか、常に気流を作るので体感温度も変わらない。設定温度付近の安定した涼しさをキープできるのは、nocriaしかないと言ってもいいだろう。
こんな部屋にオススメ、こんな人にオススメ
DUAL BLASERを持つnocria Xシリーズは、従来型の吹き出し口が1つしかないエアコンに革新をもたらしたといえるだろう。1つは室内温度の均一性、もう1つは体感温度の涼しさだ。今回の話をまとめると、こんな場合にオススメしたい。
・複雑な間取りで部屋が均一に涼しくならない
・エアコンの冷気がキッチンまで届かない
・部屋の天井が高く室温にムラがある
・周期的に室温を暑く(寒く)感じる
・場所によってエアコンの効きが悪い
・LDK続き間なので広い空間用のエアコン欲しい
次回はnorciaのもうひとつオンリーワン機能、電波方式のリモコンなどを紹介しよう。筆者も赤外線じゃダメなの? と思っていたのだが、実際に使ってみると「確かに便利」なのだ。