家電製品ミニレビュー
nocria Xだけのオンリーワン! 暖気を押さえ込むパワフル暖房
by 藤山 哲人(2014/11/27 07:00)
2014年初夏に富士通ゼネラルの「ガンダムエアコン」こと2014年モデルの「nocria X」シリーズの冷房機能などについてレポートした。
nocria Xの特徴は、家電量販店でひときわ目立つ左右にある吹き出し口だ。そのシルエットはジェット戦闘機を思わせ、nocria X独自のデザインとなっている。
この左右にある「デュアルブラスター」は、部屋の隅々までムラなく冷暖房する気流を作り出し、複雑な間取にも1台で対応できるのが最大の特徴だ。以前の記事では実際にL字型になった自宅のリビング・ダイニング・キッチン(14畳)にて、温度センサーを数箇所に設置して、室温の変化を記録したところ、デュアルブラスターの効果がはっきりとグラフに現れていた。
あれから半年たった今。寒さもひとしおとなったので、今回はnocria Xの暖房性能についてをレポートする。前回同様、部屋の6カ所に温度センサーを設置して、ムラなく暖かくなるのか? についても検証してみよう。
メーカー名 | 富士通ゼネラル |
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製品名 | nocria Xシリーズ AS-X45D2W 14畳・200V対応モデル |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | ヨドバシ.com |
購入価格 | 194,920円 |
運転開始からたった4分でもう暖かい! 驚きのスタートダッシュと滝のように溢れる温風がスゴイ!
初めてnocria Xの暖房機能を使ったとき、まず驚かされたのが「寒い朝でも数分ほどで、温風が吹き出してくる」という点だ。しかも生温い温風がチョロチョロではなく、思わず手や足をかざしてしまうほどポカポカな温風がたっぷりと吹き出すのだ。
感覚的には、3m先のガス(石油)ファンヒーターから出る温風と同程度。エアコン暖房の弱点は長年「スイッチONですぐ温風が出ない」と言われ続け、筆者も記事で何度も書いてきたが、「nocria Xはエアコン暖房の弱点をほぼ解消した」と言ってもいいだろう。
カタログでは「パワフル暖房」というひとことで終わらせてしまっているが、「冷え切った部屋でもガス(石油)ファンヒーターなみにスタートダッシュからポカポカ温風で暖まれる」点は、強調しておきたい。
あまりのスタートダッシュのよさに驚き、温風が吹き出すまでの時間をまず測ってみたのが次のグラフだ。
運転をスタートすれば、すぐに部屋が暖まるパワフルなnocria Xは、お年寄りや寒さが大敵の高血圧をはじめとした体の弱い人にも、強くオススメしたい。なぜなら、これまで部屋を早く暖めるためにガス(石油)ファンヒーターを利用していた人が多いと思うが、吹き出し口が床面にあるので、部屋の温度が上がるまで足を暖めて凌ぐほかなかった。座り込めば手足を暖められるが、高齢者や体の弱い人にとって寒い部屋の中で、立ったり座ったりは意外にキツイのだ。
去年まで筆者もこれには気づかなかったが、先日大動脈の大きな手術をして、立ったまま全身に温風を浴びられるエアコン暖房の便利さを初めて知った。寒い朝はもちろん、外から帰ってきたとき、お風呂やシャワーを浴びるときなど、nocria Xなら電源ONして数分もすれば、無理な姿勢をしなくても全身が暖まる。
検証! 本当に部屋全体の床が暖かくなるのか? 富士通ゼネラルだけのデュアルブラスターがカギ!
冷房機能のレビューでは、デュアルブラスターの作り出す気流が部屋をまんべんなく涼しくしたり、設定温度を上げても気流で体感温度が変わらないという特徴をお伝えした。
しかしデュアルブラスターが真の力を発揮するのは暖房運転だった。まずは次のような間取りの部屋に、温度センサー6個を取り付け、部屋の温度変化を記録してみた。
デュアルブラスターの有無による違いは、グラフで見ると明らかだ。
・部屋全体が均一に温かくなる
サーキュレーターや扇風機を併用しなくても、部屋全体がムラなく温まっている。またカウンター越しにあるキッチンの足元まで暖かくなっている。
・エアコンから遠い場所でも足元が暖かい
「温風は下向きに吹き出しても、部屋の遠くではどうしても天井付近に舞い上がってしまい、足元が寒いまま」というのが、これまでのエアコンの宿命。nocria Xは、デュアルブラスターで温風を床に押し付けるため、エアコンから遠い場所の床まで暖かい。
温風を押さえ込むというイメージが掴みづらいので、カタログの図を引用すると次のようになる。中央にある温風の吹き出し口を下に向け、床を中心に暖めるのは他社のエアコンと同じ。しかしnocria Xは、温風の上にデュアルブラスターの気流で空気のカーテン、もしくは空気のフタを作り出すことで、天井に上がろうとする温風を押さえ込んでいるのだ。
・天井から床まで温度差が少ない
従来のエアコンは、部屋を出ようと立ち上がると、天井付近が汗ばむほど暑く、足元はスリッパを履いていないと寒いという寒暖差ができてしまった。しかしnocria Xは、寒暖差を検知するとデュアルブラスターで空気を攪拌するので寒暖差が少ない。
デュアルブラスターならシーリングファンいらず! 天井に溜まりがちな温風で床を暖める
デュアルブラスターには、気流のカーテンを作り温風を床に押し付ける足元ポカポカ暖房機能のほかに、部屋の空気を攪拌するシーリングファンやサーキュレーター機能もある。
エアコンに限らず、すべての暖房機器は長時間運転していると、温かい空気が天井付近に溜まってしまい、高低差による温度ムラがどうしてもでてしまう。温かい空気は軽く上昇し、冷たい空気は重く床に溜まるという自然現象は避けられない。
nocria Xは、部屋の隅々まで足元がポカポカと温かくなることが実験から分かったが、高低差の違いによる温度ムラも少ない。その温度ムラを解消するのが、リモコンに内蔵された温度センサーとデュアルブラスターだ。
次のグラフは、エアコンの風が直接当たらない部屋の中央で、床からの高さ5/51/97/143/189/235cmの6カ所にセンサーを設置して、温度を記録したものだ。オレンジ色系で示されているのがデュアルブラスター+リモコンの温度センサーを併用したもの、緑系で表示されているのが一般的なエアコンの温度変化を示している。
気温差が少しあるので、若干差が分かりにくいが、一般的なエアコンの室温変化を示す緑系と、nocria Xのオレンジ系のグラフの傾きに注目して欲しい。
一般的なエアコン(緑)は、運転直後18℃だった足元5cmは、2時間後に+4℃しか温かくならない。熱の大半は膝から天井にかけて上昇したようで、天井付近ばかりがどんどん暑くなる傾向が見られる。
一方オレンジのnocria Xは、運転開始から7分後には、足元が14℃から+8℃、ほかの高さもすべて22℃を示している。その後も床から5/51cmあたりを中心に暖めるため、天井付近が一時的に30℃近くになる。だが、1時間をすぎたあたりから、部屋全体の温度差を解消するための運転になっているのが分かる。結果、天井付近の温度上昇はほとんど見られず、高さによる温度差が非常に少ない。
普段は、温風を床に押さえ込むデュアルブラスターだが、本体の温度センサー(天井付近)とリモコンに内蔵されている温度センサーで温度差を感じると、リモコンを中心とした快適空間を作るように温度調節する。このおかげで、冬や夏には必須だったリビングのシーリングファンは、nocria Xに入れ替えてから1回も動かしていない。
さらにnocria Xのリモコンは、テレビのリモコンでおなじみの赤外線リモコンではなく、電波式のリモコンになっている。同様の機能を持つ他社製のエアコンもあるが、赤外線リモコンなので、リモコンをコタツの上などに無造作に置いてあると、本体とリモコン間で通信ができなくなり、温度差を検知できないことが多々ある。しかしnocria Xなら電波式なので、コタツの上のみかんのカゴに突っ込まれていたとしても、本体とリモコン間で確実に通信でき、温度差を検出できる。
電波式のリモコンは希少ゆえ、本体が家具の陰になってしまうような間取りやレイアウトでも、均一に部屋を暖房できる希少なエアコン。それがnocria Xだ。とくに座って団欒しているときと立ったときの高低差が大きい、コタツを愛用しているファミリーにはぜひオススメしたい。また朝の支度では、寒いキッチンにリモコンを持っていけばそこが快適空間の中心となる。
連続運転でも霜取り運転の寒さなし! nocria X独自の特殊配管と弁の秘密
冬本番になると気になるのが、霜取り運転中の寒さだ。エアコンは暖房運転すると、室内は温かくなるが、室外機は外気より冷え氷点下以下になる。すると空気中の水分が氷となり、室外機のアルミ板が幾重にも重なった部分に、びっしり霜が付いてしまうのだ。こうなると、暖房効率が悪くなるため、エアコンは定期的に霜取り運転を行なう。これは寒さの厳しい地方だけの話ではなく、日本全国で起こっている。
さて、一般的なエアコンの霜取り運転とは、冷房運転で送風をせず室外機を暖めているに他ならない。そのため霜取り運転中の数分間はエアコンから冷気が漏れ出し、寒さを感じていた。
だが、nocria Xの霜取り運転は、寒さを感じないのが特徴だ。通常なら霜取り運転時には冷房に切り替えるところを、暖房運転を続けながら霜取りをするため寒さを感じない。
このように一般的なエアコンは、暖房運転→霜取り(冷房)、運転→暖房運転を切り替えるため、実際の霜取り時間に加え切り替えのタイムラグが出る。
nocria Xは、運転切り替えをせず、室内に送る熱の一部を室外機に循環させて霜取りをするため、タイムラグも室温の低下も少ないのだ。霜取り運転の時間は1~2分と短時間なので、室温の低下に気づくことすらないだろう。
足元から温かい! 常識を覆すデザインと機能。特殊な間取りや寒さが体に悪い人には得にオススメ
今回は、富士通ゼネラルのnocria Xシリーズの暖房機能について、実験を交えながらレビューしてきた。ひとことで評価するなら、「エアコン暖房でこれほど足元が早く暖まるモノは見たことがない」というのがホンネだ。特徴は次の6点にまとめられるだろう。
・スタートダッシュがガス(石油)ファンヒーター並み
・場所による温度ムラがない
・高低差による温度ムラがない
・特殊な形状をした間取りでも均一に温かくリモコン操作が可能
・寒いキッチンでもリモコンを持っていけば、そこが快適空間になる
・霜取り運転に気づかないほど室温が下がらない
オススメしたいのは「特殊な形状をした間取りや家具の配置で、エアコンの温風が届かない場所がある」という人だ。リモコンは電波式なので、エアコン本体が見えない場所にあっても操作できる上、リモコンのある場所を中心に温度調整をするので、寒い朝のキッチンを快適にしてくれる。
さらに、パワフルさとスタートダッシュの早さ、温度ムラの少なさは快適空間をより広くしてくれる。ファミリーはもちろん、温度差が体によくない高血圧などを患っている方や、高齢者にもオススメだ。
もちろんエコ機能なども満載で、冷房も高性能なのも言うまでもない。以前の記事も合わせて読んで欲しい。