長期レビュー

富士通ゼネラル「nocria(ノクリア) Xシリーズ」

足首がぬくぬくと温まっても乾燥しない! “極上のエアコン暖房”見つけた

「家電アトリエ」で過ごす冬

 今年2月、表参道に開設した「家電アトリエ」にも再び冬がやってきた。梅雨入りを前に設置した富士通ゼネラルのエアコン「ノクリアX」シリーズ(2015年モデル)を暖房で体感するのは初めてのことになる。打ち合わせや撮影スタジオとしてのスペースとしてだけでなく、原稿を書いたり、事務仕事をしたりするなどの事務所も兼ねているため、長時間過ごすことの多い場所だ。

富士通ゼネラル エアコン「ノクリアX」AS-X40E2
運転していない時にはサイドファンがほとんど目立たず、すっきりとした端正なフォルムになっている
事務所兼用の家電アトリエ。キッチンスペースも入れると26㎡程度の細長いスペース

 冷房や除湿、送風機能の快適さ、自動おそうじ機能などについては夏にレビューした記事を参照していただくこととして、今回はサイドファンのあるノクリアXならではの暖房機能の特徴を紹介する。

メーカー名富士通ゼネラル
製品名ノクリアX AS-X40E2W
希望小売価格オープンプライス
店頭価格216,030円(yodobashi.com)

中央ファン+サイドファンがもたらす「快適おまかせ気流」

 両サイドについたサイドファン「デュアルブラスター」による気流が特徴の「ノクリアX」シリーズ。2015年モデルでは室内機の大きさが786×378×293mm(幅×奥行き×高さ)とコンパクトになったことに加え、サイドファンのデザインが本体と一体化するようになった。さらに停止時にはサイドファンの吹き出し口が隠れるようになったため、一見するとその存在に気づかないくらい端正ですっきりとした佇まいになっている。

 だから、運転させて初めて存在感を発揮するサイドファンには、来客時に必ず「わ、すごいですね。どこのエアコンですか?」と反応されるので、うれしくなってしまうくらいだ。

 そんなサイドファンが暖房時にどのように働くのか? まずは推奨される使い方である「快適おまかせ気流」で暖房運転をさせてみることにした。この日の室温は20℃とまだそんなに寒いわけではなかったため、設定温度は24℃と高めにする。運転開始直後はいわゆる“準備段階”で、吹き出し口からは暖かい風が出てこないため、フラップは上を向いたままだ。熱交換器が働いて、温風が出る段階になって、中央ファンのフラップがグッと下を向き、やや遅れてサイドファンも下方向に向きを変え、設定した室温の風を送り出す。

室温20℃、湿度57%と、11月中旬にしては、まだそんなに寒さを感じない
暖房性能を確かめるため、室温プラス4℃の24℃に設定にした
まずはおすすめの「快適おまかせ気流」で暖房運転
暖房運転時も運転開始当初の暖気が出るまでの間は、フラップが下を向かず、準備体制になっている
温風が吹き出し始めると、中央ファンもサイドファンも設定どおりにグッと下がり、床に暖気を送る
「快適おまかせ気流」で暖房運転をしている様子を横方向から見たところ

 リモコンで暖房「快適おまかせ気流」運転時の中央ファンとサイドファンの風向きの設定状況を確認してみると、中央ファンは上下方向は真下より1段階上に、左右方向はやや左方向になっている。サイドファンは上下方向、中央ファンよりも1つ上に、左右方向はほぼ同じ向きに設定されている。

「快適おまかせ気流」時の中央ファンの風向き
「快適おまかせ気流」時のサイドファンの風向き
大きな2枚のフラップで床に送られる暖気は、設定どおり左方向(部屋の中央)に向いているのが確認できる
ややしばらくするとエアコンと対角線上の位置に掛けてある温湿度計の数字が、設定温度に24℃に。湿度は1%しか減っていない

 暖気が上方向に行かないように、暖房時の温風はなるべく下方向に吹き出すのが鉄則なので納得できるが、左右の方向がまっすぐでなく、部屋の中央部に向かうように左方向に設定されているのはなぜだろうか? おまかせなのに部屋の様子がわかるとはまるでカメラでも搭載されているかのようだ。

 その謎は、リモコンの初期設定画面を確認したところ、「なーんだ、そうなのか」と簡単に解くことができた。そう、部屋のどの位置に据え付けられているのか、リモコンで設定する画面があるのだ。通常はエアコンの設置時に工事担当者が行なってくれるはずだが、万が一ということもあるので一度確認してみると安心だ。この初期設定で「据え付け位置は部屋の右側」となっているため、「快適おまかせ気流」で運転させた場合、中央部に暖気を送り、部屋全体に快適な気流を作るようにしているというわけなのだ。

リモコンの機能設定のところで、据付位置を確認してみる
初期設定のところを確認
据付位置が右になっているため、「快適おまかせ気流」にしたときに中央ファンの温風も、サイドファンの風も部屋の左方向に流れるように設定されるようだと納得

デスクに座った時の気流の最適化を図る

 「快適おまかせ気流」の暖房運転の場合、アトリエの中央に置いてある打ち合わせ用のテーブルにいる時にはかなり快適なのだが、デスクに座ってみると少々、風感があり、「非常に快適」とまでは言い難い。というのも、冷房のレビューの際にも書いたように、エアコンの正面にデスクが置かれているという位置関係のため、うまく上下方向の風向きを調整しないと、温風や冷風が直撃してしまうのだ。

エアコンの設置位置がデスクのちょうど向かい側という環境にある
デスクのところに座って、振り返るとエアコンがあるため、中央ファンから吹き出す温風を感じやすいのが設置上の難点ともいえる

 そこで、「快適おまかせ気流」の設定をベースに、より心地よい気流を作れないか調整してみることにした。ポイントは、暖気やサイドファンの風が直接当たらないようにすること。まずは中央ファンの風向きを真下に設定。さらに左右の風向きも最も左に向くようにして、部屋の中央部、ややエアコン寄り(=人のいないところ)に暖気を落とし、サイドファンでそれを押し広げるようにしたのだ。

デスクに座っていると、やや風を感じるため、中央ファンを真下に吹き下ろすように設定を変更。左右の方向も最も左に向くようにしてみた
サイドファンは中央ファンの暖気を床に押し広げるようにさせるため、1段階上に設定
中央のフラップよりもサイドファンの位置が少し上になっているのがわかる。ここが大切なポイントだ

 「快適おまかせ気流」のサイドファンの設定のように、中央ファンよりもやや上に被さるようにすることで、暖気を押し広げることが可能になる。

 この設定でしばらく経つと、顔のあたりには全く温風を感じないのに、ちょうど足首あたりが温まり、たまにふわりと足首に暖かな風を感じるという夢のような状況が実現できることがわかり、これをアトリエでの仕事時の「ベストポジション」に認定。“床暖”は足の裏の暖気が徐々に上方に伝わってくるという感じだが、このノクリアXの暖房は、ずばり「足首付近の暖かさ」。女性には本当にうれしい暖房だ。

デスクに座っていても、まったく風を感じることなく、ちょうど足首あたりが暖かく感じられて快適になった
風量は最も弱い「静音」での運転となった

 今回のベスト設定ではサイドファン、中央ファン共に風量は最も弱い「静音」だが、暖気をよりしっかりと広げようとして、試しにサイドファンの風量を静音よりもやや強めの「微風」でも試してみたが、これだと暖気が散ってしまい暖かさを感じにくくなってしまうことがわかった。いやはや暖房というのはとてもデリケートなものなのだ。

 ということは、サーキュレーターでこうした気流を起こして似たようなことを実現させようとしても難しいということだろう。部屋の高いところにたまってしまった暖気をかき混ぜてなるべく下方向に送る効果は期待できても、足首あたりのやわらかな暖房をエアコンで実現できるのは、温風が吹き出す中央ファンのすぐ脇に、室温の風をやさしく送るサイドファンがあるから。頭寒足熱の状態が作り出せるのは素晴らしい。

速暖、マルチタイマー、スマホアプリの使い分けでさらに快適に

 途中、風向きなどの設定をいろいろ変えてみたりはしたが、室温20℃のアトリエが24℃になるのにたいして時間がかからず、湿度を確認してもわずか1%しか下がっていないことにびっくり。これから、本格的な冬に向かうが、ノクリアXがあれば本当に心強い限りだ。

 暖房関連では、ほかにも「速暖」機能がある。これは寒い朝や帰宅時など、あらかじめ速暖の時間設定をしておくと、その時間から30分間は暖房運転の待機モードになり、運転をスタートさせると1分程度でパワフルな暖房が始まるというものだ。また、これとは違って、1日のうちでタイマーの「入」「切」を4回設定しておけるマルチタイマー機能もある。規則正しいスケジュールで暮らしている人なら、起床時間(入)と外出時間(切)、帰宅時間(入)と就寝時間(切)などを設定しておけば、いつも快適な温度で過ごすことができそうだ。

リモコンの「機能」ボタンを押すと、「速暖」の設定画面が現れる
午前9時に「速暖設定」にしておくと、9時から9時30分の間なら、暖房開始時に約1分で温風が出るように待機してくれる
マルチタイマーは、設定時間に暖房運転が始まるというもの
マルチタイマーで午前9時に予約をしておけば、毎日9時に運転がスタートする仕組みだ

 アトリエとして仕事場として使っている立場から、とても便利だと感じているのが、スマホ連携による遠隔操作だ。別売りのアダプターを設置する必要はあるものの、室温の確認や運転のオンオフが電車の中でも出来てしまうのは驚くほど快適なのだとこの夏の冷房運転で大いに実感できた。

エアコンの室内機に取り付けられた無線アダプター(別売)
富士通ゼネラルのエアコン用スマホアプリ「どこでもリモコン」

 はじめ、スマホ操作が必要なのは、消し忘れの際にもムダな電力を使わずに済むからだと思っていた。だが、実際に使ってみるとアトリエに戻った時に涼しい部屋でホッと一息つけることだったり、自分と時間差で訪れる来客のために部屋の温度を快適にしておけることだったりと、移動中に運転を「オン」にしておけることのほうが断然、優位性があるのだとわかったのだ。

 帰宅時間がまちまちだったりする人や、一人暮らしの人などは、こうした遠隔でのスマホ操作の便利さを痛感することだろう。スマホ連携ができるエアコンは、たとえば同じ富士通ゼネラルのエアコンでも、ノクリアXシリーズだけでなく、その下のシリーズまで全4モデルで対応しているので、ぜひ導入することをおすすめしたい。

登録してあるエアコンの運転状態がわかる
現在の室温のほか、電気代の確認もできる
外出先から、暖房のオンオフも可能
暖房時の設定温度も設定できる

2016年モデルが早々登場。その違いとは?

 春・秋には送風モードで自然の中にいるような快適さが実現できるノクリアXシリーズ。今回、暖房性能も体感してますます惚れ込んでいるが、実は10月末にすでに新モデルとなる2016年版が登場している。

10月末に発売開始された2016年モデルのエアコンのリモコン(左)
見た目はほとんど同じだが、背面を見ると違いがわかる
リモコンの上部に室温センサーが新たに搭載されている。自分の近くに置いておくのが快適さをより向上させるポイントに

 本体のデザインや本質的な機能はほとんど変わらないのだが、新たにリモコンの裏面に温度センサーが搭載され、エアコン本体のセンサー、床温度をみるセンサーという3つの温度センサーをもとに、部屋が常に快適な温度帯になるように、暖め過ぎや冷やし過ぎを抑えた効率のよい運転ができるようになったとのこと。リモコンを自分のそばに置いておくことで、人がいる場所の温度を正確に認識できるので、より快適に、より無駄をなくして省エネに…ということですね。

ノクリアXシリーズを1年間使ってみて‥…

 1年を通してノクリアXシリーズのエアコンを使ってみて思うのは、室内の空気の“快適性”をとことん考えて作られているということ。冷房・除湿・暖房運転、それぞれに求められる心地よさを追求、さらに春や秋にも扇風機を使うのとは違った、送風運転による安らぎの気流を生み出してくれるのが素敵です。このやさしさは、きっと女性や赤ちゃん、そして高齢者の方には特に納得できるに違いありません。

 それらはすべてサイドファンがなせる業。暑い時や寒い時だけ使うものではないエアコン。空調というのは、こういうことなのだなと思います。もちろん、この冬は、足首を温めてくれる極上の暖房家電として愛用するつもりです。

神原サリー

新聞社勤務、フリーランスライターを経て、顧客視点アドバイザー&家電コンシェルジュとして独立。「企業の思いを生活者に伝え、生活者の願いを企業に伝える」べく、家電分野を中心に執筆やコンサルティングの仕事をしています。モノから入り、コトへとつなげる提案が得意。生活家電・美容家電分野の記者発表会にはほぼすべて出席。企画・開発担当者や技術担当者への取材も積極的に行い、メーカーさんの現場の声を聞くことを大切にしています。