家電レビュー

下半身強化パワードスーツが凄い! ビル23階まで階段すいすい上れた!

Hypershell X Proを実際に使ってみた

ある日、編集部にパワードスーツが届いた。「Hypershell X Pro」という下半身を強化するもの。本体はカーボンファイバーとチタン合金で軽量化が図られていて、重さは2kg。IP54の防塵防水性を備え、耐寒性能は-20℃。価格は179,800円。

23階の登攀チャレンジ

パワードスーツと聞くと、筆者の場合は、重い荷物を軽々と持ち上げられるといった想像をしてしまうが、「Hypershell X Pro」は、下半身のみを強化するものだという。

一体どんな時に役立つのかと興味を持ちつつ、さっそく同機が収納された専用ケースを開梱する。眼鏡のように折り畳まれてケースに収められた本体を、広げて腰に当てて、登山用のバックパックにあるような太いベルトを腰に回して、しっかりと締める。さらに両膝近くのベルトもバックルでしっかりと固定して装着完了。

Hypershell X Proが収納されている専用ケース
有能なビジネスパーソンが使うスーツケースのような専用ケースを開けると、Hypershell X Proが収納されている
眼鏡のように折り畳まれたHypershell X Proを広げる
バッテリーは2つ同梱。本体に装着しないとバッテリーを充電できない点は、やや不便さを感じた
腰ベルトと両足の膝上のベルトをギュッと締めて装着

本体の腰辺りにあるボタンを押すと、ウィ〜ン! という感じで電源が入ったことが分かる。いきなり出力を最大にして歩き始めようとすると、勝手に膝から上が持ち上げられるような感覚。

負荷のない平地で出力を最大にしていたため、キュィン! キュィン! キュィン! キュィン! と、いつもよりも膝が高く上がり、自分が歩こうとしているというよりも歩かされているようで、気分はターミネーター。ちなみに「キュイン!」という音は、それほどうるさいわけではなく、並行して歩かない限りは、環境音にかき消されるくらいの音量だ。

本体の腰辺りにあるボタンを押すと起動する
負荷のない平地で使うと、勝手に歩かされているといった感じになる

平地ではつまらないということで、編集部の清水と筆者が、階段を上って試してみることにした。インプレスが入居しているビルの、1階からオフィスのある23階へ、パワードスーツを装着しての登攀チャレンジだ。

筆者の印象では、パワードスーツの挙動は、ユーザーが腿上げ動作を開始するのと同時に、腿を上げるアシストをしてくれるというもの。同じく清水も「人体の足の動きを予測する感じで、右足を上げたら、左足も次の動作に備えて動き出す」という感じだったと振り返る。

厳密には、腿上げ動作から一瞬遅れてアシストし始めてくれているのだろうが、実際に階段を上がり始めると、上げ始めたのと同じタイミングでアシストが始まっている感覚だった。

清水の場合は「階段を上っているとぐいぐい進んでいく。足の些細な動きにも反応するため、切り返しの狭い踊り場でも足を休ませることなく進んでいく感じだった」と言う。

階段を上っているとぐいぐい進んでいく

パワーは数段階で調整できる。右腰のモーター内蔵部にあるボタンで切り替えられるほか、アプリでの操作も可能だ。

筆者は普段、平地で歩く際には、できるだけ腿を上げる動作を少なくなるように調整しながら歩いている。それがパワードスーツを装着すると、「そこまで上げなくていいのに」というくらいに腿を上げてくれる。おそらくこれは、強弱の設定が最適化されていないため。もし「そんなに上げなくていいよ」という場合には、ユーザーが出力設定を調整する……下げる必要があるのだろう。

パワードスーツが腿を上げていってくれる

その点は、例えば電動アシスト自転車とは異なる。電動アシスト自転車の場合は、坂道の傾斜やペダルへの踏力を検知し、状況に応じて出力をリアルタイムで変動させる。一方、今回のパワードスーツの場合は、ユーザーの気持ちや負荷を分かってくれるわけではない。ユーザーの動きをトリガーにして、設定されたパワーで両足の腿を持ち上げていく。

そのため、階段を2〜3階くらいまで上がった時……まだまだ筆者が元気だった頃には「そこまで上げなくていいのに」と感じた。だが、普段は階段を使うことがない4〜5階くらいになってくると、「あぁ、たしかにラクだな」と、ありがたさを実感し始める。

ラクだと感じたのは、その頃には、筆者も「Hypershell X Pro」の挙動に、主にタイミングをフィットさせられたからでもある。階段を上る動作は、足を上げる動作と、足を次のステップに着地してから体を持ち上げる動作とに分けられる。「腿上げ」と「体を上方に持ち上げる」という、大きく2つの動作を反復するのが、階段での移動。「Hypershell X Pro」がアシストしてくれるのは、「腿上げ」の動作だ。

使い始めの頃は、全ての工程で力を入れてしまった。どうしても普段の感覚で「足を自分で上げよう」としてしまうのだ。だが慣れてくると、腿上げ動作時にはダラっと脱力させてパワードスーツに(脚部だけだが)身を任せられるようになる。そして着地後に、力をギュッと入れて体を持ち上げる……ということができるようになる。そうすると、「どのくらいラクなのか」は、筆者には数値化できないが「けっこうラクだな」というレベルでラクになる。

慣れてくると、Hypershell X Proがアシストする動きに、自分の体の動きをフィットさせられ、よりラクに感じられる

とはいえ、10階を過ぎたあたりから汗が吹き出してきた。階段室は、時折、他社の知らない人たちが使っているのに出くわすくらいで、人影はないので、シャツの前ボタンを外して空冷を試みた。それでは追いつかないくらいに、アンダーウェアが汗で濡れていった。アシスト付きでも、15階くらいまで到達した時にはヘトヘトで、リタイアしたいと願った。だが、階段室から出るためのドアには「関係者以外は入らないでください」という無情な貼り紙が……。「少なくとも(インプレスのある)22階までは上らないといけない」と観念し、階段室に閉じ込められた気分になった。

それでも23階まで上がれたのは、やはり「Hypershell X Pro」のおかげとしか言えない。半ば勝手に腿を上げてくれるのに身を任せて上っていった。

思うに、23階まで階段を上っていくというのは、筋力と体力と精神力が試される。精神力とは、ほとんど筆者しかいない狭く感じられる階段室で、黙々と「足を交互に持ち上げ続ける」という単調な反復作業を続けることに耐えること。この苦痛とも言える反復動作を、同機がアシストしてくれたのは非常に大きい。

結果、50歳を過ぎて平日は(在宅勤務のため)ほぼ自宅に引きこもり、特別に運動することもない筆者でも、約7分28秒で、23階までリタイヤすることなく辿り着けた。その時には、汗がだらだらと滴り、心拍は激しくなっていた。

本当に驚いたのは、腰からパワードスーツを外してからだった。「今日はもう歩けないんじゃないか?」と覚悟していたのだが、パワードスーツを外して歩いてみると……足の筋肉がほとんど疲れていないことに気がついたからだ。足がブルブルと震えることもないし、筋肉のダルさも一切ない。もう一度、23階を下ったり上ったりしろと言われても、心理的には無理という感じだけれど、なにか必要があって、2〜3階分の上り下りをしなければいけない状況になれば、すぐにでも動き出せそうだった。

先行して上りきった清水も「足の疲れや負担は少ない。ただし、しっかりと息は上がるし汗もかいた」と振り返る。2人とも汗だくだが、その後の仕事に支障はなかった……はず。

ちなみにバッテリー残量は70%強。1階から23階を上って、1人が約15%のバッテリーを消費したことになる。普段の生活では、こんなに息が上がることも、汗だくになることもないので、もっと足腰が弱ってきたら、パワードスーツに頼ってもいいんじゃないかと感じた。

また、足腰が弱ってきたけれど、ラクに街歩きやトレッキングを楽しみたい、といった人にも、このHypershell X Proは心強いのではないかと思う。特に足腰が弱くなった高齢者にはおすすめしたいところだが、足腰が弱くなってから初めて同機を装着するとなると、なかなか慣れるのに時間がかかりそうな気もする。理想的には、健常なうちに、こうした機器に触れておくとよいだろう。

ということで、Hypershell X Proを装着したまま、街中を歩いてみたが、すれ違う人たちに異常な違和感を持たれる雰囲気ではなかった。そこまで大仰な見た目でもないだけに、あまり気がつく人もいなかったのかもしれない。

街中を歩くと、ウェアラブルカメラ用の胸ストラップの方が目立っている
モデル=清水が、食堂の行列に並んだりコンビニへ買い物へ行っても、誰も気付かれなかったとのこと

自転車でもアシストしてくれるのか?

Hypershell X Proは、平地や階段などだけでなく自転車に最適化したというモードも備えている。前述までの階段登攀チャレンジの後、清水は自宅までの18kmの道のりを、同機を使いながら自転車で帰宅した。

Hypershell X Proと連携させた専用アプリを見ると、歩行や階段、坂道のモードのほか、サイクリングモードを備えていることが分かる
Hypershell X Proを装着して自転車に乗る。本体が自転車の車体と干渉することはなかった
大きなバックパックを背負うと、腰のバッテリーが干渉するため、もし背負うのであれば小さめのバックパックがおすすめ
前方から見ると、見た目の違和感は感じられない

結果、清水の感想としては「自転車のペダルが自然に回転するのに対しても、パワードスーツの不必要なアシストが入る。そうした点に改良の余地があると感じた」そうだ。また「坂道で軽いギアでペダルを回すとぐんぐんバッテリーが減っていった」という。

その結果、設定は「Ecoモード/アシストレベル50%」だったが、自宅まであと3kmの15km地点で、バッテリー残量は約10%になったという。ただし、別の日に同じ道のりを走った際には、バッテリー残量が50%もあったとのこと。

自転車だと、果たしてどんな使い方が効果が高いのかは気になるところだが、高価ながら用途としてはいろいろ考えられるため、興味のある人は試してみてはいかがだろうか。

河原塚 英信