家電製品レビュー

自動で気分に合ったお茶を淹れる、賢いティーポットteplo。アプリでしっかり味が決まる

LOAD & ROADの「teplo ティーポット」

日本茶や紅茶をおいしく淹れるのは、実は案外難しい。ただ飲むだけなら「湯を沸かす」「茶葉を入れたティーポットに湯を注いで待つ」でいいのだが、せっかくティーバッグではなく茶葉から淹れるなら、できるだけそのお茶に合った淹れ方で楽しみたいものだ。
まず、茶葉の種類によって適した湯の温度や、お茶を抽出する時間は全く異なる。筆者はお茶が好きなので、同じ茶葉であっても、こだわり出すと、お茶請けや気分によって濃さを変えたくなる。

それでも、手間がかかる割に、思い通りの味にはなかなかならないのが難しいところ。濃すぎたり、渋みが足りなかったりと、何かしら引っかかる部分がある。

そこで気になったのは、LOAD&ROADが8月に発売した「teplo ティーポット」だ。お茶を飲む人の脈拍など個人的な情報や周囲の照度といったお茶を飲む環境をセンサーで感知し、その場に合ったお茶を淹れる。

飲む人の気分にあわせたお茶を淹れるIoTティーポット

teploは、専用スマートフォンアプリと連携して、指定した抽出条件に合わせてお茶を淹れるティーポット。茶葉を本体のインフューザー(お湯に浸して茶を抽出する部分)にセットし、アプリで飲みたいお茶を選択し本体のファンクションボタンを押すだけで、種類に合わせた抽出条件でお茶を淹れる。アプリにはteplo公式茶葉として紅茶や日本茶、中国茶などさまざまなお茶がラインナップされており、今秋には公式茶葉をアプリ上で購入できるようになる予定だ。

抽出の際に、センサーと連携することで、飲み手の気分や体調、周囲の環境に合わせたお茶を淹れることができるのが、このティーポットの目玉機能「パーソナライズ抽出機能」だ。本体前面のセンサーに指をあてると、脈拍や指の温度、さらに周囲の環境である室温/湿度/照度/騒音レベルを計測する。また、飲み手の気分を「仕事に集中」「リラックスしたい」など6つの選択肢から選択する。それらの情報をもとに独自のアルゴリズムで抽出時間と抽出温度を導き出す。お茶の生産者や専門家、愛好家数百名にヒアリングやテイスティングを実施し、お茶の種類ごとの一番おいしい抽出条件をインプットしたティーデータベースがアプリ内にあり、これを活用しているとのことだ。

インフューザーに茶葉をセットし、ポット部に水を入れる
アプリで抽出する茶葉を選択し、
なりたい気分をアプリで選択し、本体前面のセンサーで数十秒ほど脈拍などを読み込む。このあと本体のファンクションボタン(センサー右)を押すと抽出が始まる

ポットが動作を始めると、まずは茶葉に合わせた温度まで湯を沸かす。湯が沸くまでは、インフューザーは水につからないようになっているが、茶葉を抽出するのに適した温度に到達した時点でインフューザーが回転を始め、お茶を抽出する仕組みだ。

お茶の抽出中にも、ヒーターでお湯の温度を保つ

お茶の渋み成分であるカテキンは80℃以上、旨み成分のアミノ酸は50℃以上で溶け出すという(参照:伊藤園公式サイト内「お茶百科」)。高温で抽出して渋みをだしたり、抽出時間を伸ばしてお茶を濃く出すといった味の変化をつけるというわけだ。

同じ茶葉でも、パーソナライズ機能によって味がまったく異なる

では、お茶を飲む環境が変わったときに、どのように味が変わるのか。公式茶葉の「Margaret's Hope Darjeeling Black」(紅茶)を、「起床時」と「就寝前」にパーソナライズ機能を用いて淹れた。

まずは、起床時にteploで紅茶を淹れた。時間は朝8時ごろで、部屋の電気をつけ、テレビで朝のニュース番組が流れている状態だ。なりたい気分では「元気がほしい」を選択した。このときの抽出温度は95℃、抽出時間は210秒だった。お茶をカップに注ぐと、紅茶の香りが立ち昇り、適度な渋みがあった。

つぎに、就寝前の夜0時前に抽出した。部屋の電気は付いているが、寝る前なのもありテレビは消した状態だ。なりたい気分は「よく眠りたい」を選択した。センサーで脈拍や指の温度を測ったうえでteploに導き出され抽出温度は、朝に淹れたときと同じ95℃だが、抽出時間は3分の1以下の60秒となった。お茶の香りはよく嗅がないとわからないくらい薄いが、味はしっかりと、甘く出ていた。

起床時(左)と就寝前(右)の抽出条件。起床時のほうが抽出時間が長い

朝と夜に同じ茶葉をパーソナライズ機能を用いて抽出したが、味や香りがまったく異なった。紅茶は100℃近い高温で抽出するのが一般的なためか、2つの状況で抽出温度に違いはなかったが、抽出時間は随分と離れていた。普通のポットで茶葉からお茶を淹れる際に、「今日は薄く/濃く淹れよう」としても、狙った味にするのは難しい。就寝前のように「薄いけどしっかりと旨みのあるお茶」を淹れたい際などには、パーソナライズ機能はかなりうれしい。

起床時に淹れたお茶
就寝前に淹れたお茶。起床時に淹れたときよりも色が薄い

脈拍の違いだけではお茶の味は変わらず。6つのセンサー情報を総合的に反映か

つぎに、運動前と運動後ではお茶の味に変化が出てくるのか比べてみた。運動の前後では心拍数が変わるので、脈拍センサーからお茶の味に反映されるのか気になったためだ。

運動前と運動後に、公式茶葉「Teplo Green」(緑茶)を「元気が欲しい」気分で淹れた。ここでの運動は、軽いウォーキングと自宅の階段の上り下りで、心拍数に変化があることをスマートウォッチで確認してからお茶を抽出した。結論から言うと、まったく同じ抽出時間/温度で抽出されたお茶はまったく同じ味。心拍数は、運動前で66bpm、運動後で184bpmと異なるのに対し、抽出温度はどちららも60℃、抽出時間は180秒だった。

運動前(左)と運動後(右)のセンサー読み取り結果。運動後の脈拍は通常時とはかけ離れているが、お茶の抽出条件は同じ

脈拍の違いだけでなく、気分や周囲の照度など他の要素も総合してお茶を淹れているのか、「脈拍が変われば味が変わる」といった単純な仕組みではないようだ。また、このときどちらも「元気を出したい」気分をなりたい気分として選んでいたのも影響したのかもしれない。以下で説明していくが、運動前にぴったりな「ワークアウトを楽しみたい」という気分を選択できるので、こちらを運動前に選べば、抽出されるお茶の味も変わっていたかもしれない。

「仕事に集中したい」ときと「リラックスしたい」ときでは、同じ茶葉でも真逆の味に

今度は、同じような周囲環境でパーソナライズ機能を利用した場合、気分によって味がどのように変わるのか比べた。teploでパーソナライズ機能を使う際に選択できる気分は以下の6つ。
・仕事に集中
・元気がほしい
・ワークアウトを楽しみたい
・リラックスしたい
・食事を楽しみたい
・よく眠りたい

真逆にみえる「仕事に集中」と「リラックスしたい」の2つの気分を選び、公式茶葉「Dark Roast Hoji」(ほうじ茶)を淹れた。周囲の騒音レベルや心拍数など、他の条件はできるかぎり同一にしている。以下の画像が、それぞれの抽出時のアプリ画面だ。

「仕事に集中」(左)の場合と「リラックスしたい」(右)の場合。「仕事に集中」のほうが抽出時間が長い

抽出温度はどちらも95℃だったが、抽出時間は「リラックスしたい」場合の60秒に対し、「仕事に集中」では120秒と時間に大きく差がでた。実際に抽出されたほうじ茶をみると、お茶の色が随分と異なるのがわかる。

「仕事に集中」(左)気分と「リラックスしたい」(右)気分で淹れたお茶。

同じ茶葉から出したお茶なのに、まったく別のものを飲んでいるような味と香りだった。「仕事に集中」のほうじ茶は香りが強く、苦みと渋みが深かった。正直なところ「渋すぎるのではないか」と思うほどだが、お茶の濃さゆえに頭が冴えたような気分になった。一方の「リラックスしたい」のほうじ茶は、ほうじ茶にしてはかなり色が薄く、香りはふんわりと香る程度だったので、飲む前はしっかりと抽出できているのか不安になるほど。しかし、飲んでみると渋みはあまりなく、ほうじ茶の心地よい甘みが口の中に広がった。

このあと、自前の茶葉を使って、公式茶葉「Teplo Green」(緑茶)の抽出モードで、すべての気分でお茶を抽出してみた。抽出時間は、「仕事に集中」だけ120秒で、ほかは180秒。抽出温度は、「仕事に集中」「元気がほしい」「ワークアウトを楽しみたい」「リラックスしたい」「食事を楽しみたい」「よく眠りたい」の順で、次第に低くなっていた。最も高い「仕事に集中」で75℃、最も低い「よく眠りたい」で50℃と、抽出温度には25℃もの差があった。

パーソナライズ機能を使えるのは公式茶葉の抽出モード

なりたい気分の選択やセンサーをもとにしたパーソナライズ機能だが、利用できるのはTeploの公式茶葉の抽出モードを利用した場合のみ。現在アプリ内のデータベースに登録されているお茶は日本茶や紅茶、中国茶など20種類以上で、今後も順次追加予定。茶葉の購入については、10月22日から月額1,700円で月に1度、15回分を配達するサブスクリプションサービスを開始する。1回の抽出分の茶葉をパックにしたもので、公式茶葉から3~5種類を15パック配送する。

今回は3種類の公式茶葉を飲んだ

teploでは、手持ちのお茶を淹れるために、自由に抽出時間や温度を設定できるモードもあるが、この時はセンサーを使用したパーソナライズ機能は適用しない。もし、手持ちの茶葉でもパーソナライズ機能を使用したい場合は、似ているteplo公式茶葉の抽出モードを利用して淹れるのがよさそうだ。

実際に、手持ちの紅茶2種をTeplo公式茶葉「Margaret's Hope Darjeeling Black」の抽出モードで淹れてみた。渋みの強い「モーニング」と、中国原産の紅茶で独特な香りの「プーチョン」と、あまり似てはいない2種だ。だが、Teplo公式茶葉と同じ分量の茶葉で、パーソナライズ機能を利用して抽出したところ、自分でポットで淹れるよりもその茶葉の特徴が良く出た味に仕上がった。

さすがに、渋さが特徴のモーニングを、「仕事に集中」といった濃くお茶を抽出するモードで淹れた場合は苦すぎるように感じたが、それ以外の気分を選択した場合はうまく淹れることができた。「甘みが強い」「香りや渋みが強い」といった自前のお茶の軽い特徴を踏まえ、実際にさまざまなモードを試していけば、自前の茶葉でも、公式茶葉の抽出モードでおいしく淹れることができそうだ。

自前の茶葉の抽出モードを登録する場合は、インフューザーの動作モードを設定できる

手持ちの茶葉を抽出するとき、teploのアプリ内で以下の抽出条件を設定できる。
・茶葉の量
・抽出時間
・水量
・インフューザーの回転モード
・インフューザーの回転方向
・インフューザーを左右にスイングするモードのでの回転角度
・インフューザーを回転させる速さ

インフューザーの回転だけでも、「回転」「浸したまま」「スイング」の3種類から選択できる

茶葉や水をセットする以外はアプリで動作を完結できるが、意外に細かく条件を設定できる。teploを販売するLOAD&ROADの担当者によれば、まずはインフューザーを「回転」モードにし、1分間の回転数を最も少ない6回で試してみて、味見をしながら自分に合った淹れ方を探していくのが良いという。

インフューザーの動作モードは「回転」「浸したまま」「スイング」の3つから選択可能。3つの回転モードでどこまで味が変わるのか試してみた。素人考えでは、「浸したままの場合は、ずっと茶葉が湯につかっているから濃いだろう」と思っていたが、まったく裏切られる結果だった。

使用する茶葉は、先ほども使用した「モーニング」で、茶葉3グラムに対し水量は300ml、抽出時間は紅茶のパッケージに記載の3分に設定。そのときの紅茶の味は、「回転、スイング、浸したまま」の順で徐々に渋みが薄くなった。「回転」や、インフューザーを振り子のように揺らす「スイング」では、茶葉が湯にしっかりと混ざるジャンピングが起きている状態になるためか、よりしっかりとした味になった。なかでも、回転の場合にもっとも香りが強いように感じた。

左から、回転、浸したまま、スイングで淹れたお茶。両端のお茶がやや濃く見える

つぎに、回転モードを選択し、一分間あたりの回転数を変更した。回転数は1分あたり6~10回で設定できる。ここでは、1分あたり6/8/10回に設定して「モーニング」を淹れた。3つの回転数の場合を連続して抽出したが、見た目や味にそこまで大きな違いはみられなかった。心なしか、回転数が多いほど濃い気がしたが、モーニングではそこまで大きな違いはみられない。

左から、1分あたりの回転数6/10回。モーニングの場合、色にあまり違いはない

一連の設定をしてみて思ったのは、適した抽出モードを探すのは楽しいが、それなりに時間や手間がかかるということだ。インフューザーの動作モードだけでも3通りあるので、気に入ったモードを見つけるのに1日では足りないだろう。これに対し、公式茶葉の抽出モードでは茶葉ごとに適したインフューザーの動作なども設定されている。公式茶葉モードはパーソナライズ機能が面白いこともさることながら、お茶を淹れる手間を省いてくれているという点にも魅力を感じた。

手入れをする際は、インフューザーの温度やポット内のセンサーに注意

お茶を抽出したあとのポットやインフューザーはとても熱い。お茶を淹れた後は熱く触るのが難しい。お茶を淹れた直後に「もう少し飲みたい」と思いポットを洗おうとしたが、上部のプラスチック製のフタが熱く、なかなか触れなかった。

インフューザーには重さ150gほどの金属部分があり、この部分がなかなか冷めない。そのうえ、インフューザーのプラスチック部分は少なく、洗ったりするには金属部分を触るほかない。95℃の高温で抽出する紅茶やほうじ茶を淹れたあとは、本体の電源を切ってから20分ほど経たなければインフューザーに触ることができなかった。洗う際には、インフューザーの温度が下がったことを確認してから洗う必要がある。

インフューザーの金属のおもり部分は150gと重く、なかなか冷めない

ポットを洗う際は、軽く洗剤で洗えばきれいに汚れが落ちた。ポット内部には水温を計るセンサー部の突起があるため、その部分だけ傷つけないように注意すればよい。

水温を測る棒状のセンサーにだけ気を付ければ、口も広く洗いやすい

お茶を淹れるのが面倒/味がなかなか決まらない人に便利

お茶を淹れる湯の温度や抽出方法にこだわることが、お茶を淹れる醍醐味なのかもしれない。しかし、楽しい一方で面倒なので、すぐにお茶が飲みたいときにはなかなか手が出ず、お茶から遠ざかってしまうときがあった。しかし、teplo ティーポットを使うようになってから、在宅勤務中に紅茶や緑茶など、茶葉から淹れるお茶を一日に何度も飲むようになった。

teploティーポットを使った場合は「茶葉をセットする」「水を入れる」「スマホでいくつか操作をする」だけでお茶を淹れることができるし、なにより、おいしくお茶を淹れることができる。「おいしい」の基準は人によって違いもあると思うが、「大きな失敗を防げる」という点は大きい。ちょっと贅沢な茶葉を買ったときにも、濃すぎ/薄すぎになってしまわないのは、詳しくない人にも安心だ。茶葉の特徴に合った味や香りを楽しむためにも、公式茶葉でないお茶の場合は、インフューザーの回転方法や回転速度などを何度か調整する必要があるが、一回おいしく決まれば抽出条件を保存しておける。また、公式でないお茶でも公式茶葉の抽出モードやパーソナライズ機能を利用しておいしく淹れることができるのも便利だ。

2020年8月以降、teploティーポットは品薄状態だったが、10月22日から数量限定で再入荷する。在宅勤務や家事、趣味の合間に、お茶をゆっくり淹れる時間は取れないけれど、ちゃんと茶葉の特徴を活かした味や香りのお茶を飲みたい人や、 「おいしくお茶を淹れるのが難しい」とお茶から離れてしまっている人に、ぜひおすすめしたい製品だ。

大塚 愛理