家電製品レビュー

チルド室の使いこなしがポイント!! 東芝ライフスタイル「VEGETA GR-R600FZ」

 昔の冷蔵庫といえば、氷点下以下の食品を保存する冷凍室と、食材を7℃前後で冷やす冷蔵室の2つの保存場所しかありませんでした。その後、野菜室やチルド室が登場し、冷蔵庫の多機能化、多室化が進みます。

 東芝ライフスタイル「VEGETA(ベジータ) GR-R600FZ」もそんな多機能冷蔵庫の1つ。3カ月間お借りして、使い勝手を確かめてみました。

601Lの大容量を実現した「VEGETA GR-R600FZ」
メーカー名東芝ライフスタイル
製品名VEGETA GR-R600FZ
容量601L
価格(編集部調べ)228,800円

真ん中野菜室レイアウトの先駆け

 最初に冷蔵庫の全体を見てみましょう。「VEGETA GR-R600FZ」は庫内総容量が601Lで、同社最大サイズの冷蔵庫です。本体サイズは685×745×1833mm(幅×奥行き×高さ)、質量は128kgです。各室の定格内容量は、304L(食品収納スペースの目安は232L、うちチルドルームは24L)、野菜室は133L(同89L)、冷凍室142L(同90L)、製氷室22L(8L)となります。

 部屋の配置は上から冷蔵室、野菜室、製氷室と上段冷凍室、そして下段冷凍室の順。中央に野菜室があるのが「VEGETA」の特徴です。

 最近では他のメーカーでも、野菜室を中央にレイアウトした冷蔵庫が増えています。冷凍庫に比べると使用頻度が高い野菜室が中央にあると、野菜を取り出すときにいちいち屈む必要がなく、サッと取り出せるのがポイント。

本体前面に配置されたコントロールパネル。ここで様々な機能を設定できる。また、Wi-Fi機能を利用してスマホアプリから操作・設定も可能
真ん中にある野菜室を開けたところ。スライドケースに小物野菜が置ける
深さのある庫内。大きい野菜もたっぷり入ります

 野菜室は、野菜の保存に最適な約95%以上の高湿度環境を保つ「もっと潤う摘みたて野菜室」を採用しています。野菜が乾燥しにくくなっていて、手を入れるとしっとりした空気が感じられます。

 スライドケースは約9.5cmの深さがあるため、リンゴや大根、トマトなど、高さのない野菜、果物が入れられます。野菜室の下段部分の深さは約18cm。中央部分の奥行きは約46cmあるため、キャベツやレタスなども余裕で入ります。ただし、大きい白菜まるごとだとギリギリのラインといったところでしょうか。

 野菜室はかなり奥まで引き出せるので、大きな野菜もスムースに取り出せました。

こちらがスーパーで買ってきてすぐの野菜
約8日経過したが、萎れや乾燥しわなども見えない。ほうれん草の袋の内側に水滴が付いており、潤っているのがわかる

 また大容量の野菜室の入口には、2Lのペットボトルが6本入るスペースを確保。ペットボトルはもちろんのこと、開封済みの醤油やみりんなどを入れておけます。

引き出しの裏側のボトルコーナーには調味料も入れられる

チルドルームと上段冷蔵室を使いこなせ

 しばらく使っていて気付いたのが、チルドルームと冷蔵室を使いこなすことが、この冷蔵庫の機能を活かすポイントだということです。冷蔵室には2つのチルドルームがあります。

 上段のチルドルームは「速鮮チルド」「低温チルド」「解凍モード」が利用できる部屋。そして下段は通常のチルド(0~3℃)となっています。

 かまぼこやチーズなどは、下段のチルドに入れます。ただし、ここは高さ約6cmと狭いので、背の高い食材は入れられない点に注意です。

冷蔵庫のドアを開くと、下段に大きなチルドルームが配置されている
下段チルドにはチーズなど乳製品を入れた。マーガリンなどは高さが合わず入らない

 使いこなしが必要となるのが上段のチルドルームです。この部屋は3種類の温度設定が可能。基本となるのは「低温チルド」です。これは一般的なチルドルームよりも少し低い1~-2℃に設定されており、肉類や魚、そしてハム・ソーセージなどの保存に向いています。

 肉や魚を素早く冷やしたい時に使うのが「速鮮チルド」です。大風量の冷気を食材に吹きかけ、さらにアルミトレイが食材の熱を奪うことで、チルドよりも早く食材を冷やせます。肉や魚などだけでなく、ビールなども素早く冷やせるのが便利でした。

 「解凍」モードでは、凍っている食材を急速解凍します。冷凍したブリを入れてみましたが、約30分経つと凍って付着していたラップが柔らかい状態になり、1時間しないぐらいで、包丁で難なく切れるぐらいに解凍できていました。レンジ解凍より時間はかかりますが、ドリップが出るのを抑え、旨みを逃がさずに解凍できます。

上段のチルドルーム。「低温チルド」で肉類や生の魚介類を保存
「速鮮チルド」ではビールなども素早く冷やせる
「低温チルド」(写真上)と冷蔵室(写真下)で、それぞれで10日間保存した肉。冷蔵室で保存した方は一部が変色している

 なお「速鮮チルド」モードは約120分、「解凍」モードは約60分経過すると、自動的に「低温チルド」に戻る仕組みとなっています。

 これまでスーパーなどで肉や魚を買った場合、そのままチルドルームに入れていました。「VEGETAGR-R600FZ」の場合は、上段の低温チルドルームに入れることになるのですが、問題は「速鮮チルド」モードや「解凍」モードを使う場合、他の食材をどうするかということです。

 結論から書くと、「速鮮チルド」モードと「解凍」モードは冷気の当て方や調整によって実現しているため、これらのモードを使ってもチルド室の温度は変化しないとのこと。もともとあった食材はそのまま入れっぱなしで2つのモードが使えます。著者が使うときは「速鮮チルド」では、他の食材はそのままにしていたのですが、「解凍」モードのときだけ、なんとなく他の食材をチルド室から出して使っていました。実際は包丁が入りやすい-7℃まで解凍するだけなので、食材を逃がす必要はまったくないそうです。

【お詫びと訂正】
記事初出時、「解凍モードの時は食材を出す必要がある」としておりましたが、解凍モードの時に食材を出す必要はありません。お詫びして訂正いたします。

 また、チルドルームには熱伝導性の高いアルミトレイが敷いてあります。この効果を最大限発揮するためには、陳列用のプラスチックトレーから外して、ラップやビニール袋に移し替える必要があります。この一手間も使いこなしの上では欠かせません。

解凍モードで解凍したブリの柵。包丁で切れる柔らかさになった

棚位置を自在に調整できる冷蔵室

 庫内総容量の約半分を占める冷蔵室は4段構成。一番下の棚板は前後で半分に分離できる「2アクション棚」となっており、一番下の棚のさらに一段下へ差し込むことで、5段として使うこともできます。そうすると、チルドルームの上の手前側には約25cmの高さの空間を作ることができます。

 背の高いボトルなどを数多く保存する場合や、小瓶などを見えるように保存したい場合は、5段にすると便利です。

冷蔵室のドアを開けたところ
半分にして手前部分に高さを確保できる「2アクション棚」
棚を1枚に戻したところ。庫内スペースを有効に使えるレイアウトを選びたい
上部の棚も板の位置をそれぞれ2段階で選べる

 左右のドアポケットの上2段は、2段階で調節が可能。ポケットに入れる調味料の大きさによって最適なポジションを選べます。収納量は非常に多く、たくさんの調味料が入りました。

 便利だったのが、わさびやからしなどのチューブをセットできる小物入れが付いた、左側下段のダブルボトルポケットです。ほとんどの冷蔵庫では、チューブ類などは目線より高い位置に収納することが多く、ポケットの中で倒れたりすると見えなくなることもありますが、下段ポケットならその心配もありません。使用頻度が高いチューブ類を探し回ることなく、サッと取り出せるのがラクでした。

ドア内側のポケット。ここも2段階で高さが変えられる
ポケットの最下段に配置した小物ポケット

 また、面白いのが卵スタンドです。「VEGETA GR-R600FZ」には小物が入れられるフリーケースが付属しており、そこに卵スタンドも入れられるようになっています。さらにこの卵スタンドは、右側のドアポケットにちょうど入るサイズで、正面の棚とポケットの好きな方に収納できるというわけです。卵トレイには14個の卵を入れられて、卵パックのまま置けるのも便利です。

フリーケース内に卵スタンドを配置
ドアポケットに置いたところ

巨大な冷凍室は使い方に工夫が必要

 そして最後が冷凍室です。上段冷凍室は-16~-18℃ぐらいに設定されており、下段冷凍室は-18~-20℃とさらに低温となっています。上段冷凍室では、食材を急いで冷やす「一気冷凍」や、野菜を凍らせて長期保存する「野菜冷凍」、また野菜の水分を飛ばす「野菜冷凍ドライ」機能などが利用できます。

「一気冷凍」や「野菜冷凍」、「野菜冷凍ドライ」などの機能が利用できる上段冷凍室
隣に製氷室。製氷機能は2時間に1回(10個)の通常製氷と、1時間に1回の一気製氷、そして自動節電時は8時間に1回になる

 アルミトレイや野菜冷凍マットの上に食材を置き、本体前面の操作パネルでそれぞれのモードを選びます。「一気冷凍」や「野菜冷凍」は約3時間、「野菜冷凍ドライ」は約8時間が経過すると通常の冷凍モードに戻ります。

食材を一気に冷凍したいときに使える「一気冷凍」はアルミトレイの上に食材を置く。55℃以下の食品で利用できる
コントロールパネルの「冷却機能」を複数回押すことで、「一気冷凍」や「野菜冷凍」モードが設定できる
「野菜冷凍」はラップや密閉容器に野菜を入れて凍らせる。このときアルミトレイは取り除く
「野菜冷凍ドライ」時は密閉せず冷気を野菜に直接当てる

 この上段冷凍室の機能もチルドルーム同様、慣れるまでは意識して使う必要があります。ただし、うまく活用することで野菜などは最大1カ月間冷凍保存ができ、凍ったままで炒めたり、煮込んだりできます。また「野菜冷凍ドライ」にした野菜は短時間で加熱でき、味が染みやすいなど料理にも役立ちます。

 そして下段冷凍室は非常に大容量で、冷凍食品や食材をたっぷりと保管できます。庫内には深さ約8cmのスライドケースと、約20cmの深さがあるストック容器が備えられているため、食材を分けて収納することもできます。

 ストック容器内には収納ケースが用意されており、縦に3ブロックに分けることができます。さらに2枚の仕切りが付属しており、好きな位置に配置することで、5ブロックに分けられる仕組みです。

 個人的には、スライドケースに冷凍餃子などを立てて収納できるぐらいの深さがあると使いやすかったように思いました。ただし、そうすると今度はストック容器内の容量が小さくなるため難しいところ。上段冷凍室の機能を有効的に使うためにも、下段はできるだけ効率良く食材を入れる必要があるようです。

下段冷凍室のスライドケース内。やや浅めなので、発泡トレイに入った肉などは2段重ねが限界だった
5ブロックに分けて食材を保存できるストック容器

敏感なタッチオープンスイッチ

 幅685mmの冷蔵庫ながら、601Lの大容量を実現した「VEGETA GR-R600FZ」。500Lクラスと比べると奥行きが大きくなっており、同じFZシリーズの508L、551Lとの差は約50mmです。実際にキッチンに置くと、それだけ前に出るということ。筆者のところでも、システムキッチンより12cmほど飛び出しました。シンクや戸棚などと面を合わせたい場合は、容量が少なめのモデルが選択肢になるかもしれません。

 少し気になったのは、タッチオープンスイッチが非常に敏感だということ。実際に冷蔵庫の前を通りかかったときに、意図せずに腕が当たってドアが開くことが何度もありました。半ドアアラームを搭載しているため、あけっぱなしになることはありませんでしたが、センサーの反応強度を調整できないのは残念でした。

タッチするだけで勢いよくドアが開くタッチオープンスイッチ

 3カ月使ってみて感じたのは、「VEGETA GR-R600FZ」は意識して「使う」冷蔵庫だということです。上段チルドルームや、上段冷凍室に搭載されている「速鮮チルド」や「野菜冷凍」などの様々な機能を活用することができれば、食材をより長持ちさせられるほか、美味しく調理にも一役買ってくれます。

 ただし、そのためには冷蔵庫内の食材の配置や使い方をきちんと考える必要があります。冷蔵庫内の食材マネジメントをしっかりと行なっていけば、搭載している多機能を活用できるでしょう。

コヤマタカヒロ

フリーランスライター。1973年生まれ。学生時代より雑誌ライターとして活動を開始。PC、IT関連から家電製品全般までに造詣が深く、製品やビジネスを専門的ではなく一般の方がわかるように解説するスタンスで執筆活動を展開している。近年は、デジタルとアナログ、IT機器と家電が交差、融合するエリアを中心に取材活動を行なっている。雑誌やWebに連載多数。企業のアドバイザー活動なども行なっている。 Twitter: @takh0120