家電製品レビュー

築50年超のボロ家でもテレビドアホンを使いたい! パナソニックのワイヤレスモデル「VL-SGZ30」は、そんな我が家の救世主となるか?

築50年超の一軒家では、色々と取付に不安があって……

 我が家は築50年超の一軒家。イマドキの戸建てやマンションに比べると、そもそもの設計思想が古く、設備面ではいろいろと苦労しています。元々は平屋2Kだったところ、建て増しで2階建て5Kになったため間取りはグチャグチャ。フローリングなんてものはなく、全部屋畳敷き。一部では土壁も残っています。そして玄関は、今や珍しい引き戸式です。

築50年超の我が家。住む分には問題ないものの、電気設備周りはいろいろと古ぼけておりまして……

 いろいろと悩み多い中、特に頭が痛かったのが「玄関チャイム」です。ここ10~20年に建てられた一軒家・アパート・マンションなら、大概はテレビドアホン、それが無理でもインターホン(音声通話)が備わっていると思います。

 しかし、我が家は未だに、ボタンを1回押すと「ピンポン♪」の音が鳴るだけの旧式。加えて、鳴動部(スピーカー)が玄関にあるため、2階の一番奥の部屋にいるとピンポン音に気付けない! そのせいで宅配便を(在宅しているのに)受け取れず、配達業者さんにご迷惑をかける機会が何度かありました。

玄関チャイムは音が鳴るだけの古いタイプ
こちらはスピーカー部分。玄関に設置しているため、家の奥の方にいると鳴っても気付けないのが難点

 「じゃあテレビドアホンに交換すればいいじゃない」という話なのですが、そもそもが古い家。玄関子機を取り付けようにも、引き戸式の玄関周りには、それに適した場所が見当たりません。いまの玄関チャイムと比べると、カメラ内蔵の玄関子機はだいぶ大ぶりなせいで、設置面積が微妙に足りないのです。

 またモニター機(親機)の置き場所も大問題。「2階の奥の部屋にいてもピンポン音を聞き取りたい」となると、適切なのは台所? 居間? それとも2階の廊下? 場所によっては土壁をぶち破りながら、子機-モニター機間ケーブルを這わす必要も出てきます。

 そして何より、80歳代の親が同居しているで、あまり複雑なドアホンを入れてしまうと、使いこなせない心配もあります。

配線工事不要の「VL-SGZ30」なら、素人でも自力で工事できるかも?

 こうした諸問題について、一部だけでも解決できるかも知れないと考えたきっかけが、パナソニックの「ワイヤレスドアホン」でした。子機-モニター機間ケーブルを電波で代替するため、工事が簡単。これならば筆者自身が自力で、試行錯誤しながら位置調整することもできそうです。

 そこで今回は「VL-SGZ30」(2018年2月発売)というモデルをパナソニックからお借りし、筆者自身で取り付け作業を実施。1カ月ほど使ってみることにしました。オープン価格の製品ですが、主要な通販サイトを覗くと2万円~2万2000円前後で販売されています。

 まずは製品構成の確認から。パッケージに入っているのは、玄関子機(VL-VD561)とモニター機(VL-MGZ30)がそれぞれ1つずつ。取付ネジ、玄関子機用の防水シート(ネジ頭部分に貼り付け)、説明書などが付属しますが、基本的にはそれだけ。当然ながら、コード類はそもそも必要ないため、同梱もしていません。

玄関子機(VL-MGZ30)
こちらはモニター機(VL-MGZ30)

 玄関子機は単3乾電池6本で動作し、電源コード含めて一切のケーブルが外出しされません。このおかげで設置自由度がかなり高くなります。夜間用途を想定した、訪問者を照らすためのLEDライトも内蔵されています。

 バッテリー寿命は最大24カ月。省電力機能を利用しない場合は6カ月程度とされていますが、充電式乾電池「エネループ」および「エボルタ」の利用が推奨されているので、年がら年中、使用済み電池を捨てることにはならないでしょう。

玄関子機は、夜間利用時などに点灯して訪問者を照らします
単3電池6本で動作。上のほうにあるのは、レンズ位置調整用レバー

 一方、室内に設置するモニター機は、動作用に100V電源コンセントを使います。ただ電源部はモニター機に内蔵されているため、コンセント周りはスッキリとします。なお画面サイズは3.5インチで、タッチには非対応。操作はすべて、合計5つの物理ボタンで行います。

 やや細かい話になりますが、玄関子機-モニター機間の無線通信規格はDECT準拠(1.9GHz TDMA-WB)で、Wi-Fiとはまた異なる方式が採用されています。また、通信距離は見通しで約100mです。

子機の裏面。電源ケーブルが直付けされています
取り付け用のネジと防水シール

玄関子機の取付は無事完了、ただし取り付けの高さには正解なし?

 さて、取付です。「玄関子機を取り付けるスペースがない」という最大の問題は、かなり妥協しまして、本来設置したい場所から30cmほど横にずらしました。結果として、訪問者が引き戸式玄関と正対した場合、だいぶ左側にズレたため、一見して子機の位置に気付きづらい状態にはなってしまいました。

実際に取り付けた場所(従来のチャイムも残しております)。ご覧のようにサイズが違うため、単純に交換するのが接地面積の関係でやや難しい

 我が家の場合、そのスペースが木の壁になっていたため、電動ドリルも用意することなく、木ネジとドライバー1本あれば取付は完了。……ただ正確なところを申すと、玄関子機は本来「屋外に露出した木材」には設置できないとされます(設置説明書に記述あり)。これは想像ですが、5~10年以上の長期利用が想定される製品ジャンルだけに、おそらくは水の浸入による、木材側の劣化・腐食を考慮しているのだと思います。

 ただ我が家の場合、背に腹は代えられず。手持ちの木ネジを転用して、強引ではありますが、取り付けてしまいました。

 取り付け方は、まず取り付けカバーをネジ等で固定。そこへ本体部をはめ込み、本体下方のネジを締め付けます。電池を交換する際は、この下方ネジをいったん緩めて、本体を外します。

 このようなごく簡単な取り付けでしたが、約1カ月の試用の間に水回りトラブルはなし。結露で使えないとか、水が侵入してしまった形跡などは確認されませんでした。

取り付け時は、このようにカバーだけを外して作業する

 もう1つ、玄関子機を設置する上で難しいのは、取付位置の高さです。あまり高くすると子供がボタンを押せず、かといって低すぎると高身長の人の顔を映せません。玄関子機のレンズを左10度・右10度の範囲か、あるいは正面~上15度のどちらかで調節することは可能ですが、万能ではありません(例えば右方向・上方向の調節を“同時”に行うことは不可)。ここはまさに、試行錯誤のしどころです。

地面からおよそ1.4mの高さに取り付けました

モニター機は電源必須、懸念だった電波問題は特に顕在化せず

 モニター機の設置で注意すべきは、動作にあたって必ずコンセントを必要とする点です。もちろん延長ケーブルを使えば幾らでも延ばせますが、それでも部屋の隅に延々と這わすには限界があるでしょう。コンセント近くに設置すべきです。

 今回は、玄関からおよそ7~8mの位置にある居間の一角、木の柱にモニター機を取り付けました。こちらは木の壁・柱への取り付け制限は特になし。付属の金属プレートで位置を決めてネジ止めし、モニター機本体をひっかけるようにして取り付ければOKです。

木の柱・板にモニター機を取り付けるは簡単。このように付属の専用金具をネジ止めし、本体を引っかければOK
動作には電源が必要です

 なお、取付を最終的に行う前には、動作確認(通信確認)を一度しておくとよいでしょう。基本的には出荷段階で玄関子機・モニター機の無線ペアリングは行われているので、双方の電源さえ入っていれば、あとは玄関子機側からボタンを押すだけで、訪問者の顔が映し出されます。

 電波の強度についても、やはりモニター機側の設定メニューから確認できます。携帯電話の電波強度表示とほぼ同じ感覚です。筆者宅の場合、建物が木造だったり、距離が直線で7~8mほどのためか、強度最大から揺らぐことはほぼありませんでした。

 という訳で、取付はあっけないほど簡単でした。身近な“木”がほうぼうに露出していたのが、まさに幸いした格好です。ただ玄関子機をコンクリート製の門扉に取り付けたい、モニター機を石膏ボードに取り付けたいとなると、筆者には正直お手上げ。電器店にお願いせざるを得ませんし、となればVL-SGZ30以外の有線式テレビドアホンも選択肢に入ってくるでしょう。

モニター機からは電波状態に加え、玄関子機の電池残量も確認できます

ワイヤレスでも映像確認・通話には支障なし

 VL-SGZ30は「テレビドアホン入門機」といった表現がピッタリなシンプル機です。システムアップは可能ですが、標準では凝った機能はほぼありません。良い意味で「訪問者の顔を見ながら、通話する」だけに特化しています。シニア世代もいるご家庭では、むしろこれぐらいがちょうど良いのではないでしょうか。

 操作の流れですが、まず訪問者が玄関子機のボタンを押すと音が鳴り、カメラがオン。応対側はその映像をモニター機で見て、通話したければ「通話/終了」ボタンを押します。取り立てて難しいところはありません。

玄関子機が押されると、まずこの画面に。とはいえ数秒ですので、訪問者をお待たせするようなことはありません
続いて、訪問者の画像が表示されます。この状態ではまだ画像をモニターしているだけで、音声通話はできません。相手を確認して、通話したいなら「通話/終了」ボタンをプッシュ
画面左上に黄色のアイコンが出ました。これが出ている間はハンズフリー通話できます

 筆者は有線テレビドアホンをまともに使ったことのないので、映像の品質・音質等について言及するのは少々憚られるのですが、ワイヤレスのVL-SGZ30であってもまったく問題を感じません。規格上は320×240ピクセル、フレームレートは最大で10fpsとのこと。とはいえ訪問者の声は、しっかりマイクを通して届くので、実用面でも十分です。

通話中、ボタンを押せば画角の「ズーム」「ワイド」を切り替えられます
ズームした状態でさらに「パン・チルト」することで、注目位置を変更可能

 もし留守などで応対できなかった場合は、玄関子機ボタンが押されたタイミングで静止画が撮影され、モニター機側の新着ランプが赤く点灯します。このおかげで、携帯電話の“着信履歴”的な利用が可能です。

 とはいえ、この静止画撮影は基本的には「ドアホンで通話していないとき」に行われるため(当然ソッポを向いている時も多い)、身長の高い人から低い人までもれなく顔を撮影できるかというと、なかなか厳しめ。特に我が家の場合は、高身長の人の顔が見切れがちでした。ただそれでも、宅配便業者であれば制服の感じがわかりますし、何よりタイムスタンプが残るので、色々と重宝します。

未対応の“着信履歴”が残っていると、赤いランプが点灯してお知らせ(再生ボタン横)
身長や、玄関子機ボタンを押すときの立ち位置は十人十色なので、静止画記録ではこのように顔が見切れることも

音量設定は3段階、室内どこでも呼び出し音を聞きたいなら要システムアップ

 導入前から抱えるもう1つの悩み「2階の奥の部屋でも呼び出し音を聞きたい」については、さすがに居間に設置したモニター機1台に頼るのは、無理でした。モニター機から鳴る呼び出し音量は大/中/小の3段階から選べますが、「大」にしても流石にダメ。残念ながら、これは素直に諦めるしかありません。

呼び出し音量の設定は3段階(プラス消音)。ただ「大」にしても、モニター機を1階に設置しては、2階で音を聞くのは難しかったです
設定メニュー画面
節電メニューを設定すると、モニター機側から玄関子機のカメラをオンにすることができなくなります。とはいえ、防犯カメラ的な用途で使うつもりがなければ、これで十分

 ただマニュアルなどを読み込んでみますと、別売の「ホームユニット KX-HJB1000」を軸に、ACアダプター電源で動作する「お知らせチャイム KX-HA200」か、スマートフォンアプリを用いれば、呼び出し音をスムーズに聞けることもが分かりました。

「お知らせチャイム KX-HA200」の製品情報ページ。便利は便利なのですが、「家のどこにいてもチャイム音を聞きたいだけ」の筆者にとっては、やや過剰スペック

 またホームユニットがあれば、それこそ外出先からドアホン応対もできるようになります。しかしIPv4グローバルアドレスの付与されたインターネット回線や、Wi-Fiルーターが必要です。

 しかし我が家の場合、すでにインターネット回線をIPv6 IPoE(エキサイトMEC光)に移行してしまいましたし、さらに我が家の80歳代の親はそもそもスマホを使っていません。システムがだいぶ複雑になってしまうこともあるので、今回は見送りです。ただパナソニック製有線ドアホンの上位モデルの中には、ワイヤレス子機(ケーブル不要のモニター機)が用意されているものもあるので、そちらも今後検討していこうと思います。

まとめ~取り付けの手間は最小限、シニアも使えるシンプルさが魅力

 最後に総評です。今回、本機を借りるにあたっては「我が家で本当に活用できるのだろうか?」と相当悩み抜きましたが、取り付けがとにかく簡単だったのには拍子抜けするほどでした。

 我が家ほど設備が古いケースは珍しいかもしれませんが、例えば玄関門扉や室内壁面にスイッチボックスが埋め込んである家でしたら、既設品からの取り替えはさらに簡単なはず。年末年始に帰省した際、実家の音声インターホンをテレビドアホンに交換してあげる……なんてこともできると思います。ただし100V電源周りの工事には、電気工事士の資格が必要ですので念のため。

 また、操作は極めてシンプル。特にシニア世代の場合、使い慣れないドアホンに戸惑うケースもあるかもしれませんが、おじいちゃん・おばあちゃんには「とにかくチャイムがなったら通話ボタンを押して」───それさえ徹底すれば、難しくて使えないということは絶対にないはずです。ただ筆者の場合、なにぶんまだ「テレビドアホンのある生活」になれておらず、呼び出し音が鳴るとまず玄関へ走ってしまうクセをなんとかしなければ(笑)

 もし、「家のどこにいても呼び出し音を聞きたい」のが主眼であれば、姉妹モデルの「VL-SGD10L」(2016年2月発売)を選ぶのも、1つの手かも知れません。通信はワイヤレスで、対するモニター機がニッケル水素電池で駆動するポータブルタイプ。ベランダに洗濯物を干しにいっている間だけ、モニター機を持ち歩くといった運用が可能です。

 ただ個人のワガママを言わせてもらうと、Wi-Fiに直結できるテレビドアホンがもうそろそろポピュラーになってきてほしいと思います。特に最近はGoogleのNest HubやAmazonのEcho Showのようなスマートディスプレイが出てきており、これらの機器で来客応対したいという声は、少なからず増えていくのでは? 国内大手のパナソニックさんに、ここはひとつ期待しております!

森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのWebニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。主に「INTERNET Watch」「AV Watch」「ケータイ Watch」で、ネット、動画配信、携帯電話などの取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2017」「ウェアラブルビジネス調査報告書 2016」(インプレス総合研究所)。