藤本健のソーラーリポート

第2号の太陽光発電所を千葉に購入! 土地探し、そして契約へ その1

「藤本健のソーラーリポート」は、再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電・ソーラーエネルギーの業界動向を、“ソーラーマニア”のライター・藤本健氏が追っていく連載記事です(編集部)
今回契約することになった「エコスタイル」の太陽光発電とは?

 富士山麓に友人と共同で50kWの太陽光発電所を購入し、運用を開始したことはこれまで記事にしてきた。その発電所とは別に、千葉県千葉市内で第2号となる発電所を作り、昨年10月に稼働した。この発電所、結果的にはかなりコストパフォーマンスの高いものができたと思っているのだが、稼働させるまでには、かなりさまざまな事件やトラブルも発生し、まさに波乱万丈のスタートだった。

 実際に太陽光発電所を作るというのが、どんなことなのか一通り体験できたので、何回かにわたって、その経験談を記事にしていきたいと思う。

熊本の太陽光発電所計画が破綻! 次なる物件探しへ

熊本県の現地まで下見にいき、買う予定だった太陽光発電所計画は破たんしてしまった……

 ことの始まりは、2014年9月のいわゆる「九電ショック」だった。「勇気」と「実印」をふりしぼって(!?)、熊本県にある50kWの発電所を2,000万円で買うという契約を業者と交わし、意気揚々としていたのに、九州電力が突然、太陽光発電所との接続を実質拒否したため、すべてが撃沈してしまったのだ。

 家を抵当に入れて、日本金融政策公庫からお金を借りる手はずは整えていたものの、物件の引き渡し前だったため、支払いには至っておらず、実害はなかった。ただ、中学生のころからずっと追いかけてきた「太陽電池で大きな発電所を作る」という夢が閉ざされてしまったのだ。

 当初は、なんとか打開策はないものなのか、業者と交渉をしてみたり、いろいろ調べてみたけれど埒が明かず。「何年待てば接続する」という具体的な話もまったく見えてこないので、「別の場所を探そう!」という思いへと変わった。

 もちろん別の場所といったって、九州は無理。また、北海道、東北、四国、沖縄電力の各電力会社の管内エリアも九電と歩調を合わせて接続拒否をしているため、実質的に無理。300坪程度と、それなりに広い土地を調達することになるため、地方がいいけれど、いつ接続拒否されるか分からないというリスクを考えると、やはり東京電力管内の首都圏で探すべきだ、というのが自分なりの結論だった。

 10月からネット検索したり、いくつかの業者に出向くなどして、物件を探してみたものの「50kWで2,000万円、売電単価は36円」という当初の価格に匹敵するようなものはまったく見つからない。「これはいいかも?」と思って調べてみると、土地が賃借契約で、20年の土地代を合わせると2,500万円を軽く超えてしまう。

 そんな中、たまたま見つけたのがエコスタイルという会社が運営している「あんしん太陽光・エコの輪」というサイト。ここのサービスである「土地付き太陽光発電」なるものを見ると、各都道府県ごとに発電所物件がズラリと並んでいて、関東各県にも数多くがある。とくに千葉県や茨城県あたりだと、物件数が多いだけでなく、その価格が想像以上に安いのだ。

エコの輪の土地付き太陽光発電として掲載されている物件一覧の一部。商談中マークがついているものも……

価格が安い「エコスタイル」は、土地探しに一苦労

 サイトには、各物件ごとに、設置場所、システム容量、土地込みの価格、年間売電額、そして償却年数、表面利回りといった数字が並んでおり、この数字を見ると、当初熊本県で購入しようとしたものよりも、条件のいいものが少なくない。たとえば投資金額を10年以内に回収可能な表面利回り10%以上のものも、ズラズラと並んでいるのである。でも、投資詐欺なんて話も多い世の中だから、うかつに飛びつくのは危険。さっそくネットで調べてみたが、掲示板などの情報を見ても、詐欺業者のようなものではなさそうだ。

 利回りのよさそうな物件には、「商談中」なるマークがついており、これは契約締結済を意味しているとのことで、申し込みできない。でも、毎週のように新しい物件が登場してくるので、中には安そうなものもあるのだ。また、この物件のリストにはPDFがついており、簡単な図面まで確認できる。

 さっそくリストの中から番号を指定し、ネット経由で問い合わせをしてみると、翌日には物件ごとに場所やパネルの配置図面、Googleマップからの写真などを示す1ページのPDFがメールで送られてきた。ただし、「手続きのすすめかたや、物件についての詳細の内容は恐れ入りますが、HPの“はじめに”の箇所、"物件についてのご注意" 、"よくあるご質問"の箇所を参照ください」とあり、すぐに受け付けてくれるわけではないようだ。

 そこで、改めて注意書きを読んでみると、他社と大きな違いがあることが分かってきた。「土地付き太陽光発電」といってはいるが、エコスタイルが土地を抑えて売っているのではなく、土地は不動産屋が売っているのだ。しかも、エコスタイルと共同で売っているわけでもなく、おそらくエコスタイルの担当者が日本中の不動産情報をチェックしながら、見つけ出した物件を並べているに過ぎない。

 ただし、これらの土地には何の条件もないから、そこに家を建てても、畑として耕しても何でもOK。別の見方をすれば、本当に地元の不動産屋が普通に売っている土地なので、変な利益が乗せられていない分、安いということだろう。

 そして、いくつかのPDF資料を見ながら、茨城県つくば市に細長だけど、ちょっとよさそうな物件を発見した。

細長ではあるが、価格も安いし気になるところだ

千葉市内の土地をほぼ即決で購入

 さっそく、そこに記載されていた不動産屋に電話をしてみると、「とにかく、突然のようにいっぱいの電話がかかってきてビックリしてるんだよ。さっきも一人お見えになって、もう明日にでも契約をすると言ってたんでね。とくに予約というのはないですから、先に契約していただいた方に売りますよ」といったことを言っている。ほかにももう一件電話をしてみたが、同様な話をしているのだ。

 とはいえ、明日も明後日も予定が入っていて、そんな遠くの不動産屋まで簡単には行けない。次の土日にでも……なんて思って、数日後に改めて電話をしてみると、「昨日、売れちゃいました」とのこと。エコの輪のサイトのリストを見ても、その時点では「商談中」のマークは記載されていなかったが、1週間後にはやはりマークがついていた。

 その後、しばらく物件をチェックしては不動産屋に電話をして……というのを繰り返していたが、11月27日、まさに掲載されたばかりのリストの資料をもらうと、なかなかよさそうな物件だった。場所は千葉市内で、Googleの航空写真を見る限り、周りには畑ばかりの平地。900坪の土地を3つに分割した300坪で、価格もピッタリ300万円。

周囲は畑ばかりの平地で日当たりもよさそうだ

 「これはいいかも!」とすぐに記載された不動産屋に電話をしてみると、やはり「いま何件か問い合わせが来てるんだけど、3ついっぺんに買いたいという人がいるんでねぇ……。でもすぐに決めてくれるなら……」なんてことを言っている。すでに夕方だったので、「翌朝行きます」ということを伝えて電話を切った。

 そこで、これまで歩調を揃えて一緒に活動してきた、リクルート時代の同僚である友人Aに連絡してみたところ、「明日の朝ならたまたま空いているので一緒に行こう」という話になり、翌日の朝8時にクルマで横浜を出発し、千葉の不動産屋に行った。彼はリクルート時代に住宅情報事業にいた人間なので、一緒にいてくれれば心強い。

 不動産屋に到着後、現地に案内されて見てみたところ、想像していた以上にいい場所だった。

資材置き場だったこともあり、整地されていて砂利も敷かれている
周りは基本的に畑や農家。すぐ横に電柱も来ている
ある程度、草も生えてはいるが、引き渡し時にはキレイにしてくれるという

 本当に周りに何もないので日当たりはいいし、畑の中で、この10年間資材置き場として使われていたそうで、きれいに整地されているし、砂利が敷かれているから草も生えにくいという。3区画あるから1区画ずつ購入すればピッタリだ。

 ただ、もう一人来ているというお客さんは、その不動産屋との旧知の仲とのことで、断りにくいとのこと。結局、その場では契約まではできず、次の日までに電話をくれる、ということで話は終わった。友人Aとは、帰り道に「2区画入手できれば問題ないが、1区画だけなら、見つけた藤本が買う」という話で決まり、不動産屋からの連絡を待った。

 だが結果的には翌日、「どれか好きなところを選んでいいので、1区画だけで勘弁してほしい」という電話がかかってきてしまい、筆者だけが契約・購入することになった。どれにするかは悩ましいところだったが、周りに建物が建つリスクを考え(畑の中なので、まずそうしたことはないが)、一番北側の土地を選択することにした。そのもう一人のお客さんというのも太陽光発電をするために購入するとのことなので、それなら影になるリスクがないからだ。

 不動産屋によると、さらにキレイに整地するとともに、一部ある雑草・低木を抜いてくれるということで、その後手続きを進め、年内ギリギリでの引き渡しとなった。

無事契約! このまま順調に進むのか?

 その不動産屋との契約と並行する形で、エコスタイルの担当者へ、無事土地が入手できることになったことを連絡。すると「今週にも契約のためにお伺いいたします」というので、都内にあるウチの事務所まで来てもらった。その担当者によると、これから経済産業省に設備認定の申請を出すので、早ければ年内にも認定されるだろう、とのこと。その後、東京電力に系統連系の申請をするが、最近、東電からの返事が遅くなっているので、早くても夏以降の連系になるだろう、という。

 エコスタイルとの契約は、その申請手続きすべてと、工事にかかわるすべてを請け負うというもので、金額はエコの輪のサイトに合った通りであり、値引きはできないという。見積書を見ると、ずいぶんとザックリしたものだったが、55.08kW分のインリーソーラー(中国メーカー)のパネルとオムロンのパワコン、架台などの材料一式で10,521,000円。

 工事費が2,257,200円で、それにエコめがねをつけてもらって、税込みトータル14,341,600円という内容だった。土地が300万円+仲介手数料なので、トータル1,800万円弱で購入できた計算となる。もっとも、熊本の物件は売電価格が36円だったのに対し、こちらは32円なので、比較すれば若干割高かもしれないが、十分納得いく内容であったので、これで契約することになった。

エコスタイルとの契約は無事完了した

 ちなみに、このお金の調達は、すべて信販会社でのローンとすることにした。土地代の300万円は、会社の事業資金と個人の貯金、また家族からの借り入れなどで何とか調達したが、1,400万円という金額はさすがに自己資金では無理。九州の案件があった関係で、その時点で公庫からの調達は難しい状況にあったため、10年ローンで2.65%の金利で融資している「ソーラーローン」というメニューを持っているアプラスから借りることにした。

アプラスのソーラーローンの申込書

 もう少し金利の安いジャックスという選択肢もあったが、なぜかジャックスからは「中国製のパネルでは融資できない」と言われてしまったのだ。この2.65%という数字をどう見るかは人ぞれぞれだが、実質一人でやってる零細企業への融資する金利としては非常に低いと思う。実際、普段の取引先である某メガ銀行に問い合わせたところ、慇懃無礼な電話がかかってきて断られたし、横浜市の融資制度などを調べてみても、保証協会へ支払う金額などを含めれば、それより高い金利となってしまうので、ソーラーローンは悪くないメニューだ。

 もっとも、1,434万円を2.65%で借りると、月々の返済は13万円強で、初年度は利息だけで年間で35万円以上を払うことになるから、馬鹿にならない。この発電所が想定通り動いてくれれば、その売電金額で賄える計算ではあるけれど、何かトラブルがあれば、一大事に陥るわけだから、結構なリスクではある。その点は十分覚悟の上、ハンコをついたのである。

 なお、この発電所を設置するための金額としては、1つだけ不明なものがあった。それは東電からやってくる「系統連系負担金」なるものだ。これは、これから設置する発電所に東電の電線を引き込んで連系するのに必要な費用で、エコスタイルへの工事費とは別途必要なもの。エコスタイルの担当者によれば、最近、系統連系負担金が上昇傾向にあるけれど、安ければ数十万円、高いと100万円を超える可能性もある、という。

 九州では、九電ショック後、「1,000万円の負担金を出せば連系する」なんて話がある、と聞いたことがあるが、これは不確定要素として、ちょっと怖いところ。ただ、負担金の金額が出てしまえば、あとはスムーズに行く、ということだったので、それを待つことにしたのだ。

 ほどなくして、その担当者から連絡があり、1か月もしない12月26日に、経産省からの設備認定通知を受け取ることができた。

 あとは、東電からの連絡待ちということになったのだが、その後、予想外、想定外のことが次々と発生するのであった。

藤本 健