藤本健のソーラーリポート
1口50万円、高利率のソーラーファンドはオイシイのか!?
by 藤本 健(2015/12/4 07:00)
最近、いろいろなところで話題になるソーラーファンド。太陽光発電の事業をファンド化することで、広く一般から資金を集めて運営を行なうというものだ。つまり、このファンドに投資することで、太陽光発電事業に参加することが可能であり、そこからの利益を得られるというわけだ。
ただ一言でソーラーファンドといっても、NPO団体が行なっている小規模なものから、メガソーラーを運営する大規模なものまでいろいろ。また、銀行や証券会社などの金融機関で買えるものもあれば、○○匿名組合のようなファンドを運営している団体と直接契約を行なうものもあるなど、いろいろある。
そんな中、今年の初めに興味半分で50万円ほど投資をしてみたので、それがどんなものなのか、実際どんな運営が行なわれているのかなどをレポートしてみたいと思う。
今度の発電所は広島へ
自分で太陽光発電を行なうとなると、それなりの資金が必要になるし、実際に稼働させるまでにはさまざまな苦労もある。そして運営を始めたらメンテナンスも必要だし、保険にも入らないといけないし……と一大事業である。実際に筆者が投資している話は先日も書いた通りだが、そこまでしなくても、資金を提供することで太陽光発電事業に参加することを実現するのがソーラーファンドだ。
自分で発電事業を行なっているのであれば、あえてソーラーファンドなどに投資する必要はないのだが、今年1月の時点では状況がちょっと違ったのだ。
確かに自分の太陽光発電設備を作るために2,000万円の契約を結んでいたり(支払ってはいなかったが)、300万円出して、千葉県に太陽光発電所設置用の土地の購入はしていたのだが、その先になかなか行けず、「ホントに東京電力は繋いでくれるのだろうか……」「結局、発電所を作ることができないままに終わってしまうのでは……」などと不安に思っていたころだったのだ。
そんなとき、ちょっと面白いソーラーファンドを見つけ、試しに……と投資してみた。
見つけたキッカケは、千葉に設置を予定していた太陽光発電所の設置業者が、まさにファンドを行なっていたことだ。千葉の話は次回以降に詳しく紹介する予定だが、ここは「エコの輪」というブランドでユニークなビジネスを展開しているエコスタイルという会社。
全国各地で50kWの発電所を設置することを主業務として行なっているが、まったく同じ形態の発電所をファンドの形で運営することを発表し、「エコの輪太陽光発電ファンド」としてその第一期目の募集を行なっていたのだ。
その募集内容を見ると、まず発電所を設置するのは広島県であり、安芸高田市に97.04kW、廿日市市に48.96kwのシステムを設置し(つまり50kWのものを3つ)、これにかかる資金4,000万円を1口50万円で募集するというもの。運用期間は10年で目標利回り5.5%(税引前)、また目標年間平均分配率は13.6%(税引前)とある。
もちろん、太陽光発電所なのだから、いろいろなリスクはあるけれど、5.5%の利回りって、いまのご時世からしたら、詐欺じゃないかというくらいの高利率。面白半分で見てはいたものの、これなら1口なら試してみる価値はあるのでは……と思ったのだ。
目標年間分配率という意味がよく分からなかったけど、利回り5.5%で50万円投資すれば、単純計算で1年で27,500円の利息が得られるわけで、かなりオイシイ話といえる。
分配金に落とし穴……?
ところがやっぱり落とし穴(?)はある。分配シミュレーションなるものを見てみると、100万円を投資した場合、運用期間を10年間とした結果、最終的に手元に戻ってくる金額が1,366,448円とあり、5.5%から想定していたものと数字がまったく異なる。普通、利回り5.5%で100万円を運用すれば、単利で計算すれば10年後155万円が戻ってくるはずなのに、136万円強というのはおかしいじゃないか、と。
で、この表をもう少しよく読み込んでいくと、状況が見えてきた。10年間、お金を預けっぱなしというわけではなく、1年目期末から分配金という形で元本も含め、お金が戻ってくるのだ。そしてずいぶん妙な計算の仕方ではあるが、戻ってくる分配金のうちの利益分を、10年間の平均残高で割った数字を平残利回りという名で計算した上で、その10年間平均値を出すと5.53%であるというわけだ。
数字の見せ方はトリッキーではあるけれど、間違っているわけではないし、50万円投資すると10年で13万円強の利益が得られるのだから、今の金融商品としてみれば、やはりすごく魅力的ではあるので、自分なりに納得した上で、1口だけ投資することに踏み切ったのだ。
ちなみにこのファンド、実態としてはエコスタイルが行なうものの、お金の流れは「倒産隔離スキーム」を実現させるためにやや特殊な形になっている。この辺の細かな話は置いておいても、このやり方なら、運営者側も十分な利益が取れることが見て取れる。
というのは、自ら太陽光発電システムを設置した場合、売電の収益を見込めば粗利で10~15%程度が得られる。そのための資金を借り入れではなく、ファンドとして募った上で、10年で36%の分配金を渡すだけであれば、途中にかかるさまざまな経費や人件費を除いたとしても十分な収益が得られるはずだ。
しかも、太陽光発電は10年ではなく20年間の売電が約束されているから、11年目以降の10年間は完全な丸儲け。事業者側にとって、かなり有利なビジネスといえるわけだ。
さらに、この発電事業を行なっていく上で、何かトラブルが生じたら、それによって分配金を減らすというスキームも入っている。つまり出資者側にとっては、太陽光発電事業運営のリスクがそのままリスクとして返ってくる形になっている。
たとえば、地震や噴火などの災害が起きてシステムが壊れたり、売電が止まるといった事態が発生したり、何らかの問題でシステムが故障し、修理費用が発生すると、それが収益を圧迫し、分配金に影響を及ぼす可能性があるのだ。
もちろん、保険には入っているし、機器の保証期間というものもあるので、まともな運営をしてくれれば、そうしたリスクが発生する可能性は低いとは認識しているが、何かあれば、それが目標利回り5.5%に影響を及ぼす可能性がある、というわけだ。
エコめがねで売電状況をリアルタイムチェック
それをズルいと考えるか、そうはいっても高利回りな金融商品である、と捉えるかは、人それぞれではあるが、このソーラーファンドには普通の金融商品とは異なる楽しい面もある。
それは広島の2か所、計3つの発電所での発電状況、売電状況をリアルタイムにチェックして見ることができるという点だ。具体的には、NTTスマイルエナジーのモニタリングシステム、「エコめがね」を使ってチェックできるのである。
「エコめがね」はIDとパスワードを入力することで、各発電所ごとの状況を時間帯別、日別、月別などで確認できるようになっており、そのIDとパスワードが出資者に渡されているため、いつでもチェックできるというわけだ。
まあ、これを見たからといって、その売電金額が丸々自分のものになるわけではないが、その売電が順調にいっていれば、想定通りの分配金が得られるわけだし、想定よりも多い発電をしていれば、それを上回る分配金が得られる可能性だってあるのだから……。
もっとも、投資信託などだって、日々の株価や運用状況の報告書が年に何回か送られてくるし、見ようと思えばネットでリアルタイム価格をチェックできるので、似たようなものと言ってしまえばそれまでだが、やっぱり発電状況が見えることに、どうしてもワクワクしてしまうのはソーラーマニアだからなのだろうか……。
ちなみに、発電状況を見るのは株価などと違って一喜一憂する必要はなく、常に楽しいものだと認識している。晴れたらやっぱり嬉しいけれど、雨が降って売電が仮にゼロであっても、落ち込む必要もない。天気なんて1年を通せばだいたい決まっているから、そこは全体を見ればOKであって、暴落するなんて心配もないのだから。
もちろん、不慮の故障などがあったら大きい問題ではあるが、それは運営者側が直してくれるし、保険だってあるわけなので、気楽に楽しく見ていればいいわけだ。
ブログで発電状況をレポート
このエコの輪太陽光発電ファンドの面白いのは、ブログ形式で発電状況を楽しくレポートしてくれていることだ。筆者が投資したのは2月に募集を締め切った第1期のファンドである「エコの輪太陽光発電ファンド1号」という広島県のもの。
その後、千葉県南房総市でのファンド2号、ファンド3号を募集し、現在4号を募集しているところだ。その投資者を集める広告的な目的が大きいのだとは思うけれど、各発電所ごとのレポートをみんなが見える形で行なっているのだ。
基本的に1週間に1度のレポートなのだが「広島県のファンド1号は今秋は雨も多く元気がない1週間でした。本日の合計発電量が298.2kWhと今週のなかでは上位でした。今週1番発電した日は16日の371.2kWhの発電量となり……」といった内容なのだが、いちいち自分で「エコめがね」にログインしなくても、概要を教えてくれるのも嬉しいところだ。
ちなみに、2月下旬から発電を開始した、ファンド1号の10月までの発電実績を見ると、天候不順により7月は予想の89.09%と落ち込んでいるが、それ以外は概ね予想と同等か、それを上回るものとなっている。トータルでみれば5.5%の利回りを超える形での推移のようだ。
まあ、最初の分配金が来るのが来年の4月で、実際の利益がやってくるのはその1年後なので、まだまだ先は長いが、ぜひこの3つの発電所が無事、元気に発電してくれることを期待したいところだ。