藤本健のソーラーリポート
第2号の太陽光発電所、毎日順調に発電中! その3
by 藤本 健(2016/3/4 07:00)
不動産屋から1坪1万円で300坪ほど取得した千葉県千葉市内の畑の真ん中にある土地に、全額ローンの1,434万1,600円で太陽光発電の設備を昨年10月に無事設置できたというのが前回までの話(その1、その2)。
東京電力への負担金などを含めると1,800万円強を投資して作った、第2弾の発電所なわけだが、それから5か月経過して、実際にどうなっているのかをレポートしてみたい。
トラブルを早期に察知するためのモニタリングシステム
太陽光発電所を運営する上で、発電状況をモニタリングすることは、もっとも重要なことだと考えている。投資目的で購入する50kW以下の規模の発電所が各地に増えているが、その8割以上がモニタリングシステムを付けていないというのは、ちょっと信じられないところ。ソーラーマニアとしては、このモニターを日々何度もチェックしたいところだ。今回は、そのモニタリング・システムを中心に見ていきたいと思う。
筆者がこの千葉の第2号発電所に取り付けたモニタリング・システムは、NTTスマイルエナジーの「エコめがね」、というもの。自宅の屋根に取り付けた太陽光パネルのモニタリング用にも使っているので、これが2つ目の契約となる。
この第2号発電所はパネルの容量がトータル55.08kWもあるのに対し、自宅のものは3.6kWと小さいけれど、発電量とともに自宅での電気使用量が見える化できるHEMS機器として活用してきた。その家庭用の「エコめがね」を拡張するような形で、第2号発電所の発電状況も一緒に管理、チェックできるということでこれを導入した。
もともと富士山麓の第1号発電所も「エコめがね」を導入するつもりでいたのだが、タダで導入できるというチャンスがあったので、そちらはLooop社の「みえるーぷ」を導入したというのは以前に書いたとおりである。
でも、なぜモニタリングが重要なのか。そこにはいくつかの理由があるが、昨今の太陽光発電運営において特に重要なのが泥棒の監視。泥棒といってもパネルを盗むというのではなく、銅の高騰などにより、各地に電線泥棒なる輩が出没しているようで、大きなトラブルになっているのだ。
エコめがねで泥棒自体を防ぐことは難しいけれど、そうした事件が起きたら、即アラートメールが飛んでくるので、察知できる。詳細は割愛するが、別途セキュリティーシステムも導入しているので、これらと組み合わせて運用することで、被害を最小限にできそうだ。
一方で、雷などによる停電が起きた際への対応。停電が起きるとブレーカーが落ちたり、パワコンのシステムがオフになったりすることがある。基本的には自動復旧することになっているが、復旧しない場合もアラートメールが来るし、モニターしていれば、その異変に気付く。停電だけでなく、何等かのトラブルがあればそれらもすぐ分かるので、そこへ対応することができるのだ。
たとえば台風が来て、パネルの1枚が断線した……といった場合、自宅近所なら見回りにいくことで発見できるかもしれない。だが、遠隔地だと、なかなか察知できない。1カ月後に検針があり、その後、自宅に検針票が届いて「ちょっと少ないな」と思い、2か月後に検針票が届いて見てみると、発電量がゼロとなっていて、初めて「故障だ!」と気づいても、その2か月間近く売電できていないわけだから、かなり大きな損害になってしまうのだ。
もっとも個人的には、「日々しっかり発電している」と発電量のグラフを見ているだけで楽しいのだが……。
最新モニタリング・システムを導入
さて、その「エコめがね」、実は2014年末に太陽光発電システムの設置業者であるエコスタイルと契約する際に、オプションとして追加していたのだが、その後、大きな変更をお願いしている。
というのも太陽光発電に関する総合イベント「 PV Japan 2015」を取材した際、NTTスマイルエナジーが「エコめがね 全量モバイルパックパワコン接続タイプ」なるものを参考出品(その後正式名称は「エコめがね全量モバイルパックRS」となった)しており、それが秋から発売になるという情報を得たからだ。
従来のエコめがねは、送電線の手前にCTというものを取り付けて、電流を簡易的に測定していたのに対し、この新システムは各パワコンから直接信号を得て情報を取得するタイプ。そのため、機能・性能的に圧倒的に進化している。
第2号発電所の場合、5.5kW出力のパワコンを9台並べて使っているが、そのうちの1台が落ちたとしても、従来は「やや出力が落ちた」としかわからなかった。一方で、新システムは、トラブルが起こればアラートが送られてくる。そのため、監視という意味では、すごく大きな進化をしているのだ。
この取材直後、エコスタイルに「エコめがねの新製品が出るようなので、そちらに変更したい」という旨を伝えたところ、当初は営業担当まで話は降りておらず「そんな話は聞いていないし、そもそもすでに発注しているので難しい」という回答だった。だが、これだけは絶対に変えたかったので、「NTTスマイルエナジーは、価格は同等といっているけれど、多少高くなってもいいので、絶対こちらに切り替えたい」とお願いしていたところ、価格もそのままでOKという返事を得られたのだ。ただし、「発売日がまだ確定しておらず、連系日には間に合わないかもしれない。その場合は後日取り付けとなる」とのことだったので、もちろんそれで構わないという返事をしておいた。
発電所が無事に稼働!
そうこうしているうちに、系統連系、つまり発電開始の日となる10月2日を迎えた。この日は絶対に見に行きたいと思って、エコスタイルに確認をしていたところ、1週間前に「2日の午後1時〜2時ごろ連系します」という連絡をもらったため、知人数名とともに見に行ったのだ。
東京電力の人が来て、電線の接続工事でもするのかな……と思っていたら、実はすでに接続工事は終わっており、売電メーターも電柱に取り付けられていて、あとは単純にパワコンのスイッチを入れるだけ…、という状況になっていたのだ。現場には、エコスタイルの工事担当者が来てくれ、9台あるパワコンを1つ1つチェックするとともに、電源を入れていく。するとパワコンにあるモニターに現在の発電量が表示されるとともに、電柱に取り付けられた売電メーターがクルクルと回りだしたのだ! ん〜……あまり「接続された!」という実感はないけれど、これで約1年かけて進めてきた発電所は無事稼働ということになった。太陽の光で電気が生み出され、世の中へと供給されていくのを見ると、ちょっとした達成感が得られた。
とはいえ、この時点ではまだエコめがねがついていないので、現場を離れると、もう発電状況を確認する術はなくなってしまう。ただ、新エコめがねは11月に納品されることがその時には決まっていたので、1カ月は不安な日々を送りつつも、エコめがねの取り付けを心待ちにしていたのだ。
ちなみに、この千葉の第2号発電所までは、横浜の自宅から85kmの場所にあり、車で1時間半ほど。そこに使うガソリン代と二酸化炭素の排出量と、発電所による売電代と二酸化炭素の削減量を比較するとどうなんだろう……などと考えつつも、とりあえず金額ベースで計算すれば半日の発電で収支は合いそうだから、エコめがね設置日にもまた来ようかな……なんて思っていた。
結局、予定が合わず11月4日の工事日には現場に行けなかったが、事前に聞いていたIDとパスワードを設定したことで、その日の午後から発電をモニターできるようになり、いたって順調に発電していることが確認できて一安心。
このように1時間ごとの発電量が確認できるほか、日別、月別などのモードもあり、結局11月の発電量は3,221.3kWで金額にすると111,328円の売り上げということになった。東電の検針日とズレているので、このままピッタリというわけではないが、10月分として5,142kWh、177,707円分の発電をしていることも確認できた。一般家庭が使用する電力の17カ月分程度を発電した計算となる。これで第2号発電所においても立派に太陽光発電システム事業がスタートしたわけだ。
その後も12月、1月、2月と順調に発電を続けており、徐々に日照時間が長くなってきているので、発電量が増えているのを確認できるのも楽しいところ。またエコめがねには、発電所が健全に動いているのかをチェックする「見守りレポート」という機能もあり、これを見る限り、いまのところとっても順調なようだ。
当然この第2号発電所の発電状況をチェックしつつ、同時に富士山麓の第1号発電所の状況も見ているわけだが、この冬場を見ると、千葉のほうが発電量がかなり多いのは、やはり土地・気候の違いということなのだろうか。売電単価が第1号発電所が36円なのに対し、第2号発電所が32円であるため、売電金額という点では第1号発電所にはかなわないものの、かなりいい勝負になっているのも面白いところだ。1年通してどう違うのかは、今後見守っていきたい。
第2号発電所の稼働開始直後にトラブル発生
ところで、売電先と売電単価についてだが、発電事業者としては、もちろん高く売れるに越したことはない。第1号発電所においては、Looopに売電することで32円+1円=33円で買い取ってもらうという契約の元、モニタリング・システムの「みえるーぷ」を無料で入手できたわけだが、第2号発電所をどうするかも、当然検討していた。
当初は、エコスタイルが+1円で買い取ってくれるということで申し込んでいたが、諸々の事情を考えてNTTスマイルエナジーの「エコめがねPlus」に変更することにして、申請をしていた。ただ、どちらにしてもまずは東電で無事売電できていることが確認できてからの切り替えという条件だったので、しばらく待っていたわけなのだが、そんな中、異変が起こりだしたのだ。
今回、この異変の背景についての詳細は割愛するが、経済産業省が仕組み変更をしたため、各社の+1円とか+2円での買い取り事業が継続不可能になってしまったのである。発電事業者としては非常に残念なところだが、役所の決まりには従わざるを得ない。ただし、その仕組み変更は2016年4月からであり、3月までに切り替えた場合、経過措置ということで、2020年まではこれを維持できるという方針も併せて決まっていたのだ。
ただ、切り替えには数か月の時間を要することもあり、NTTスマイルエナジーの場合12月18日が申し込みの最終期限であると告知された。併せて、その12月18日時点で、最低1回の東電からの売電の通知があること、という条件も課されていた。その条件である「購入電力量のお知らせ」という通知も11月初旬に届いていたため、ギリギリ間に合いそうだ。
たまたま別件で大阪に行く予定が入っていたので、ミスがないようにと、申請用紙などを最終締め切り日直前にNTTスマイルエナジーの大阪にある本社に持ち込んだ。案の定、記載事項にミスが見つかったが、その場で修正して受理された……まさに滑り込みセーフ。その後、切り替えの手続きが進められ、2月28日より東電から「エコめがねPlus」になるという通知を受けたところだ。
本来この「エコめがねPlus」の仕組みでは+2円の部分を発電事業者と設置業者で案分することになっているので、当初32円+1円=33円のつもりでいたが、エコスタイル側からの連絡でエコスタイル側はここで利益をとるつもりはないので32円+2円=34円でいい、という連絡を受けた。ここは想定外のラッキーな点だったが、結果的には、なかなか採算性の高い事業になりそうだ。
あとは、泥棒が入らないこと、天災が起きないことを祈りつつ、隣の木がまた伸びて来たら枝を切らせてもらうとか、夏場は草刈りに行くなど、手をかけていく必要がある。ここも「エコめがね」でモニターしながら、進めていきたいと思っているところだ。
そんなこんなで2つの発電所の所長として運営を始めたわけだが、実は勢い余って第3号発電所の計画もスタートさせてしまった。が、こちらは契約の段階から大トラブルだらけ……。これについても、落ち着いたころにレポートしてみたい。