藤本健のソーラーリポート

太陽光発電オーナーが再確認すべき「事業計画書の提出」について

「藤本健のソーラーリポート」は、再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電・ソーラーエネルギーの業界動向を、“ソーラーマニア”のライター・藤本健氏が追っていく連載記事です(編集部)

 太陽光発電を実践しているユーザーはここ5〜6年で飛躍的に増えた。住宅の屋根に取り付けている家は2014年時点で160万件を超えて、現在は200万件近くになっていると思われる。

 また野立てで太陽光発電を設置している人も飛躍的に増えており、ちょっと郊外にいくと、そこかしこで小規模の発電所を見かけるようになった。筆者も2004年末に自宅屋根に太陽光発電設備を設置するとともに、2015年からは山梨と千葉の計3カ所でそれぞれ約50kWの発電所を運営している。

2004年末に自宅屋根に太陽光発電設備を設置
2015年5月に山梨の発電所で発電スタート
2015年10月に千葉の発電所が稼働開始
2016年2月に千葉で2カ所めとなる発電所で発電開始

 そうした多くの太陽光発電オーナーにとって、今年9月末までに必ず行なうべき手続きがあるのをご存じだろうか? それが「再生可能エネルギー発電事業計画書の提出」というものだ。

 これは住宅の屋根に設置している人にも該当するものであり、これを行なわないと今後今まで通り電力会社に電気を買い取ってもらえなくなる可能性もあるのだ。これがどういうことなのか、誰が何をすべきなのかを確認しておこう。

届くはずのハガキが届いていない!

 JPEA(太陽光発電協会)が作成した資料を見ると住宅用太陽光発電導入件数は毎年伸びてきており、2012年には累計100万件を超え、2014年6月時点で160万件。これは戸建ての住宅総数の5.9%に当たるとのことなので、かなり多くの家で導入されていることがわかるだろう。

2014年6月時点での住宅用太陽光発電導入件数は160万件

 しかも2014年5月以降も、その累計数は伸びてきており、ZEH(ゼッチ=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)というキーワードを元に新築での太陽光発電が進んでいることを考えれば、その比率はさらに上がっていると思われる。

 そうした太陽光発電を行なっている家では、通常、東京電力や関西電力、中部電力などの電力会社と接続して、余った電気を買い取ってもらっているはずだ。2009年までは購入する電気料金単価と、売る電気料金単価は同一となっていたが、2009年11月以降は、高い価格で売電可能となり、それを期待して太陽光発電システムを設置したという人も少なくないはずだ。

 そうした屋根に設置した家、さらには平地に野立ての形で50kW未満の発電所を作った人は、この春に資源エネルギー庁からハガキが届いているのではないだろうか?

資源エネルギー庁から届くハガキ

 ただ、この写真は友人宅に届いたものを写真に撮ってもらったものであり実は筆者の家には届いていない。

 筆者が、これに該当しないから届いていないというわけではない。詳細は後にするが、自宅含め4カ所の発電所があるうち3つが事業計画提出に合致するのに、資源エネルギー庁側のせいなのか、郵便事故なのかは不明だが、筆者の手元には届いていない。同様のケースにより、この重要事態についてご存知ない方も少なくなさそうだ。

 一方で、こうした事態をビジネスチャンスと捉え、太陽光発電システムを設置している家に、「事業計画書の提出を請け負います」という案内をしている会社もあるようだ。いまGoogle Mapなどの航空写真を使えば、どの家に太陽光パネルが設置されているかはすぐにわかるので、こうした情報を用いてユーザーを絞り込んで、ポストへの投げ込みを行なっているのかもしれない。中には悪徳業者がいる可能性もあるので、その辺は注意しつつ対処する必要がありそうだが、まずはどういう状況になっているのかを整理してみよう。

請負業者からの案内
Google Mapの航空写真で見た筆者の自宅屋根

事業計画を提出しないと、売電できなくなる可能性が!!

 まず、今回、事業計画書の提出というのを促されることになった背景には、従来からあった再生可能エネルギー特別措置法=FIT法が4月1日に改正されたことにある。これは、2012年にスタートした固定価格買取制度によって、賦課金が発生し、それが電気代を押し上げていることから「再生可能エネルギーの最大限の導入と国民負担の抑制の両立を図る」ことを目的に改正されたものだ。

 その1年前、2016年3月31日までの旧制度において、発電事業者として認定を受けた場合、新制度においても、認定を受けたとみなされる仕組みになっている。このことを「みなし認定」と呼び、みなし認定を受けた発電事業者、つまり筆者のように以前から発電所を持っているオーナーのことを「みなし認定事業者」と呼ぶ。

 そして、みなし認定事業者は、みなし認定を受けてから6カ月以内に事業計画書を資源エネルギー庁に提出して、新制度において正式な認定を受ける必要があるのだ。4月1日に施行された法律だから、9月30日までに認定を受ける必要があり、その認定を受けるための手続きが事業計画の提出というわけなのだ。認定取得した時期によって、提出期限に若干の違いはあるようだが、いずれにせよ事業計画の提出は必須となっている。

 もし9月30日までに事業計画を提出しないと、認定を取り消されて、売電そのものができなくなる可能性があり、太陽光発電所オーナーとしては致命傷になってしまう怖いものなのだ。

 筆者のケースでいうと、自宅の屋根のほうは5月に書いた「あと2年半でやってくる!『太陽光発電の2019年問題』を考える」の記事でも書いた通り、元を取るのにはほど遠いけれど、過去12年間である程度の回収はしてきた。そして、あと2年ちょっとで売電期間が終了し、そこで得られる金額も20万円に満たないので、大問題はあるけれど、なんとか諦めもつくところ。

 しかし、ここ数年で設置した3カ所の発電所のほうは、自分の趣味であり、中学生時代からの夢とはいえ、7,000万円近い莫大な投資をし、その大半は借金で賄っている。もし認定取り消しなどとなれば、破産することは確実で、人生アウトになる。

 そのくらいの危険を伴うことなので、本当に怖いことなのだ。中には太陽光発電の設備を設置した業者が手続きをしてくれるケースもあるだろうが、そうでないケースも多く、ここはオーナーの自己責任となる。

 実際、筆者の場合、3カ所ある発電所は別々の業者に設置してもらっているが、1つの業者から電子申請のためのIDとパスワードというものが送られてきただけで、2つの業者からは連絡すらない。そのため「自分は関係ない」なんて思っている人も少なくないのでは……と推測するが、とんでもない大事件に発展する可能性があるので、気を付けていただきたい。

事業計画を提出しなくてはならないのは誰?

 では、実際その事業計画を提出しなくてはならないのは誰なのか?

 原則としては今年の3月31日までに接続契約を締結した太陽光発電所オーナー全員となっているのだが、実は「特例太陽光」と言われる古いオーナーは提出が“不要”となっている。

 特例太陽光というワードは筆者も初めて知った用語だが、資源エネルギー庁によると「太陽光発電の余剰電力買取制度(2009年11月1日〜2012年6月30日)の下で導入された設備が、固定価格買取制度開始後に本制度へ移行したもの」とのこと。

 筆者の自宅の場合、2004年末設置で、2009年11月から48円売電の制度に切り替わったという経緯があるから、まさにこれに合致する。2012年前後に設置したユーザーだと、その切り分けがわかりにくいところ。

 だが、実は簡単に判別方法がある。それは売電伝票に記載されている設備IDの頭のアルファベットが「F」となっているのが特別太陽光ということなのだ。もし自分が対象かどうかわからないという人がいたら、ここでチェックをしておくといいだろう。

売電伝票の設備IDの頭のアルファベットが「F」なら、特別太陽光の対象

 さて、実際に自分が事業計画の提出をしなくてはならない、となったら何をどうしたらいいのだろうか?

 筆者も昔サラリーマンをしていた時代に、新規事業を企画するにあたって事業計画書を書かされた記憶はあるが、もう何をしていたかなんて覚えてないし、そんな難しいものを今書ける自信はない。だいたいの売電の金額と、借金返済のスケジュールは考えているので、それを元に収支などをExcelでまとめていけばいいのだろうか……などと考えていたら、実は「事業計画書」という言葉の響きとはかけ離れた、もっと単純な書類の提出に過ぎなかった。

 まず、この事業計画書の提出は、資源エネルギー庁の「なっとく再生エネルギー」のWebページから行なうのが一番わかりやすい。ここには「電子申請で手続き」というものと「紙申請で手続き」という2つがある。

事業計画書の提出は、資源エネルギー庁の「なっとく再生エネルギー」のWebページから行なう
電子申請と神申請とで選択できる

 この選択肢からすれば、当然「電子申請で手続き」を選ぶのがいいと思うのだが、電子申請を選択すると、いきなり難関にぶつかる。筆者の場合1つの業者からIDとパスワードはもらっていたので、それを使ってログインしてみたところ、制限されている機能だらけで、何をどうしたらいいのか、さっぱりわからなかったのだ。

「電子申請で手続き」は、何をどうしたらいいのか、さっぱりわからなかった

 業者に聞いても要領を得ないので、資源エネルギー庁の問い合わせ先窓口に電話をしてみたところ、「どうしても電子申請がしたいですか?」と不思議なことを言われた。聞いてみると、どうやら電子申請のほうは、業者が設置したユーザーをまとめて管理する際に利用するものであり、個人が数カ所のものを申請するならば、紙のほうが圧倒的に簡単とのことだったのだ。

 それならあえて、電子申請にこだわる必要もないので、紙での提出を行なうことにした。そのフォーマットの書き方などの詳細は、「なっとく再生エネルギー」のページにあるので、そちらに譲る。

 基本的にはこのサイトからダウンロードできるA4で2ページのWordフォーマットに名前と住所、太陽光発電の出力、発電所の面積、売電先の会社名と、その単価を記載するだけ。それでも、本当にこれでいいのかよくわからなかったので、問い合わせ窓口に何度も電話をして聞いてしまったが、懇切丁寧に教えてくれたので、助かったところだ。

Wordフォーマットに名前と住所、太陽光発電の出力、発電所の面積、売電先の会社名と、その単価を記載するだけ

 怖いのは、これが本当に受理されるのか、という点。郵送で送ることになるが、失敗したと思ったのは、これを書留で送らなかったことだ。レターパックを使った配達記録郵便にはしていて、「到着した」という記録は得ているのだが……。

本当に受理されるのか不安

 というのも、筆者は余裕をもって6月に送っているものの、いまだに受理されたとの連絡が来ていない。すでに資源エネルギー庁でも、いろいろと発表をしているようだが、どうも事業計画の提出数が膨大にあり、事務処理が追いついておらず、受理に2カ月以上を要しているようなのだ。問題はないはずだけれど、何か手続きミスがあって、却下されたりしたら、人生が破滅する。

 間違いなく受理され、平穏に事が進んでくれることを願うばかりだが、発電所スタートから2年を経過した現在も、トラブルや驚くようなできごとが頻発する毎日。太陽光発電所の運営は大変だと改めて実感しているところだ。

藤本 健