藤本健のソーラーリポート

落雷でパワコン故障、システムトラブルも。太陽光発電所長の大変な日々

「藤本健のソーラーリポート」は、再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電・ソーラーエネルギーの業界動向を、“ソーラーマニア”のライター・藤本健氏が追っていく連載記事です(編集部)
筆者が運営する山梨の発電所。昨年はトラブル続きだった

かれこれ40年以上も前、筆者が中学生のときに理科の先生に太陽電池の存在を教えてもらったことをキッカケに太陽電池を追いかけるようになり、2005年には念願の太陽電池を屋根にのせた家を作り、今もそこで暮らしている。

それに飽き足らず、2011年のFIT法の制定をキッカケに、勢い余って50kW(正確には49.5kW)の出力の発電所を山梨県に1カ所、千葉県に2カ所、莫大な借金とともに作ってしまったのは、これまで記事でも紹介してきた通り。

世の中には、こうした発電所を単なる投資物件だと思っている人も少なくないようだが、運営には結構パワーがかかるし、トラブルもいっぱい。以前、台風で隣の桜の木が倒れてきてパネルがバリバリに割れてしまったことや、電線をネズミにかじられて発電モニターが止まってしまう……なんてこともあり、記事にも書いていた。

それに限らず、記事にも書けない業者とのトラブルなどドロドロしたことも、いろいろあったのも事実だが、この夏は落雷による大トラブルが起こり、実は今もそのトラブルが続いている。

あまり、そうした太陽光発電に関するトラブルについて話題になっていないので、もしかしたら、筆者だけが多くのトラブルに巻き込まれているのかもしれないし、そうした星の下に生まれてしまったのかもしれない。それでも、稀なケースではないようにも思えるので、事実の記録としてここに残しておきたい。

雨の日にブレーカーが何度も落ちる

3カ所の発電所を持っていると、結構頻繁に問題は発生する。いずれも横浜にある自宅のすぐ近所というわけではなく、クルマで2~3時間かかるところなので、ちょくちょく見に行けるわけではないが、発電状況は1時間ごとにモニターできるので何かトラブルが起きれば、すぐにアラートが出る。毎日のようにモニターをチェックしているので、トラブルに気づいてしまう、というのも事実ではある。

昨年は山梨の発電所で、そうしたトラブルが頻発した。太陽光パネルで発電した直流の電気を、パワコンと呼ばれるシステムで単相200Vの交流にした上で、東京電力に売電する形にしていて、どの発電所もそれぞれオムロンのパワコンを9台ずつ設置している。各パワコンの出力が5.5kWであるため、5.5×9=49.5kWの出力の発電所である、という計算だ。

そして、各パワコンの発電した電力量がどのくらいなのか毎時チェックできるようになっているが、山梨の発電所で、9つのうちの1つが落ちるという問題が頻発したのだ。単にブレーカーが落ちただけなので、ブレーカーを戻せば復旧するけれど、そのために山梨まで行くのは大変なので、このシステムを設置した電気屋さんに連絡して、ブレーカーを上げてもらうということを何度か繰り返していた。が、同じパワコンが落ちるわけではなく、毎回違うのが気になるところ。また傾向としては、雨の日の朝、発電が開始するタイミングで落ちるようなのだ。

パワコンのブレーカーが落ちる問題が頻発
モニターシステム「みえるーぷ」でエラーが発生しているのを確認

昨年は5~6回それを繰り返した後、落ち着いていたが、今年5月の春の雨の時期に、また頻発するようになった。電気屋さんと電話とメールでやりとりすると、どうも、湿気の多いタイミングで微妙な漏電があり、そのせいで漏電ブレーカーが落ちるのではないか、というのだ。

もしかしたらパワコンの不良ということもあるし、必ずしも正しい方法ではないけれどサーキットブレーカーを交換し、閾値を少し上げれば、大きな問題はなさそうだ……ということでその方法をお願いした。その後はトラブルなく今のところ動いている。ブレーカーの材料費と工事費、出張費込みで70,000円という値段で作業してもらえたので、出費としては痛いけれど、たぶんかなり安く抑えられたはずだ。

若干の漏れ電流があることが判明
サーキットブレーカーを交換することに

ブレーカーの次はエコめがねに問題発生

これで一件落着……と思っていた8月4日に大トラブルが起きた。前日までまったく問題なく発電していたものが、雷雨があった翌朝、午前6時に、千葉の第2発電所のモニターであるエコめがねが完全にダウンしてしまった。たぶん、近所の落雷などでブレーカーが落ちたのだろう、とその時は思った。

8月3日は問題なく発電していた
8月4日にエコめがねがダウンしてしまった

どの発電所も農業みたいなもので、草刈りが重要な任務。かといって、自分で作業するのも大変なので、それぞれ、その土地のシルバー人材センターなどにお願いして夏場に何回か草刈り・除草をお願いしている。基本的には特定の人にお願いしているから、何かあったときのブレーカー操作もシルバー人材センターの方にお願いできるといいなと考え、第2発電所の草刈りをしていただいている方に連絡を入れ、8月7日に自分でブレーカー操作をすると同時に、その方法を伝えようと思い、現地で待ち合わせした。

しかし現地に行ってみると予想外の状況だった。ブレーカーは落ちていなかったのに、エコめがねだけが落ちていたのだ。実際、最終段にある売電メーターを見ると、メーターは回っており売電はできているようなので、これはエコめがねのシステムトラブルなのかな……と最初は考えた。このエコめがね、パワコンからの信号をモニターし、携帯電話の3G回線を使ってサーバーにデータを伝送するシステムになっているが、そのシステムを見ると「オウトウナシ」といったメッセージが表示されている。いろいろチェックしてみると3G回線自体は生きているし、通信はできているので、パワコンからエコめがねへのシステムにトラブルがあるようなのだ。

千葉の第2発電所
エコめがねのシステムには「オウトウナシ」と表示される
3G回線は生きていて通信はできる。パワコンからエコめがねへのシステムに問題か

さらに各パワコンを見てみると、9つのうち3つに「OFF」の表示が出ていて、動いていないというか系統連系がされていないようなのだ。マニュアルを見ると、ブレーカーを入れなおすことで、再起動するようだが、300秒のカウントダウンの後に、いずれもOFFの表示がでてしまって、らちがあかない。この8月7日は日曜日だったため、パワコンメーカーのオムロンも、エコめがねのサポートセンターであるNTTスマイルエナジーとも連絡が取れないため、せっかく2時間かけて出かけていったものの、その日はやむなくそのまま帰宅した。

翌朝、各サポートセンターに連絡の上、状況を説明すると、やはりパワコンに問題がありそう……というのが見えてきた。筆者も、ある程度のメンテナンスができるようにと、第二種電気工事士の資格は取ったけれど、パワコンが壊れていたのでは何もできない。仕方なく、設置業者であるS社に電話をしたところ、サポートに関しては別会社であるG社に委託する形となったので、そこと連絡を取ってほしい……とのこと。聞いてみると、年間メンテナンス契約を結んでいない場合、緊急駆け付けは1回70,000円かかるという。しかも、その場で直せない場合は、再度材料をそろえて再度交換などをするので、もう1回費用がかかるという。なんとも高額ではあるけれど、ほかに手だてがないので、お願いするしかない。

こちらとしても、何が原因なのかを究明したいため、日程を合わせ、8月11日の朝に現地にいくことになった。筆者が到着すると、すでにG社の方が2名到着していて、調査を行なっていた。その結果、その問題の3台のパワコンの出力が210V程度と高く、うまく動作してないようだ、とのこと。もしかしたら東電側からの電圧が高いのでは……と受電口でチェックするものの205Vで問題なし。70,000円も支払うのに、まったく復旧の見通しが立たず、結局、筆者が行ったときと状況は変わらない。

原因究明のために調査。駆け付け料金70,000円と痛い出費
問題となっているパワコンの出力が210Vと高い

とはいえ、実はこのオムロンのパワコンの保証期間は10年。この発電所の設置が2016年2月だったため、まだ保証期間内。だから、オムロンに伝えて交換してもらうことにしよう、ということになったのだ。その際、交換作業はオムロンが行なうけれど、これに立ち会う必要があるという。もし立ち合いをG社にお願いすると、また70,000円かかってしまうので、状況を確認するためにも筆者が立ち会うことにして、その手配だけをG社にお願いして、その日は終わった。

もっとも、世間はちょうどお盆休みの期間。真夏で毎日太陽は照っていて、本来なら発電して売電収入が入ってくるはずなのに、お預け状態のまま待つことに……。なかなか連絡がこないので、しびれを切らし、8月17日にG社に電話をしてみたところ、「ようやく今日、オムロンと連絡がとれましたが、落雷による故障の場合、保証対象外となってしまい、有償になるとのことです。ただ、もし落雷であった場合は、保険が効くのではないかと思います」との返答。

もちろん、保険には入っていたはずだが……。と焦って、契約当初の書類をあさってみると、証書も見つかって一安心。保険に関しては、設置会社であるS社とのやりとりではあるけれど、窓口としてG社が担当することとなり、基本はG社とのやりとりという話になった。なお、保険が下りる前提として、メーカー側の見解書が必要とのことで、もし落雷が原因であれば、その見解書もオムロンに書いてもらうということになったのだ。

それにしても、なかなかパワコンの交換の日程が決まらない、とイライラを募らせていた中、G社に連絡をしたところ、「オムロンからの連絡で、通常3台が同時に壊れることはないので、今回2台のみ交換し、交換したものを持ち帰った上で原因を追究してから3台目をどうするかを決めるとのことです」という話。

とにかく壊れてるんだから、すぐに全部交換してくれよ……と思うところだが、そうはいかないらしい。いずれにせよ、日々機会損失を続けているから、1日でも1時間でも早く交換してほしい……というやり取りの結果、9月2日に筆者立ち会いの下、交換することになったのだ。

太陽光発電だけに、雨天の日は設置が難しく、設置しても検査ができないために日程が変更になる……と言われていたが、当日はなんと雨。天気予報を見ると、「曇りときどき雨」ということだったので、祈る気持ちで現地に着くと、オムロンの工事担当者は先に到着しており、天気の様子を見ながら作業する、とのこと。30分ほどして、ちょうど雨が止んだタイミングで、交換工事を始めた。

雨の中、現地にクルマで到着
雨が止んだタイミングで交換工事をスタート

が、そこで、非常にショッキングなことが判明。実は、先日G社に70,000円支払ってチェックしてもらった後、「念のため、壊れている3台のパワコンのブレーカーは落としておきましょう」と言って、3つのブレーカーを落として帰ったが、その3つのうち2つは、こともあろうか、正常なパワコンのブレーカーを落としていたのだ。つまりもともと壊れていた3台に加え2台の計5台が22日間に渡って落ちていた。ざっくり計算すると、このブレーカーオフのミスで約4万円、トータル10万円の損失。

なんともやりきれない話だが、ここで弁償しろとか、返金しろとか言ってG社と関係を悪化させても、あまり得策ではないとの判断のもと、メールで状況だけを伝え、その場は終わらせた。

壊れたパワコンのブレーカーを落としたはずが、正常なパワコンのブレーカーを落としていたミスが発覚

さて、この2台の交換によってトラブルは解消され、とりあえず9台中8台が稼働する形になった。なぜエコめがねが落ちていたかというと、9台のパワコンがLANで数珠繋ぎになっているが、その1台目であるPCS1が壊れていたため、全部がダウンしていたのだ。が、今回、PCS1とPCS2を復旧させた結果、エコめがねは動くようになったけれど、PCS5は故障したままなので、PCS5~PCS9は見えないままという状況が続いた。

パワコンを交換してエコめがねが動くように。故障したままのPCS5以降は見られない

その後は、まずはオムロンからの結果連絡待ち。もし、単なる故障であれば、スムーズに3台目も交換となるわけだが、もし落雷の影響だとすると、いろいろ面倒なことになる。

それから20日が経過した9月22日に、残念な連絡がやってきた。まあ、予想通りではあったが、落雷による故障であり、有償となる、という見解書が写真とともに送られてきた。保険で賄うとしても一度建て替える必要があるとのことで、見積もり書とともに、振込依頼書が届いた。

価格をチェックしてみると、意外と安かったのに驚いた。2台のパワコンを新品への交換で75,000円×2=150,000円+税というのだ。G社の出張費用だけで70,000円もかかっていたので、パワコンを丸ごと交換して、この値段で済むなら……とホッとしたのは感覚がマヒしていたのかもしれない。

オムロンから送られてきた見解書。落雷が原因と書いてある
同時に送られてきた故障箇所の写真

ただ、改めてこの振込を筆者が直接行なうのか、いったんG社なり、S社に振り込んで、そこから支払ってもらうのかわからなかったので、問い合わせてみたところ、話は少しいい方向に進みだした。今回の事務処理はすべてS社側で、立て替えも含めてS社が行なうため筆者は支払わなくてもOKというのだ。それはとってもありがたいことだし、もう1台の交換においても、その保険適用でやってもらうということになった。

まあ、この電子部品不足の状況はパワコンにも来ているようで、その3台目の手配をかけてもらってもなかなか通らず、ようやく交換してもらうことになったのが、つい先日10月18日のこと。結局3カ月近くかかってしまったが、これでようやくすべて解決する……はずだった。

しかし、問題はそこからさらに続くことになってしまった。今回の交換は、筆者は立ち会わなくても大丈夫とのことだったので、G社に任せることになったが、当日、別件の仕事で打ち合わせ中に、G社の担当者から電話の着信があり、ちょっと嫌な予感が……。打ち合わせ終了後に、スマホでエコめがねをチェックしてみたところ、エラーが解消していないのだ。

この画面は先ほどスクショしたものなので日時が異なるが、現在もエラーが続いている

折り返し電話をしてみると「3台目のパワコンは交換して復旧し、すべて9台とも動作していることは確認したのですが、エコめがねが動かないんです。作業したのが夕方で日没となってしまったため、すでに確認はできないですが、明日復旧しなかったら、エコめがねのLAN接続などを見る必要がありそうです。ただ、その場合は保険の対象外となるので、有償になってしまいますが……」とのこと。

いつまで続くのか、このトラブル地獄……とイライラを募らせつつ、とりあえず全部のパワコンが動作しているのであればいいか……と思ったりもした。LANトラブルであれば筆者が行って作業することもできそうだが、どうしようか……と翌朝、エコめがねにアクセスしてみたが、やはりダメなまま。

そうした中、またG社から電話があり「エコめがねのトラブルも保険の対象ということで対応することができそうなので、また明日見に行きます」ということに。やっぱり、この前、喧嘩しなくてよかったな……なんて思いつつ、翌日を待っていたら、さらに予想外の展開に。

「LANケーブルを接続しなおしたけれど、断線はなかったようで、エコめがねが復旧しませんでした」とのこと。が、担当者の声が少し明るいので、何か糸口がつかめたのかな……と思って、さらに聞くと「今回交換したのはPCS5でしたが、試しにPCS5の接続先をPCS8に飛ばしたら、PCS5、PCS8、PCS9が見えるようになりました」という。確かに、エコめがねを見ると7つが見られるようになっている。

「結論からいうと、PCS6、PCS7において、エコめがねにデータを送るシステム部分が、壊れていました」というのだ。ということは、PCS6とPCS7のLAN関連部分の基板交換かな……と聞いてみたところ、どこが壊れているかが明確ではないのと、そうした修理ができる構造になっていないために丸ごと交換し、またオムロンに見解書を書いてもらえれば保険適用ができるはず、とのことに。

PCS6とPCS7のエコめがねにデータを送るシステムが故障。PCS5からPCS8に接続することでPCS5、PCS8、PCS9は見えるように

まあ、今回は発電はたぶん正常に行なわれているけれど、通信トラブルが起きているだけなので、それほど大きな焦りはない。エコめがねも9台中7台は動作しているので、少し安心して見ているところだが、8月2日のトラブルが3カ月を経過しても、いまだ完全解決していないのが現状。もう間もなく解決してくれるはずだが、これ以上の問題が起きないよう祈るばかり。発電所長は大変なのである。

藤本 健