藤本健のソーラーリポート

太陽光発電オーナーは割に合うのか? 楽しいけれどトラブルの日々

「藤本健のソーラーリポート」は、再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電・ソーラーエネルギーの業界動向を、“ソーラーマニア”のライター・藤本健氏が追っていく連載記事です(編集部)
筆者が運営する千葉の第1発電所

太陽光発電は「機材を設置しておけば、勝手に発電してくれる簡単なもの」と思っている人も多いかもしれないが、実際にはトラブルもしばしばで、放置しておくと発電されなくなってしまうケースも少なくない。筆者は遠隔地で3つの発電所を運営しており、3つあるとかなり対応に追われる。この太陽光発電所の運営とはどんなものなのか、最近の状況を久しぶりにレポートしたい。

7,000万円近くを投入して作った3つの発電所

世界的には、いかにCO2を削減するか、環境負荷の少ない自然エネルギーをどうやって増やしていくかが大きなテーマになっているが、日本の社会は必ずしもその方向へ向かっていないと危惧している。今年4月、菅総理大臣時代に「2030年の温室効果ガス目標を2013年度比46%削減することを目指す」と表明したことで、少し風向きも変わってくるのでは……と期待しているが、大手メディアなどを見ると、太陽光発電を目の敵にしたような記事や報道も多く、ネット界隈でも太陽光発電をバッシングする論調を目にする。

確かに、海外企業が日本の山林を切り崩してメガソーラーを設置するようなケースもあり、筆者ですら憤りを感じるものがあることは確か。また、クルマで郊外を走っていると、山林を伐採した斜面に無理やりパネルを設置した、どう考えても危険と思われるものを目にすることもあり、問題を感じることは少なくはない。

でも、家庭の屋根に設置されたソーラーパネルを含め、その大半が正しく稼働しているのにも関わらず、バッシングの嵐は相変わらず。もう少し、前向きに太陽光発電や自然エネルギーについて議論していけばいいのにと思う。

この連載もスタートして10年になるが、5~6年前からSNS上での言いがかりもあって、気分的に嫌な思いをすることが少なくないため、最近は記事のペースが落ちてしまっているのも事実。とはいえ、たまには発電所オーナーである自分自身の運営状況をレポートするのもいいのではと思い、いくつかのトピックスを紹介したい。

ご存じない方も多いと思うので、改めて自己紹介しておくと、筆者は同じくインプレスのサイトであるAV Watchで連載をしたり、DTMステーションという自身が運営するブログで、音楽制作やデジタルオーディオをテーマに記事を書いているライターが本業。一方で中学生時代から太陽電池に憧れを持ち、40年以上におよび太陽電池の動向などを追いかけてきたソーラーマニアでもある。

太陽電池で暮らせる家に住みたくて17年前に太陽光発電と太陽熱で暮らせる家を建て、2012年に全量売電による固定価格買い取り制度がスタートしたことをキッカケに、発電所の運営に乗り出し、これまでに3つの発電所を作っている。趣味とはいえ、勢い余って莫大な借金をするとともに7,000万円近く使って、山梨県に1カ所、千葉県に2カ所の計3つ、それぞれ50kWの発電所を作り、事業として運営している。数え方にもよるけれど、トータルで一般家庭40~50軒分の電力を作り出している。

山梨の発電所
千葉第1発電所
千葉第2発電所

太陽光発電を批判する報道などでは、固定価格買い取り=FIT制度は、一部の投資家がボロ儲けできるスキームである……といったことが言われているが、実際に運営している側としては、それとは程遠いと感じているのが実情。確かに、発電所を作る時点では、発電所設置ブローカーが「表面利回り10%超」といった宣伝をしており、その中から、条件のよさそうなものを見つけて土地を購入したり、パネル設置などをしていった経緯は以前にも書いたとおり。

当初は九州に設置する契約を結んだけれど、さまざまな事情から工事着工が延期に次ぐ延期で、契約自体が破棄され、結果的に山梨と千葉になったわけだが、設置してから5~6年程度経過した今も、いろいろな問題が日常茶飯事で、その対応に追われている。

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簡単に見えて、実はかなりの手間がかかる

確かに太陽光発電は、太陽の光を受ければ発電し、その発電した電気を電力会社に売ることができるのだから、とってもシンプルで、簡単に利益が出せる仕組みのように見える。ところが、実際には自然との闘いであり、ある種、農業にも近いものだと思っている。例えば、放置していたらすぐに雑草に覆われてしまい、ツタなどに絡みつかれてパネルが日陰になり発電しなくなってしまうため、草刈りは重要な任務。

草刈りしても、夏場はすぐに生えてくる

その草刈りも50kWの発電所となると、そこそこ面積も広くてかなり大変な作業。コンクリートですべて固めてしまうというのは手だが、これだけの面積があると膨大な費用がかかり、それこそ利益を出すのが難しくなるし、環境破壊にもつながる。そこで、千葉第2発電所では防草シートを使ってはいるけれど、それでも合間から草は生えてくるし、台風などによってめくれ上がることもしばしばで、そのたびにメンテナンスしつつ、並行して草刈りもしているという感じだ。

台風などが去ったあとは、防草シートもめくれ上がってしまう

その草刈りにも、電動草刈り機などを使うと、誤って電線を切断してしまうというリスクもある。筆者は横浜在住なため、山梨や千葉まで草刈りのために出かけて自分で作業するというのは、あまり現実的ではない。そのため、それぞれの土地のシルバー人材センターにお願いして作業してもらっているのだが、電動だと事故も起こりやすいため手作業にしてもらっている。

ところが、先日は近隣の草刈りの人が誤って、ウチの発電所内に入ったようでそこで誤って電線を切られてしまった。単なるミスというか事故ではあるのだが、いろいろなトラブルが生じるのは実際に運営してみないとなかなか分からないところ。

そのケーブルは基本的には地中を這わせているけれど、地上に露出した部分をネズミなどにかじられて切れることもある。以前、実際にそうしたトラブルが起きたことを記事にしたこともあったが、一部が断線した場合、システム全体が落ちるわけではないから、気づきにくく、日々出力をチェックしていないと分からない。もし、そうしたトラブルを長期間発見できないと、大きな利益損失につながり、結果として表面利回り10%なんて不可能で、すぐに赤字に転落してしまう。

自分で直接、修理を行なうということはそうないはずだけれど、いざというときのために発電所設置後に第二種電気工事士の資格も取って、備えてもいる。まあ、電気系の大学に行っていたのだから、大学時代にもっと真面目に単位を取得しておけば、電気主任技術者第1種などが取れていたはずなのだけれど……。

2018年に取得した第二種電気工事士の資格

実際の毎月の売上額は? 次々に起こるトラブル

筆者のような太陽光発電所のオーナーの中にも、太陽光発電事業を単なる投資案件と考えている人は少なくないようだ。そのため、郊外をクルマで走っていて目にする発電所の中には、まったくメンテナンスをしていないのでは? と見受けられるものも実は多い。初期投資しただけで、現地を見に行ったこともない人がいるという話は聞く。

もちろん、メンテナンス費用を支払ってすべて業者に任せるというのも手ではあるが、そうなると、実質の収益は大きく落ちてしまうはず。そもそも“表面利回り”なんて表現で販売していること自体が間違いなのだとは思うところもある。ちなみに、実際の売電金額を見てみると、発電所ごと、また月ごとに、かなり変動はあるけれど、だいたい15万円~25万円の間を推移する。例えば、直近である9月の千葉第1発電所の売電金額は、15万円程度となっていた。

2021年9月の千葉第1発電所の売電実績

しかし、今年は特に困った問題が発生した年でもあった。ご記憶の方も多いと思うが、今年の梅雨は非常に長く、そのことによって当然売電収入は例年と比較しても落ちてしまう。そんな中、山梨の発電所において梅雨が原因と思われるトラブルが頻発したのだ。

最初にトラブルが起きたのは梅雨に入る前の5月11日、「【要確認】系統異常中」という見慣れないメールが届いた。山梨のシステムは、発電量をモニタリングするためにLooop社の「みえるーぷ」というサービスを使っている。

今年5月11日にアラートメールが届いた

みえるーぷのサイトに行けば、常にリアルタイムの発電量や、これまでの発電実績など見えるようになっている一方で、毎日、発電の開始時と発電終了時に報告メールが届くようになっている。あまり大した内容ではないので、普段はほぼスルーしているのだが、この日はいつもと違うメールが来てチェックしてみたところ、PCS0~PCS8の計9系統あるシステムのうちPCS0が止まっていたのである。

水色のPCS0の出力が朝からゼロのまま

雨の日だったので、そもそも全体的にも大した発電ではなかったのだが、ゼロとなっているので、なんらかの影響でシステムダウンしていると思われる。経験上、ブレーカーが落ちた可能性が高いので、ブレーカーを上げるだけで復旧すると思うけれど、横浜から山梨の現場まではクルマで片道3時間程度。往復するだけで1日が潰れてしまう。

幸いなことに、この発電所を施工してくれた個人経営の電気工事屋さんであるG氏とは懇意にさせていただいているので、翌日に連絡してみたところ、さっそく次の日の朝に見に行ってもらうことができた。案の定ブレーカーを上げたら復旧したようだが、G氏曰く「雨の影響で回路全体に若干の漏れ電流があり、明け方の発電スタート時に漏電ブレーカーによって落ちてしまったようだ」とのこと。漏電自体はごく微弱であり、放置しても問題ないけれど、どうしても発電スタートのタイミングで問題になる可能性があるという。その時はそれで解決し、翌日以降も問題はなかったが、その10日後の5月23日の雨の日に、再びダウンしたのだ。

やはりアラートメールで気づいたのだが、こちらのモニターから調べてみると今度落ちているのは先日のPCS0ではなくPCS3と別系統。再度、G氏に連絡したところ、ちょうど出張で1週間近く埼玉県に来ていてすぐには駆けつけられない、とのこと。こちらも一刻を争うようなものではないので、戻ってきたタイミングで、とお願いしたところ5月29日に復旧させることができた。

5月23日、今度はPCS3が落ちてしまった

しかし、その2日後の6月1日に再び今度はPCS1がダウン。もちろんG氏には駆けつけ料などをお支払いしてはいるものの、こう頻繁に落ちていては申し訳ない限り。自宅の裏で発電しているなら、ブレーカーを上げればいいだけの話なのだが、人にブレーカーを上げるだけの仕事をお願いするのは気が引ける。

その後G氏からは、「それぞれ系統が異なるので、このまま様子を見ておくのがいいでしょう。でも、同じ系統で頻発するようなら、漏れ電流の許容量を変更してもいいのかもしれないね」と言われ、そのままになっていた。結果的には、そこから梅雨を乗り越え、トラブルなく稼働するようになったのだ。

ところが、今度、問題が起こったのは千葉の第2発電所。6月末の雨の日の昼過ぎに、同じように1系統が落ちてしまった。実はその日には気づかず、そのトラブルが判明したのは数日後。千葉の2つの発電所は「みえるーぷ」ではなくNTTスマイルエナジーの「エコめがね」というモニタリングシステムを使っており、トラブルがあったらアラートメールが届く設定にしていたつもりだったが、なぜかそれがオフになっていたのと、その数日間たまたま、エコめがねサイトをチェックしていなくて、見落としていたのだ。

6月30日には、千葉第2発電所のPCS4がダウン

それを知らせてくれたのは、この発電所の土地手配から施工まで行なってくれた業者。この業者とは完成直後から、いろいろと揉めていて、お互い信頼関係があまり築けていないが、先方でモニタリングしてくれていたようで、電話で知らせてくれた。改めてエコめがねを確認してみると、確かにエラーが起こっている。ただ、その会社自体は現在はメンテナンス業務はやめてしまい、関連会社に委託しているので、必要あればそちらに問い合わせてほしいとのことで、連絡してみた。

ところが、1系統落ちている状況だけを見て「チェックしにいくのに、5万円+交通費がかかります。またその後に、パワコンを交換するので、パワコン自体は保証期間内なので費用はかからないけれど、交換作業量として何万円かがかかります」などと言ってくる。

本当に故障している場合は、現在の制度や契約上、この業者に依頼するしかなさそうなのだが、実際に見ないで、ただ言われるがままに支払う気にもなれない。山梨の発電所とは異なり、千葉の第2発電所までならば1時間半で行けるので、とにかく自分で確認しようと思ったのだ。ただし、いきなりシステムダウンされても、こちらにもいろいろスケジュールがあって、すぐには駆けつけられない。幸いにしてというか、雨続きの毎日だったので、1週間程度1系統が落ちていたところで、発電できないことによるロスは金額的にみても1,000円にもならない程度。1週間後の晴れた日に、なんとか時間をとって現地に行ってきた。

集電箱を開けて見てみると、やはり漏電ブレーカーが落ちていた。それを上げれば、すぐに直るものと思ったが、そう簡単にはいかない。

現地に行って集電箱を開いてみると……
9系統あるうちの1つ、PCS3の漏電ブレーカーが落ちていた

しばらくすると、また落ちてしまうのだ。パワコンのモニターを見るとエラーコードが表示されている。

パワコンのモニターにはE1-0というエラーコードが表示されている

もしかしたら、どこかでショートなどしているのでは? と目視で見て回ったけれど、特段異常は見受けられない。単純なテスターなどは持って行ったけれど、クランプメーターなどは持っていないので、あまり確かなことはわからない。ただオムロンのパワコンのマニュアルは持ってきたので、エラー状況を調べつつ、何度か再起動を試した結果、無事に稼働。

目視で確認する限り特に異常はない

1時間ほど、発電状況を見て問題なさそうだったので、それで引き上げてきた。帰宅途中も、何度かエコめがねをチェックしていたところ、その日は「パワコンが停止しているおそれがあります」というアラートは表示され続けたものの、再起動した系統は順調に動いていた。

稼働状況をiPhoneからエコめがねを利用して確認してみた。12時ごろの再起動後は、トラブルなく稼働しているようだ

趣味として楽しんでいるものの、割に合うかというと……

結果的に、それ以降は今日までのところ問題はないので、解決はしたようだ。もっとも、いつまた同様のトラブルがどの発電所で起こるか分からないし、稼働から10年近くたつと、パワコンの寿命もくるので、パワコンの交換といった必要性も出てくる。モニタリングは日々欠かせないし、定期的な点検や雑草メンテナンスなどさまざまな業務がある。

しかも、法改正があったり条例改正などによって、さまざまな報告義務が増えてくるなど、面倒なこともいっぱい。これだけのことをやって、表面利回り10%ちょっとというのは、割に合うのだろうかと感じるのが正直なところ。もっとも大資本を突っ込んで行なうメガソーラーなどだと話は違うのだろう。もちろん、筆者はそうしたトラブルも含めて趣味として楽しんでいるのだからそれでいいのだけれど、もうちょっとラクだといいのにな……とは思っているところだ。

藤本 健