藤本健のソーラーリポート

発電所長はつらいよ。富士でも千葉でもトラブル続々

「藤本健のソーラーリポート」は、再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電・ソーラーエネルギーの業界動向を、“ソーラーマニア”のライター・藤本健氏が追っていく連載記事です(編集部)

第3号発電所を千葉で運営スタート。しかし……

 昨年5月に富士山麓に友人とともに太陽光発電所を1つ開設し、同じく10月に千葉県・千葉市内の畑の真ん中に第2号発電所が完成。そしてそれらの運用をスタートさせたところまでレポートしてきた。実はその後、今年の2月、千葉県・山武市に第3号発電所をスタートさせている。

 すぐにレポートするつもりではあったのだが、業者とのトラブルに陥り、いまだに揉めている。スッキリしない状況だったので、記事にすることを躊躇していたのだ。

2月にスタートした千葉県・山武市の第3号発電所

 とはいえ、その第3号発電所も発電自体は順調に行なっており、日々、世の中に自然エネルギーを送り出している。その売電金額も月々振り込まれてきていて、晴れることばかりを願う日々だ。

 そう言うと「濡れ手に粟」だとか、「すごくいい金融商品だ」などという人もいる。だが実際にやってみると、そう簡単なものではなく、まさにトラブル続きで格闘中。実際、太陽光発電所の運営とはどんなもので、どんなトラブルが起こるのか、その実情を2回に分けて紹介してみよう。

続々と発生するトラブル

 まず、そのトラブっているという第3号発電所について。

 これは、とある経緯から知ったH社と2,220万円で契約し購入したもの。土地は取得ではなく、20年間の貸与という形。東京電力側からの許可に時間がかかるなどしたが、今年の正月明けになんとか工事も終わり、2月に系統への連系もされたのだ。

 しかし、最終段階になって問題も多発した。ここでは詳細の記述は避けるが、全額借金だし、金額が莫大なだけに胃が痛い毎日を送っている。

 これで3カ所となった発電所だが、放っておけば利子のようにお金が入ってくるというわけではない。やっぱりメンテナンスが必要だし、トラブルも次々と発生してくるのだ。

3月に撮影した富士山麓の第1号発電所

 次に、昨年11月に書いた「実際、太陽光発電は儲かるの!? 富士山麓での太陽光発電所、運用開始 その3」で発覚した「友人の持つ隣の発電所より発電量が20%程度少ない」、という第1号発電所の問題。

 記事を書きながら、モニターシステムを使って、これまでの発電量を比較してみたら、すぐ隣にあるというのに日々の発電量にかなりの違いがあり、10月の売電金額で4万円も差があったのだ。

筆者の発電量と売電収入
友人の発電量と売電収入

 これはマズイと、その後色々なところに連絡を取る一方、ネットで知り合った人からは「現地でチェックしてあげましょうか?」なんて嬉しい申し出をいただいたりしながら、悶々としていた。

 だって、同じものを同じ金額で買ったのに、月々そんな大きな差がでていたら、納得いかないわけで……。見に行ってすぐに解決するかは分からないけれど、とりあえず数日中に見に行こうか、と思っていたところ、モニターシステム「みえるーぷ」を運営するLooopから連絡があって、その問題はあっさりと解決してしまった。

 筆者が現在3箇所で運営している太陽光発電所はいずれも出力50kW未満のものなのだが、発電した電気を交流に変換するパワコンはオムロン製の5.5kWのものが9つ設置されている。

 5.5kW×9=49.5kWという構成であり、「みえるーぷ」ではそのパワコン1つずつの出力が確認できるようになっている。そのパワコンの番号が0、1、2、3……8と振られているのだが、なぜか筆者のシステムにおいて、0番が集計に入っていなかったのだ。Looopによると単純なミスということで、平謝りだったが、発電そのものに影響はなく、実際に東京電力への売電金額を友人Aと比較してみたら、ほぼ同額で、違いは数百円程度の誤差範囲内。また欠損していた情報も後で、Looopが復旧してくれたため、すべて無事解決となったのだ。

 このときは結果オーライだったわけだが、問題は次々にやってくる。3つある発電所の発電状況は日々チェックしているし、仕事の合間も気になって1時間おきに見ているなんてこともよくある。まあ、天気を見れば発電量はだいたい予想できるし、株価のような変動をチェックして売買指示を出すわけではないから、別にそこまで頻繁に見る必要もないのだが、見ていると驚きの事実が発覚したりもするのだ。

千葉の第2号発電所で異変……!?

 それは5月13日のこと。都内は快晴で、日も長い時期なので、まさに絶好の発電日和。ちょっとウキウキした気分で、1時間ごとに発電量をiPhoneのブラウザなどで見ていたのだ。

 自分は東京の天気を見ているが、実際には富士山の反対側と千葉での発電。天気にある程度の差異はあるだろうが、ここまでの晴天なら、3か所ともほぼ理想通りの発電をしてくれるものと信じていた。しかし千葉の第2号発電所の発電量が12時の時点で少し下がったのだ。11時までは順調に伸びてきており、12時ごろ最大になるはずなのに……。

1月に撮影した千葉の第2号発電所

 「もしかしたら、東京は晴天だけど、千葉市には急に雲でも発生したのだろうか……」なんて思ったりもしたが、そこから20km程度の距離にある3号発電所のほうは、しっかりピークをつけているので、不安になってきた。さらに1時間待つと、やや伸びたものの、予想を3割近く下回る発電量だ。もう1時間状況を見て、トラブルを確信した。第2発電所と第3発電所は、先ほどのLooopではなく、NTTスマイルエナジーの「エコめがね」で監視しているのだが、2つの発電所の状況があまりにも違い過ぎる。

第2発電所の発電量。発電量が最大になるはずの正午頃、なぜか発電量が落ち込んでいる
第3発電所の発電量。第2発電所から20km程度離れた場所にある

 とはいえ、かなり遠いので気軽に見には行けないし、「エコめがね」は状況を伝えてくれるだけで、何かリモート操作ができるわけでもない。考えられるのは富士山の方と同様に9系統あるシステムのうち、何系統かにトラブルが発生している可能性だ。

 残念ながら「エコめがね」は、「みえるーぷ」と違って、9台あるパワコンの発電状況を個別に確認できない。ただし、「エコめがねRS」という最新のシステムを導入しているので、9個あるパワコン1つ1つの発電状況を個別に収集している。NTTスマイルエナジー側は状況を把握しているはずなので、電話で問い合わせてみたのだ。

 サポートセンターにはすぐに電話がつながるし、応対もとても親切ではあるが、9台それぞれの状況はサポートセンターからは見られないという。「さすがに、合計値しか見えないことはないはず」と技術担当者に電話をつないでもらったのだが、答は同じで、解決には至らなかったのだ。

快晴でも発電量アップとはいかない現状

 大問題でないことを祈りつつ、もう1つ考えられる原因は、東京電力側の出力抑制の可能性だ。ウチの自宅の太陽光発電でも、ときどきその現象が見られるのだが、近隣の電気使用量が少ないときに、過剰供給にならないように、発電元側から電気の流れを抑制してしまうというもの。いま話題の電力会社主導による計画的な出力抑制とは異なり、もっと単純な仕組みだ。

 本来、家庭などに供給される電気の電圧は100Vだが、電気事業法の定めにより、「標準電圧100Vに対して101±6V以内」という決まりごとがある。これを守らなくてはならないのは、太陽光発電をする側も同様だが、供給が需要を上回ると電圧が上昇してしまうため、この範囲内に留まるよう、パワコン自身がブレーキをかけてしまうのだ。

 そういった仕方ない事情なのか、ウチだけのトラブルなのかを切り分けたかったのだが、その時点では分からなかった。が、夜に自宅に帰ってから、ふと気づいた。そういえば、第2発電所は、まだ会ったことはないお隣のSさんも発電所を構えており、そのSさんとは連絡先を交換し、エコめがねの情報を共有している。彼は、隣の土地に2つの発電所を管理しているから、その2つの発電所の状況を把握できれば、問題は切り分けられるはず……。

 Sさんの状況を教えてもらうと、筆者の第2発電所のグラフと似ているのである。12時ごろから出力が低下し、1時以降もフラフラとしている。これは、間違いない、出力抑制だ。

Sさんの発電所の発電量。グラフの特徴が筆者のものとよく似ている

 さっそくSさんにも報告のメールを送っておいたが、農家が点在するような地域に筆者とお隣の計3か所で、快晴の日にガンガンと発電をしたために、供給過剰になってしまったのかもしれない。こうならないよう、ぜひ東電側で火力発電を制御してもらいたいところだが、こうしたトラブルは、今後も頻繁に起こる可能性もある。これは我慢せざるを得ないことなのだろう。

 ちなみに、翌日も快晴だったが出力抑制は起こらず、ひと安心。2日間での売電金額の差から見ると、出力抑制による損害は1,600円程度。それほど大きな金額というわけではないが、いい勉強にはなった。

今度は第3号発電所の発電量がダウン

 さて、その後しばらく3つの発電所とも順調に運転を続けていたのだが、7月7日、また突然大きな問題が発生した。揉め事を抱えたままの3号発電所の出力が、ガクンと落ちているのだ。その日の天気は晴れで、夏至直後の一番太陽が出ているのが長い時期である。

 それまでの状況からすれば1日で300kWh以上、金額にして1万円以上は稼いでくれるはずなのに、朝からとんでもないほど発電量が少なく様子が変だ。こちらでも出力抑制が起きたのではと疑い、お隣との比較をしてみた。そう、3号発電所の方は、友人Aと隣り合って同じ規模の発電所を持っているので、そちらを参考にできる。その結果、明らかな問題が発覚した。

 友人Aの発電所の方は、それまで通り正常に運転していたのに、筆者の発電所のほうは7月7日の朝から、ほぼピッタリ1/3の出力に低下してしまっていたのである。

筆者の発電所の発電量
友人の発電所の発電量

 午後、またエコめがねのサポートセンターへ連絡。ピッタリ1/3ということは9つあるパワコンのうち6つに障害が起きている可能性を感じたので、その旨を伝え、何らかのトラブルが検知できるのではと期待したのだ。ところが、サポート側からの回答は前回と同じで、総量しか見えないので、それ以上のことは分からないとのこと。このときも技術担当者に繋いでもらったのだが、やはり何も分からなかった。

 もっとも、つい先日、NTTスマイルエナジーから連絡をもらい、「今ご利用のエコめがねRSに関し、現在システム改良中で、間もなく当社や販売店などメンテナンス実施者はパワコンごとの出力を確認できるようになります」とのことだったので、今後は心配なさそうだが、とにかくその時は手の打ちようもなく、途方に暮れたのだ。

 現場へすぐに駆けつけることもできないし、行ったからといって、すぐに原因究明や、問題解決が図れる保証もない。揉めているH社とは、あまりコミュニケーションを取りたくはなかったのだが、比較的話がしやすい担当のYさんに電話で連絡を取ってみた。すると翌日、現場に駆けつけてくれる、と話してくれたのだ。ハラハラしながら連絡を待っていたところ、翌日の昼、Yさんから携帯に電話があり、驚きの事実が明かされたのである。つづく。

第3発電所で明らかになったトラブルの内容とは?

藤本 健