ぷーこの家電日記
第618回

いくつになっても初めての体験は心躍る
2026年5月15日 07:04
私は基本好き嫌いはない……とは思っている。だけど、食べるものにかなり偏りがあり、年々顕著になっている気がする。
食への好奇心と執着は人よりも強く、かなり食いしん坊の部類だと思うけれど、「今日何にしようかな」と毎日毎食付き纏う献立問題は正直面倒くさい。外食をするにしても、新しい店や新しいメニューへの好奇心よりも、同じ場所で同じものを食べる傾向が強くなってきた。特にランチにその傾向が強く、3~4軒の店をローテーションして、全ての店でいつも同じものばかり食べている。「今日は別のもの注文しよう」と思ってメニューを見ても、結局食指が動かず、悩んだ挙句に同じものを注文してしまうのだ。
この「固食」傾向は、加齢による現象の一つらしくて、ちょっと調べてみるも「加齢に伴い、新しい環境や物事への『特性好奇心』が減退し、よく知っている安心なもの(食)に固執しやすくなります」なぁんて書いてあったりしてちょっとゾッとする。
偏った栄養バランスという健康面の心配もあるけれど、それよりも、まだ中年期なのに高齢者のような傾向と確実に脳の老化が進んでいることに不安を覚えるのである。
好奇心を取り戻したい! もっと色々なことにワクワクして新しいものを体験して、色々な発見をして取り入れていきたい! もっと柔軟でありたい。このままだとただの頑固な高齢者になってしまう! という焦りを感じる今日この頃。
もちろん自分の「これが好き!」という趣向の部分は否定しないけれど、その範囲が狭くなり凝り固まってしまうことを阻止したいのだ。楽しみや選択肢はたくさんある方が絶対に面白い。食でも人でも物でも何においても。なので、完全に新しいものに飛び込んで取り入れる前に、まずは自分が好きなものの範囲を広げることに。
その第一歩は「ラーメン」である。ランチもほぼ何かしらの麺を食べてしまっているくらいなので、ラーメンはもちろん好物。福岡育ちの私にとってラーメンといえば豚骨ラーメンである。袋麺も「うまかっちゃん」だし、カップラーメンといえば、サンポーの「焼き豚ラーメン」だ。
豚骨ラーメンの次に好きなのは担々麺で、稀に食べたくなるものは味噌ラーメン。世間一般で1番多いであろう醤油ラーメンというものにほぼ触れることなく今まで生きてきた。
サッポロ一番は味噌派で醤油は1度も食べた記憶がないし、カップヌードルもカレーが好きで醤油を食べたことがないと思う。
「昔ながらの」みたいな表現をされても、懐かしさの欠片も感じることができないほど醤油ラーメンに疎すぎるのである。醤油ラーメンの文化にほぼ触れずに生きてきたもんだから「醤油ラーメン食べたい!」という気持ちになったことがない。
醤油系の味の麺を食べたい気分になるのは、うどんか蕎麦が食べたい時くらい。グルメ番組で醤油ラーメンが出てきても「美味しそう! 食べたい!」となることもほぼなかった。
恐らく「ラーメンといえば何味?」の質問で1番多い回答は醤油だろう。豚骨が世のスタンダードだとは思っていない(大人になるまでそう思っていて、テレビか何かで違うと知った時は、かなり驚いた記憶がある)。しかも東京に住んでいるので、名店と呼ばれる醤油ラーメン屋さんは数多くあれど、福岡のように美味しい豚骨ラーメン屋さんが潤沢にあるわけではない。
「醤油ラーメンにハマったら、ラーメン屋巡りとかめっちゃ楽しいだろうなぁ」とは前から思っていた。とはいえ別に食べたいと思わないものを、しかも嗜好品に近いラーメンを無理して食べる必要もないし、困ることもない。でもハマりたい好きになりたい!
初めて食べた1杯で「やっぱりそこまで美味しくない」なぁんて思ってしまったら、開きかけた扉が完全に閉ざされてしまいそうで怖いので、最初の1杯目はどこで食べるかのハードルが上がっている。こういう、頭でっかちで失敗するのが嫌で中々動けないのも加齢のいけない傾向だ。いけないいけない。
そんなこんなで醤油ラーメンへの憧れを拗らせつつ、最初に行くと決めている店はちょっと前から決めていた。その店の醤油ラーメンは、写真で見るからに美しく美味しそうだ。そして、ぜひ食べてみたいと思っていたもう一つの理由は、大好きで時々買っているお店の豚肉をチャーシューに使っているのだ。
よくいう「昔ながらの」ぽさは全くなく、もしかすると醤油ラーメンのスタンダードとは違うのかもしれないけれど、絶対に美味しいはずだと気になっていて、最初に行くならこのお店だな、なぁんて思っていた。
その店に行くぞと決めて1年以上は放置していたはずだ。そんな話を先日夫と飲みながらまた話していた。
「醤油ラーメンにハマったら絶対楽しみ広がるよね。最初に行く店はもう決めてるんだー」なぁんて言いながら、ラーメンの写真を見せると「めっちゃ美味しそうじゃん! 明日行こうよ」と、ラーメン大好きな夫がかなり食いついてきた。「お、おう……。じゃぁ明日行く?」なぁんて、今までの時間は何だったんだろうと思うくらいに背中をポンと押される感じで、とんとん拍子に醤油ラーメンのデビュー(正確には初めてではないはずだけど)を飾ってきた。
初めて注文した醤油ラーメンは、麺もスープもチャーシューもとにかく美味しすぎて衝撃すぎた! まさに電気が走ったように「なんじゃこりゃーー!!!」という気分である。
これはハマる! 確実にハマる! 次はどのお店行こうかなと、醤油ラーメンのお店を検索なんかしてはワクワクしている。
「ラーメンは豚骨よね」みたいな自分の「好き」が、ガチガチに固まって鏡のウロコの水垢のように付いて白く曇っていたんだろうなぁと思う。
それを剥がしてくれるのは、今回のように夫だったり友人だったりするんだろう。そう思うと固食も孤食も老化には大敵だったりするわけで、自分を持つというのと自分に固執するのは紙一重で怖いなぁと思った。
醤油ラーメンに限らず、自分が普段選ばないものをあえて選んで仮に失敗しても「失敗しちゃったー!」くらいにフットワーク軽く楽しんでいこうと改めて思ったのでありました。


