ぷーこの家電日記
第586回

直売所ガチャ。最高に美味しい旬の梨を贈りたい!
2025年9月12日 07:05
畑を借りてから早7年。趣味の家庭菜園を満喫すべく、民間の貸し農園を借りている。自治体が運営している区民農園、市民農園の方がもちろん安いのだけど、結構な倍率の抽選制で、借りられるか保証されていない。さらに、1年11カ月(2年契約の1カ月整備期間)という制限付きの契約だと、時期跨ぎの作物は1回しか作れない。そのため、地道に土づくりなどをする楽しみを味わえない。
少し高くても、民間の貸し農園の方が自由度が高いし、道具や水などの設備やフォローも手厚くてありがたい。とはいえ、昨今の何でも値上がりの波は、日用品や食品以外にも押し寄せていて、畑の賃料が爆上がりした。
7年前に借りた時からほぼ倍。年々じわじわ上がっていったけれど、茹でガエル状態というか、これはもうダメだーと思い、今年引っ越しを決意して新しい畑で再出発をすることにした。
賃料は半額、広さは1.5倍位程。猫の額くらいの小さな家庭菜園の畑は、広い額の猫くらいのサイズになった。といっても、都内ではそこそこ広い畑なんて借りられる場所がない。そこで、車で片道1時間ほどかかる千葉の鎌ヶ谷市で借りた。以前借りていたところから、さらに車で20分ほど遠くなっただけだけど、たった20分でも風景が全く違う。以前借りていたところは住宅地の中にある畑だったけれど、今度は周りは山と梨畑に囲まれていてとても長閑なのである。
畑作業をしていたら、饒舌な鳥の声が聞こえてくるし、家からたった1時間で全然違う景色が広がるこの場所がとても気に入っている。
そんな梨畑に囲まれた貸し農園にほぼ毎週末通っている。畑の近くの道沿いには非常に多くの梨の直売所がある。8月頃からその直売所が続々とオープンし始めて、「梨直売所」「全国発送いたします」と書いたようなのぼりが揺れている。
きっとこの辺りの季節の風物詩なんだろうなぁと思いながら眺めつつ、せっかくなので、私もこの旬を産地のど真ん中で満喫したい!
千葉県は全国一の梨の生産地。その中でも白井市、市川市、鎌ヶ谷市、船橋市の4市で千葉の梨の50%以上の生産量を誇るらしい。
全然地元の人間でもない私だけど、よそ者はよそ者なりの感じ方がある。地元の人とは少し違うかもしれないけれど、自分が過ごしている場所に愛着と誇りみたいな気持ちが芽生えてくる。そうすると大きな声で自慢したくなる! 美味しい梨を食べたいし贈りたい!
そう思いながら直売所がたくさん並ぶ通りを車で走ること数週間。「どこの店に入ればいいのか分からない!」という気持ちでなかなか入れずにいた。
小さくてさほど綺麗じゃない直売所の方が、実は昔から長く続くこだわりの梨屋さんかもしれない。または、ちょっと大きめで綺麗な直売所の方がしっかり管理されて美味しい梨を作る梨屋さんかもしれない。
裏を読もうとして深く考えすぎてますます分からなくなる。そう、私は失敗したくないのだ。果物って安いものではないので、ハズレを引いた時のショックはとても大きい。
たくさんの直売所をまわって、食べ比べて、お気に入りを見つけるには旬というものは短すぎる。悩ましい。悩ましすぎる。
そしてやっとで入れた梨直売所。なぜそこに決めたかというと「車の出し入れがしやすい」という単純な理由だった。
そこに入ってみたのは実は3回目で、最初の2回は「本日分売り切れました」の看板を見て何も聞かずにそのまま帰ってしまっていたのだ。でも、ちらっと見た感じ、ものっすごく清潔な売り場で、奥の方で仕分けしている梨がとにかく立派で、「ここは期待できる!」とビビッと来てたんだ。
3回目にして「贈答の梨は予約できますか?」声を掛けると、「はい! 注文いただいたら、順次発送します」と言われて、実家に発送することにした。
「ごめんなさい。全然詳しくなくて。教えてください」と言いながら、順番に旬を迎えるいろいろな品種の梨の説明をお願いした。
「どこの直売所に入ればいいか全然分からなくて。失敗したくないんです。作る人によって同じ品種でも全然味違うでしょう?」なんてぽろり本音を言うと、「分かりますー! そして良かったですね!」と、従業員の方も大いに共感してくれた上に、栽培についていろいろ話を聞かせてくれたりした。
私は知らぬ間に品評会などでも賞を取るような梨園を選んでいたのだ。これは運か、私の鼻が利くのか!?
そして贈答品の5Lサイズの豊水を購入して実家への送り状を書いて帰った。それから1週間ちょっと経って母から「立派な梨が届いたよ。大きい、重い、どっしり」と一報が入り、翌日「過去最高の美味しさだった!」と感動の感想が届いた。
私が自分で果物を買ってまで食べるようになったのは、実はこの数年。子供の頃は食後によく果物を出してくれていたし、大好きだった。でも、一人暮らしを始めて嗜好品の果物は二の次三の次という感じで、全然食べなくなってしまった。一度抜け落ちてしまった習慣は中々戻らない。
そして、皮を剥くのは、何気にちょっとだけ面倒だ。夫はいまだに自分で剥いてまでは食べないけど、剥かれた果物を出されると喜んで食べる(笑)。
私も時々「私も皮剥いてて食べさせてほしいー!」と自分の中の子供がムクムクと現れる瞬間があるけれど、親に剥いてもらった果物は当たり前じゃなくて愛だったんだよなぁとしみじみ再認識するのだ。
なので、そんな親に愛を返すように果物を贈りたくなる。そして立派で美味しい果物を贈るというのは、私にとって立派な大人になりましたよ! という感謝の証のようなものだ。
虎の威を借る狐じゃないけど、果物の威を借る娘である(笑)。
そんな親に「過去最高の美味しさ」なぁんて言われたら、大きなガッツポーズだ!
来年からも毎年お世話になるぞと心に決めた梨園。そういえば夫にはお得な家庭用の梨しかまだ食べさせていなかった。でもあんな立派な梨は食べさせられない......。と思うのは、愛が足りないのかもしれない(笑)。


