ぷーこの家電日記

第444回

唐辛子攻防戦! ベランダ侵入犯の正体を掴みたい

近所を散歩していたら、フワッと金木犀の香りがしてきた。秋だ! 金木犀の香りを嗅ぐと子供の頃を思い出す。当時住んでいた家には金木犀の木が植えてあって、この季節になると玄関を開けた瞬間にすごい香りだった。そして学校に行く時に、今はないけれど当時は名札という物をつけていて、その名札のカバーに金木犀の花をパラパラと母が入れてくれて、ちょっと秋の香水を纏って登校してたんだ。この季節になりフワッと金木犀の香りを感じると、そんな子供の頃の記憶がフワッと戻ってきて、私にとってはちょっと特別な思い入れがある花である。

今週から急に寒くなってすっかり秋だ。先週と同じ感覚で半袖でちょっと買い物に出たら、かなり寒くて完全に服装を間違えた感がある。反動のように夕飯は熱々ポカポカの鍋(笑)。そして趣味の家庭菜園でも、夏野菜を撤去して秋冬野菜を植えているところ。もう少し夏野菜も採れそうなんだけれど、ここで引き伸ばすと冬の野菜が成長できず上手くできない。後ろ髪を引かれるような気持ちで夏野菜を片付け、畑も秋らしくなってきた。これから雑草との戦いも緩やかになる。私の夏の戦いはここで終わっ……てはいなかった! 戦いは畑ではなく現在家で繰り広げられている!

私は辛いものがとても好きだし、栽培が楽なので唐辛子を結構植えている。今年は4種類の唐辛子を植えた。その中の一つ、「キムチトウガラシ」という、名前の通りキムチを漬ける時にぴったりな甘みと辛味のバランスがいい唐辛子。今年初めて植えたけれど、大ぶりな唐辛子はたくさん実をつけてくれて、どんどん赤くなっている。去年本格的で美味しいキムチの漬け方を教えてもらった私は、今年のキムチはこの唐辛子で漬けたいと、とても楽しみに育てて収穫していた。

赤くなった唐辛子を収穫して持ち帰り、ザルに並べてベランダで干しておく。乾燥させてからジップ付き袋などで保存しておいて、白菜の時期にキムチを漬ける算段だ。ザルいっぱいの唐辛子をベランダに干すこと数日。「減っている!」。そういえば思い出した。去年も唐辛子をベランダに干しておいたら、食べかすのような少しの種だけを残し、すっからかんになくなってしまったのだ。犯人は鳥。鳥が持つ受容体にはカプサイシンが反応しないので、鳥は辛さを感じないのだそう。栄養がある美味しい実として鳥たちは美味しく食べちゃうというのだ。

すっかり忘れていた。「仕方ない。今年はこの1ザルだけ分けてあげる」とそのまま置いておいたら、数日後には山盛りあった唐辛子は全部なくなった。どうも人間が活動しない時間帯に我が家に来るようで、姿を見たことはない。次に収穫したものは、干物を干すような干し網に入れて物干し竿にかけて干すことにした。腐る物でもないので、干したまま気にもせず放置。そして数日経って洗濯物を取り込む際に「え!? 唐辛子減ってない?」と驚いた。慌てて干した時に撮った写真を見返してみると明らかに減っている。そしてよくみると干し網に穴が空いている。「嘘でしょ? そこまでして食べる?」とびっくりした。

翌々日には夫が「唐辛子0本になってますー」と笑いながら報告してくれた。きっと鳥界の中では我が家は「東京の名店100」とかに入っているのではないだろうか(笑)。どうやっても食べたい美味しさなのだろう。網を破ってまで食べる根性にちょっと感心しつつ、このままではキムチが作れないという危機だ。次はちょっと揺れやすく安定感が悪そうな1段の干し網に入れて干してみる。もう干し網はダメなのかもしれない。

予想は見事に当たり、翌日には穴を空けられた。しかも底に2カ所も。ここで初めて湧いてくる疑問。「これは本当に鳥なのか?」である。「鳥が底から穴を空ける!?」と不思議なのだ。もう犯人の姿を見るしかない! ということで、夫が持っているおもちゃのようなアクションカメラを借りることにした。物干し竿にカメラを設置して、夜景モードなんてものがないのでランタンを吊るして寝る前に録画スタート。

フル充電で1時間半くらいしかもたないので、寝る直前に録画ボタンを押して就寝。翌朝にはタイムラプス機能で3分ほどの動画が撮れていた。ドキドキしながら再生するも網は微動だにせず。唐辛子がつつかれた形跡もなかったし、昨晩は来なかったんだろうなぁと思い、諦めかけた2分57秒くらいで、「ばんっ!」と何かが突撃して網が大きく揺れて動画が終わった。気が緩んだタイミングだったのでホラー映画で突然何かが現れたような感じで思わずドキッとして「わっ!」と声が出た。1フレーム程度しか映っていなかった犯人は誰なのか特定できないほど一瞬だった。鳥なのか獣なのか誰かは分からないけれど確かに犯人は現れた!

動画を見てから「これは楽しい!」とワクワクが止まらなくなった。翌日もカメラをセットして就寝。ちょっと画像が暗すぎたのでランタンの場所を調整したら、その明るさ故か何者も来なかった。はたまたもっと明け方近くの時間に来たのかもしれない。さらに翌日は「モバイルバッテリー繋いだままで撮ってみたら?」と夫にバッテリーも渡され再挑戦。夫婦で完全に夢中(笑)。朝までバッチリ映っていたけれどその日も空振りで姿を見られず。

ランタンの光で寄って来ないのならば、唐辛子を守るという目的は達成できそうなのだけれど、どうやっても姿を見たい! むしろどんどん期待が募っていく! 毎日せっせと充電してはカメラをセットし、毎朝ワクワクしながら動画を見るという日々。姿を捉えるためなら唐辛子をもっと貢いでもいい。飼っているわけでもないのに愛着すら感じ始めている(笑)。果たして犯人は現れるのか、そして無事にキムチを漬けることはできるのか。夏は終わってもまだ暑い唐辛子攻防戦は続くのであります。

徳王 美智子

1978年生まれ。アナログ過ぎる環境で育った幼少期の反動で、家電含めデジタル機器にロマンスと憧れを感じて止まないアラフォー世代。知見は無いが好きで仕方が無い。家電量販店はテーマパーク。ハードに携わる全ての方に尊敬を抱きつつ、本人はソフト寄りの業務をこなす日々。