ぷーこの家電日記

第443回

新米の季節を前に、モルタルで卓上かまどを作った

秋だ! 秋がやってきた! 私が大好きな新米の季節。新米をおかずに新米を食べたいほど美味しいお米の季節。ほかにも美味しいもの盛りだくさん。ダイエット中の身には何かと苦しい季節だ。本連載でもダイエット宣言してから1ヶ月強、夫婦で10kg以上ムダ肉を捨てている(笑)。もちろん過酷で偏りすぎた食生活をしているわけではないのだけれど、それなりに我慢や制限も設けている。ゆえにこの美味しいもので溢れる季節がちょっとばかり辛いのだ。

さて、ある日いつものようにSNSを徘徊していたところ、目に飛び込んできたのが、左官職人の方が作った1合炊きの竈門(かまど)だった。固形燃料1つで1合のお米が炊けるというその竈門は、とにかくオシャレで可愛くて、完全に私の心を鷲掴みにした。漆喰(しっくい)を土台に、タイルをまわりに貼ったその竈門は、とても新しく、そしてどこか懐かしく、とにかく素敵。これは欲しい! 土間なんてないマンション暮らしだけれど、これなら卓上に置けるし、置いているだけでインテリアとしても良い。

毎日のようにSNSで写真を眺めてはうっとりして、欲しくて仕方がなくなった。購入したいと問い合わせてみたところ、作品の性質上配送は難しいとのことで、あえなく断念。それでもどうしても竈門への憧れが止まらない。完全に恋してしまった。これはもう自分で作るしかなーい! どうやって作るのか検討もつかないけれど、とりあえず作ることは決めた。まずは1合の鉄釜を買ってみた。旅館などで見たことある釜飯用の小さな釜。釜単品じゃ使いようがないので、もう竈門を作るしかない(笑)。

釜が届いたので大きさは分かった。でもサイズは分かったけれど、はてどうやって作っていくのか……。色々調べていると、モルタルを使って植木鉢を作っているYouTubeをたくさん見つけた。なるほど、植木鉢を作る要領で、あとは固形燃料を入れる入口を作れば良いかもしれない。どうやってその穴を開けるのかとか、どうやって型枠を作るのかとか色々考えているとなかなかの迷宮入り。夜な夜なYouTubeを見ながら型の形を書いてみたり考えたりする私。我ながら興味を持ったことに対する熱量はすごいし呆れる(笑)。

筒状の型にモルタルを流そうか、板状のものを作って最後モルタルを糊のように使い組み立てて多角形の竈門にしようかは最後まで悩んだけれど、工程は少ないほうが成功率高そうなので筒状で作ることに。太さの違う塩ビ管を合わせてその隙間にモルタルを流し込めばいけるんじゃないかとも思ったのだけれど、ちょうど良い太さの菅がなくて断念。結局YouTubeを見ている中でPPシートなる存在を知ったので、それを丸めて筒状にしたら良いのではないかと思いつき、出来そうな気がしてきた。決戦は3連休! シルバーな週末にするぞとワクワクしながら就寝した。

そして週末。ホームセンターの朝は早い。仕事で資材を使う方が買えるように朝7時から開いているのだ。初めて買うモルタルは職人って気分になりワクワクする。そのほか使うものを色々買い込んで帰宅。

朝からチョキチョキペタペタと工作をして型完成。水で練ったモルタルを流しこみ、あとは待つだけ。これはもう成功の予感しかしない! 翌朝には固まっているはずだ。それなのにそれなのに……せっかちな性格と固まると型がうまく抜けなくなるんじゃないかという焦りから、夜に手を出してしまったのだ。型から外れると共に、まだ完全に固まっておらず脆かったモルタルは粉々に砕け散ってしまった。やる気も共に粉々に砕けそうになりながら呆然とする私。これはどうしたものかと寝ながら考える。

砕けちったけれど、丸い底部分だけは無事だった。この底だけ使って、積み上げるように壁を塗るように作っていく作戦に変更。翌朝またモルタルを買いに朝からホームセンターへ。硬めにモルタルを型に塗りつけて、陶器を作る感じで積み上げていったら楽勝じゃんと楽観してた私がアホだった。硬めのモルタルも、積み上げると重力で垂れ下がってくる。私のお腹みたいじゃないか! という感じでドッポリと落ちてくるのだ。

少し塗っては硬化を待ち、また少し塗っては硬化を待ち、1日中モルタルを塗っていた。ベランダで作業する私の肩と腰はバッキバキに凝り、そして無数に蚊に刺され、くったくたのへっとへとに疲れ果てた。やっぱりやってみて初めて分かるプロの凄さだ。思いつきだけでは上手くいかない。

ここでまた割ってしまったら、もう絶対にやり直す気力は出ないはず。今度は焦らず触らず、とりあえず寝て待つことに。翌朝なんとか形になった竈門らしき物を前に、無性に感動する。あと一息! あらかじめ買っておいたタイルを貼って完成である。気が急いてしまって目地材が固まらないうちに表面を磨いたり、最後までせっかちが止められなかったけれど、3日間かけて念願のマイ竈門を手に入れた!

私が一目惚れしてどうしても欲しくなった竈門には、もちろん劣るどころではない手作り感満点の竈門だけれど、それでもずっと見ていられるくらい気に入っている。こうやったらもう少し上手にできたかも。なんて思いはあるけれど、それを試す気にもなれないほど精魂尽き果てた(笑)。もう2度と作ることはないだろう。まぁ竈門なんて1つあれば十分だしな。そして機能的にも固形燃料1つでバッチリ美味しいご飯が炊き上がった! 感動で涙出そう。

そんなタイミングで友人が新米を送ってきてくれた。竈門で炊いたご飯。つやっつやに輝く新米を前に「そう! これをやりたかったんだー!」と、感無量。葛西臨海公園の砂浜(火気使用可)にでも持って行って、ぼんやり海を眺めながら塩むすびを食べるという贅沢な休日を過ごしてみたいなと思っているのであります。マイ竈門サイコー!

徳王 美智子

1978年生まれ。アナログ過ぎる環境で育った幼少期の反動で、家電含めデジタル機器にロマンスと憧れを感じて止まないアラフォー世代。知見は無いが好きで仕方が無い。家電量販店はテーマパーク。ハードに携わる全ての方に尊敬を抱きつつ、本人はソフト寄りの業務をこなす日々。