ぷーこの家電日記

第420回

春は切ない季節。母の料理が食べたくてホームシック

とうとう4月! 今年がもう4分の1終わってしまったというのが信じられないけれど、どうやら現実のようだ。桜は満開で今週末は夫と老犬と一緒に近所の公園を散歩しようと思う。老犬が保健所から我が家に来て、もう少しで丸2年。今年も一緒に春を迎えられたことがとても嬉しい。何歳かは分からないヨボヨボお爺さん犬だけれど、また来年も一緒に春を迎えられたら良いなぁと心底願う。

7年前の同じ時期に、病院帰りに先代の犬と一緒に同じ公園の同じ桜を見た。数日後に旅立っていった。同じ場所で同じように綺麗に花を咲かせてくれる桜。ただ綺麗なだけじゃなくて、あの淡い色や思い出も合わせて、年々なんだか切なさを感じる。あと何年この桜を見れるだろうかとか、何年も会っていない両親とまた一緒に桜を見たいとか考えるとちょっと泣けてくる。それでもやっぱりソメイヨシノは好きだなぁ。

桜のせいか分からないけれど、このごろ親のことや子供時代のことを思い出してしまう。子供のころから、私はほとんど母の手作りのご飯とお菓子で育った。外食は、誕生日など何か特別なときと、あとは長く入院していた祖母のお見舞いに行ったときにランチに寄るうどん屋さんくらい。習っていた水泳の進級テストの帰りに食べたマクドナルドは特別だったし、クリスマスのケンタッキーも大好きだった。それ以外はほぼ手作り。

母は料理がとても上手だったというのもあるけれど、おそらく私のひどいアレルギー体質を気にかけてのものだったんだろうとも思う。親の心子知らずとはいうけれど、子供の私は外食や既製のお菓子やパンなどを食べることにめちゃくちゃ憧れた!

パンも肉まんもピザも、私にとっては買うものではなく家で作るものだったので、コンビニの肉まんを初めて食べたのは高校生になってからだったし、宅配ピザを初めて注文したのは、大学生になって一人暮らしを始めてからだった。

子供のころの反動か、大人になってから、幼い自分の憧れを満たすべく、「大人買い」などを繰り返した。そして未だにジャンクな味というものは大好きで、ファストフードやインスタント食品はつい買っちゃうけれど、回り回って見つけた青い鳥のように、何を食べるにも手作りというのが私にとっても普通になっている。やることも作るものも年々親に似てきている気もする。

ただ、製パンに関しては、母は趣味の域を超えているというか、昔から何か資格まで持っているほどで、私はいまだに手を出す気も無くほぼ食べる専門。それでも数年に1回自分の中でブームが訪れるのだ。今はウズベキスタンのパン「ノン」ブームだ。夜な夜な作ってみては「違う、こうじゃない!」と反省とやり直しを繰り返している。

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ハンバーガーブームの時期もあった。バンズを焼いて、具材はいろいろ試してみては毎日のようにハンバーガーを食べていた。カンパーニュブームのときもあった。「クープ」と呼ばれるあの切り込み模様が好きで、何度も何度も焼いていた気がする。これまたピザブームのときは毎日毎日ピザを食べながら生地の研究をしたり。

私のパンブームは食べることじゃなくて試行錯誤しながら作ること自体がブームで、食べる専門の夫はそのブームに強制的に巻き込まれる上に、「これとこれどっちが良い?」などと、つい「どっちでもいいし、むしろそろそろ飽きた」と答えたくなるような質問にまで巻き込まれるので結構気の毒だ(笑)。

実家にいるときはお菓子作りをときどきする程度で、普段の食事やパンはほぼ作ったことがなかった。でも毎日毎日何年も見ていたせいか自然に覚えていた。一人暮らしを始めて自炊を始めたときに料理に困ることもなく「私料理できるじゃん!」と思ったし、パンを作るときも細かい分量などは調べるものの、基本的な工程や成形の方法などは調べなくても容易にできた。

離れて過ごしているけれど、こうして知らない間に母がやっていることが自分の中にしっかりと根付いているんだなぁってことがとても不思議だったけど嬉しかった。今、夜な夜なパンを捏ねて、イーストの香りやパンが焼ける香りを嗅ぎながら、両親のことを考えてしまう。

コロナ禍で会えない2年半はとても長い。あと数日で結婚50年という金婚式を迎える親は、あと1年もすれば後期高齢者と言われる歳になってしまう。今のうちにもっともっとたくさん会ってたくさん話してたくさん学んでおきたいのにと、まだまだ収まりそうにないコロナ禍への憎らしさにパン生地を捏ねる手にも力が入る。

こうしてホームシックになっているのは、やっぱり春のせいだと思う。新しいことが始まりそうなワクワク感も大きいけれど、何となく寂しく切なくなってしまう季節なのであります。

徳王 美智子

1978年生まれ。アナログ過ぎる環境で育った幼少期の反動で、家電含めデジタル機器にロマンスと憧れを感じて止まないアラフォー世代。知見は無いが好きで仕方が無い。家電量販店はテーマパーク。ハードに携わる全ての方に尊敬を抱きつつ、本人はソフト寄りの業務をこなす日々。