ぷーこの家電日記

第330回

セルフカットならぬ夫カット。スリリングで楽しいおうち時間

今週に入って、ここ東京も緊急事態宣言が解除され、感染の収束が近付いて来た喜びや、第二波への恐れなどいろんな声が入り混じって聞こえてくる。

私自身は緊急事態宣言が出される前から「怖いよー」と出勤も結構ストレスに感じていて、会社以外はほぼどこにも出かけなくなっていた。なので、解除された今も、私の気持ち的には宣言直前と同じで安心感はあまり無し。それでも「会いたかった人たちに会える日が近づいてきた気がする」という、ちょっとワクワクする気持ちは、宣言前とは違うかなぁ。

そんな感じで、今も変わらず家中心の生活。軽い運動も兼ねて自転車をちょっと走らせたり、家庭菜園で畑に行ったりはするけれど、未だに電車にも乗っていなければ買い物にもほとんど行かない。

数カ月の自宅生活の終盤、「行きたい! どうしても行きたい!」となったのが美容院だった。元々美容院自体ちょっと苦手で、行ったら行ったでめっちゃ気分が上がる癖に、行くまでがとても憂鬱になる。そろそろ行かなきゃなぁと思いながらやり過ごしてると、今度は「こんな恥ずかしいボサボサ髪を見せるのが恥ずかしい」という気持ちが芽生えてきてさらに憂鬱になる。

でもいよいよ「もうヤダ! 覚悟を決めて予約だ!」みたいな、何の覚悟か分からないくだらない決心をして美容院に行って、フルでメンテナンスをしてもらうと「あぁ素敵になった! 気持ちも軽くなってもう最高! 美容院ってやっぱりいいなぁ」となる。

毎度このループで、何でこんなに苦手で緊張するのか自分でも理解不能レベル。オシャレな空間の場違い感に勝手に押し潰されそうになるんだと思う(笑)。

「そろそろマジでヤバいよぉ。覚悟決めて美容院行くかー!」と決心時期がやってきたのは2月だった。あの、日本全体がゾワゾワってし始めた時期。まさかこんなに状況が深刻化するとも思ってなかったし、こんなに世界的に大変な事になって、こんなに長引くとも思っていなかった頃。

「うん。ちょっと今は様子みるか」と、落ち着いたら行くつもりだったが、もう5月に入る頃には「あー、髪の毛切りたい。バッサリ切りたい。髪の毛邪魔ー!」と家で叫んでいた。

バリカンでセルフカットしているほぼスキンヘッドの夫が、風呂上がりにスッキリサッパリと出てくるので「いいなぁ。スッキリ気持ち良さそうー!」と言うと、「いいでしょ? めっちゃ爽快(笑)」とニヤリ。つい羨ましくなって、衝動的に夫のバリカンを手に取ってしまいそうな自分がいる(笑)。

それだけはダメー! と思いつつ、好奇心と衝動が日々押し寄せて来る。バリカンで坊主は流石に衝動にも程があると自覚しているので抑えつつ、「もう自分で思い切って切っちゃおうかなー」と言うと、「切ってあげようか?」と夫。「え? 髪切れるの?」と驚いて聞いてみると、「やったことはない」と……。

怖いもの見たさというか、それはそれで好奇心がくすぐられる。「え? 切ってもらおうかなぁ」言うと「いいよー」とめっちゃ軽く答えてくれる。何だこの軽さ。

私だったら失敗したらどうしようとか思って、引き受ける度胸なんて絶対持てない。ケロッと答えるもんだから全然大丈夫な気がしてくる不思議。ドーンと構えてる様に「この人頼りになるわ!」とさえ思った(笑)。

そしてネットでヘアカット用の安いハサミを購入しちゃった私。軽く言いつつ本気で受け止めてくれている夫は、YouTubeでヘアカット動画などを見て少し研究したようで、「うん。もうできる気がしてきた!」と自信さえ付けてる!

期待と緊張の中、夫美容院開店。「切るよー」「ちょっ、ちょっ、ちょっと待って! まず櫛で髪とかして! 分け目とか付けて!」と最初から怪しさ満点。「あー、分け目とかあるのか!」と、分け目なんて全く無い夫ならではの発言に爆笑。

髪の毛をとかしながら、「痛てて、頭には耳が付いてるからね!」「そう。この耳が邪魔なんだよね」と全てが面白い。クリップで髪の毛を留めておくというのが上手くできないので、私が束ねるアシスタント役も兼ねる。

時々「あ、やべっ」など、危険なワードがちらほら出てくる夫散髪。美容院でいつも感じる緊張感は全く無いのだけれど、別の種類の緊張感がものすごい! でもとにかく楽しい(笑)。美容院の椅子とは違ってただの椅子なので、夫の膝と腰が中々大変そうで汗だくだ。

「よし、休憩!」と、途中でビール持ってきて、洗面台の前で2人でビール飲みながら髪を切る。「左右の長さを揃えるとか忘れないで!」と言うと、「あー! そっか。そんな問題もあるのか!」などと本当に怪しい(笑)。

それでもケラケラ笑いながら切ってくれた髪の毛は、想定していた100倍くらい上手く仕上がってびっくり! 本当にびっくり! そしてあの鈍感な彼が私の好みを完璧に理解しているのか!? と、仰天の好みドストライクの仕上がりになった。

失敗して最悪髪型ペアルックになったら、「すみません、私現在緊急事態なので出社できません」とかって言わなきゃじゃない? なぁんて冗談言ってたのに(笑)。夫も「これから月1くらいで切ればいいのか?」なぁんて専属スタイリスト宣言(笑)。スッキリ軽くなった頭と一緒に、気持ちもすっごくスッキリ前向きになれた散髪体験だった!

夫とほぼずーっと一緒の空間で過ごしたこの2カ月程度。普段だったら当たり前の事が当たり前じゃなかったり、いつもだったら気付かない事にたくさん気付いたり、楽しい事や面白い事もたくさんあった期間だった。

私は来週から少しずつ出勤など、前の生活と最近の生活を融合させたハイブリッドな新生活が始まる。不安な事や分からない事も多いけれど、今という状況の中で常に最高に楽しんで行けたらなぁと、ちょっと不揃いな髪の毛を鏡に写しながら少しだけウキウキしているのでありました。

徳王 美智子

1978年生まれ。アナログ過ぎる環境で育った幼少期の反動で、家電含めデジタル機器にロマンスと憧れを感じて止まない30代後半。知見は無いが好きで仕方が無い。家電量販店はテーマパーク。ハードに携わる全ての方に尊敬を抱きつつ、本人はソフト寄りの業務をこなす日々。