ぷーこの家電日記

第331回

毎日の炊事は、結構難易度の高い脳トレだった

もう6月か! そろそろ梅雨入りした地域もある。ここ数カ月ずっと家に篭っていて季節を感じることがなく、春がすっぽり抜けてしまったような感覚。そしてここに来てやたらと蒸し暑いなぁと、気付いたら6月になっていた!

今月に入り、私も以前の生活に少しだけ戻ってきた。週5ではないけれど出社したり、人と少しずつ会いはじめたり。今からの生活は以前に戻るというよりも、きっといろいろ融合した新しい生活の始まりなんだろうなぁ。とぼんやり想像しているけれど、どんな風になっていくのかなぁ。

私はこの2カ月、生鮮食品などもほぼネットの産地直送サイトで購入していた。野菜に肉に魚、卵に果物などなど。「スーパーに行きたくない」「美味しいものが食べたい」「コロナで販路を失った食材が気になる」「福袋感覚でワクワクしたい」みたいな、いろんな気持ちが融合してのことだった。テレワークのおかげで配送の日時指定を気にしなくて良いという、注文するタイミングの壁がグンと低くなったことで、それが定着した感じ。

定着というか、完全にハマったに近いかも。2カ月間ほぼ通販生活をしてみると、家のご飯のレベルと質がグッと上がったことで、唯一の楽しみだった食べることへの満足度が半端なくて、ほとんどストレスが溜まらなかったような気がする。

元々そこそこ外食が多かったし、ランチもお弁当より外で食べる日が多かったということもあり、食費は大きく変化なし。むしろ少し下がった。家計簿を付けるようなきっちりした人間でもないので、丼勘定を丼勘定に変換した感じではあるけれど。外食を含めた普段の食費を食材費に、ランチ代を送料に換算するというざっくり換算で、好きな食材を好きなように買い、毎日3食2人分を作っていた。

このザックリ換算方法のおかげで「送料高いー」という、購入ジレンマに陥ることはなかった。ランチでお互い600円使っていたとすると、仮に送料が1,200円かかっていたとしても、1日分のランチ代なのである。毎日出社していると、コーヒー代、ランチ代、ちょっとお菓子買ったり、とかって地味にお金使っているなぁと、今回の家ごもり生活で再認識したのです。まさに塵積もだ。

食材が美味しいと、どんな料理をしてもやっぱり美味しい。とにかく大満足だった産地直送の食材を食べる生活だったけど、同時に「やっぱりスーパーってすげー」っていうのも再確認した。いくら美味しい食材があるとは言え、こちとら「生活」をしているわけで、「今日はお刺身食べたいね」→「美味しい魚買おう」なんてことは日々やっていられない。

そして、お肉ひとつ買ったとしても、合わせる野菜とか同時に買っておかなきゃ献立として成り立たない。通販は注文してから届くまでにタイムラグもあるので、今日作るご飯+1週間後の冷蔵庫を頭の中で常に考えておかねばならないのだ。

同時に注文すると同時に届くということでもないし、量だって新鮮に食べられる期間だって全部違う。結構複雑なパズルのピースを合わせながら、日々の献立が生まれる。そう考えると、「家にこれとこれがあるから、これを買い足して今夜はこれにしよう」と、即座に考えて実現できるスーパーの存在って本当に神! そしてそれを担ってる人って神すぎる!

「炊事」の2文字で済まされがちな家事だけれど、「栄養バランス」「前後の食事と被らない」「食材を使い切る」「美味しい」「時間通り作る」などの諸々の要素を、家計という制約内で日々ロジカルにやりくりしてる訳で、名もない家事以上にものすごくクリエイティブで難易度が高い、高尚な仕事だなと思ったわけですよ。

普段は普通にやっていたことだけど、実は無意識でいろいろ考えていて、こんなに考えなきゃできないことだったのかーと思うと結構衝撃。「私ってすごくね?」みたいな気持ちにもなったし、大抵のものが欲しいタイミングで手に入るスーパーってやっぱりすごいなぁと思った。

こんな感じで旬の美味しい素材を探して買って、余すことなく食べていく生活は、時間的にも気持ち的にも、少し余裕がないと難しいのかも。あと、食材は直販で買って調味料はECサイトで買っていても、「春巻きの皮」とか「生クリーム1パック」とか「薬味の大葉少し」とか、通販からすり抜けるような食材が結構あることにも気づく。今までの生活がどんなにスーパーの便利さに頼っていたのかも分かった。

そしてそして何でも揃うだけじゃなくて、新商品の発見や特価品との出会い、歩くだけでワクワクしちゃうようなエンターテインメント性も持っているスーパー。新しい生活様式に合わせて、今後の食生活もアップデートして行きたいなぁ。

こうして、「美味しいー!」という感動とともに、結構な脳トレ修行をしていた数カ月。SNSで同じ食材を買った人と繋がって、レシピのネタを貰ったり、届けてくれた生産者の方から直接オススメを教えてもらったり、思ってもいなかった楽しさや繋がりという副産物まで得られた。

ずっと家にいて夫としか話さない期間だったけれど、物理的な距離と比例しない新しい人との繋がりに、「この時代すごいなぁ。ありがたいなぁ」と思ったりしたのでありました。

この2カ月間、そこそこ頭は使いつつ楽しく美味しく過ごしたおかげで、何か達成感すら感じていている私。今日も変わらず何を作ろうかピコピコ頭を使っている中、「家のご飯も美味しいけどさ、そろそろ外で飲みたいよねー!」と、夫がニッコニコしながら言ってくるもんだから、ずっこけそうになりながら、軽く拳を握っているのです(笑)。

徳王 美智子

1978年生まれ。アナログ過ぎる環境で育った幼少期の反動で、家電含めデジタル機器にロマンスと憧れを感じて止まない30代後半。知見は無いが好きで仕方が無い。家電量販店はテーマパーク。ハードに携わる全ての方に尊敬を抱きつつ、本人はソフト寄りの業務をこなす日々。