そこが知りたい家電の新技術
“買い替え需要”を意識してフルモデルチェンジした、東芝のドラム式洗濯乾燥機の魅力とは
by 神原サリー(2015/11/13 17:00)
東芝から11月下旬に発売予定の「TW-117X3」は、6年ぶりにフルモデルチェンジとなるドラム式洗濯乾燥機だ。洗濯槽に汚れがつかないというマジックドラムを打ち出してからすでに3年。
清潔性にとことんこだわってきた同社だが、今回は11kgの大容量化を図っただけでなく、これまでドラム式洗濯乾燥機を使ってきたユーザー層の悩みを解決するものとなっている。
東芝ライフスタイル ホームアプライアンス事業本部で商品企画を担当する、堀井 洋輔氏に新モデルへの思いや、その魅力を取材した。
ドラム式からドラム式への買い替えが約4割に
洗濯機や洗濯乾燥機の出荷台数は、消費税増税前に500万台を突破したが、例年は450万台前後で推移している。そのうち、ドラム式の台数はだいたい70万台前後だ。
「2000年に東芝から国内初の、ダイレクトドライブモーターを採用したドラム式洗濯乾燥機が発売されてから、すでに15年。出荷台数が70万台に達した2005年にドラム洗を購入したユーザーの買い替え時期に来ているのです。ドラム式からドラム式への買い替えの割合が年々増加し、直近の2015年5月の調査では約4割となっています」(堀井氏)
となると、初めてドラム式洗濯乾燥機を使う人への訴求だけでなく、すでにドラム式を使っている人の“不満や悩み”を解決するものであることが重要になってくる。
東芝ではここに着目、ドラム式の既存ユーザーの悩みを解決し、さらに新モデルならではの新しい切り口をプラスした製品づくりを目指したのだという。
使ってみてわかる“ドラム式”の不満とは?
では、これまでの一般的なドラム式洗濯乾燥機の不満点とはどんなものなのだろうか。
それは「乾燥時間の長さに加え、シワになってそのまま着られない、ふんわりと仕上がらない」というものや、「糸くずフィルターや乾燥フィルターなどのお手入れが面倒」など。
さらには「脱水時の振動が大き過ぎてうるさい。デニムなどを分け洗いした場合、しっかりと脱水出来ず、いつまで経っても洗濯が終わらないこともある」など、乾燥時間、メンテナンス、脱水時の振動の3点が最も目立つものとなっている。
「タテ型の洗濯機では洗濯物が下にたまるので洗濯槽が安定します。だから比較的振動が気にならないものなのですが、ドラム式では特に小容量の場合、振動が起こってしまいがちなのです。でも、これまで全自動洗濯機で出来ていたことがNGになってしまうとその不満は大きいですよね。元々、東芝のドラム式は振動吸収クッションの採用で振動を抑え、衣類の片寄りによる振動がほとんどないことをアピールしてきましたが、それをさらに強化しています」(堀井氏)
こうした“お悩み解消”ポイントは、使ってみてこそわかる点だけに、タテ型を使ってきた人にはわかりにくいもの。ましてや、ドラム式の弱点を突くあまり、全体の印象として「ドラム式は使いにくいし、面倒なのでは」というマイナスの印象を与えることにもなりかねない。
「でも、すでにドラム式からの買い替えが4割を超えた今、新規購入者に向けた訴求ばかりでは足りないと思ったのです。地味かもしれませんが、これまでのドラム式ユーザーの方に『これに買い替えてよかった』と思ってもらえるポイントをしっかりと押さえることが、何より、ドラム式洗濯乾燥機市場を伸ばす近道なのだと思ったのです」と堀井氏は力を込めて語る。
独自のキーテクノロジーが満載の「TW-117X3」は大容量なのにスリム化
こうした買い替え需要を見据えて開発された新モデル「TW-117X3」には、最大内径約54cmの大容量のドラム槽“Bigマジックドラム”を搭載。洗濯容量9kg→11kg、乾燥容量6kg→7kg、ドラムの傾きを15度→7度へと変化させている。
洗濯槽が大きくなると、本体幅がぐっと大きくなったように思われがちだが、なんとその幅は60cmと、従来モデルよりも1cmほど小さくなっているのだ。つまり防水パンの大きさを気にすることなく、設置できるということだ。
先にも説明した東芝ならではの振動吸収クッションが進化し、高減衰ゴムを使用したことで振動を受け止めて横揺れを防ぐことが可能に。スポーツカーにも使われている技術の採用で、この60cmというスリム化と、デニムやバスマットなどを単独で洗濯しても衣類の片寄りによる振動を防ぐことを両立させている。そのため、衣類の片寄りにより脱水のやり直しをすることもなく、時間ぴったりに洗濯が終わる。
「表示時間通りに洗濯が終わるのは当たり前と思っている方も多いかもしれませんが、片寄りがあると、“水を追加してやり直す”ということを何回も繰り返すことがあるのが、振動吸収クッション非搭載のドラム式洗濯乾燥機。東芝は独自の技術でこの不満を解消しています」(堀井氏)
傾きを7度まで抑えて洗濯槽を起こしたことに加え、最大内径約54cmのドラム槽による大きな落差によるたたき洗いの採用、2つの前後に当たる高圧シャワーで衣類に洗剤液を浸透などで、洗濯そのものの性能も格段にアップ。「ドラム式洗濯乾燥機は汚れ落ちが悪いのではないか」という心配は無用というわけだ。
「洗濯物の投入口が広くなったことで、衣類や毛布などの大物の出し入れがスムーズになっているのも実感していただけると思います。槽内を照らすLED照明も搭載したので、奥の洗濯物の取り忘れも防止できるのも新たなポイントです」(堀井氏)
ドアハンドルの設計も見直されており、手を掛けて手前に引くだけで開けられるので、動きがワンアクションで済み、とてもスムーズになっている。
黄ばんだ洗濯物も真っ白に仕上げる温水洗浄機能も
「皮脂汚れなどが積み重なって、落ちたつもりの汚れがシーズンオフの間に黄ばみとなってしまうことがあります。自分自身のカッターシャツでもそんな失敗があったのですが、ついてしまった黄ばみ汚れもすっきりと落とす『Ag+抗菌温水ザブーン洗浄』も搭載しています。頻繁には使わないモードかもしれませんが、フラグシップモデルだからこし、これを落としたい!という時に手助けになる機能をきちんと付けておきたかったのです」(堀井氏)
洗剤の酵素の力を活性化させる約40℃の温水をキープできる「つけおき」機能で頑固な黄ばみもすっきりと落とせるという。汚れ具合に応じて1時間単位で1~9時間設定ができるほか、除菌までできる約60℃洗浄の温度も設定できる。
元々、東芝の強みであるAg+抗菌水での洗濯により、衣類の雑菌繁殖を抑えられるのも魅力だという。
上質な「ふんわリッチ乾燥」と洗乾約95分の「お急ぎモード」
不満点の1つ、乾燥時間・乾燥性能についてはどうなっているのだろう。
「ドラム槽の容積が約21%アップしているのと、衣類をしっかりと持ち上げる進化したバッフルとの合わせ技で、繊維がふっくらと立ち上がった上質な手触りの乾燥が可能になりました」(堀井氏)
ヒートポンプユニットの熱交換器表面積が、約2割アップしたことで乾燥効率が上がった。大型乾燥ファンの採用で風量が約3割上がり、お急ぎモードなら洗濯から乾燥までわずか約95分(6kg洗濯~乾燥「乾燥お急ぎ」使用時)。
また、温風がドラムの上方に当たる構造に改良したことで、衣類のしわを押し広げる効果が高まり、しわのほとんどない上質な乾燥を実現させている。
実際に綿100%のワイシャツを乾燥までさせた場合の仕上がりの様子を見てみると、1kgの上質乾燥ならアイロンかけは必要なし、3kgでもほぼ必要ないレベル。標準コースで7kgを乾燥させた場合でも、驚くほどしわが出来ていない。これなら、「しわくちゃで乾燥機能は使いたくない」という不満もなくなるだろう。
掃除しにくい「乾燥ダクト」の自動お手入れ機能も搭載
全自動洗濯機では洗濯槽の糸くずフィルターのお手入れや洗濯槽の黒カビ対策といった点がメンテナンスの肝だが、ドラム式の場合は、排水のところにある糸くずフィルターに加え、乾燥フィルターやその奥の乾燥ダクトのお手入れも必要になる。これをしないと次第に乾燥時間が長くなるなど著しく使い勝手が悪くなっていく。
今回のTW-117X3は、洗濯の際の給水を利用して乾燥ダクトの汚れを毎回きれいに洗い流してくれる機能が搭載され、格段にメンテナンス性がよくなっているのも特徴だ。汚れのつきにくいマジックドラムや、抗菌加工された糸くずフィルター、ふろ水ホース、排水ホースなど、清潔性能も際立っている。
「冷蔵庫同様の強化ガラスを使った操作パネルや、ほかにはないシックなグレインブラウンのカラーの採用など、デザイン性にもこだわりました。今回のTW-117X3が、上質な暮らしを具現化するものであってほしいと願っています」(堀井氏)
ユーザーの不満や悩みにとことん向き合って開発されたTW-117X3、幅60cmと設置性もよく、買い替え層にはもちろんのこと、初めてドラム式洗濯乾燥機を購入する人の心もとらえるのではないだろうか。