老師オグチの家電カンフー

台湾の大同電鍋工場を見に行ったら、製造ラインもほっこりだった

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
日本の家電メディアとしては初潜入?

台湾の定番調理家電であり、そのレトロなフォルムから台湾を代表するアイコンにもなっている「大同電鍋」。1960年の発売から形を変えずに製造され続け、今年で66歳。1960年は日本で昭和35年、白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫の普及が始まった「三種の神器」時代ですから、そのロングセラーぶりには驚くしかありません。

日本にもファンが多い電鍋が、いったいどのように作られているのか。台湾の工場を見学する機会がありましたのでレポートします。

電鍋の工場は、台北市中心からクルマで1時間ほど離れた桃園市大園区にあります。台北にある2つの空港のうち、大きいほうの桃園国際空港のすぐ近くですね。ただ、大きな看板などは出ていませんから、通りかかってもほとんどの人は気付かないと思います。

工場見学は、普段は取引先など関係者のみで、一般向けには実施されていないので、なかなかレアな体験になりそうです。

まずは会議室にて会社や工場の説明を聞く
近年は、スマートグリッドやスマートメーターといった電力分野にも注力。スマートメーターは日本の電力会社でも採用されている
電鍋は台湾市場でシェア80%超。海外向けは業務用エアコンと電鍋が中心で、主な販売地域はアメリカ、中国、日本、オーストラリア、ニュージーランド、東南アジア各国
こちらが電鍋。驚くほど多くのカラバリやコラボモデルが販売されてきた

今回の参加者は台湾好きインフルエンサーの方々が中心で、私以外は全員女性。台湾の人と同様に日常的に電鍋を使いこなしている人たちでした。

私はといえば、電鍋を台湾で購入し持ち帰ってから10年が経ちました。よかったら、購入当時の記事もご覧ください。

いざ工場に潜入! 組み立て前のパーツや製品の箱が並ぶ

この工場では、すべてのパーツが製造されているわけではなく、アルミ製の外釜の製造と組み立ての最終工程がメインです。

まずは、組み立て工程から見学。外釜に電鍋の心臓部であるヒーターとバイメタル式のサーモスタット(一定以上の温度になると電源を切るスイッチ)が取り付けられていきます。

リング状のヒーターを取り付ける
ヒーターとサーモスタットが取り付けられた状態

そして、ベルトコンベヤーが流れていき、続いて外側のカバーと取っ手、スイッチが取り付けられます。ベルトコンベヤーの速度はかなりゆっくりで、作業している人も急かされている感じが全くなく、マイペースで動いているように見えます。

聞くと従業員には30~40年以上のベテランも多く、家族のような関係だそう。また、若い外国人の姿も目立ちましたが、彼らは留学生で、ここで働きながら学校で学んでいるとのこと。

カバーをはめて、取っ手(手前下に見える黒いパーツ)を取り付ける
スイッチの取り付け
スイッチのカバーをはめ込む作業を体験させてもらった

まだ完全に組み立てられる前に、ヒーターが決められた温度まで加熱するか、スイッチが正常に動作してオフになるかをチェック。そして、電圧が110V(日本向けモデルは100V)で一定に保たれていることを確認していきます。

ヒーターが決められた温度まで加熱するかをチェック
加熱チェックを終えた電鍋は、扇風機で冷まされながら次の工程へ

最終チェックの工程では、スイッチの動作や外装を人の目と手で確認。問題がなければ、脚の付いた底板を取り付けて完成です。こうして1台の電鍋が完成するまでにかかる時間は約15分。ゆっくりの作業に見えますが、完成した電鍋の箱が次々と積み上がっていきます。

スイッチの動作や外装に異常がないか、目視と手触りでチェック
脚のついた底板を取り付ける
付属品を同梱する箱詰め作業
底板の製造工程には、ロボットアームも用いられていた

続いて、アルミの外釜を鋳造する工場に移動。アルミニウム合金を700℃以上で溶解し、金型に流し込んで冷却・固化させる工程です。

鋳造工程は基本的には自動化されていますが、その後の工程は人が丁寧に確認しながら進められているのが印象的でした。

昔から構造が変わらない電鍋ですから、製造の光景も基本的には60年以上変わることなく続いてきたのでしょう。そういう意味ではタイムスリップ体験でもありました。

外釜の鋳造工場
700℃以上で液体となったアルミを型に注ぎ込む
型が自動で外され外釜が姿を現す
鋳造されたばかりの外釜。中央に出っ張りがあり、表面はザラザラしている
CNCマシンで均一のサイズに整形され、部品の取り付けに必要な穴開け作業が行われる
完成した外釜(左)

ちなみに、こちらの工場は、その他の大同製品や同社の量販店「大同3C」で販売される他社製品の配送センターも兼ねており、冷蔵庫やエアコンといった大型家電のパッケージも見ることができました。

最後に、工場敷地内にある「廟」を見学させてもらいました。

労働者の安全や商売繁盛を祈願して、土地の守り神である「福徳正神」が祀られています。福徳正神は、金運の神様としても知られるそうです。日本のオフィスや工場にも神社を祀っているところはありますが、台湾の廟では線香が絶えず炊かれており、信仰心の厚さが感じられます。数百年は変わらず続く信仰にくらべれば、電鍋の60年はそう長くはないのかも。なんてことも思った工場見学でした。

工場内の廟。「社員の安全と幸福、繁栄を願う(福澤員工平安富)」などの文字が
福徳正神。金運の神様としても人気
小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>