老師オグチの家電カンフー

第12回

元祖・自動電気釜「電鍋」が料理上手への早道?

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです

 台湾で買ってきた電鍋がかわいくて仕方ありません。

 この「かわいさ」は、デザインと機能のシンプルさから来ています。原型となった東芝の自動式電気釜(1955年)から数えると、なんと61年もこの姿形&機能のままですよ。還暦オーバー。

大同電鍋のMサイズ。買ってきたときの記事はこちら

 数億年前から姿形が変わらないと言われるシーラカンスは “生きる化石”と呼ばれていますが、家電の場合は必要とされるから生き残っているわけで、日本メーカーのサイクルを考えると驚きじゃないでしょうか(さらに東芝が白物家電事業を売却すると報道されている時期だけに……)。ちなみにシーラカンスの寿命は100年以上らしいです。めざせ100年!

 ところで、筆者が小学生だった1980年前後、家電はやたらに「マイコン搭載」を謳っていました。今となっては、マイコンは死語というか古くさいイメージしかありませんが、この時代から炊飯器であれば加熱時間や温度をプログラムで制御できるようになったわけです。それ以前の炊飯器はどうやって制御されていたのか? 今から使い方を説明するのでわかると思います。

 電鍋は加熱される外釜と食材を入れる内釜の二重構造になっています。調理をスタートするとき、外釜と内釜の隙間に水を入れるのですが、この水が熱で蒸発してなくなると、サーモスタットにより加熱が止まり保温モードになります。加熱時間は水の量で調整するわけです(カップ1杯でだいたい30分)。シンプルでありながらトリッキー!

 このアバウトさは、昨今のオートメニューが内蔵されたオーブンレンジの対極にありますが、家電のトリセツを読むのが面倒で、ググったレシピを適当に組み合わせて作る私のような人間には向いています。

 あえて言うなら、料理の初心者ほど、こうした原始的な調理家電を使うべきじゃないでしょうか。決められたプログラム通りに調理するのではなく、アバウトでも材料の量や調理時間を自分で把握でき、数をこなすことで腕は上がっていくと思います。

 テレビ通販や秋葉原の駅前で売っている便利調理器具に飛びつく前に、まずは包丁の基本をマスターしようぜってことです。アクション映画でも、やたらいろんな種類の武器を揃えるヤツほど弱いもんじゃよ(最後に老師っぽいことを言ってみました)。

付属品など一式。しゃもじに計量カップ、蒸し物に使える穴あきプレートもあります
外釜に水を入れて内釜をセット(セットしてから隙間に水を流し込むのでもOK)
記念すべき初回の料理はスープにしました。玉ねぎ、ニンジン、ベーコンと中華調味料、コショウ、水を内釜に入れる
スイッチをカチャッと「煮飯」に。炊飯じゃなく煮飯
約30分でスイッチが「保温」に切り替わり、スープの完成
初めて豚の角煮も作ってみた。豚バラブロックをフライパンで焼いてから10分ほどお湯で余計な脂を落とし、ネギの青い部分、ゆで卵、生姜、焼肉のタレ戸水、酒、調味料(台湾風にしたかったので五香粉)をセット
約1時間で完成。ひと晩寝かせると味がさらに染みてうまい
鯖の味噌煮。当たり前ですが和食もいけます
台湾の味「魯肉飯(ルーローハン)」。初回なのでいまひとつでしたが、何度か作れば本場の味に近づけられるんじゃないかという手応えは得られた

小口 覺

1969年兵庫県にて製造。ライターとして、雑誌、Webメディア、単行本の企画・執筆、マンガ原作を手がける。取材・関心領域は、PC、インターネット、スマートフォン、家電、料理、各種ライフハックなど。

Webページ「有限会社ヌル/小口覺事務所」
http://nulloguchi.wix.com/nulloguchi