老師オグチの家電カンフー

バルミューダの「The Clock」は、脱・生活家電への布石なのか?
2026年4月1日 08:04
バルミューダが先日発表し、いろんな意味で話題になっている「The Clock(ザ・クロック)」について、私も語ってみようと思います。数字が取れそうだし(笑)。
コンセプトや細かいスペックはここでは触れません。価格は59,400円。個人として「買うのか?」と問われれば、「買わない」と即答する高級置時計ですが、ワシら庶民には伺いしれない思惑が込められているはずです。
発表会で「なるほど」と思ったのは、高級腕時計などを販売する店舗での取り扱いが予定されていることです。数百万円〜数千万円が当たり前の高級腕時計の世界。100万円以下は「ミドルレンジ」の扱いらしいですから、約6万円は消費税分にも満たない誤差の範囲です。高級腕時計を買ったお客さんが「The Clock」に目を留めて、ついで買いする姿が、高級腕時計に全く興味のない私にも容易に想像できます。この日本においても富裕層の数は増加しているそうですし、「スリコの置き時計でいいじゃん」とか言っちゃう人は、端から対象外なのですよ。
高級腕時計と比較をすれば、「バルミューダにそんなブランド価値があるのか?」という否定的なコメントが聞こえてきそうですが、針のないデザインといった独自性は、将来的に評価される可能性が十分あると思います。というか、ブランド価値向上の布石として出された製品であり、出すこと自体に意味があるんですよ。55万円の「Sailing Lantern(セーリングランタン)」同様、大きな赤字を単体で掘らなければ大成功といえるのではないでしょうか。
ついでに、スペック上での最大のツッコミ所である「バッテリーの持ち24時間」ですが、富裕層は普通にUSBケーブルを挿しっぱなしにしておくだけでしょう。充電しっぱなしだとバッテリーに負荷がかかるとか考えない。私は、Type-Cで固定(Lock)されるから「Clock」なんだと変な納得をしてしまいました。
なにせ機械式腕時計の持続時間は、一般的に1日半〜2日ぐらいらしいですし、電気の動力で動かしてゼンマイを巻く機械(ワインディングマシン)なんてアイテムも一般的らしいので、合理性なんてものは、趣味の世界ではあまり価値は置かれないのです。
バルミューダの最初の製品は、デザインを重視したパソコン台で、もともと生活家電のメーカーではありません。社名も「バルミューダデザイン」であったように、デザイン志向で、コモディティ化して価格競争になるようなカテゴリーは、最初から同社の得意とする世界ではないのです。
トヨタ自動車が織物機械を、ブリヂストンが足袋の製造を原点に持つように、時代に合わせて主軸の商品を変えていくことは問題ないどころか、企業の正しい姿です。自動車といえば、フェラーリだって、一時期は資金難で倒産寸前に陥った時代があるわけですから、苦境にあるバルミューダも、今は独自性やブランド価値の維持を優先すべき我慢のフェーズにあるのでしょう。
時が経ち、「バルミューダって昔はトースターや扇風機を作ってたメーカーだったって知ってた?」などと語られる世界線もあるのかもしれません。


