老師オグチの家電カンフー

実は高くない? 55万円ランタンの煌めきと重みを感じてきた

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
11月9日まで東京・青山の旗艦店「BALMUDA The Store Aoyama」にて開催される「life is creative.」では、「Sailing Lantern」や加湿器「Rain」の新モデルが展示される

界隈をざわつかせたバルミューダの55万円ランタン「Sailing Lantern」の実物を見られると聞いて、表参道まで行ってきました。そうです、iMacやiPhoneといったAppleの主要製品のデザインを手掛けたジョナサン・アイブさん率いるLoveFrom(ラブフロム)とコラボした、あのLEDランタンですよ。Webで公開された映像(CG?)はカッコよかったですが、実際の質感など気になるじゃないですか。

さっそく実物にご対面したんですが、映像以上の存在感があります。なんだろう、映画やゲームの中のアイテムのような非現実感というか、小さなジュエリーでしか見たことのない煌(きら)びやかさというか。かつてApple製品に心躍った感覚もよみがえります。

本体の重量は約1.5kgですが、手にすると洋上でもしっかり使えると思わされる重みが感じられます。この重みがいい。

55万円の煌めきと重み!

ちなみに、意外と言ったらバルミューダさんに失礼かもしれませんが、このコラボはジョナサン・アイブさんからの声がけでスタートしています。自身の持っているヨットで使う灯りを作りたいという思いがあり、Apple時代から製品をチェックしていたバルミューダに声をかけたそうです。

テクスチャー加工されたポリエステル製ランヤード(ストラップ)。塩水や紫外線など、ヨットでの使用での耐久性もテストされているという
調光・調色を行なう回転式ダイヤル。花びらのような形でかわいい
ダイヤルの回転によってオレンジから白へと光の色が変わっていく。消灯時は、ランプの灯りが消えるときのような「ふっ」としたアナログ感がある
内部のパーツも公開。比較的内部にアクセスしやすい構造となっており、バッテリーの交換などのメンテナンスが将来にわたって確保されている

ここまで来ると、デザイン家電というよりアートだよなと思いつつ、下世話な興味でどこの部品にいちばんコストがかかっているか聞いてみました。答えは、精密に研磨されたガラス。1つ60万円の見積もりを出してきたメーカーさんもあったほど難しい加工だそうです。それを知ったら、55万円という価格も納得じゃないでしょうか。仮に自分の収入が今の100倍あったら、5,500円の感覚なので、即買うでしょうね。使う用と保管用の2個買うかもしれない。アートと妄想、言うだけは自由です。

会場に展示されている加湿器「Rain」新モデル(写真右)
開発過程の試作機
本体上部のディスプレイは、湿度や温度といった情報だけでなく、まるで水が入っているかのように水の波紋や金魚、紅葉の葉などを小川や雨といったアンビエントサウンドとともに表示する。本当の水瓶みたいで、とっても良い感じです
小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>