老師オグチの家電カンフー

マイ精米機があれば、お米をいろいろに味わえる

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです

スーパーから麺類や小麦粉が消えたりする昨今ですが、さすがにお米が買えなくなることはないですね。とはいえ、外出自粛ゆえお米の減りは早いし、災害に備えた備蓄も少しは欲しいところです。備蓄するなら、白米よりも鮮度が長持ちする玄米が有利。我が家にはすでに10kgほどの玄米がありますが、玄米として食べるのは私だけなので、精米機を導入してみました。

購入したアイリスオーヤマの精米機、使い方はいたってシンプルです。玄米を本体の「精米かご」に入れ、分量(合数)とコースを選択し、運転ボタンをポチッとするだけ。かご自体が刃になっていて、回転することで玄米の周囲にある糠層や胚芽を取り除きます。通常の白米はもちろん、無洗米、分づき米(3分/5分/7分)、胚芽米、さらに白米をリフレッシュする「白米みがき」も可能です。

アイリスオーヤマ『米屋の旨み 銘柄純白づき精米機 RCI-B5-W』(実売価格:10,980円)。精米容量は1合〜5合。コースは「白米」「純白米」「無洗米」「白米みがき」「3分」「5分」「7分」「胚芽米」。銘柄別の精米機能も搭載する

付属の計量カップは1合(180ml)よりも大きく(200ml)、糠などが除去された分、少なくなるわけです。とはいえ、3カップを精米して3合ぴったりになるわけではなく、炊飯する際は改めて計量する必要があります。

また、精米されて売られている白米に比べると、お米に残る糠(ぬか)や、砕けて小さくなった白米が目立ちます。いつもよりも念入りにお米をとぐ必要が出てきます。このあたりは、プロが使用する精米機には敵いません。とはいえ、精米してすぐに炊くごはんは、いつもよりもふっくら、みずみずしさも感じられて美味しいですね。

精米機のメリットは、白米よりも精米の加減を抑えた分づき米にあるかもしれません。
白米で気になる、お米が砕けてしまう現象も発生しませんし、糠層や胚芽にはビタミンB1/B6/Eといった栄養素も豊富です。市販のサプリメントに匹敵するほどの量はありませんが、せっかくお米にあった成分ですからね。

白米は白米で美味しいですが、分づき米にも味わいがあります。粘度が低いのでカレーライスや炊き込みごはんにも合います。普段から玄米を食べているせいか、5分づき米でも普通に白米っぽく感じます。今ほど精米技術が発達していない時代の白米はこんな感じだったんではないでしょうか。

玄米を投入
コースや合数を選択して、電源ボタンを押す。3合の胚芽米の精米にかかる時間は約1分20秒。白米だとその倍はかかる
精米後の5分づき米
精米後の白米

家庭での精米は、コーヒーの自家焙煎やグラインドに近いものがあります。コーヒー豆も生豆だと鮮度が持ちますし、好みや飲み方に合わせて調整する楽しみがあります。ごはんもコーヒーも日常にあるものですが、こだわれば趣味性が高くなる。ちょっとお高い炊飯器を使っている人など、精米機は趣味と実益を兼ねているのでおすすめです。

あと、精米の副産物として発生する糠ですが、ぬか漬けを作るための「ぬか床」にもなります。ぬか床を作るベストシーズンは気温が上昇するこの季節だそうで、そちらも楽しみです。家電を買うことで昔ながらの食生活に戻っているのも少し妙ですが、こんな「ていねいな暮らし」もコロナ禍の副産物でしょうか。

ちなみに、戦時中にやっていたという、ガラスビンと木の棒を使った精米方法を再現しようとも思いましたが、すでに「デイリーポータルZ」の記事でやられてたので断念。というか、1合で5時間かかったらしい。やっぱ家電は便利だね。

玄米モードで炊いた5分づき米
こちらは胚芽米。通常の白米モードで炊ける。5分づき米と色味や味わいはさほど変わらないが、胚芽のプチプチ感が味わえる
3分づきだと、見た目は玄米とさほど変わらない
「ぬかボックス」に溜まった糠。捨てても良いが、せっかくなので「ぬか床」用に取っておくことにします

小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>