老師オグチの家電カンフー

この夏、扇風機とサーキュレーターの境界が溶けてきている

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです

 ようやく梅雨が明けて夏です。暑いのが苦手なので、特に嬉しくもありませんが、夏です。

 ここ10年ぐらい、扇風機が高級化してきました。エアコンと併用している家庭も多いんじゃないでしょうか。うちは仕事部屋でバルミューダの「GreenFan Japan」を使ってます。5年前のモデルですね。そして今期はリビングに同じくバルミューダのサーキュレーター「GreenFan C2」を導入しました。昔、1,980円で買ったサーキュレーターと入れ替えです。

 「GreenFan C2」はDCモーターとグリーンファンテクノロジーの羽根を採用。扇風機のGreenFan同様、自然界の大きく広がる風を再現しています。風量1や2では普通に扇風機として使えるんですよ。風量3と「ジェットモード」では、サーキュレーターとして強力な風を送り出し、空気循環や洗濯物の室内乾燥に役立ちます。

バルミューダ「GreenFan C2」2万2600円(税別)

 そもそもの話をすれば、扇風機とサーキュレーターは目的が異なる製品でした。扇風機は人が涼むためのものなので、広がるような風を送り出す。サーキュレーターは部屋の空気を循環させるため、直線的な遠くまで届く風を作る。風の種類が明らかに違ったのですが、最近はその差があまりなくなってきました。

 扇風機は羽根の形状の進化で、遠くまで風が届くようになりましたし、サーキュレーターもDCモーターの採用でやさしい風が送れるようになった。DCモーターのサーキュレーターでは、騒音や振動も扇風機並みに抑えられています。製品によっては、リモコンやタイマー、首振り機能まで備えており、カテゴリーの境界線はもはや曖昧です。

 境界があいまいに溶けがちなのは、他のジャンルでもありがちで、モデルなのかグラビアアイドルなのか、お笑いなのか俳優なのかよくわからない人も普通になってきました。自動車の業界でも、燃費や乗り心地といった実用性と悪路の走行性をかけ合わせた「クロスオーバーSUV」なんて言葉がありますし。頑張ったら他のカテゴリーを侵食しちゃう時代なのです。

 扇風機とサーキュレーターも、それぞれ独自に進化した結果、カテゴリーが混じっちゃった模様です。

 「GreenFan C2」は、首振り機能こそ付いていませんが、活性炭フィルターによる脱臭機能や、バッテリー駆動(オプション)と、扇風機を超える機能も搭載されています。

 扇風機よりも良いのは、そのコンパクトさですね。高さがないので狭い部屋でも圧迫感がない。部屋の中を歩くとき、扇風機だと左右に避けますがサーキュレーターだとまたげる。扇風機もコンパクトなモデルが増えてきましたが、そのライバルとしてDCモーターのサーキュレーターも十分ライバルになってきたという話でした。

吸い込み口の部分に活性炭の脱臭フィルターを備える。使用の目安は6カ月間。交換用のフィルターは2,000円(税抜)
オプションの「Battery&Dock」(税抜9,800円)を装着すれば、コードレスで使えるようになる。稼動時間は、風量1で22時間、風量2で9.5時間、風量3で3.5時間
リモコンも付属です。扇風機として使うにはリモコン大事

小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>

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