藤原千秋の使ってわかった! 便利家事アイテム

心配性の災害対策グッズその10「ひっつき虫」

家事アイテムオタクなライター藤原千秋が、暮らしの不具合等々への現実的対処法とともに、忌憚ないアイテム使用感をご紹介していく連載記事です
コクヨ「ひっつき虫」

わが家のリビングの一角には、自室を持たない末娘の「巣」が築かれている。そこには自作スライムの原材料、PVA(ポリビニルアルコール)を主成分とした洗濯のりの大ボトルと、ホウ砂、ホウ砂を溶かしたボトル、プラスチックケースに収められた色とりどりのスライムたち……が所狭しと積んである。YouTube動画などを参考に、いろいろな製法を試しているらしい。お手伝いで得たお金で市販品を購入しての比較研究も熱心だ。

先日どうしてそこまでスライムに拘泥するのか尋ねてみたところ「揉んでいると、精神が落ち着くから」と真剣な顔で言われ「なるほど」と頷いてしまった。とはいえ彼女は学校ではまじめに頑張り、家でようやく気を抜いてスライムを揉み「無」になっているらしい。話を聞いていた大学生の長姉は「私は小学生の頃、いつも授業中、なにもなくても無になって話を何も聞いてなかったなー」と述懐していた。おいおい。

 「母さんは?」と振られたので、正直に答える。実のところ筆者もどちらかというと、いつも心ここにあらずのお子様だった。スライムではないが授業中よく「てわすら」(と書いてから調べて知ったのだが、栃木の方言らしい。正確な標準語がわからないのだが、手で遊んでいるようなこと)をしていた。あの頃は消しゴムを謳うネンドのような「練り消し」というものが流行っていた。きつい香料の添加された練り消しを、授業中えんえんモミモミ、モミモミしていたのだ。無の境地で……。子も子だが親も親である。

さてその後、数十年間ほとんど忘れていたこの「練り消し」的な存在と、筆者は明後日の方角で再会することになった。ライトな「地震対策グッズ」としてである。

「ひっつき虫」というソフト粘着剤なるものを、読者諸賢はご存知だろうか。文具メーカーのコクヨが出している。

この商品について言語化するのは少し難しい。平べったい細い板状になった練り消しっぽいものを、剥がして揉んで、壁に紙を貼り付けたり、置物の転倒防止のためにビンなどの底に貼り付けたり、壁の穴にねじこんで塞ぐのに使ったりするためのものだ。

画鋲やマグネット等が使えない場所に便利とされている。簡単に貼ったり剥がしたりできる。が、樹脂的なものでできているので、長期間貼りっぱなしにしていると油染みのようなものが浮いてくるようなリスクがあり注意する必要はある。

ポスターの貼り付けや小物の転倒防止に使える

ところで、これが……壁に取り付ける前の準備で、指先で揉んでいると、非常に楽しいのである。

いつまででも揉んでいられるし、不思議と心が安らぐ。別に安らぎのグッズではないのだが。

ライトな地震対策グッズと前述した。そう、バタンと倒れてしまうことが懸念される、棚上の割れ物の置物等の底にこの粘着剤を貼り付けることで固定、滑り止めとして活用できる。

地震対策ではないが個人的にオススメのシーンは、洗面所、特に洗濯機周辺エリアでの使用である。

ややヘッドの重いタイプの洗剤ボトルは、よく中身が空に近づくとバランスを崩して棚から落下しやすいものだが、これを貼り付けることで防止することができる。ささやかなことだが、ちょいちょい感じる「イラッ」が軽減する。試してみてほしい。

YouTubeの動画で知ったことだが、ミュージカル女優の方はこれを耳に貼ってイヤリングを固定するのだという。斬新な使い方だが、そういう独自の使い方を編み出す余地のある、小さいけれど懐深い商品なのであった。

いくつか類似品が市販されており、使用して比較してみたが、パッケージからの取り出しやすさ、柔らかさ、揉みやすさ、価格等の面で、「ひっつき虫」は群を抜いていたので、付記しておきたい。

藤原 千秋

主に住宅、家事、育児など住まい周りの記事を専門に執筆するライターとして21年目。リアルな暮らしに根ざした、地に足のついたスタンスで活動。現在は商品開発アドバイザリー等にも携わる。大手住宅メーカー営業職出身、大1、中3、小5の三女の母。『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)、『ズボラ主婦・フニワラさんの家事力アップでゆるゆるハッピー‼』(オレンジページ)など著監修書、マスコミ出演多数。