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洗濯機の革命! “世界一小さい洗濯機”コトンを使ってみた!

 2015年1月14日に開催されたハイアールアジアの発表会「Haier Asia Innovation Trip! 2015」でお披露目された“世界で一番小さい洗濯機”コトン。伊藤嘉明社長兼CEOは既存分野でのイノベーションを起こし、みんながワクワク出来るものを作っていきたいと語っていた。長年の子育て期間を経て、ずっと洗濯が日常にあった筆者にとって、この新しい提案は非常に気になるところ。全長わずか17.6cm、重さ約200gの持ち歩ける洗濯機「コトン」の開発背景を聞き、実際に使ってみての所感を紹介したい。

2015年1月14日に開催されたハイアールアジアの発表会「Haier Asia Innovation Trip! 2015」で伊藤嘉明CEOによってお披露目された「COTON(コトン)」
世界最小の洗濯機HANDY WASHER「COTON」。発売は3月1日だがwebのAQUAストアではすでに予約を開始している

“シミ抜き”ではなく、汚れたところだけをきれいにする“部分洗い”

マーケティング本部 Japan ランドリービジネスユニット マネージャーの内藤正浩氏

 「今、掃除機ではこれまでのキャニスタータイプに加えて、ハンディやスティック、ロボット掃除機などを買い増しするのが普通になってきていますよね。洗濯機だって買い増しという考え方があってもいいと思いませんか?」

 開口一番、マーケティング本部 Japan ランドリービジネスユニット マネージャーの内藤正浩氏はこう語った。洗濯機の大容量化が進み、9kg、10kgが当たり前のようになっている。海外においては14kg~20kgという大容量洗濯機まである時代だ。まとめ洗いや毛布・ふとんなどの洗濯ができるのは便利だが、衣類などの洗濯物の量が増えているかといえば決してそうではない。大容量化以外に求められているもの、提案すべきものは何かという時、「ちょっとした汚れを落とす(洗う)」という視点が抜け落ちていたのだという。

5mlの水を使い、たたき洗いで汚れを押し出し、下に敷いたキッチンペーパーに汚れを移すのがコトンの洗濯の仕組み
汚れがキッチンペーパーに移った後は、衣類に残った洗剤分をすすぎ洗いする

 「コトンを単なる“シミ抜き器”だと思われると、それは違うと言いたいし、心外なんですよね」と内藤氏。シミ抜き用の洗剤なども市販されているが、それを活用している人はまだまだ少なく、そもそもシミ専用という考え方というよりは、衣類全体を洗うのではなく、汚れたところだけをきれいにする“部分洗い”という洗濯習慣の提示なのだと。

 「ちょっとした汚れだけのために洗濯機で丸洗いをしていたら、繊維が傷んでしまう。衣類を大事にするためにも、コトンの部分洗いは有効だと思います」(内藤氏)

内藤氏に口紅の汚れを落とす実演をしてもらった
内蔵する容器を取り外し、水を入れて使う
スイッチを入れると振動とともに霧状の水が出る
付属のマットの上にキッチンペーパーを敷き、汚れた面を下にして衣類を置き、コトンでたたき洗いをしていく
布地の口紅汚れがキッチンペーパーに映り、すっかりきれいになっているのが確認できた

京都で開発、長野で製造する“オールジャパン”の洗濯機

「コトン」HCW-HW1のカラーはスカーレットオレンジ、チタンゴールド、コーラルピンクの3種類

 コトンは中国本社で定期的に行なわれている技術発表会において、「部分汚れに対応するものを開発してほしい」という要請に基づいて、開発がスタートした。考え方としては、三洋電機時代から得意としていたコインランドリーなどの業務用洗濯機の技術やクリーニング店でのたたき洗いなどの技術を応用したものだったという。

 「これまで大きな洗濯機を作っていた業務用チームが、急に手のひらにのるような小さなものを開発しなければならなくなったので苦労は大きかったようです」(内藤氏)

 当初は、中国市場向けの製品としてリクエストされたものだったが、2014年5月に伊藤社長兼CEOが京都のR&Dセンターを視察した際に「中国向けと言わず日本ですぐに製品化しましょう」という鶴の一声で、製品化が決まり、急きょ日本仕様のデザインへと舵が切られた。

 「部分洗い用の洗濯機という新しいカテゴリを作るためには高級感が大切ということで、本体のデザインにはとことんこだわりました」(内藤氏)

 継ぎ目のない表面、アルマイト素材にきらめき感のあるブラスト加工を施し、カラーもチタンゴールド、スカーレットオレンジ、コーラルピンクに。ムラが出ないようにこれらのカラーを仕上げるには高度な技術が必要だという。

 コトンの製造は、毎秒10~15回、1分間に約700回のたたき動作をするためのモーターや変速ギア、水の噴射機構など高い技術を伴うもので、長野県の協力会社で行なわれている。京都で開発され、長野で作られている“オールジャパン”の洗濯機なのだ。

コトンの実力をわが家で試す!

AQUAブランドのハンディ洗濯機「コトン」のパッケージ

 内藤氏のインタビュー後、コトンの試用機をお借りすることができたので、さっそく試してみることに。黒ベースのパッケージに入ったコトンは高級感があり「AQUA」のブランド名に“洗濯機らしさ”を感じさせる。

 あらためてコトンを手にしてみると約200gの本体は軽く、手に持ったときもすべすべとして手触りがよい。中には防振用の黒いマットが同梱されている。電源は単四形アルカリ乾電池もしくは単四形充電式ニッケル水素電池3本を使用するが、これは別売なので注意が必要だ。電池を入れても単四を3本なのでたいして重くならず、女性の手にも使用時に負担にならないのはうれしい。

 キャップとたたき部の保護カバーを外し、水を入れるボトルを引き抜いて、5mlほどの水を入れて使用する。使用時には再びこのボトルを本体に差し込み、保護カバーをつけて上部のスイッチを入れるだけで洗濯ができるので、使い方は本当に簡単だ。

コトン本体のほかマットが同梱されている
キャップと保護カバーを外したところ
ボトルの先端を持って引っ張ると取り出せるようになっている
スクリュー式のキャップを外し、水(5ml)を入れて使用する
本体上部に電池ケースがある
電源は、別売りの単四形アルカリ乾電池もしくは単四形充電式ニッケル水素電池3本を使用

 衣類の汚れを移し、水噴射によるすすぎ水を吸収させるために、マットの上にはキッチンペーパーを敷く。一般的なキッチンペーパーの2カット分を使い、ミシン目で折り返したペーパーを4つ折りにするとマットとほぼ同じ大きさになる。さて、これで準備完了。いよいよ洗濯を始めてみることにする。

マットの上にキッチンペーパーを敷いて使う。一度に使う量は2カット分
ミシン目で折り返したペーパーを4つ折りにすると、ちょうどマットと同じくらいの大きさになる

半日経った紅茶の汚れが落ちた!

 まずは「朝、紅茶をこぼした!」という家族のTシャツの汚れ落としにチャレンジ。すでに半日ほど経ってしまっているがどうだろうか。汚れ部分に液体洗剤を染み込ませるには綿棒がちょうどいい。十分に塗布したところで、シャツを裏返してキッチンペーパーを置いたマットの上に置き、コトンを汚れの上に置いて、スイッチオン。

 カタカタカタと動く様子とその音色はちょうどミシンのよう。マットがほどよく振動を吸収しているためか、テーブルに響くこともなく軽やかに作業ができる。繊維の汚れをキッチンペーパーに押し出して移すため、10秒程度で場所を移動させながら使うのがコツだ。

朝のうちについてしまったらしい紅茶のシミを落としてみる
液体洗剤を綿棒にしみ込ませて汚れに塗布する
紅茶のシミに十分に洗剤分を染み込ませたところ
Tシャツを裏返してマット+キッチンペーパーの上に置き、コトンのスイッチを入れて洗濯を開始

 4つ折りのキッチンペーパーを9カ所ほど移動したところで終了。時間にして2分程度だろうか。キッチンペーパーを確認してみると、最初は紅茶の汚れが濃く移り、次第に薄くなって、後半は水ですすぎ洗いをしている様子がわかる。さて、シャツの汚れのほうはどうかというと、時間が経過していたためか薄くかすかにシミが残っているようだ。そこで、その後、普通に洗濯をしてみたところ、真っ白に。つまりしつこい汚れの場合は、「予洗い」と考えるといいということだろう。

汚れた部分を少しずつ移動させながらたたき洗いしてみると、汚れがキッチンペーパーに移っているのが確認できた
半日以上経過した後に試したためか、うっすらと汚れが残っている
コトンの洗濯を「予洗い」とし、その後洗濯機で通常通り洗濯したところ、見事にきれいになった(写真は乾燥後)

ワインやコーヒー、しょうゆの汚れもクリア!

 続いて赤ワインで実験。こちらは、わざとTシャツにこぼして、すぐにコトンで洗濯をしてみるというやり方。先ほどと同様の手順で行なったところ、みるみるうちにワインの色素が消えてきれいになっていく。ワインの水分などもあり、このままだとはっきり汚れ落ちが確認できなかったので、ドライヤーで乾かしてみると何も汚れが残らずすっきり。やった! という達成感があって楽しい。

赤ワインをTシャツにたらして実験
綿棒で液体洗剤を塗布
Tシャツを裏返してコトンでたたき洗い
水で濡れているが、ワインのシミは消えているようだ
ドライヤーで乾かしてみたところ、見事にきれいになっていた!

 ここでちょっと気になったのが、洗剤分が衣類に残っているのではないかということ。そこで洗濯した部分のニオイを嗅いでみたのだが、洗剤の香りがふんわりと香るものの、塗布した当初のような強い香りは残っておらず、手触りもべとべとしていない。5mlの水分できちんとすすぎ洗いができていたのだなと納得したのだった。

 続いてしょうゆ汚れについても試してみると、こちらも見事にきれいになった。いろいろと試すうちに、コトンを汚れの外から内へという使い方もコツを覚えてきて、上達してきたようだ。最初はどうしても輪を描くように内から外へと回転させて使いたくなってしまうが、そうると汚れが周りに広がってしまうのだ。

しょうゆでも実験してみる
液体洗剤を塗り込んだところ
ひっくり返してコトンでたたき洗い
驚くほどきれいになって感激
しょうゆの成分がキッチンペーパーに見事に移っている

 キャミソールにこぼしてしまったコーヒー汚れは、少し時間が経過していたこともあり、最初はボトルに水を入れないでコトンを使って洗剤成分を染み込ませ、その後で水を入れて通常のコトンでの洗濯をするという2段構えで行なった。コーヒーは元々、汚れが落ちにくいが、大成功。生地の性質上、濡れていると汚れの状態が確認しにくいため、ドライヤーで乾かしてみると、本当にきれいになっている。全部を洗わずに済むのは便利だし、生地が傷まずにすむのでうれしい。

キャミソールにこぼしてしまったコーヒーをコトンで洗濯してみる
液体洗剤を塗りつけると、かえって色が濃くなったように見えて不安に
コーヒーは手ごわいと聞いていたので、最初は水を入れずに洗剤成分をたたきつけて染み込ませ、その後で水を入れて洗い→すすぎという2段階方式で洗ってみた
コトンでの洗濯後、ドライヤーで乾かしてみるときちんと落ちている
右側のキッチンペーパーの2列は水なしでたたき洗いしたもの。その後、水を入れて洗濯してみた様子

気になるワイシャツの黒ずみ汚れにも有効!

 最後に、洗濯済みなのに襟足に黒ずみが残ってしまっていたワイシャツの予洗いとして、コトンを使ってみた。襟部分の汚れに洗剤を染み込ませてから、コトンでたたいて予洗いしてから、洗濯機で洗ったところ、これまでの汚れがすっきり。部分洗いにも、しつこい汚れの予洗いにも、幅広く活躍するコトン。家に1台あると便利だし、会社やお店などにも置いてあると役立つことだろう。1つ願うとすれば、液体洗剤を入れておける小さな容器が付属していると、ぐんと使いやすくなるだろう。

普通に洗濯してもどうしても残ってしまうワイシャツの衿の黒ずみ
洗濯・乾燥済みのワイシャツの衿の黒ずみに液体洗剤を塗布
キッチンペーパーを敷いてコトンで洗濯
裏返してコトンでたたき洗いしてから、ふたたび洗濯機へ
乾燥後の様子。写真ではわかりづらいが、肉眼で確認するとかなりきれいに落ちていて、しつこい汚れの予洗いにも効果的なことが実感できた

着物のお手入れに通じる部分洗いで、衣類を長く大切に着る

 実際にコトンを使ってみて思ったのは、洗濯機の登場以来、培われてきた洗濯の概念を変える力があるのだなということ。二槽式、全自動、ドラム式と進化して、どんどん便利に、洗濯が楽になってきた結果、「1回着ただけで洗う」「ほとんど汚れていないのに洗う」というのが当たり前になって「衣類を長く大切に着る」ということが忘れられがちだったように思うのだ。

 コトンのように汚れが気になるところだけを部分洗いするというのは、元々、着物のお手入れとして日本人がしてきたこと。半襟だけを外して手洗いし、汗ジミや食べこぼしなどの汚れは、裏に布を当てて汚れたところに水をつけ、漆はけを使って真上からたたいて落としていく着物の「洗い」の手法と、コトンの技術・手法はそっくりだ。着物では、全体を洗う「洗い張り」はめったにしない。

 冒頭の内藤氏のインタビュー部分でも紹介したように、このコトンは京都で開発され、長野で作られている製品だが、洗濯の手法も着物を着ていた日本人ならではの古来からの伝統に基づいており、そういう意味でも“オールジャパン”なのだと思う。

 汚れたところだけを洗うことで、衣類全体の洗濯の回数を減らし、傷めずに長く風合いを保って着られる。それは家庭での洗濯に限らず、クリーニング店に出す頻度を減らすことにもつながるし、洗濯の場を家庭以外の職場や飲食店、ホテルなどにも広げられる。衣類に愛着をもって長く大切に着ることを思い出させ、洗濯全体の回数を減らしてむだをなくす。もちろん、より清潔に、きれいにしたい場合の「予洗い」にも活躍する。

 この世界で一番小さい洗濯機は、戦略発表会で伊藤CEOが述べたように、あらゆる意味で既存分野でのイノベーションであり、洗濯機の革命なのだと思う。

神原サリー