藤山哲人の実践! 家電ラボ
「シャープの洗濯機?」と疑問符がついていた民衆よ! 悔い改めて「シャープの洗濯機!」と感嘆符をつけるのだ!
「シャープの洗濯機?」と疑問符がついていた民衆よ! 悔い改めて「シャープの洗濯機!」と感嘆符をつけるのだ!
2018年2月28日 07:00
シャープから「面白い洗濯機があるから見においでよ!」とのお誘い。おいしいたこ焼きが食べられるかなと下心パンパンで、シャープの洗濯機の研究、開発拠点がある大阪・八尾市まで行ってきた!
まあそこそこ取材したら、宝塚歌劇と吉本新喜劇見て帰ろう! と思っていたのだが……、それどころではなかった! シャープの洗濯機スゲエ!
これが洗濯機!? ミラー張りでカッコイイ!
まず驚かされたのはそのデザイン。縦型洗濯乾燥機もドラム式洗濯乾燥機も、ドア部分が鏡(ハーフミラー)になっているのだ。ドラム式洗濯乾燥機「ES-P110」は洗濯11kg、乾燥6kgと幅60cmながら大容量!
しかも電源が入っていないと、ボタン類が一切見えないミラーボックス! 店頭に並べたり、洗濯機置き場に設置してしまったら、周りの景色に溶け込む光学迷彩になりかねない!……というのは、ちょっと大げさだった。すまん! ハーフミラーはグラデーションになっていて、本体下部は白になっているので、見失うことはない。
むしろ「このミラーボックスはなんだ!」と目を引くぐらいだ。
そしてそのミラー部分は、ドアになっていて全て開く。操作パネルも含めて(笑)。
「普通、操作パネルは本体側に残すように設計しますよね? ドア側に操作パネルつけちゃったら、信号ケーブルから何から全部ドアに配線回すから面倒じゃないですか?」
という質問に、答えてくださったのは技術担当の下口氏。
「そうです。操作パネルを本体側に残したほうが、どれだけ簡単だったことか(笑)。でもこのデザインにして、お客さまにビックリ、喜んでいただきたかったんです。実は、このデザインは縦型でも同様で、上フタに操作パネルが付いています。そうすることで、操作部が格段にすっきりします。技術的には色々難しいところはあったのですが、縦型洗濯乾燥機にできたんだから、ドラム式だって! という意地もありました(笑)」
実にシャープらしいエンジニア魂!
しかも操作部は、電源を入れると操作に必要な部分のみが光るという「光るタッチナビ」を採用。洗濯機のスイッチと言えば、ペコペコとしたスイッチを思い浮かべるが、それとは全く違う。
「お金かかってます!(笑)。見た目もカッコイイんですが、それだけじゃないんです。一番は見やすさです。必要なスイッチだけが光るので、操作にも迷いません」
ガラストップに浮かび上がるスイッチは、基本的にスマホと同じ構造。なので水で濡れた手や水がかぶる場合があるので、その操作感と感度の塩梅なども、時間をかけて調整している(タッチ直前で感知する)ということだ。
作業着を追い剥がれ、その場で汚れ落ちテスト! まじっすか!
洗濯機たるもの、やはり汚れが落ちてナンボのもの。ということで、日常で考えうる汚れをワイシャツにつけて、洗ってもらうことにした。
シャープが行なった実験では、水温30~35℃の間で洗剤が最も活性化し、頑固な油汚れも溶けはじめ、洗剤が最も活性化されるという。そこで搭載されているのが、水を温めて35℃前後にして洗う「温水極め洗いコース」だ。
さらにシャープ独自の機能となっているのが、「マイクロ高圧洗浄」。水道水を100~500μmの微細な水滴状にして、洗濯物に直接噴射することで、水滴が繊維の奥まで入り込み、約100万個以上の水滴/秒で汚れを押し出すという。「温水極め洗いコース」では、この高圧シャワーの量も、最大で標準コースの4倍となっている。
さっそく汚れを付けたワイシャツを「温水極め洗いコース」で洗おう。
「ちょっと待ったぁ!」
疑ってるわけじゃないけど(はい、疑ってるのは俺じゃなくて、読者様です!)、シャツも汚れもすべてシャープ側で用意したもの。もしかしたら、「汚れが落ちやすいように汚すテクニック」、もしくは「魔法のYシャツ」を使っているとも限らない!(と、読者が……)。
そこで当日、筆者が着ていた作業着をドロで汚して、洗ってもらうことにした。もし汚れが落ちなければ、なんクセつけてシャープオリジナルの作業着を持ち帰ってやろうという魂胆だ。
下口氏に作業着を渡しドロ汚れをつけてもらうようお願いすると、何やら不安そうな小声が!
「えっ? コレ落ちるかな? 化繊と綿の混紡だよな」
いきなり超リアルな独り言! もしかして門外不出のシャープの作業着を奪取できる絶好のチャンス! と、ドロ汚れ俺につけさせてください! と申し出た。
そこで、さっきの倍のドロを作業着にどっさり盛り、手でゴシゴシと塗りこんでみた。それが向かって左側の汚れだ。
さてこのドロ汚れのたっぷり付いた作業着を、贈呈し洗濯実験を開始する! 結果はのちほど!
もはやシャープのお家芸! こんどはヒマワリの種かよ!
さてYシャツと作業着の洗濯中は、内部構造を説明してもらうことに。しかし、これまた面白いアイディアの宝庫。カタログには、ほとんど書いてないことまで、あれやコレやと出てくる出てくる。
まず最初は、ドア内側に刻まれたデコボコだ。一般的なドラム式洗濯機の内側はツルツル。しかしシャープの洗濯機は、これがデコボコになっている。しかもランダムのように見えて、ランダムじゃない、何か規則的なのだ。
これについて質問すると「実はこれ洗濯板なんです」という。曰く「洗濯物の動きを見ていると、ドアのガラスにも擦れている。ならばここを洗濯板にすれば、もっとキレイになるんじゃないの?」と言うのがアイディアの発端だという。
しかし格子状に規則的に突起をつけても、あまり効果が見込めない。ならば自然に習え! ということで自然の摂理を製品開発に活かす、シャープの十八番「ネイチャーテクノロジー」が登場。なんと、このデコボコはヒマワリの種の配列を採用しているのだ。
ヒマワリの種の配列は「フィボナッチ数列」という、黄金比や、効率の良さを考える上で重要な数列になっている。
0,1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,233,377,610……
その数でしか割れない素数か? と思いきや、連続する2つの数を足すと、その右側の数になる(たとえば、1+2=3、21+34=55)というものだ。これを図式化すると、こんな感じになる。
こうしてできた四角の頂点を結んでいくと、特徴的な渦巻きが描ける。こういう渦巻きに見覚えがある人も多いだろう。巻貝や銀河系の尾の形、台風の形などなどだ。そのひとつが、ヒマワリの種の配置。
当初は規則的に突起をつけてみたものの、突起に当る部分と当らない部分が出てしまい洗いムラが発生。しかしヒマワリの種の配置にしたところ、洗濯ムラを50%低減できたという。
さらに洗濯板効果を高めるために、洗濯槽についている洗濯物を持ち上げるストッパ(バッフル)の形も変えている。みなさんの洗濯機のバッフルは、同じ太さの棒が付いているハズ。しかしシャープの洗濯機は、奥が太く、手前が細くなっている。これで洗濯槽の奥にある洗濯物を、前へ前へと送り出してくるのだ。
しかもバッフルについている三日月の突起は、左右で剥きが反対になっている。これは洗濯槽を左右に振ったとき、洗濯物を手前から奥、奥から手前へと送り出すためなのだ。
センサー搭載でお洗濯をアドバイス
最近はしゃべる家電も多く、あいさつや励まし、季節のトピックなどを話してくれて、思わず機械相手に突っ込みを入れちゃうなんてことも。しかしシャープの洗濯機は、ただしゃべるだけじゃなく洗濯のアドバイスをしてくれる! 本体にはなんと7種類センサーを内蔵していて、洗濯の状況や環境を常に把握しているのだ。
状況・環境 | 利用するセンサー |
---|---|
洗剤の種類 | 泡、光 |
衣類の種類 | 重量、水位 |
乾き具合 | 湿度、温度 |
衣類の量 | 重量 |
衣類(洗濯水)の汚れ | 光 |
周囲の温度 | 温度 |
衣類の偏り | 振動 |
乾燥フィルター目詰まり | 温度 |
これらのセンサーで状況や環境を的確に把握するため、自動モードで洗濯すれば、一番早く経済的に洗い上げてくれるようになっている。でも人の心としては、洗い時間やすすぎ回数、脱水時間などを指定したいもの。そんなとき独自の設定内容と、洗濯し終えたあとの状況を比較し、洗濯のアドバイスをしてくれるのだ。
たとえば洗剤の投入しすぎ。各種センサーの値やその変化を分析し、洗濯物が終わったら洗剤が多かったことを音声でアドバイスし、次回の洗濯でそれを活かせるというものだ。また、すすぎ回数が多かったなど、あらゆる洗濯に関するアドバイスやヒントを教えてくれる。
さらにセンサーで衣類の偏りを調べ、モーターの音も最小限に抑えるので、運転音が非常に静か。洗い運転で30db(深夜の静けさ)、一番うるさい乾燥でも40db(図書館)となっている。
ベタベタのドロ汚れがスッキリ落ちた!
さて色々とおふたりから話しを聞いているうちに、いつの間にやら洗濯が終わっていた。
今回使ったコースは、「温水極め洗い」というもの。一番洗浄力の高いコースで、汚れをシャワーで押し出す「マイクロ高圧洗浄」に加え、「温風」を利用し水温を35℃まで上げて、洗剤を最も活性化させるコースだ。
それ以外にも、オシャレ着をやさしく洗う「ホームクリーニング」コースは、マイクロ高圧洗浄+最適な揉み洗いをする。また子どもの体操着やユニフォームなど、洗剤なしで約5分間「サッと予洗い」するコースはマイクロ高圧洗浄のみで実現する。これで予洗いすれば、他の汚れの少ない洗濯物と一緒に洗うことができて便利だ。
さて、先に汚したYシャツと作業機で、その洗浄力を見てみると!
「スゲー!」
の一言。ベタとは分かっていながらも、「驚きの洗浄力!」としか言えないくらい汚れが落ちていた。
ソースやしょうゆ、ケチャップは当たり前、落ちにくい口紅やファンデーションまでパーフェクト! 白いワイシャツなのに、どこに何の汚れをつけたのか分からないほど真っ白に洗いあがった。
が! 急遽お願いしした筆者の作業着はどうだろう? 「落ちるかな?」と自信なさげにつけていた汚れに加え、汚れマシマシで筆者が付けた汚れもある。いざ作業着よ! ここに召されいっ!
プギャー! まったく汚れがワカラネー! あわよくば、汚れが落ちなかったときは、シャープのロゴ入り作業着をもらおうと思っていたのに残念!
カッコイイデザインの上に、この洗浄力! 洗濯機選びで「シャープの洗濯機なんて眼中にネーヨ!」なんて思っていた民よ! 悔い改めるがいい!
ハイブリッド乾燥で天日干しよりフカフカ!
3月から5月にかけては、花粉やらPM2.5やら黄砂で、外で洗濯物干すのがためらわれる。さらに季節が進むと、今度はイネ科の花粉でまた外に干せなくなる。
そんなときに活躍するのが洗濯機の乾燥機能だが、そこにもシャープ独自のBe Original(シャープのスローガン)がある。それがサポートヒーターだ。
一般的なドラム式の洗濯機は、ヒートポンプというエアコンと同じ原理を使って温風を作り出す。でもエアコンから温風が出るまでに時間がかかるのと同様、洗濯機のヒートポンプも立ち上がりまでに時間がかかる。そこでシャープは、ヒートポンプに加えて、サポートヒーターを立ち上がりと乾燥終了時に使っているのだ。
これにより寒い冬の時期でも乾燥時間を短くでき、室温に関係なく、オールシーズン通してだいたい同じ時間で衣類を乾燥できるようになった。乾燥終了間際、瞬間的にサポートヒーターを使うことで、外に干したようなカラッとした仕上がりになるという。
サポートヒーターは電熱線方式なので電気代が気になる。しかし冬場はヒートポンプでの乾燥時間が圧倒的に短くなるので、スポット的に使うサポートヒーターの消費電力は極わずか。夏などは本当に瞬間的にしか利用しないので、従来型の乾燥機能よりも省エネになっている。
しかも仕上がりは天日干し以上にフワフワになるので、この洗濯機を使ったら、外に干すのがバカらしくなるかも知れない。
シャープだけの乾燥センサー+αで仕上がり時間を裏切らない!
乾燥機能を使っていて、突然仕上がりまでの時間が何時間も増えた! なんて経験はないだろうか? この時間ならテレビを見ながら子どもたちに手伝ってもらい、洗濯物が畳める! と思っていたのに、実際に仕上がったのは夜中なんてのはよくあるハナシ。
その原因は乾燥機能の汚れと、温度による仕上がり検出によるところが大きい。ドラム式の洗濯乾燥機を使ったことがある人はご存知の通り、だいたい4、5年使っていると乾燥機能が恐ろしく低下してくる。修理に来てもらうと「ホコリ詰まっていますね」と言われ、ヒートポンプユニットの交換で4万円ぐらいかかっていた。これはヒートポンプ式の宿命とあきらめていたのだが、シャープはこれを大幅に改善した。
綿ゴミフィルターの目をより細かく二重にしたところは、他社と同じだが、乾燥が終わると空気の経路を水洗いして、経路に付着したほこりを洗い流すようになっている。これにより、ヒートポンプの性能低下が起きづらくなったという。
また仕上がり時間の正確な把握もシャープ独自。一般的なヒートポンプ式の乾燥機能は、ヒートポンプから出ている温風と戻ってきた風の温度差で乾燥の度合いを調べている。つまり洗濯物が湿っていると気化熱により温風が冷たくなるという原理を利用しているワケ。他社製の乾燥機能は、こうして間接的に湿度を調べることになるので、誤差が大きく、仕上がり時間がアテにならないのだ。
しかしこの洗濯機は、湿度センサーを搭載しているので誤差が少ない。シャープでは、ドラム槽(乾燥経路)を密閉空間としているため、湿度センサーが正確に働き、無駄な電気代と時間を省略できるのだ。
アイロン要らずで静電気も起きない!
乾燥機能のあるあるネタがもう2つある。それはワイシャツがくしゃくしゃになってしまうという点。しかしこの洗濯機は、脱水を弱めにかけて、強風で乾燥させることで、ほとんどシワがなく、そのまま着て行けるワイシャツが仕上がる「シワ抑え乾燥」コースがある。
さらにプラズマクラスターを搭載しているので、衣服のニオイだけでなく静電気も除去してくれる。冬場は乾燥工程後、衣類を取り出すときに、バチバチ言う静電気に戦々恐々としていた。でもプラズマクラスター搭載のこの洗濯機は、静電気を除去してくれるのでバチバチなし! 洗濯物が静電気でくっつくこともないのだ。
洗濯機選びの第1候補はシャープになるのも時間の問題!?
シャープに面白いものを見せるからと言われ大阪まで行ってきたが、驚きの連続だった。おそらく筆者の驚きは、このクソ長い記事で皆さんにもお分かりいただけたと思う。
これまで洗濯機選びと言えば、モーターを自社生産する会社を第1候補にする方が多かったのではないだろうか? でも紙面やWebのデザインの都合上、カタログには掲載されていない技術やアイディアがふんだんに盛り込まれているのがシャープの洗濯機だ。
これまで「シャープの洗濯機?」と疑問符がついていた民衆よ! 悔い改めて「シャープの洗濯機!」と感嘆符をつけるのだ! さすれば次の時代に乗り遅れることはないだろう!