ソフトバンクのメガソーラー発電所、京都と群馬で7月1日に営業運転開始

~孫社長「公約は必ず守る」、京セラ・稲盛会長「感無量」
「ソフトバンク京都ソーラーパーク」の運転開始セレモニーに出席した、SBエナジー社長の孫正義氏(右)、京セラの創始者で名誉会長の稲盛和夫氏(左)、京都市の門川大作市長(中央)

 ソフトバンクグループで自然エネルギー事業を行なうSBエナジーは、再生可能エネルギーの全量買取制度が施行される7月1日、メガソーラー発電所「ソフトバンク京都ソーラーパーク」(京都府京都市伏見区)と、「ソフトバンク榛東ソーラーパーク」(群馬県北群馬郡榛東村)の営業運転を開始した。

 同日行なわれた京都ソーラーパークでの運転開始セレモニーには、SBエナジー社長の孫正義氏、京セラの創始者で名誉会長の稲盛和夫氏、京都市の門川大作市長などが登壇した。


京都市伏見区に合計4.2MWのメガソーラー。群馬県でも運転開始

 セレモニーが行なわれたソフトバンク京都ソーラーパークは、京都府京都市伏見区淀樋爪町の京都市所有地に誕生する。敷地面積は全体で約89,000平方mで、7月1日に営業を開始した第1基と、9月1日に運転開始予定の第2基から成る。出力規模は各約2.1MW(約2,100kW)で、合計約4.2MW(約4,200kW)。年間予想発電量は各約210万kWhで、合計約420kWh。これは一般家庭約1,160世帯分の年間消費電力量に相当するという(第1・2基の合計。第1基は約580世帯)。

京都ソーラーパークのようす。セレモニー当日は大雨だった敷地の奥までパネルがぎっしりと並んでいる
こちらはパワーコンディショナ日新電機製の昇圧装置
第1基のとなりに、第2基のパネルが組み立てられている第2基にはまだパネルが設置されていないスペースがある。遠くには新幹線が走っている

 EPC(発電所の設計や建設、パネルの調達を行なう事業者)は、京セラグループの京セラソーラーコーポレーション。施工も同じく京セラグループの京セラコミュニケーションシステムが担当する。第1基は5月に、第2基は6月に施工が開始された。

 同発電所に導入されたソーラーパネルは京セラ製の多結晶シリコン型で、出力が1枚あたり242Wの、大規模案件向け大型・高出力太陽電池モジュールとなる。モジュール枠に複数の溝を施すことで、設置する傾斜角度が低くても、埃などの汚れが雨水とともに排出されやすいため、発電量の低下が防げるという。使用モジュール枚数は、各基8,680枚ずつ、合計17,360枚。

横から見たところ雨水などが逃しやすいよう、溝を入れた「防汚タイプモジュール」となる
当日の発電状況を知らせるパネルも設置されていた。雨が降っているため、発電量は少ない。なお、第2基についてはまだ稼働していない太陽光発電の仕組みを解説するパネルもあった

 また、群馬県北群馬郡榛東村のメガソーラー発電所「ソフトバンク榛東ソーラーパーク」についても、7月1日に営業運転を開始した。敷地面積は約36,000平方mで、出力規模は約2.4MW(約2,400kW)。年間予想発電量は約268万kWhで、一般家庭約740世帯分の年間電力消費量に相当する。EPCはシャープ、施工は佐藤建設工業。

こちらが晴れているときの京都ソーラーパーク(画像はSBエナジー提供)群馬県の「榛東ソーラーパーク」でも、運転が開始された(画像はSBエナジー提供)

孫社長「原発は廃棄物を残すだけ」。合計230MWの自然エネルギー発電所を建設

ソフトバンク・SBエナジー代表取締役社長 孫正義氏

 7月1日の京都ソーラーパークでの運転開始セレモニーは、あいにくの雨空となった。登壇した孫社長は、冒頭のスピーチにて「このような日に太陽光発電はやっぱり頼りにならないじゃないか、と思う方もいるでしょう。でも、先ほど控え室で京都市長から言われましたが、こういう日には水力発電が役に立つ。太陽光がない日には雨があり、水力発電ができる。また、風がある日は風力発電ができる。なにもないときにも地熱発電がある。自然の恵みというのは、いろいろな形でネルギーを発信してくれる」と、雨などの自然現象もエネルギーの一部であるとした。

 孫社長によると、実際にメガソーラー発電所を運営していくに当たって、電力会社の受入体制と、土地の少なさという2つの心配事があったという。

 「最初は電力会社の方々が、自然エネルギーの接続に抵抗されるのではないかと心配していた。しかし、多くの電力会社が、日本中で電気が足りない、再生可能エネルギーが必要なものという理解のもと、スムーズに接続にご協力いただいた。

 また、日本には(自然エネルギーを行なう)土地がないのではないかという懸念もあったが、多くの場所から“ぜひ自分たちの未活用の土地を使って欲しい”という声があった。京都ソーラーパークももともとは埋立地で、大きな建物や住宅が建設できない土地だった。ほかの用途には使いづらい土地が、日本全国にはたくさんある。条件の悪い土地も使いながら、技術革新でコストダウンを図って、異業種から(自然エネルギーへの)新規参入組がどんどんと競争・協力していくことが、日本中で嘆き悲しみ、心配している幼い子どもを持つ母親、父親の皆さんの願いではないか」(孫社長)

 自然エネルギーのコストについては、原子力発電を引き合いに出し、決して高くないことを主張した。

 「(自然エネルギーは)高いのではないかというご批判をされる方もいるが、よく考えてみていただきたい。全量買取制度は20年間限定だが、20年もあれば設備投資は回収し終わっている。

 私がそもそも自然エネルギーに取り組もうと思ったのが、(福島の)原発の事故。それがきっかけで、この地球を、子供たちを守っていかなければいけないと思った。原発は廃棄物など、人類にとって大きな問題を残す。結局、原発は20年では回収できない。一方で自然エネルギーは、発電に関わる資源コストは一切掛からない。長い目で見れば、再生可能エネルギーは発電コストが一番安くなる。物事を小さく捉えるのではなく、長く大きく、地球と人類とを共生できる自然エネルギーこそ、最終的な答えである」(孫社長)

SBエナジーが今後展開する自然エネルギーの発電所のプランを、孫社長自らパネルを持って解説した

 また孫社長は、今後建設予定の自然エネルギー発電施設の予定地をパネルで示し、発電自らが宣言した“公約”が実行されているとアピールした。

 「私は自然エネルギー事業に取り組む際に、『少なくとも十数カ所、合計で200MW分を作る』ということを公言した。既に確定した再生可能エネルギー発電所は11カ所で、地権者の方と合意に至った。内訳は風力が1カ所、太陽光が10カ所で、合計で230MWというボリュームが確定した。私は公約を必ず守る、そういう思想で取り組んでおります」(孫社長)


【SBエナジーの自然エネルギー発電所(予定)】
運転開始メガソーラーの設置地出力規模
7月1日京都府京都市伏見区
(京都ソーラーパーク第1基)
2.1MW
7月1日群馬県北群馬郡榛東村
(榛東ソーラーパーク)
2.4MW
9月1日京都府京都市伏見区
(京都ソーラーパーク第2基)
2.1MW
2012年度栃木県矢板市3.0MW
2012年度徳島県松茂町2.8MW
2012年度徳島県小松島市2.8MW
2012年度長崎県長崎市2.5MW
2013年度鳥取県米子市39.5MW
2013年度熊本県14.0MW
2014年度北海道苫小牧市111.0MW
2014年度島根県(風力発電)48.0MW
合計230.2MW
※島根県以外はすべて太陽光発電所

 孫社長はさらに、固定価格買取制度の価格が1kW当たり42円と、事業者に有利な価格に決まったことについて、自然エネルギーの普及には、ある程度の優遇措置が必要であることを指摘した。

 「一部では、今回の買取価格で『発電事業者はボロ儲けするじゃないか、けしからん』という意見もある。買取価格の見直しは当然あってしかるべき。だが、日本におけるエネルギーの30%を、自然エネルギーでまかなっていくのが経産省の目標。そのためには、この規模程度のものが約1,000カ所くらい必要。風力発電も多くの場所が必要になる。そうすると、必ずしも条件の良い立地ばかりにはならない。トータルで何百カ所という規模で増やしていった時の平均コストで考えると、赤字になっても発電所をつくる事業者はいない。バランスが大事になる」

 また、ソフトバンクのIT部門と発電部門のシナジー効果については、「直接的なシナジーは考えていない」としながらも、「各家庭で発電したり、市内のさまざまな施設で発電したりすると、スマートグリッド、スマートメーターというものが必要になる。そうすると、中長期的には、ITとの相乗効果は出てくるのでは」と期待を見せた。

京セラ稲盛氏、思い出の地のメガソーラー誕生に“感無量”。パネルは国産にこだわる

京セラの創始者である稲盛和夫名誉会長。伏見という土地が京セラの太陽光発電事業のスタートだったという

 セレモニーには、京セラの創始者である稲盛和夫名誉会長も出席。今回京都ソーラーパークが誕生した京都の伏見という場所が、京セラにとっての太陽光発電事業のはじまりだったことを明らかにした。

 「今から30年前、ここから2kmほど離れた伏見区の土地に、松下さん(現パナソニック)とシャープさんと京セラが主体になって、ソーラーセルの研究所を作った。当時はオイルショックで将来エネルギーが枯渇しており、なんとしても再生可能なエネルギーを開発するという、世界的な機運が高まっていた。

 しかし、苦労をしました。毎年毎年大きな赤字を出しながら研究を続けましたが、松下さんとシャープさんも『もうこのへんでやめましょう』もおっしゃったので、私は資本金をすべてお返して、京セラ独自で研究を続けました。大変な犠牲を払いながら、やっと多結晶シリコンによる高性能の太陽電池を、世界で初めて京セラが完成し、世に問うたのが20年ほど前でした。

 今回、設置された太陽電池モジュールは、すべて滋賀県の京セラ八日市工場と野洲工場で作られた、国産のソーラーパネルを使っている。また、それを支える日新電機さんの高圧の電気設備や、その他のいろんなことも、京都の在来企業のご協力を得た。そして、世界に先駆けて太陽電池の開発をこの京都・伏見でスタートしたことを象徴するかのような、素晴らしいソーラーパークを、孫さんに作っていただいた。感無量のものがあります。あいにく今日は雨ですが、きっと太陽を受けて素晴らしいエネルギーを関西電力さんに供給してくれることでしょう」(稲盛会長)

 また近年、海外のソーラーパネルメーカーが、低価格の中国メーカーに押されて倒産していることについては、京セラはあくまで国内で生産し、そのうえで低価格化を目指していく方針を示した。

「確かに、現在、中国のメーカーが素晴らしい躍進を遂げている。だが、やはり品質というものが非常に大事。私どもはソーラーパネルの寿命試験を約25年前から継続しているが、(当時設置したパネルは)今でも劣化が少なく、素晴らしい発電能力を記録している。今回の買取制度も20年間だが、パネルは大事に設置すれば、若干の出力の低下はあるものの、30年、40年の寿命は十分にある。もし今回のソーラーパークが20年ですべての償却が終わって、すべてがタダになれば、あとの10年、20年は、すべて余剰の利益になる。

 いくら中国勢が低価格で攻めてこようとも、国産、国内で作ることを堅持しながらコストを下げようということを言ってきた。八日市、野洲工場も素晴らしい生産性の向上を遂げており、現在の安い価格でも十分利益が出るようになった。普通なら日本の生産はやめて、中国の安いものを買って売ろうというような企業も国内メーカーにもあるが、我々は歯を食いしばっても、国内の高い賃金を払っても(国内生産を)やっていこうとしている。

 どのメーカーも品質保証をするだろうが、アメリカのパネルメーカーは3つほど倒産し、中国の企業もたくさん倒産している。いくら保証するといっても、20年、30年あとに企業が残っていなければ、それは意味がない。技術的に優れた、信頼出来る企業のパネルを使うのが、一番大事。京セラは長くがんばって参りますので、是非ご愛顧いただきたいと思います」(稲盛会長)

京都は120年前に自然エネルギーに転換していた――京都・門川市長

京都市長の門川大作氏。京都は120年前に自然エネルギーに転換したことがあったという

 セレモニーには、京都市長の門川大作氏も登壇。発電所の土地は京都市が所有しており、京都市が行なっていたメガソーラー発電所の設置事業者募集の公募に、ソフトバンクと京セラが申請し、採用された形となる。

 「この京セラの本社が見える場所に、外国のメーカーのメガソーラーができるのは、国際化時代といえ、どうかという意見もありました。なので審査基準に“京都の素晴らしい蓄積が生かされる”、“京都の経済を活性化する”、というのを条件に入れた。日新電機さんなど、京都には環境問題に早くから取り組まれた会社がある。“メイドイン京都”でできるということを、改めて実感した」(門川市長)

 門川市長によれば、京都は120年前に、化石燃料による発電から、自然エネルギーによる発電に切り替えていた実績があったという。
 
 「120年前、京都でエネルギーの大転換があった。当時は、関西電力の前進である京都電燈会社が石炭発電をしていたが、京都市が琵琶湖疏水を利用して、日本で最初の営業用水力発電を開始した。そして、京都電燈会社は石炭発電を廃止し、水力発電からの供給を受けた。火力から自然エネルギーへの大転換が、当時から行なわれていた。このメガソーラーをきっかけに、京都から自然エネルギーで日本を元気にしていきたい」(門川市長)






(正藤 慶一)

2012年7月2日 00:00